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蛋白質核酸酵素:マウス悪性Tリンパ腫細胞の細胞死と接着・増殖因子

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蛋白質核酸酵素:マウス悪性Tリンパ腫細胞の細胞死と接着・増殖因子
特集 がんと免疫とアポトーシス
マウス悪性Tリ ンパ腫細胞 の細胞死 と
接着 ・
増殖 因子
片岡之郎 ・藤 田直也 ・鶴尾
マ ウ ス悪 性 丁 リ ンパ 腫 か ら分離 したCS−21細
胞 はin
隆
vitroに
お い て, 単 独 で は増 殖
で き ず に ア ボ トー シ ス を起 こ して 死 ん で い くが , リ ンパ 節 よ り分 離 され た正 常 ス トロ ー マ
CA-12細
胞 か らの 液 性 増 殖 因 子, お よびCA-12細
胞 との 細 胞 接 着 に よ リ増 殖 が 支 持 さ
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れ た 。 そ こで , 細胞 接 着 を阻 害 す るモ ノク ロー ナ ル 抗 体 を製 作 した 結果 ,23K,168K蛋
白 質 を 認 識 す る 抗 体 が 得 られ た 。 この 抗 体 は,CS-21細
以 上 阻 害 す る の み な らず,CS−21細
胞 の1)NA合
胞 とCA-12細
胞 の 接 着 を20%
成 を促 進 し, アポ トー シ ス を 阻 害 す る
こ とが 明 らか と な った 。
は じめ に? 正 常 な 組 織 に お い て不 要 とな った 細胞 は ,
を 目的 と して ,Tリン
パ腫 細 胞 のin vitroで の増 殖 特 性
組織 全 体 の機 能 に影 響 を与 え る こ とな く速 や か に除 去 さ
を 調 べ る過 程 で, そ の 生 死 は リ ンパ 節 由 来 ス トロー マ細
れ る。 この プ ロセ ス で 細胞 は 能 動 的 ・自発 的 な 死pro-
胞 の ア ポ トー シ ス を抑 制 す る 因 子 に コ ン トロー ル され て
grammed cell deathを
ひ き起 こ して い る。 胚 の発 生過
い る こ とを 見 いだ した。 本 稿 で は ,筆 者 らの研 究 成 果 を
程 にお け る細 胞 死 や , 未成 熟 な 免 疫 担 当 細 胞 の ネ ガテ ィ
中 心 に リンパ 節 転 移 形 成 に お け る接 着 因子 , 増 殖 因 子 ,
ブセ レク シ ョンに お け る細 胞 死 が そ の 例 と して あ げ られ
さ らに は そ れ らが 関 与 す る ア ポ トー シ ス の意 義 につ い て
るが , これ らの 死 の 多 くは ア ポ トー シス の形 態 を とる。
述 べ る。
す な わ ち, 核 は 凝 縮 , 断 片 化 し, そ れ と同 時 に 細胞 膜 が
Ⅰ
.
くび れ て細 胞 自体 が 分 断 化 す る こ と に よ りapoptotic
bodyを
リンパ 節 転 移 細 胞 と そ の ア ポ トー シス
形 成 す るが , 細 胞 質 に 含 まれ る ミ トコ ン ドリア
を は じめ とす る オ ル ガ ネ ラは 正 常 に 保 た れ る1)。
1.
