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変貌を遂げる日本企業(ピクテ投信投資顧問)
ご参考資料 ピクテ・グローバル・マーケット・ウォッチ 2014年8月8日 先進国 Pictet Global Market Watch 変貌を遂げる日本企業 日本経済は、楽観論が市場を押し上げた2013年とは一変し、減速感を強めているように思われますが、企業が変貌 を遂げつつあるとみています。ピクテのロンドン・オフィスで日本株式運用を担当するシニア・ファンド・マネジャーの サム・ペリーが、企業の「本物の変化」を見据えた日本株式投資について解説します。 Q:日本の景気指標は、ここ数ヵ月、軟化 基調です。また、安倍首相の支持率が 50%を割り込んでいます。このような状況 は、日本の株式市場の先行きにどのよう な影響を及ぼすと考えますか? 2013年の、リクシル(LIXIL)によるドイツの水栓金具大 手グローエのレバレッジド・バイアウト(LBO)が良い例 です。東京に本社を置くリクシルは、企業価値では、同 社の半分程度のグローエを、政府出資の政策投資銀 行との合弁企業設立を通じて、買収しました。買収金 額は、約40億ドルでした。 足元の状況は、短期的には、投資家心理に影響を及 ぼしたかもしれませんが、日本の株式市場の主要なけ ん引役は、日本企業の行動の変化だと考えます。1989 年の金融バブル崩壊の後、日本は典型的な債務デフ レ・スパイラルに陥りました。邦銀は、融資先からの資 金の回収(貸し剥がし)によりバランスシートを縮小し、 一方、借入過剰の企業は、債務を大幅に圧縮して現金 をため込みました。高債務から現金蓄積へのシフトは、 デフレを強力に進めます。その結果、GDP(国内総生 産)比の企業の純現金比率は、2012年には30%に跳ね 上がっていたのです。 アベノミクスだけが、このような企業動向を後押しして いるのではありません。安倍政権の発足に先立つ2012 年7月、硬貨・紙幣処理機製造のグローリーは、英国タ ラリスを、約6億5,000万ポンドで買収しました。補完的 な技術と、世界の異なる地域における販売力を有する 両者の統合は、戦略的に優れた買収でした。また、グ ローリーのような中小企業が、1990年代後半以降、借 入による多額の資金調達を行ったことは、極めて重要 な意味を持っています。グローリーの社長は、「当社は、 常にキャッシュ・リッチ企業として知られてきたのですが、 お金は貯め続けるわけにはいかないのです」と述べて います。 ところが、最近になって漸く、企業が余剰の現金を使い 始めたことを示す形跡が出てきています。増配が相次 いだ結果、日本企業の配当利回りは、米国企業(の配 当利回り)とほぼ同水準に上昇しています。また、自社 株買いが増え、株主資本利益率(ROE)が、改めて注 目されています。 ですから、アベノミクスが、(株式市場を動かす)最大の 要因だと考えるべきではないのです。安倍首相が首相 に就任した2012年12月に先立つ時期から企業セクター が進めてきた積極的な動きに、弾みをつけたに過ぎな いのです。 Q:日本企業の現金の使途には、増配や 自社株買いによる株主還元の他に、どの ようなものがありますか? 日本企業によるM&A(合併・買収)が増えています。 2014年年初には、サントリー・ホールディングスが米国 の蒸留酒大手、ビームを約160億ドルで買収しました。 これは、日本企業による海外企業の買収では、3番目 に大きな買収です。 また、日本企業は、買収の資金の調達のため、借入も 増やしています。 Q:安倍政権の政策がどのように日本 企業を支援しているかを示す例を挙げ ていただけますか? 安倍政権の法人税改革は、(日本経済に)劇的な変化 をもたらすものと考えます。経済協力開発機構 (OECD)に加盟する34ヵ国中、米国に次いで高い法人 税率を引き下げることにより、安倍首相は、国内の企 業投資と成長の促進を図っています。法人実効税率は、 既に、38.01%から35.64%に引き下げられていますが、政 府は、アジア各国の平均である25%程度を目標に、30% 以下への段階的な引下げを計画しています。 (次ページに続きます。) ピクテ投信投資顧問株式会社 巻末の「当資料をご利用にあたっての注意事項等」を必ずお読みください。 