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平成8年横審第153号 旅客船飛龍プレジャーボートサンフラワー衝突

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平成8年横審第153号 旅客船飛龍プレジャーボートサンフラワー衝突
平成8年横審第153号
旅客船飛龍プレジャーボートサンフラワー衝突事件
言渡年月日 平成9年8月7日
審 判
庁 横浜地方海難審判庁(西田克史、大本直宏、原清澄)
理 事
官 坂本公男
損
害
飛龍
-左舷船首部に破ロ
サンフラワー-船首部先端を圧壊、船長と同乗者3人が負傷、同乗者1人が腰椎骨折
原
因
サンフラワー-見張り不十分、船員の常務(前路進出)不遵守(主因)
主
文
本件衝突は、サンフラワーが、見張り不十分で、無難に航過する態勢の飛龍の前路に進出したことに
因って発生したものである。
受審人Bの一級小型船舶操輝士の業務を1箇月停止する。
理
由
(事実)
船 種 船 名 旅客船飛龍
総 ト ン 数 16トン
機関の種類 ディーゼル機関
出
力 382キロワット
受 審
人 A
職
名 船長
海 技 免 状 一級小型船舶操縦士免状
船 種 船 名 プレジャーボートサンフラワー
長
さ 6.56メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出
力 77キロワット
受 審
人 B
職
名 船長
海 技 免 状 一級小型船舶操縦士免状
事件発生の年月日時刻及び場所
平成7年8月1日午後8時40分
京浜港横浜区
飛龍は、2基2軸を備えた長さ14.71メートルの軽合金製旅客船で、専ら京浜港において工事作
業員送迎用の交通艇として使用されていたが、花火見物をするため、受審人Aが甲板員と2人で乗り組
み、船舶所有者の知人及びその子供等17人を無償で乗せ、船首0.50メートル船尾1.00メート
ルの喫水をもって、平成7年8月1日午後6時50分横浜市神奈川区出田町の係留地を発して横浜北水
堤灯台(以下「水堤灯台」という。
)西方沖で花火見物した後、同8時28分ごろ同地点を発進し、横
浜ベイブリッジからランドマークタワーの沖合を周遊することとして帰途に就いた。
発進後A受審人は、甲板員を操舵室外の左舷甲板上で周囲の見張りにあたらせ、自らは操舵室左舷側
の操縦場所に立ち操船にあたって東行し、横浜ベイブリッジの中央部から北端部に至って左転した後、
同8時37分ごろ水堤灯台から103度(真方位、以下同じ。)1,520メートルばかりの地点に達
し、針路を278度に定め、機関を約10ノットの全速力前進にかけ、手動操舵によって進行した。
同8時39分半少し過ぎA受審人は、水堤灯台から108度730メートルばかりの地点で、左舷船
首19度250メートルばかりにサンフラワーの白、紅2灯を初めて視認し、互いに左舷を対して無難
に航過できる態勢であることを認めて続航中、同時40分少し前いきなり同船の両舷灯を認め、同船の
左転模様に気付き、急いで機関中立とし、ほぼ同時に右舵をとったが効なく、同8時40分水堤灯台か
ら110度600メートルばかりの地点において、原針路、原速力のままの飛龍の左舷船首部に、サン
フラワーの船首が前方から約79度の角度で衝突した。
当時、天候は晴で風はほとんどなく、潮候は下げ潮の初期であった。
また、サンフラワーは、全長7.32メートルのFRP製プレジャーボートで、受審人Bが1人で乗
り組み、同乗者4人を乗せ、花火見物の目的で、船首0.30メートル船尾0.50メートルの喫水を
もって、同日午後7時15分京浜港横浜区の大さん橋ふ頭を発して同ふ頭東方沖で花火見物した後、神
奈川区守屋町の係留地に戻ることとし、その後いったん同ふ頭に寄せ、同8時29分ごろ同所を発進し
て帰途に就いた。
発進後B受審人は、右舷側の操縦席に座って操船にあたり、左隣の席に座った同乗者に左舷方の見張
りを頼み、自らは主に右舷方の見張りを行いながら東行し、同8時37分少し前水堤灯台から180度
200メートルばかりの地点で、針路を99度に定め、機関を約5.4ノットの微速力前進にかけ、手
動操舵で進行した。
同8時39分半少し過ぎB受審人は、神奈川第1号灯浮標の転針目標にほぼ並航したので、北方に向
けて転針することとしたが、転針することだけに気を奪われ、前方の見張りを十分に行うことなく、左
舷船首20度250メートルばかりに接近した飛龍と、約90メートル離れて無難に航過できる態勢で
あることに気付かず、速力を約10.8ノットに上げ、左転を開始して飛龍の前路に進出し、同時40
分わずか前、右舷船首至近に迫った同船の船影を初めて認めたが、どうすることもできず、ほぼ19度
に向首したとき、原速力のまま前示のとおり衝突した。
衝突の結果、飛龍は左舷船首部に破口を生じたが、のち修理され、サンフラワーは船首部先端を圧壊
し、B受審人と同乗者4人のうち3人が2ないし4週間の通院加療を要する負傷を、及び残る1人が腰
椎骨折など2箇月の入院加療を要する負傷をした。
(原因)
本件衝突は、夜間、京浜港横浜区において、西行中の飛龍と東行中サンフラワーとが、互いに左舷を
対して無難に航過する態勢で進行中、サンフラワーが、見張り不十分で、左転して飛龍の前路に進出し
たことに因って発生したものである。
(受審人の所為)
受審人Bが、夜間、京浜港横浜区を東行中、北方に向けて転針する場合、西行中の飛龍を見落とさな
いよう、見張りを十分に行うべき注意義務があったのに、これを怠り、転針することだけに気を奪われ、
見張りを十分に行わなかったことは職務上の過失である。B受審人の所為に対しては、海難審判法第4
条第2項の規定により、同法第5条第1項第2号を適用して同人の一級小型船舶操縦士の業務を1箇月
停止する。
受審人Aの所為は、本件発生の原因とならない。
よって主文のとおり裁決する。
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