ア ポ トー シ ス は正 常 組 織 だ け で な く種 々 の 固形 が ん に
お い て も 自然 発 生 的 に起 こ っ て い る2,3)。
腫 瘍 のサ イ ズは
リ ンパ 節 転 移 性CS-21細
筆 者 らはBALB/cマ
胞 株 の樹 立
ウス に 自然 発 生 した 腫 瘍 を リ ン
パ 節 か ら分 離 し,LymAと
命 名 した
(
図1) 。LymA
が ん細 胞 の増 殖 に よ る増 加 と, 分 化 や死 に よ る減 少 との
の初 代 培 養 は接 着 性 の細 胞CMAと
バ ラ ンス で決 ま るが , が ん 細 胞 の ア ポ トー シ ス の起 こ し
か らな っ て いた4)。接 着 細 胞CMAを
や す さ は, が ん の悪 性 度 を決 定 す る重 要 な因 子 で あ る と
ー ニン グ し,CA-12細
考 え られ る。
植 で腫 瘍 形 成 能 が な く, リンパ節 ス トロー マ細 胞 の形 質
ア ポ トー シス の メ カ ニ ズ ムを 解 明す る こ とは , が ん 転
浮 遊 性 の細 胞CMS
限 界希 釈 法 で ク ロ
胞 を 得 た 。CA-12細
胞 は皮 下 移
を 有 して いた 。 ま た ,浮 遊 細 胞CMSをCA-12細
移 研 究 に も多 くの情 報 を もた らす こ とが期 待 され る。 筆
在 下 にお い て限 界希 釈す る こ とに よ り,CS-21細
者 らは , 腋 窩 リンパ節 に 優 先 的 に転 移 す るマ ウスTリ ン
パ 腫 細 胞 の 転 移 メカ ニズ ムを 分 子 レベ ル で 解 明 す る こ と
ロー ニ ング した 。CS-21細
Shiro Kataoka,Naoya tute of Applied Apoptosis,Adhesion Fujita
,、Takashi Microbiology,The and Growth Tsuruo,
University Factor 東 京 大 学 応 用 微 生 物 研 究 所
T Lymphoma Cells
【アポ トー シ ス】 【接 着 分 子】 【増 殖 因 子 】 【悪 性 丁 リン パ 腫 細胞 】
134
胞を ク
ンパ腫 細 胞 でが
ん 原 性 お よび 転 移 能 を 有 してい た 。
of Tokyo,Yayoi,Bunkyo-ku,Tokyo113,Japan]
of Malignant 胞 は 悪 性Tリ
胞存
(〒113東
京 都 文 京 区 弥 生1-1-1)
[Insti・
マウス悪性Tリ ンパ腫細胞の細胞死 と接着 ・増殖 因子
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図1.Tリン
図2.CS-21細
パ 踵CS-21細
胞の樹立
胞 の増 殖 に 及 ぼすCA-12ス
細 胞 の影 響
CS-21細 胞 をCA-12ス
35
トロー マ
単 独 で (●) あ るい は 前 日にCA-12細
胞 を 播 い て お いた プ
レ ー ト上 で (O) 培 養 した 。 細 胞 は ト リパ ンブ ル ー の排 出 能
図3.CS-21リ
ンパ 腫 細 胞 の 透 過 型 電 子 顕 微 鏡 像
CS-21細 胞 をCA-12細
胞 か ら分 離 した の ち ,0時 間 (A),
24時 間 (B)培 養 した 。Nは 正 常 な 核 を , 矢 印 は 断 片 化 した
で 測 定 した。
核 を示 した 。
2.CS-21細
ト ロー マ細 胞 か ら分 離 した のち ,
胞 の 増 殖 とア ポ トー シ ス
Tリ ンパ 腫CS-21細
て 調 べ た (図2) 。C5-21細
CA−12細
ネ ラは正 常 であ った 。 これ ら の形 態 的 変 化 はWyllieら
胞 の増 殖 特 性 をin vitroに お い
胞 は リンパ節 ス ト ロ ー マ
胞 上 で培 養 す る と, 時 間 依存 的 に対 数 増 殖 し
た 。 こ の と き, ほ とん どのCS-21細
胞 はCA-12細
接 着 してお り, そ の うち の い くつ か はCA-12細
胞に
胞の下
