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ご参考資料
ピクテ・マーケット・フラッシュ 2014年2月10日
先進国
Pictet Market Flash
海外投資家がみる、日本株式市場の動向
日本株式市場の大幅調整を受け、強気相場の終了を巡る懸念が浮上していますが、デフレ脱却等、国内環境は改
善が目立ちます。また、足元の新興国危機が日本に伝播する兆しは認められません。足元の調整を受け、日本株
の割安感が際立っています。ロンドン・オフィスで日本株チームを率いるエイドリアン・ヒッキーが解説します。
日本株式市場を取り巻く国内環境は
良好
外部環境: 新興国市場動向
春の陽光を受けてツリガネ水仙が開花し始めたという時
期に、日本株式市場の持続的な下落が市場暴落の脅
威となっています。2014年1月23日以降、東証株価指数
は米ドルベースで9%の下落をみています。この間、米国
市場ではS&P500種株価指数が約6%下落し、欧州市場
でもFTSE100種株価指数とユーロストックス指数が同程
度の下落を記録しています。このような状況は日本株の
下落局面への回帰が必然であることを示唆しているの
でしょうか?また、日本株はグローバル経済の成長を期
待して上昇しているに過ぎないのでしょうか?
最初の問いの方が重要だと考えますが、既に十分な議
論が展開されてきたことですから、ここでは簡単な解説
に留めたく思います。様々な警告や(市場暴落)対策な
どをもってしても、今回の下げ局面は過去のものとは異
なると考えます。銀行セクターは資本を増強し、日本経
済は黒田日銀総裁が巨額の量的・質的緩和策を導入
する前に自力でデフレからの脱却を果たしています。ま
た、企業セクターは、バランスシートにGDP(国内総生
産)比30%相当の現金を積み上げ、設備投資を再開して
います。労働市場の改善と賃金の上昇が確認され、安
倍首相は経済改革を幾分でも進めようと本気で考えて
いるようです(正直なところ効果は最も小さいのではと思
われますが)。
したがって、弱気相場の再来を裏付ける理由は、ファン
ダメンタルズ(基礎的条件)要因にも国内要因にもマク
ロ経済要因にも見当たりません。
ミクロ経済要因にも理由がみあたりません。企業向け銀
行融資は足元、前年比2.6%増と回復途上にあり、国内
企業の基調は引き続き良好です。また、任天堂等、少
数の例外を除き、発表済みの今期業績は納得のいくも
のであり、利益は事前予想を13%上回っています。
国内のマクロ要因もミクロ要因も株式市場の脅威では
ないとしたら、日本の外で起こっていることや前述の2番
目の問いに目を転じる必要があるでしょう。2番目の問
いは、新興国市場の1997年の再来ではないかとの懸念
や、先日発表された米ISM製造業景況指数の予想外の
低下を巡る懸念が関係します。
複数の新興国通貨の足元の下げは、従来の通貨危機
の特徴をすべて備えています。アルゼンチン・ペソの強
制減価、通貨リラ防衛のためのトルコの大幅利上げ、通
貨ルーブル防衛のため、「無制限の」通貨介入をちらつ
かせるロシア中銀動向等は、1997年当時の金融業界関
係者にとって見覚えのある光景であり、歴史は繰り返す
のではとの恐怖心を引き起こすもののようです。1997年
下期にはタイの通貨切下げに続き、日本の株式市場が
25%の下落を記録したからです。
1997年の新興国危機を日本に伝播させたメカニズムは
銀行セクターであるとする見方が一般的です。邦銀が
積み上げた巨額の不良債権を無視し続けてきたところ
に、アジア通貨の暴落と経済破綻、ひいては多数のデ
フォルトが発生し、2002年の銀行危機を引き起こしたと
する見方です。
このような見方には一理あるものの、銀行セクター以外
の重要なメカニズムは、当時も現在も貿易収支です。ア
ジア危機の翌年、アセアン向けの日本の輸出は、3分の
1弱の減少をみており、日本の輸出先の3分の1を占め
るに至っていた米国の経済が堅調ではなく、米国向け
輸出の増加がなかったとしたら、アジア危機が日本の貿
易収支に重大な影響を及ぼしていたであろうことは明白
です。
一方、今回の局面では、脆弱な新興国市場は、日本の
輸出セクターにとっても銀行セクターにとっても、さほど
