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ご参考資料 ピクテ・マーケット・フラッシュ 2016年1月20日 先進国 Pictet Market Flash 欧州中央銀行(ECB):3月の会合で追加緩和決定か? 欧州中央銀行(ECB)は、1月21日の政策理事会では政策を変更せず、ECBスタッフ予想が更新される3月6日の会 合で一段の追加緩和を決定するものと考えます。中銀預金金利(現行、-0.3%)の一段の引き下げの他、量的緩和 の期間延長、資産構成の変更、買入規模の拡大等の施策も検討されると見ています。 2016年の金融市場とECB理事会へ の影響 図表1:ECBスタッフのインフレ率予想の推移 期間:2012年~2017年(予想含む) 2016年年初から2週間、昨年12月3日の欧州中央銀行 (ECB)政策理事会開催時から6週間が経過しましたが、 3.0 % ECBに対して追加緩和を促す圧力が強まる状況は変 2.5 2%ライン わりません。一方、止まらない原油安、中国株式市場 2.0 と為替市場のボラティリティの上昇、中国の経済成長と 1.5 中期戦略(「第13次5ヵ年計画」)を巡る不透明感、信用 1.0 リスクの増大、グローバル成長を巡る懸念の再燃等、 0.5 相互に関連する多数の懸念事項に対して、投資家の 0.0 (過剰な)反応が散見されます。米国ひいては世界経 -0.5 済がリセッション(景気後退)入りしつつあるとの懸念は -1.0 度を超していると考えますが、かかる懸念がリスク資産 12年 13年 14年 を下押しており、年初来の市場は数十年ぶりの低調な 展開となっています。このような状況は、(21日の)ECB 出所:ピクテグループ の決定にどのような影響を及ぼすでしょうか? ピクテでは、ドラギECB総裁から多くは期待できないと 見ています。足元の状況を勘案すると、政策理事会が、 必要とあらば、もう一段の追加緩和を決める可能性が 残っていることは確かです。一方、ドラギ総裁は、昨年 12月決定の追加緩和策の重要性を訴えると同時に、 低迷する総需要を喚起するには、金融政策だけでは 足りないことを主張すべきだと考えます。ECBは、原油 価格の下落でほぼ説明される総合インフレ率の低下に 過剰反応することのないよう、昨年に続き、潜在インフ レ率の測定法を重視するものと考えます(図表1参照)。 ECBが新たな追加緩和策を講じる可能性は高まったと しても、追加策が実行に移されるのは、早くても3月、ま た、目先の市場動向によっては、6月となることもあり得 ると考えます。 昨年12月の追加緩和決定後、一部のタカ派理事が緩 和に慎重な見方を表明したとはいえ、年内に再度の追 加緩和を行うよう、ECBに圧力がかかる状況は変わり ません。 ユーロ圏消費者物価指数 ECBスタッフの予想(2015年12月時点、中央値) ピクテグループの予想 15年 16年 17年 (特に中国の)経済指標が急速に改善し、投資家にリ スク選好意欲が戻らない限り、ECBの追加緩和は「あ るかどうか」ではなく、「いつ、どのような」緩和策となる かが問われていると言ってよいと考えます。 追加緩和の時期と手法 市場の混乱が続いてもECBは様子見を決め込み、 企 業心理や実体経済やインフレ期待への影響を見極め るまでは対応策を取らないとの見方が一般的です。ま た、政策理事会は一枚岩ではなく、新たな緩和策に欠 け、手段が制約されているとの見方も散見されます。ピ クテでは、前者の見方には同意しますが、後者につい てはそうとは言い切れないと考えます。 <次ページに続きます> ピクテ投信投資顧問株式会社 巻末の「当資料をご利用にあたっての注意事項等」を必ずお読みください。 1 3 ご参考資料 Pictet Market Flash 先進国 追加緩和の時期については、ECBスタッフ四半期予想 が更新され、新たに2018年予想が発表される3月の会 合が注目されます。原油価格の暴落を受け、少なくとも 2016年についてはインフレ予想の下方修正を余儀なく されると見ています。(2016年は、現行の1%から、予想 策定のためのデータ収集期限となる2月半ばまでの間 の原油価格の反発次第で、0%~0.4%への下方修正が 見込まれます。)ユーロの実効為替レート(38ヵ国の通 貨バスケットに対する貿易加重為替レート)が足元上 昇していることもインフレ予想の下方修正を促します。 一方、インフレ中期見通し(2018年予想)は1.7-1.8%程 度と、ECBが目標とする2%近傍から大きく乖離する公 算は低く、成長率予想も比較的良好な水準を維持する ものと考えます。したがって、バズーカ(大胆な緩和)で はなく、調整的な緩和が求められると考えます。 総需要が減少する足元の環境下、ECB理事の最大の 懸念は、原油価格の下落による間接的な影響です。 同行チーフ・エコノミストのピーター・プラート氏は、「資 源価格の長期低迷は、インフレ期待経路を通じた永続 的な影響を及ぼす可能性がある」と述べていますが、 このようなリスクが現実のものとなった場合、ECBには、 遥かに積極的な対応が求められることが予想されます。 