に 潜 り込 ん で い る様 子 が 位 相 差 顕 微鏡 に て観 察 され た。
また ,CS-21細
て ,CA-12細
胞 は そ の 大 き さや接 着 能 の違 い を利 用 し
胞 か らほ ぼ 完 全 に 分離 す る こ とに よ り単
離 が 可 能 で あ る が , 単 離 され たCS-21細
胞 は 単 独 で培
の定 義 したapoptotic cell deathに一
致 して い る1}
。 細
胞 が ア ポ トー シス を起 こ して い るか ど うか を判 断 す る際
に ,生 化 学 的 メル クマ ール と して 染 色体DNAの
ヌク レ
オソ ー ムサ イ ズへ の断 片 化 を 観 察 す る方 法 が よ く用 い ら
れ る6)
。 単離 したCS-21細
胞 を単 独 で培 養 し経 時的に サ
ン プ リン グ し, そ のサ ンプ ルか らDNAを
調 製 し,ア ガ
ロー ス ゲ ル電 気 泳 動 で分 析 した 。 結 果 を 図4に 示 す が ,
CS-21細
胞 はCA-12細
胞 か らの 分 離3時
DNAの
断 片 化 を起 こ して い る。 これ らの 結 果 よ り,
養 す る と生細 胞 の減 少 が 認 め られ た。 顕 微 鏡 観 察 に お い
CS-21細
て も 細胞 が縮 ん で死 滅 して い るの が認 め られ た 。
存 に 必 要 な 何 らか の シ グナ ル を 受 け 取 って い る こ と, こ
筆 者 らはCS-21細
胞 の 死 滅 に伴 う形 態 的 変 化 を さ ら
に詳 細 に調 べ るた め, 透 過 型 電子 顕 微 鏡 に て観 察 した。
図3(B)
はCA-12細
胞 か ら分離24時
胞 か ら生
の シ グナ ルが な い と速 や か に ア ポ トー シ スを ひ き起 こ し
死 滅 す る こ とが 明 らか とな った 。
間 後 のCS-21
細 胞 の電 子 顕 微 鏡 像 を示 して い る。 核 は 凝 縮 し, い くつ
か に 断片 化 してお り, そ れ に 伴 い細 胞 膜 に く び れ が 生
apoptotic bodiesを
胞 は 単 独 では 生 存 で ぎず ,CA-12細
間 後 には
3. 接 着 に よ る アポ トー シ ス の阻 害
CS-21細
胞 の増 殖 はCA-12細
胞 と混 合 培 養 した と き
形 成 して いた 。 一 方 ,細 胞 質じ,
は
に観 察 され た が, そ の増 殖 の シ グナ ル は ど うい った 形 で
凝 集 してい た が , ミ トコ ン ド リアを は じめ とす る オ ル ガ
伝 達 され て い る の で あ ろ うか。 まず 筆 者 らはそ の担 い 手
135
36
蛋 白 質
核 酸
酵 素 VoL38No.2(1993)
表1.
抗CS-21モ
ノ ク ロ ー ナル 抗 体
細 胞上 で 培 養 した とき に比 べ る と低 か った 。 さ らに , 興
味 深 い こ と に は コ ンデ ィ シ ョン ドメデ ィ ウ ムで はCS21細
胞 数 の減 少 は 抑 制 で き て もDNAの
で ぎな い が ,CA-12細
断片 化 は抑 制
胞 存 在 下 にCS-21細
す る と細 胞 数 の 減 少 と と もにDNAの
れ た (図5) 。 す なわ ち ,CS-21細
胞 を培 養
断片化 も抑 制 さ
胞 は単 独 では ア ポ ト
ー シ ス を起 こ して 死 滅 す る が, この ア ポ トー シ ス は液 性
図4.
ア ガ ロー ス ゲ ル 電 気 泳 動 に よ るDNA断
の確 認
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CS-21細
胞 単 独 で0,3,6,12,18,24時
増 殖 因 子 に よる増 殖 シ グナ ル で は 抑 制 さ れ な か ったQ
片化
CS-21細
胞 はCA-12細
胞 と直 接 接 触 す る こ とに よ り生
間 培 養 し, そ
れ ぞ れ の 細 胞 か ら調 製 したDNAを2%0の
ア ガ ロー ス ゲ ル
