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Pictet Global Market Watch
ご参考資料 ピクテ・グローバル・マーケット・ウオッチ 2013年7月17日 先進国 Pictet Global Market Watch 債券利回りの上昇をどう考えるか 足元の米国国債利回りの上昇は、1994年の金利上昇局面とは、調達コスト面で大きく異なります。グローバル・ベー スでの金利急騰を正当化するには、現在の景況感は弱すぎると考えます。調達コストの上昇と景気低迷が同時発 生するならば、資産クラスのバリュエーション(投資価値評価)には下押し圧力がかかることとなるでしょう。 米国国債利回りの急騰 足元数週間の米国国債利回りの急騰は、投資家が金 融緩和局面の終わりを覚悟したことを示唆しているよう に思われます。実際のところ、米国10年国債利回りは、 5月末以来、1%以上上昇して2.7%を付ける場面もあった ことから、米連邦準備制度理事会(FRB)による引締めを 受けて債券市場が暴落した1994年との比較をしたいと の誘惑にかられても、もっともと思われます(JPモルガン 米国債指数で測った1994年の米国国債下落率が年間 ベースで2.9%であったのに対し、今年年初来の下落率は 2.8%に達しています)。 FRBが量的緩和策(QE)縮小のシナリオを提示する一方 で、金融引締めに転じる条件を高く設定したことを留意し ておくことが必要です。雇用市場の動向が極めて重要と なります。失業率は、企業活動サイクルに見合ったペー スでの低下を実現していません。労働参加率(就労者お よび積極的に就職活動を行っている失業者の合計が、 労働人口に占める比率を表す)が上昇に転じたことが主 な要因です。このことだけでも、金融引き締めを2014年 より先に延ばす理由となり得ます。実際のところ、バーナ ンキFRB議長は、このような状況が現実のものとなること を示唆しています。 議長が、「予見しうる将来にわたっての金融緩和策が必 要」であり、インフレおよび雇用の目標達成が危ぶまれ 当時の市場の動揺を引き起こしたのは、今回と同様、長 るような状況では、「金融緩和策の延長もあり得る」との 期間にわたって金融緩和策を維持してきたFRBの発言 発言をしていることが注目されます。金融緩和策の終了 のトーンに変化が認められたことです。1994年の場合は、 を遅らせる要因となり得るのは、雇用動向だけではあり FRBが年末までに明らかな引締めに転じたことから、米 ません。QEの縮小シナリオを表明したことで、意図せず 国国債利回りは、5%程度から8%台に上昇しました。とは して期待インフレ率の急低下を引き起こし、その結果、 いえ、当時の米国債券市場と今回の市場との間には、 実質利回りがプラスに転じてしまいました。これは、そも 根本的な違いが認められます。1994年の米国の経済成 そも、QEが実現するはずだった状況(期待インフレ率を 長率は4.1%、インフレ率は2.7%と、金融引締めを十分に 上昇させ、実質金利を引下げること)とは正反対の状況 正当化する状況にあったのです。また、対GDP (国内 であり、金融政策決定が難しい状況になっているのです。 総生産)比の財政赤字は72%に留まっていました。 これに対し、2013年は、状況が明らかに異なります。米 国の経済成長率は実質で僅か1.8%、FRBが注視する個 人支出デフレーターで測ったインフレ率は1.1%と、過去 最低水準に留まっています。また、対GDP比の財政赤 字は、108%に拡大しています。景気減速局面で債券利 回りが上昇するのは、極めて異例のことです(唯一の例 外は1980年代のことですが、当時は、インフレの急騰を 抑えるため、FRBが引締め策を余儀なくされたことに留 意する必要があります)。とすると、FRBが近い将来、引 締めに転じるのは妥当ではないということになりますし、 債券先物市場が織り込んでいるのも、2014年第4四半期 の利上げです。 ピクテ投信投資顧問株式会社 ピクテでは、QEの縮小すなわち債券購入プログラムの 減額が、遅くとも、12月までに開始されるものと予想して いますが、これは、金融政策正常化への長い道のりの 第一段階に過ぎないことに留意すべきです。早ければ 2014年第4四半期には利上げが始まるとする市場の予 想は、強気過ぎると考えます。FRBは、その時点では、 経済成長率が3.2%に達し、失業率は6.8%に低下するもの と予想していますが、実現は難しそうです。また、米国外 の景気が弱すぎることからも、このような早期の金融政 策の正常化は起こりそうにありません。 <次ページに続きます> 巻末の「当資料をご利用にあたっての注意事項等」を必ずお読みください。 1 2 ご参考資料 Pictet Global Market Watch 先進国 金利上昇の影響 市場がさらなる大幅下落の脅威に鈍感だというわけでは ありません。