いずれにせよ、原油価格の下落でほぼ説明される総 合インフレ率の低下に過剰反応することのないよう、 ECBは、潜在インフレ率の測定法を重視するものと考 えます(図表2参照)。 追加緩和の手段については、2014年4月、(ECBが追 加的な非伝統的手段に踏み切る不測の事態につい て、)ドラギ総裁がアムステルダムでの講演を行った時 点と比べ、ECBの反応関数が明確ではありません。政 策理事会はいったん合意に達すれば、手段の選択を 巡って理事会が紛糾するリスクを最小限に留めるため の努力を厭わないと考えられ、したがって、最も適切と はいえない手段が選択される可能性も否めません。 もっとも、実効為替レート・ベースのユーロ高等、「正当 な理由に欠ける引締め」があるとしたら、ECBは中銀預 金金利の引き下げで対応すべきだとの考えは変わりま せん。また、政策理事会が中銀預金金利の引き下げ 幅を0.1%に留めマイナス0.3%とすることを決定した12月 理事会の議事録要旨によれば、中銀預金金利の引き 下げは、理事間の意見が分かれる可能性が最も低い 手段のように思われます。 当会合の議事要旨には「預金金利(預金ファシリティ金 利)の10ベーシス・ポイント(0.1%)の引き下げが著しい 副作用を引き起こす公算は極めて小さく、必要が生じ れば、追加引き下げの余地を一定程度残すことに利点 があると見られた」、 図表2:ECB政策理事会でコアインフレ率について 言及した数 期間:2015年1月~2015年12月 14 回 コアインフレ率について言及した数 12 10 8 6 4 2 0 1月 3月 4月 6月 7月 9月 10月 12月 出所:ピクテグループ 「もっとも、マイナス金利幅を大きく拡大する場合には、 金融市場、銀行ひいては経済全体への影響の経路を 注視する必要がある」との発言が記録されています。 インフレ期待が「定まらない」リスク等、物価安定の中 期見通しが一段と悪化した場合には、(2017年3月以降 に終了期限を延ばす)期間延長、あるいは、(現状、月 額600億ユーロの)資産買入額の増額等、量的緩和プ ログラムの拡充による対応が必要となります。期間の 延長は表面的な緩和に過ぎないと見なされる可能性 がありますから、資産買入額の増額のみが効果の期 待できる手段になると考えます。 ドラギ総裁は、資産買入プログラムの技術面について は政策理事会が「春のうちに」検討することを示唆して います。量的緩和の買入基準の変更については、同 一発行体の発行残高に対する買入上限の引上げや、 買入対象証券により広い範囲の証券を含めること等が 既に決定されています。政策理事会は、量的緩和の滞 りない実施のために資産買入額の大幅増額を決定す れば、一歩前進することが可能だと思われます。現在、 選択肢として考えられるのは、最高格付け債券の銘柄 ならびに発行体の買入上限の引上げ、社債等の資産 を加える買入対象資産証券の拡充、更には、(ECBの 資本金の拠出比率から乖離した)国債買入等の施策 です。 以上から、ECBが追加緩和に踏み切るタイミングとして は、6月2日の政策理事会終了後が高いと予想してい ます。 <次ページに続きます> ピクテ投信投資顧問株式会社 巻末の「当資料をご利用にあたっての注意事項等」を必ずお読みください。 2 3 ご参考資料 Pictet Market Flash 先進国 ECBの次の施策は、ユーロ圏ひいてはグローバル経 済に資するためのものとなり、したがって、バズーカ (大胆な緩和)ではなく、低位に留まる期待インフレを調 整するための施策になると考えます。中銀預金金利の 引き下げや資産買入プログラムの拡充など、追加緩和 策の選択肢として本稿で言及した施策については、21 日の政策理事会終了後、別稿で、検討したいと考えま す。 ※将来の市場環境の変動等により、当資料記載の内 容が変更される場合があります。 当資料をご利用にあたっての注意事項等 ●当資料はピクテ投信投資顧問株式会社が作成した資料であり、特定の商品の勧誘や売買の推奨等を目的としたものではなく、また特定の銘柄および市場 の推奨やその価格動向を示唆するものでもありません。●運用による損益は、すべて投資者の皆さまに帰属します。●当資料に記載された過去の実績は、将 来の成果等を示唆あるいは保証するものではありません。●当資料は信頼できると考えられる情報に基づき作成されていますが、その正確性、完全性、使用 目的への適合性を保証するものではありません。●当資料中に示された情報等は、作成日現在のものであり、事前の連絡なしに変更されることがあります。 ●投資信託は預金等ではなく元本および利回りの保証はありません。●投資信託は、預金や保険契約と異なり、預金保険機構・保険契約者保護機構の対象 ではありません。●登録金融機関でご購入いただいた投資信託は、投資者保護基金の対象とはなりません。●当資料に掲載されているいかなる情報も、法務、 会計、税務、経営、投資その他に係る助言を構成するものではありません。 3 3