1 2 ご参考資料 Pictet Global Market Watch 先進国 これが実現すれば、国内の資本投資に弾みがつくだけ ではなく、海外からの直接投資を引き込むことも期待さ れます。 法人税率の引き下げは、安倍政権が注力する株主資 本利益率(ROE)向上の目論みとも軌を一にします。日 本企業の足元のROEは8%台と、米国企業の約15%を下 回ります。ピクテでは、法人実効税率の10%の引き下げ が、ROEを1.3%引き上げるものと試算しています。また、 米国企業を50%下回る日本企業の債務比率も上昇が 予想され、日米のROE格差の縮小に貢献するものと考 えます。 Q:日本最大の年金基金の資産配分の 変更は、市場にどのような影響を与え ると考えますか? 日本かつ世界最大の年金基金である年金積立金管理 運用独立行政法人(GPIF)は、資産配分の見直しの結 果を9月に発表する予定です。 GPIFの日本株式の配 分は、過去1年半で大きく上昇しましたが、足元の17% から20%への引上げが大方の予想です。これが実現す れば、約3.6兆円の新規資金が株式市場に流入すると 予想されています。 インフレ率が緩やかな上昇基調を辿る環境下、 3分の 2を現金においていたのでは、年金基金は債務対応に 苦しむこととなるでしょう。国債の利回りも僅か0.5%に過 ぎません。日本株はバリュエーション面でも魅力的で、 12ヵ月先利益予想ベースの株価収益率(PER)は、米 国株ならびに欧州株の水準を下回っています。更に、 日本株のリスク・プレミアム(無リスク資産に対する超 過リターン)は、米国、欧州、新興国の水準を上回って います。 日本国内で起こっている本物の変化を受け入れること を躊躇する投資家にとっても、状況は同じです。大きく 上昇する可能性を秘めた市場でアンダーウェイトを続 けるのか、積極的に投資するのかを決断する時が到 来したのかもしれません。 ※将来の市場環境の変動等により、当資料記載の内 容が変更される場合があります。 当レポートで言及した個別銘柄はあくまでも参考として紹介したもので あり、その銘柄・企業の売買を勧誘・推奨するものではありません。 ピクテでは、教職員共済や公務員共済等、GPIF以外 の公的年金がGPIFに追随すれば、更に大きな影響が 市場に及ぶものと考えています。GPIF以外の公的年金 は、総額約28.9兆円(約2,810億ドル)の年金資金を運 用していますが、GPIFと同じく、株式配分を20%に引き 上げるとすると、市場には更に約6兆円の資金が流入 すると試算されています。 日本政府が年初に導入した非課税制度からも新規資 金が株式市場に流入することが期待されます。「日本 少額投資非課税制度」(NISA)は、約8兆ドルと推定さ れる個人貯蓄の一部を、株式ならびにその他のリスク 資産に振り向けることを狙っていますが、2014年年末 までに865万人が口座を開設することが予想されてい ます。今後5年間で、最大68兆円の資金がNISAに流入 し、その3分の2が株式に投資されるものと予想されて います。 安倍政権の改革アジェンダの一つである(デフレから) インフレへの転換は、リスク資産への資金の移動を加 速させ、国債に対する株式の魅力度を高めます。日本 銀行は、消費者物価指数が、2017年3月末までに2%を 上回るものと予測しています。 当資料をご利用にあたっての注意事項等 ●当資料はピクテ投信投資顧問株式会社が作成した資料であり、特定の商品の勧誘や売買の推奨等を目的としたものではなく、また特定の銘柄および市場 の推奨やその価格動向を示唆するものでもありません。●運用による損益は、すべて投資者の皆さまに帰属します。●当資料に記載された過去の実績は、将 来の成果等を示唆あるいは保証するものではありません。●当資料は信頼できると考えられる情報に基づき作成されていますが、その正確性、完全性、使用 目的への適合性を保証するものではありません。●当資料中に示された情報等は、作成日現在のものであり、事前の連絡なしに変更されることがあります。 ●投資信託は預金等ではなく元本および利回りの保証はありません。●投資信託は、預金や保険契約と異なり、預金保険機構・保険契約者保護機構の対象 ではありません。●登録金融機関でご購入いただいた投資信託は、投資者保護基金の対象とはなりません。●当資料に掲載されているいかなる情報も、法務、 会計、税務、経営、投資その他に係る助言を構成するものではありません。 2 2