の脅威ではありません。また、アセアン諸国、中国ある
いは米国等の重要市場に、新興国危機が伝播する兆し
は殆どみられません。どのみち、脆弱な市場は、先週、
落ち着きを取り戻したもようです。
(次ページに続きます。)
ピクテ投信投資顧問株式会社
巻末の「当資料をご利用にあたっての注意事項等」を必ずお読みください。
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ご参考資料
Pictet Market Flash
先進国
もっとも、米・中両国の経済成長に懸念が浮上する現在、
このような状況が投資家が冷静さを取り戻す助けとなる
わけではありません。中国では「誠至金開1号」という軽
率な名前の信託商品の不履行を巡る懸念から、影の銀
行(シャドーバンキング)が運用する理財商品ひいては
今年の経済成長率予測に注目が集まっています。中国
の銀行セクターに対する圧力は、マネーサプライ(M2)の
伸びの大幅鈍化で確認されます。M2の伸びは僅か
13.6%と、先進国の基準では急激な伸びであっても、中
国では過去15年間の最低水準に近い数値に落ち込ん
でいます。とはいえ、日本の中国向け輸出は、2013年12
月現在、ドル・ベースで前年比+11%増と、堅調な拡大を
続けています。
外部環境: 足元の米国動向
日本の株式市場のもっとも最近の下落と時を同じくして
発表されたのは、極めて低調な2014年1月の米国ISM
製造業景況指数です。当調査は、製造業セクターの購
買担当者を対象とした調査で、米国経済全般の先行き
を占う先行指標の一つとされていますが、1月の数値
が51.3となり、昨年2013年12月の56.5ならびに市場予
想の56.0の双方を大きく下回って、月次ベースでは最
大級の下げとなったことから、特に警戒感が強まりまし
た。このことは、(複数の)新興国のみならず、(恐らく銀
行セクターが崩壊するであろう)中国や米国の経済が
一時停止する可能性を示唆しているのでしょうか?
本の2大証券によれば、2月4日の急落に際しては、売
りよりも買いが優勢だったとのことです。
これに対し、シカゴ先物市場では、昨年5月と同様の大
量の売りが出ています。シカゴ・マーカンタイル取引所
には、米ドル建てならびに円建ての日経平均先物が上
場されていますが、両先物の取引高はここ数日急増し
て、大阪取引所での取引高を上回っています。
日本株式の割安感際立つ
日本の株式市場がグローバル経済の成長期待に依存
しているのか、また、アルゼンチン危機の影響が及ぶ
こととなるのかどうかは別として、外国人投資家の一部
はそのような懸念を抱いており、そのことが、過去10日
間の市場の下げをもたらしたものと考えます。一方、筆
者は、足元の株価収益率(PER)予想が11倍、株価純
資産倍率(PBR)が0.7倍をつけていることに注目してい
ます。
※将来の市場環境の変動等により、上記の内容が変
更される場合があります。
ここで考えなければならないのは、厳しい寒波が米国
に北極並みの冷気をもたらし、南部テキサスで降雪を
みた月のISM統計から何を読み取るのかということで
す。厳寒は昨年12月から今年1月まで続いており、2ヵ
月に及ぶ悪天候は、新車販売、耐久財受注、非農業
部門雇用者数等の各指標に影響を及ぼすものとみら
れます。厳しい寒波が経済指標を大きく歪めた結果、
投資家の観点からは無用のものとなってしまったこと
が問題です。(歪んだ)経済指標に対するエコノミストの
恐怖感あるいは運用者の冷静な見方のどちらが正し
いかは重要ではありません。少なくとも幾つかの市場
は動揺をみせています。昨年5月、米連邦準備制度理
事会(FRB)のバーナンキ議長の発言を受け、日経平
均が7%下落する局面がありましたが、この時のように、
国内投資家の大幅な売りの兆しは認められませんでし
た。もっとも、バイオ銘柄やインターネット銘柄の信用
取引等、投機的な取引が目立ち、過熱感が強まってい
たマザーズ市場等、株式市場の一部では、売り物(恐
らく投げ売り)が出たようです。これに対し、主要市場で
は、国内投資家の売りはなかったもようです。実際、日
当資料をご利用にあたっての注意事項等
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