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ご参考資料
ピクテ・マーケット・フラッシュ 2016年2月16日
先進国
Pictet Market Flash
2016年のユーロ圏経済展望:好・悪材料が交錯
2016年のユーロ圏経済には、域内外の要因を背景に下振れリスクが強まっていますが、内需の改善や欧州中央
銀行(ECB)の追加金融緩和期待を勘案すると、年内を通じて回復基調が維持されそうです。一方、長期的な観点
では、欧州連合(EU)の統合深化、構造改革の停滞、英国のEU離脱(ブレグジット)の可能性等、懸念材料が残り
ます。
ユーロ圏経済は回復基調を維持
内需
2016年のユーロ圏GDP(域内総生産)成長率が長期ト
レンドを上回って推移する可能性が高いと見ています
が、ここ数週間で、下振れリスクが大きく増していること
も事実です。域内経済の回復が鈍るのではとの懸念に
は、ある程度正当な理由とやや的外れな理由もありま
すが、ユーロ圏は、世界経済の減速、金融市場の混乱、
政治情勢の不安定化等の悪材料をこなして、好調さを
維持し得ると考えます。
金融情勢の(一段の)緩和と、実体経済に供与される
信用の伸びを背景に、内需の改善は勢いを増すものと
考えます。労働市場の改善も続いており、また、数年
ぶりに財政政策が経済成長の押上げ要因に転じてい
ます。欧州中央銀行(ECB)が、特に、周縁国の実体経
済の改善につながるような追加金融緩和を決める公算
が高いことは、とりわけ重要です。本稿では、ユーロ圏
経済の下振れリスクを項目別に検討します。
これまでのところ、内需がユーロ圏経済の回復のけん
引役となっており、2013年4-6月期以降の累積のGDP
成長率に対する個人消費ならび企業投資の寄与度は、
大きなものとなっています。労働市場も一定のペース
で改善しています。企業の人員採用意欲は5年ぶりの
水準に回復しており、家計の実質可処分所得の伸び
に貢献しています。
企業収益ならびに設備投資計画は、ようやく、本格回
復に向けた態勢を整えつつあることから、このような傾
向は来年以降も続くものと考えます。また、企業投資は
ここ数年、極めて低位に留まっていたことから、積み増
し余地は大きいと見ています。
欧州委員会発表の直近の四半期経済見通しにも示さ
れている通り、政府の難民対策費用の増額を一因とし
て、財政政策が(緩やかな)緩和基調に転じつつあるこ
とにも要注目です。
企業心理
<次ページに続きます>
ユーロ圏の企業心理は、年末から年始にかけて悪化し、
企業景況感、消費者信頼感ともに国内外の情勢に関
する懸念を反映する結果となりました。ドイツのIfo企業
景況感指数の期待指数や欧州委員会(EC)発表の経
済センチメント指数等、1月の景気先行指数は、周縁国
経済の強い回復力にもかかわらず、2012年夏場以来
の大幅な低下を記録しました。域内の景気回復は一様
さに欠け、各国間の景気収斂を示唆する証拠は確認し
難い状況です。
※将来の市場環境の変動等により、当資料記載の内
容が変更される場合があります。
一方、直近の景気サイクルで出遅れ感の目立っていた
フランスとイタリアが巻き返しに転じており、両国の経
済指標には、企業投資や雇用を含んだ内需の一段の
改善が示唆されています。
ピクテ投信投資顧問株式会社
巻末の「当資料をご利用にあたっての注意事項等」を必ずお読みください。
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ご参考資料
Pictet Market Flash
先進国
銀行融資
原油価格
2015年12月のユーロ圏銀行融資は、民間セクター向け
の(貸出から回収を差し引いた)純融資が、予想に反し
て減少となり、(融資の売却ならびに証券化調整後
ベースでは)前年同月比+0.3%と前月の同+0.7%を下回
りました。12月の減少は金融機関を除く企業向けの短
期融資が中心であり、オランダの減少がユーロ圏全体
の数値を引き下げました。
信用の拡大は今後数ヵ月間、加速度を増すことが予想
され、ECBの銀行貸出調査等、景気先行指標が示唆
する通り、内需の改善を支えるものと思われます。
中国ならびにその他新興国
中国ならびにその他新興国の景気減速を勘案すると、
貿易関連指標から確認されるユーロ圏経済の回復は
極めて堅調です。ユーロ圏の2015年通年の輸出総額
は、(名目ベース、実質ベースの双方で)前年比5%程度
と、2011年以来の伸びとなったと見ています。ロシア、
ブラジル、中国向け輸出が減少したとはいえ、3ヵ国向
け輸出額が輸出全体に占める割合は比較的小規模で
す。一方、先進国向けの輸出が堅調さを維持した結果、
ユーロ圏企業の輸出市場シェアが拡大していますが、
(ドイツの海外受注等の)景気先行指標からは、トレン
ド反転の兆しは見られません。
原油価格が供給過剰ショックの最終局面と見られる足
元の水準で安定推移することを前提とすると、(純輸入
地域である)ユーロ圏経済には、年内を通じて、大きな
プラスの効果が及ぶものと予想されます。経済協力開
発機構(OECD)の標準価格弾性値を用いて試算すると、
2015年下期の原油価格の約4割の下落は、それ以前
の原油安の効果に加えて、GDP成長率を更に押し上
げることが予測されます。ユーロ圏では、米国と同様、
原油価格暴落の負の影響が過小評価されていた可能
性はあるものの、貯蓄率が幾分かでも上昇した場合に
は、個人消費と企業利益の双方に恩恵が及ぶものと
考えます。
ユーロ圏にとっての主要なリスクは、資源価格の下落
に起因してインフレ低下圧力が増すことであり、企業の