予見しうる将来において、債券利回りが現 在の水準に留まったとしても、調達コストは数ヵ月前の 水準を上回っており、景気の減速と、広範な資産クラス のバリュエーション(投資価値評価)の低下をもたらすリ スクが生じます。 金利の上昇は、複数の経路で経済成長に影響を及ぼし ます。富(資産価値)の減価、信用感応度の高いモノや サービスに対する需要の減少、公共サービスや債券利 払いのコストの上昇等が利回り上昇の結果の例としてあ げられます。経済協力開発機構(OECD)は、利回りの1% の上昇が、5年の期間でみて、米国および欧州の経済成 長率を、それぞれ、1.1%および0.7%押し下げることとなる と試算しています。 債券利回り上昇のユーロ圏への影響は特に懸念されま す。域内がリセッションに陥っていることに加え、調達コ ストの上昇が、ソブリン危機の再燃を引き起こす可能性 が否めないからです。 さらに、債券利回りが現在の水準に留まる一方、経済成 長の加速が実現しないとなると、リスク資産に下押し圧 力がかかることとなります。ピクテの試算(指数構成銘柄 のコンセンサスの利益予想を用いた割引キャッシュフロ ー分析)では、債券利回りの1%の上昇は、他の条件が変 わらないという前提の下では、S&P500種指数の適正価 値を、現在の水準から9.3%程度減価させることとなります。 オーストラリアドルのようにキャリートレードによる恩恵を 受けている資産クラスについては、金利上昇の影響はよ り大きなものとなります。 投資への影響: 利上げを勘案した中期予想 ① 株式および債券 一方、配当利回りが高く、債券の性格を有する電気通信 サービスや公益事業等のセクターは、軟調な展開となり そうです(公益セクターは最近の下げがきつかったこと から、下値リスクは幾分小さいかもしれません) 。金利 上昇は、銀行の利鞘(純金利マージン)を拡大させます が、債券ポートフォリオの減価がこれを相殺することにも なります。ピクテでは、今後数ヵ月にわたり、債券利回り が一定の範囲内で推移するものとみていますが、米国 の金融政策が正常化に向けた緩やかな道のりを歩み始 めたことは間違いありません。このことは、中長期的に、 国債市場の下落圧力となるでしょう。10年債利回りは、5 年後には5%にまで上昇するものとみています。 ②通貨 先進国の中央銀行のうち、金融緩和策の解除を検討し ているのはFRB以外にないことから、米ドルは他通貨に 対して強含む要因を有していると考えます。世界の経済 成長が加速するまでの短期間においては、ドル高が商 品市場および新興国市場全般への圧力となるでしょう。 ③社債および新興国債券 社債には、過去の金融引締め局面で、国債を上回るリタ ーンを挙げる局面が認められました。景気の回復にとも なう金利の上昇が、社債全般のリスクプレミアムを縮小 させるからです。過去のデータによると、米国国債指標 銘柄の利回りが1%上昇すると、投資適格社債、ハイイー ルド社債、米ドル建て新興国債券の利回りスプレッドは、 それぞれ、0.48%、1.70%、1.13%といずれも縮小していまし た。 もっとも、今回のように、経済が緩やかな成長に留まり、 金利の上昇が、2009年以降社債の価格上昇をもたらし てきた「利回り追求」の動きを鈍化させることとなれば、こ こ数年の社債の高いリターンが再現されることは困難だ と考えます。 過去の金利上昇局面において、世界の株式市場は、堅 調に推移していました。これは高い利回りが堅調な経済 成長の結果だったからです。一方、経済活動に目立った 改善が認められない現時点では、過去の例ほど顕著な 相関がみられないかもしれません。とはいうものの、米 国経済への感応度が高く、債務比率の低い情報技術や 医薬品等のセクターは、堅調な展開が予想されます。 当資料をご利用にあたっての注意事項等 ●当資料はピクテ投信投資顧問株式会社が作成した資料であり、特定の商品の勧誘や売買の推奨等を目的としたものではなく、また特定の銘柄および市場 の推奨やその価格動向を示唆するものでもありません。●運用による損益は、すべて投資者の皆さまに帰属します。●当資料に記載された過去の実績は、将 来の成果等を示唆あるいは保証するものではありません。●当資料は信頼できると考えられる情報に基づき作成されていますが、その正確性、完全性、使用 目的への適合性を保証するものではありません。●当資料中に示された情報等は、作成日現在のものであり、事前の連絡なしに変更されることがあります。 ●投資信託は預金等ではなく元本および利回りの保証はありません。●投資信託は、預金や保険契約と異なり、預金保険機構・保険契約者保護機構の対象 ではありません。●登録金融機関でご購入いただいた投資信託は、投資者保護基金の対象とはなりません。●当資料に掲載されているいかなる情報も、法務、 会計、税務、経営、投資その他に係る助言を構成するものではありません。 2 2