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平成10年広審第55号 漁船高芳丸プレジャーボートミヨコ衝突事件 言渡

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平成10年広審第55号 漁船高芳丸プレジャーボートミヨコ衝突事件 言渡
平成10年広審第55号
漁船高芳丸プレジャーボートミヨコ衝突事件
言渡年月日 平成11年5月26日
審 判 庁 広島地方海難審判庁(織戸孝治、杉崎忠志、中谷啓二)
理 事 官 田邉行夫
損
害
高芳丸・・・船首部に擦過傷
ミヨコ・・・右舷外板に亀裂及び右舷後部のたつを損傷、同乗者1人が全治約1箇月の左
下腿コンパートメント症候群
原
因
高芳丸・・・見張り不十分、船員の常務(新たな危険、衝突回避措置)不遵守(主因)
ミヨコ・・・見張り不十分、船員の常務(衝突回避措置)不遵守(一因)
主
文
本件衝突は、高芳丸が、無難に航過する態勢のミヨコに対し、見張り不十分で、転針し
て新たな衝突の危険を生じさせたうえ、同船を避けなかったことによって発生したが、ミ
ヨコが、見張り不十分で、衝突を避けるための措置をとらなかったことも一因をなすもの
である。
受審人Aを戒告する。
受審人Bを戒告する。
理
由
(事 実)
船 種 船 名 漁船高芳丸
総 ト ン 数 1.7トン
登 録 長 7.61メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出
力 52キロワット
受 審 人 A
職
名 高芳丸船長
海 技 免 状 四級小型船舶操縦士
船 種 船 名 プレジャーボートミヨコ
全
長 6.37メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出
力 20キロワット
受 審 人 B
職
名 ミヨコ船長
海 技 免 状 四級小型船舶操縦士
事件発生の年月日時刻及び場所
平成9年9月28日14時00分
瀬戸内海 塩飽諸島海域
ふ
ぐ
高芳丸は、一本釣り漁業に従事するFRP製漁船で、A受審人が1人で乗り組み、河豚漁
の目的で、船首0.2メートル船尾0.3メートルの喫水をもって、平成9年9月28日0
7時ごろ岡山県倉敷市玉島乙島の係留場所を発し、岡山県網代及び香川県塩飽両諸島海域
の漁場に向かった。
A受審人は、網代諸島の下水島付近で操業を行い、漁場を塩飽諸島海域に変更し、広島
はじかみ
茂浦沖の入江で操業の後、同島北方にある 薑 鼻北東方灯浮標付近へ漁場を再度移動する
ため、13時55分ごろ青木港第1防波堤灯台(以下「防波堤灯台」という。)から031
度(真方位、以下同じ。)3,100メートルばかりの地点で、針路をほぼ016度に定め、
機関を半速力前進にかけ10.0ノットの対地速力で、
手動操舵により広島西海岸沿いに北
上を開始した。
A受審人は、13時59分半防波堤灯台から027度4,280メートルの地点に達した
とき、船首左舷26度144メートルのところに東行中のミヨコが存在し、自船がそのま
まの針路・速力で進行すればミヨコが自船の前方約40メートルを無難に航過する態勢で
あったものの、右方の広島北端の薑鼻に接航していたので、底触しないよう海底状況を監
視することに気を奪われ、周囲の見張りが不十分となり、ミヨコに気付かないまま針路を
027度に転じたことにより、同船に対し新たな衝突の危険を生じさせたが、速やかに機
関を後進にかけるなどミヨコを避けないまま進行中、
高芳丸は、14時00分防波堤灯台か
ら027度4,450メートルの地点において、同船の船首がミヨコの右舷後部に原針路・
原速力のまま、後方から67度の角度で衝突した。
当時、天候は晴で風はほとんどなく、潮候は下げ潮の末期であった。
また、ミヨコは、汽笛を装備しないFRP製プレジャーボートで、B受審人が1人で乗
り組み、釣仲間のCほか2人を乗船させ、釣りの目的で、船首0.5メートル船尾0.7メ
ートルの喫水をもって、同日08時ごろ香川県丸亀港の係留場所を発し、同港沖合の釣場
に向かった。
B受審人は、丸亀港及び香川県高見島周辺で釣りを行ったのち、釣場移動のため、塩飽
諸島手島と広島の間を抜けて同諸島本島のフクベ鼻付近へ向け航行することとし、13時
58分防波堤灯台から022度4,300メートルの地点に至り、針路を094度に定め、
機関をほぼ全速力前進にかけ6.0ノットの対地速力で、手動操舵により進行中、同時59
分半船首右舷77度144メートルのところで北上中の高芳丸が右転し、自船に対し新た
な衝突の危険を生じさせたが、底触しないよう船首方の海底状況を監視することに気を奪
われ、周囲の見張りが不十分となり、このことに気付かず、機関を後進にかけるなど同船
との衝突を避けるための措置をとらないまま続航中、ミヨコは、原針路・原速力のまま前
示のとおり衝突した。
衝突の結果、高芳丸は、船首部に擦過傷を生じたのみであったが、ミヨコは、右舷外板
に亀裂及び右舷後部のたつを損傷してのち修理され、同船のC同乗者が全治約1箇月の左
下腿コンパートメント症候群を負った。
(原 因)
本件衝突は、瀬戸内海塩飽諸島海域において、北行する高芳丸と東行するミヨコの進路
が交差する際、高芳丸が、無難に航過する態勢のミヨコに対し、見張り不十分で、転針し
て新たな衝突の危険を生じさせたうえ、同船を避けなかったことによって発生したが、ミ
ヨコが、見張り不十分で、高芳丸との衝突を避けるための措置をとらなかったことも一因
をなすものである。
(受審人の所為)
A受審人は、塩飽諸島海域において、漁場移動のため北行する場合、左舷方から東行す
るミヨコを見落とさないよう、周囲の見張りを十分に行うべき注意義務があった。しかる
に、同人は、右舷方の広島北端の薑鼻に接航していたことから、底触しないよう海底状況
を監視することに気を奪われ、周囲の見張りを十分に行わなかった職務上の過失により、
無難に航過する態勢のミヨコに気付かず、転針して新たな衝突の危険を生じさせたうえ、
同船を避けないまま進行して衝突を招き、ミヨコの右舷外板に亀裂などを生じさせると共
に同船のC同乗者を負傷させ、高芳丸の船首部に擦過傷を生じさせるに至った。
以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条
第1項第3号を適用して同人を戒告する。
B受審人は、塩飽諸島海域において、釣場移動のため東行する場合、右舷方から北行す
る高芳丸を見落とさないよう、周囲の見張りを十分に行うべき注意義務があった。しかる
に、同人は、底触しないよう船首方の海底状況を監視することに気を奪われ、周囲の見張
りを十分に行わなかった職務上の過失により、右舷方で高芳丸が、転針して新たな衝突の
危険を生じさせたことに気付かず、同船との衝突を避けるための措置をとらないまま進行
して衝突を招き、両船に前示の損傷を生じさせ、ミヨコの同乗者を負傷させるに至った。
以上のB受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条
第1項第3号を適用して同人を戒告する。
よって主文のとおり裁決する。
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