で 電 気 泳 動 した (レ ー ン2∼7) 。 サ イズ マ ー カ ー と して100
bpのDNAラ
ダ ー (レ ー ン1) を 使 用 した 。
存 シ グ ナ ルを 受 け取 り,初 め て ア ポ トー シ スが 抑 制 され
た6)。
Ⅱ
. 抗 体 に よ る ア ポ トー シ ス の 抑 制
以上 の 結 果 はCS-21細
胞 の完 全 な増 殖 に は, 増 殖 の
シ グナ ル は 与 え るが , 生 存 の シ グナ ル を 与 え な いCA12細 胞 か らの液 性 増 殖 因 子 の ほ か に,CS-21細
CA-12細
胞 と
胞 との細 胞 接 着 を介 した 生存 シ グナ ル の 伝 達
が 必 要 で あ る こ とを示 して い る。 そ こ で, 筆 者 らは まず
CS-21細
図5.CA-12細
胞 に よ るCS-21細
胞 の ア ポ トー シ ス の
抑制
CS-21細 胞 を培 地 単 独 で (レー ン1) ,CA-12細
胞 か らの
コ ンデ ィ シ ョン ドメ デ ィ ウ ム40%
存 在 下 で (レーン2) ,
CS-21細
胞 をCA-12細
胞 上 で 培 養 した と きの コ ンデ ィシ ョ
ン ドメ デ ィ ウ ム40%存
在 下 で (レー ン3) ,CA-12細
胞
(1×105)存 在 下 で (レー ン4) , 培 養 し, そ れ ぞ れ の サ ンプ
ル か らDNAを
調 製 し, ア ガロ
ス ゲル 電 気 泳 動 に てDNA
胞 との細 胞 接 着 を 担 って い る分
子 を 明 らか にす るた め に,CS-21細
胞 膜 表 面 蛋 白質 に対
す る モ ノ ク ロー ナ ル抗 体 (MCS抗
体 ) を作 製 し た7)
。
1.MCS抗
体 に よ る接 着 阻 害
接 着 分 子 を 同 定 す るた め 筆 者 らは ,CS-21細
ラ ッ トに 脾 内免 疫 して8)
,CS-21細
胞 をSD
胞 膜 表 面 蛋 白質 に対
す るモ ノ ク ロ ー ナ ル抗 体 を 作 製 し, そ の後CS-21細
とCA-12細
の断片化を調べた。
胞 とCA-12細
胞
胞 との細 胞 接 着 を 阻 害す る抗 体 を ス ク リー
ニ ン グ した 。 そ の 結 果 , 細胞 接 着 を 阻害 す る モ ノク ロー
と して液 性 増 殖 因 子 の可 能 性 に つ い て 調 べ た 。CA-12
ナ ル 抗 体 が14ク
細 胞 単 独 あ るい はCS-21細
られ た精 製 抗 体 (10μg/ml)は いず れ も正 常 ラッ トIgG
胞 をCA-12細
胞上 で培 養
ロー ン得 られ (表1) , ク ロー ンか ら得
し, そ れ ぞ れ の コ ン デ ィ シ ョン ドメ デ ィ ウ ム を 調 製 し
と比 べ て約20%
た 。 単 離 したCS-21細
とな った (図6) 。CS-21細
胞 とCA-12細
着 に はLFA-1,VLA-4な
ど, さ ま ざ まな 接 着 分子 が関
メ デ ィ ウ ム40%存
に 比 べ てDNA合
胞 を これ らの コ ンデ ィシ ョン ド
在 下 で 培 養 す る と,培 地 単 独 の と き
成 が 促 進 され , また ,細 胞 数 の減 少 も
あ る程度 抑 え られ た 。 こ の傾 向 はCS-21細
胞 をCA-12
の接 着 阻 害 をひ き起 こす こ とが 明 らか
胞 との細 胞 接
与 してい る こ とを 考 慮 す る と, 今 回 作製 した モ ノ ク ロー
ナ ル 抗 体 に よ る接 着 阻 害 効 果 が 約20%と
低 い理 由 は ,
細 胞 上 で培 養 した と き の コン デ ィシ ョン ドメ デ ィ ゥ ムに
これ ら の モ ノ ク ロー ナ ル抗 体 が そ れ ぞ れ1種 類 の接 着分
お い て, よ り顕 著 で あ った。 しか し, そ の程 度 はCA-12
子 の機 能 しか 阻 害 で きな いた め で あ る と考 え られ る。 こ
136
マ ウ ス悪 性Tリ
ン パ腫 細 胞 の 細 胞 死 と接 着 ・増 殖 因 子
37
図6.