生産コスト、賃金、消費者物価に2次的な影響が及ぶこ
とです。もっとも、原油価格が物価に及ぼす間接的な
影響は限定的であるとも考えられ、コア・インフレに対
する下押し圧力は、年内は低位に留まると見ています。
インフレ期待の変動が小さくなったことを勘案すると、
ECBは3月10日の政策理事会で追加金融緩和を決め
る公算が高いと考えます。
<次ページに続きます>
※将来の市場環境の変動等により、当資料記載の内
容が変更される場合があります。
2016年の輸出は緩やかに拡大する可能性が高いと見
ていますが、一方、輸入の増加の加速が予想されるこ
とから、(輸出から輸入を差し引いた)純輸出のGDPに
対する寄与度は、2009年以来、初めて、マイナスに転
じることが予想されます。世界経済が景気後退(リセッ
ション)入りすることはないことを前提とすれば、堅調な
内需が輸出の不振を十分に相殺し得ると考えます。
ピクテ投信投資顧問株式会社
巻末の「当資料をご利用にあたっての注意事項等」を必ずお読みください。
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ご参考資料
Pictet Market Flash
先進国
インフレ期待
原油価格が一時的に安定の様相を呈しているにもか
かわらず、5年先5年物インフレ・スワップ金利は、直近、
市場最低水準に迫っています。異論はあるかもしれま
せんが、市場ベースの期待インフレ率は市場全体の期
待インフレ率というよりは、極めて特殊な投資家層のイ
ンフレリスク・プレミアムを示唆しているとも考えられま
す。ここ数ヵ月、原油価格に対する強い相関が示され
ていますが、恐らく、流動性低下の影響もあると思われ
ます。
米連邦準備制度理事会(FRB)やECBを含む複数の中
央銀行は、金融政策の目的で、インフレ・スワップ金利
を用いることに慎重な見解を示しています。ECBは、欧
州委員会の「四半期サーベイ」(専門家予想調査)や各
種調査結果等、インフレ期待を示唆するより広範な指
標を注視していくべきだと考えます。後者は、ここ数ヵ
月、低下幅が目立っていますが、賃金の緩やかな伸び
に加えて、原油価格が僅かでも反発しさえすれば、イン
フレ期待の低下は回避し得ると考えます。
難民危機
国際通貨基金(IMF)によれば、(政治亡命を求める)難
民対策費用はユーロ圏GDPの非常に小さい割合に留
まる見込みで、したがって、対処可能と示唆しています。
ただし、スウェーデンやデンマークには、この3倍から5
倍の費用が生じることが見込まれます。一方、(難民の
流入は、)長期的に見て、また、社会への融合がうまく
いったと仮定した場合、人口動態や社会福祉制度を巡
る試練に直面するユーロ圏の状況を改善し得る好機と
捉えられるかもしれません。もっとも、足元の難民危機
は、不安定な政治情勢を更に悪化させています。
政治情勢の不安定化
ユーロ圏のほぼすべての国で、政治リスクが増してい
ます。スペインでは(2015年12月の総選挙終了後、)組
閣が出来ない状況が続いています。国民党を率いるラ
ホイ暫定首相に替わって、社会労働党(PSOE)のサン
チェス党首が組閣に成功することについての保証はな
く、総選挙やり直しの可能性も排除できません。
一方、ギリシャは、危機的状況を脱したとはいえ、社会
的緊張が再燃し、年金受給者との交渉が難航していま
す。
一方、ポルトガルの社会主義政権は、2016年予算案を
巡って欧州委員会との交渉に臨んでおり、両者が合意
に至る可能性は十分にありそうです。イタリアのレンツ
ィ首相は、各種の政策が不公平かつ非効率だとして、
ドイツのメルケル首相と欧州連合(EU)官僚を批判して
おり、EU首脳を困惑させています。
ドイツとフランスの政局も流動的です。メルケル首相は
難民への対応を受け支持率が低下し、極右政党の「ド
イツのための選択肢」に支持率を奪われる結果となっ
ています。フランスの極右政党も異なる理由で勢力を
保っており、主流の政党や革新志向の政党の脅威とな
っています。
これまでのところ、企業心理や経済成長への政治の影
響は殆ど見られません。企業心理や消費者心理が高
止まりの様相を呈するスペインやイタリア等の国で、時
間のずれを伴って下振れリスクが現実のものとなる可
能性はあり得ますが、社会全体に影響が及ぶシステ
ミック・リスクに陥る確率は、総じて低いと考えます。
ユーロ圏の金融市場には、完全とは言えないとしても、
各種の安全網が張り巡らされており、過去の経験が生
きているとの印象を持っています。
金融情勢ならびに経済情勢がなんとか持ちこたえてい
るのは、各国レベル、ならびに国を超えたレベルでの
改革の遅れと引き換えに、長期的な政治の脆弱性リス
クを生み出した可能性があります。例えば、(労働市場
や年金制度等の)構造改革が実現されないリスクが高
まっているからです。欧州の経済通貨同盟(EMU)の統
合深化の試みは遠い道のりと考えられます。また、実
現の可能性は低いと思われるものの、ブレグジット(英
国のEU離脱)は、中期的に見て、ユーロ圏に深刻な影
響を及ぼす公算が高いと考えます。ユンケルEU委員
長の唱えた「より親密なEU」は好ましくないと考える向
きがあるかもしれませんが、不完全なEUも同様に好ま
しくないと思われます。EUは長期の試練に晒されてい
ますが、ECBにできることは殆どなさそうです。
※将来の市場環境の変動等により、当資料記載の内
容が変更される場合があります。
当資料をご利用にあたっての注意事項等
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