精 製 抗 体 各10μg/ml添 加 時 の 細 胞 接 着 阻 害 効 果
各 抗 体10μg/mlと
ラベ ル したCS-21細
胞 とを4。C,1
時 間 反応 させ , そ の後 ,37。C,30分 間CA-12細
胞 と接触
させ ,CA-12細
胞 と接 着 して い るCS-21細
胞数を 測定 し
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た 。 正 常 ラ ッ トIgGを
入 れ た とき のCS-21細
胞 とCA-12
細 胞 との 細 胞 接 着 の割 合 を100%と
して , 各MCS抗
入 れ た とき の 細 胞 接 着 の 割 合 を 表 わ した 。 各MCS抗
ずれ も20%
体を
体はい
以 上 の接 着 阻 害 効 果 を有 して い た。
図7。MCS抗
体 の 抗 原 分 子量 (免疫 沈 降 法 )
CS-21細
胞 膜 表 面 蛋 白質 を ビオ チン 化 し, それ を 各MCS
れ らの モ ノク ロー ナ ル抗 体 に よっ て認 識 され る蛋 白質 の
分 子量 を免 疫 沈 降 法 で決 定 し た と こ ろ,15K,23K,
68Kで
あ った。 免 疫 沈 降 の バ ン ドが そ れ ぞ れ1本
る こ とか ら,CS-21細
VLA-4の
抗 体 で 免 疫 沈 降 して ,ECLで
検 出 した (表1参
1抗 体 は15K,MCS-5抗
体 は168K,MCS-19抗
K蛋
照 )。MCS体 は23
白 質を それ ぞれ 認 識 して い る。
であ
胞 の 接 着 分 子 はLFA-1や
よ うな ヘ テ ロ ダ イマ ーで は な い こ とが 明 ら か
と な った (図7) 。
2.MCS抗
体 に よ るア ポ トー シス の 抑 制
最 近 , リンパ球 の接 着 分 子 は 単 に 細 胞間 や 細胞 と コラ
ー ゲ ン, フ ィ プ ロネ クチン とい った細 胞 外 マ トリ クス蛋
白 質 との 接着 にか かわ る だ け で な く, 細 胞 に種 々 の活 性
化 シ グナ ル を伝 達 し, 調 節 す る シ グナ ル伝 達 能 を も有 す
る こ とが 明 らか とな って い る9)
。 これ らの機 能 の研 究 方
法 と して は, 接 着 分 子 の遺 伝 子 を導 入す る方 法10)
と, 抗
体 が接 着 分 子 の機 能 を 活 性 化 す る リガ ン ドと 同 じよ うな
活 性 を もっ て い る場 合 , そ の抗 体 を添 加 し, 活 性 化 を 測
’定
す る方 法11∼13}
な どが 知 られ て い る
。 今 回 ,MCS抗
体
・
に よっ て 同定 され た 接 着 分 子 に よっ て,CS-21細
胞へ の
生 存 シ グナル の伝 達 が 担 わ れ て い る可 能 性 を 検 討 す る方
法 と して, 後 老 の 方 法 す なわ ちMCS抗
体 が リガ ン ドと
図8.MCS-5,19抗
体に よ る ア ポ トー シス の 抑 制
各 抗 体10μg/mlをCS-21細
胞 に 加 え て ,37。C,48時
間 培 養 した の ち , そ れ ぞ れ の サ ン プル か らDNAを
調 製 し,
2%0ア ガ ロー ス上 で 電 気 泳 動 してDNAの
断 片化 を 調 べ た 。
そ れ ぞ れ の レー ンは ,CS-21細
胞 単 独 で 培 養 した もの (レ
ー ン1) ,MCS-1抗
体 を 加 え た も の (レー ン2) ,MCS-5
抗 体 を 加 え た もの (レー ン3) ,MCS-19抗
体 を加 えた も の
(レー ン4) , 正 常 ラ ッ トIgGを
加 え た もの (レー ン5) ,
CA-12細
胞 か らの コ ンデ ィ シ ョ ン ドメ デ ィウ ム40% を 加え
た もの (レー ン6) , を 示 して い るが , レー ン3と
でDNAの
断 片 化 の 抑 制 が 確 認 され た 。
レ ー ン4
して の活 性 を も って い るか 否 か を検 討 した 。
MCS抗
体 に よ りCS-21細
胞 に生 存 シ グナ ル が 伝達 さ
れ るか 否 か に つ い て は ,CA-12細
胞 とCS-21細
胞 とを
うに , 培 地 単 独 の も のや 正 常 ラ ッ トIgGを
に 比 べ ,MCS-5抗
体 やMCS-19抗
体 を10μg/m1添 加
接 触 させ 培 養 した とき に 調 べ た 方 法 と同 様 に ,CS-21細
す る と,48時
胞 にMCS抗
え られ る こ とが ア ガ ロー ス ゲ ル電 気 泳 動上 に て確 認 され
体 を 作 用 させ た ときにDNA断
片 化 の抑 制
が み られ るか 否 か で検 討 した 。 そ の結 果 , 図8に 示 す よ
間 後 で はCS-21細
加 え た もの
た 。 これ はCA-12細
胞 とCS-21細
胞 のDNA断
片化が抑
胞 とを接 触 して 培 養
137
38
蛋 白 質
核 酸
酵 素 した と きに起 き るDNA断
片 化 阻 害 と同様 な作 用 で あ
る。 この こ とはMCS-5抗
体 やMCS-19抗
認 識 され るCS-21細
CS-21細
Vol38No.2(1993)
体 に よ って
胞 の接 着 分 子 は生 存 シ グ ナ ルを
胞 内 に伝 達 して い る受 容 体 分 子 であ る こ と,こ
れ らの 受 容体 分 子 の生 存 シ グナ ル の細 胞 内伝 達 能 の活性
化 に はMCS-5抗
体 やMCS-19抗
体 がagonisticに
働
い て い る こ とを 示 唆 してい る。
3.MCS抗
体 に よ るCS-21細
こ の よ うにCS-21細
よっ て,CA-12細
胞の増殖
胞 側 の23Kや168Kの
分子に
胞 との 細 胞 接 着 を 介 した 生 存 シ グ ナ
ル の伝 達 が 担 わ れ て い る可 能 性 が 示 唆 さ れ た 。 と こ ろ
で, これ らの接 着分 子 は 生 存 シ グナ ル を 与 え る と同時 に
図9.MCS-5,19抗
合 成 の促 進
体 に よ るCS-21細
各抗 体0.03∼10,μg/mlをCS-21細
間後 のDNA合
成 を1μCi/mlの
の取 り込 み で 測 定 した 。MCS-5抗
した とき の み 濃 度 依 存 的 にCS-21細
胞 のDNA
胞 に 加 え て ,48時
[3H]チ ミジ ンの1時 間
体 ,MCS。19抗
体を添加
胞 のDNA合
成が促進
(△)MCS-19,
(ロ) 正 常
され て い る こ とが 確 認 さ れ る。
細 胞 の増 殖 を ひ き起 こす の か , あ るい は 生存 シ グナ ル の
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み を 与 え てい て 細胞 の増 殖 は ひ き起 こ さな い の か を検 討
(■)MCS-1,
ラ ッ トIgG。
(O)MCS-5,
した 。
MCS-5,MCS-19抗
のCS-21細
体 を0,03∼10μg/ml加え
胞 のDNA合
た とき
成 を [3H]チ ミジ ンの取 込 み
で測 定 した。 そ の結 果 , 正 常 ラ ッ トIgGと
比 べ て, こ
れ ら の抗 体 で は.
濃 度 依 存 的 に 有 意 にCS-21細
DNA合
と168Kの
接 着 分 子 は, 単 にCS一21細
図10.MCS抗
体 とCA-12細
胞 か ら の液 性 増 殖 因 子 との 相 互 作 用
Transwellの
上 室 にCA-12細
胞 を 入 れ , 下 室 にMCS-5(a)
抗 体 ,MCS-19(b)
抗体
(10μg/ml) を 入 れ て ,MCS抗
体 とCA-12細
胞 か ら の 液 性 増 殖 因 子 共 存 下 で のCS-211細
胞 の 生 存 細 胞 数 を , トリパ ンブ ル ー の排 出 能 に よ り4目 間 測定 した 。 対 照 と して ,MCS? 抗 体
の み の もの ,CA-12細
胞 か らの 液 性 増殖 因子 のみ の も の,両 方 と も入 って い な い もの ,CS-21
細 胞 をCA-12細
138
胞1の
成 が促 進 して い た (
図9) 。 この こ とか ら,231K
胞 と接 触 させ て培 養 した もの を と り, 同 じ よ うに4日
間 測 定 した 。
胞 に生 存 の シ グ
マウス悪性Tリ ソパ腫細胞の細胞死 と接着 ・増 殖因子
図11.CS-21細
胞 とCA-12細
ナ ル を与 え て ア ポ トー シス を 抑 制す るだ け で な く,CS-
39
胞 の相互作用モデル
増 殖 が可 能 とな る こ とを 示 して い る (図11) 。
21細 胞 の増 殖 を も ひ き起 こ して い る こ とが 明 らか とな
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っ た。
次 に,CS-21細
お わ りに
胞 に生 存 シ グナ ルを 与 え るMCS-5抗
体 ま た はMCS-19抗
体 と, 増 殖 シ グ ナ ルを 与え るCA-
12細 胞 か ら の液 性 殖 因 子 を 共 存 させ た 際 ,CS-21細
胞
以上 , ア ポ トー シ スに 関 す る最近 の知 見 を
概 説 す る と と もに , リンパ節 転 移 に お け るア ポ トー シス
の意 義 につ い て筆 者 らの 最近 の知 見 を 述 べ た。 現 在 , ア
の増 殖 曲線 が どの よ うに な るか をTranswellを
用 い て
ポ トー シ ス に 関 して精 力的 な 研 究 が 国 際的 に展 開 され て
検 討 した (図10) 。 そ の 結 果 , 下 室 にCS-21細
胞を入
お り, ア ポ トー シス そ の もの の メ カ ニ ズ ムに加 え て ,抗
れ て ,上 室 にCA-12細
小孔を介
が ん剤 と の関 係 や , さ らに は こ こで述 べ た が ん細 胞 の 転
して液 性 増 殖 因子 の み が 行 き来 で き る状 態 に し た と こ
胞 を 入 れ て0.4μmの
移 の プ ロセ ス に お け る臓 器選 択 性 との関 係 に つ い て も,
ろ ,CS-21細
今 後 さ ら に知 見 が広 が って い くもの と思 わ れ る。
胞 はわ ず か な が ら増殖 した。 しか し,CS-
21細 胞 とCA-12細
胞 が接 触 した状 態 で培 養 した と きに
倍 加 時 間 が約16時
間 で増 え て い くの に対 し,CA-12細
胞 か らの液 性 増 存 因 子 の み では 倍加 時 間 が 約4日
文
献
とな っ
1) て い た 。一 方 , 上 室 に何 も入 れ ず に, 下 室 にCS-21細
Duvall,E.,Wyllie,A.H.:Immunol.Today,
7,115-119(1986)
胞 とMCS-5抗
体 ま た はMCS-19抗
れ る と,MCS-5抗
体 を 入 れ た と きに は,CS-21細
独 の と き と同 様 に2日
くが ,3日
体 を10,μg/ml入
目 ま で はCS-21細
2) 胞単
胞 は死 ん でい
(1985)
3) Kerr,J.F.R.
4) 目か らゆ るや か な増 殖 が み ら
れ た 。 しか し, い ず れ の 抗 体 も単 独 で は,CS-21細
CA-12細
入 れ て , 下 室 にCS-21細
MCS-19抗
胞 とMCS-5抗
体 を10,μg/ml入 れ る と,CS-21細
時 間 が 約19時
間 で 増 殖 し,CS-21細
胞を
Exp.Metastasis,6,141-152(1988)
Wyllie,A.H.:Nature,284,555-556(1980)
6) Kataoka,S.,Naito,M.,Fujita,N.,Ishii,H.,
Ishii,S.,Yamori,T.,Nakajima,M.,Tsuruo,
胞 は倍 加
T. : 投 稿 準 備 中
7) を接 触 させ て 培 養 した と き とほ ぼ 同 じ増 殖 が 再 現 さ れ
た。
Fujita,N.,Boku,N.,Kataoka,S.,Naito,M.,
Nakajima,M.
胞
8)
梅 田 真 郷
,Tsuruo,T.
・ 井 上 圭 三
胞 の 増 殖 に は, 増 殖 シ グナ ル を
: 投 稿 準 備 中
: 実 験 医 学
(臨 時 増 刊 号
ノ ク ロ ー ナ ル 抗 体 ),6,61−65(1988)
9) 八 木 田 秀 雄
この こ とはCS-21細
,107,41一
Tsuruo,T.,Oh-hara,T.,Yamori,T.,Tsuka-
5) 体 また は
胞 とCA-12細
:J.Pathol..
goshi,S.,Ishikawa,T.,Sugano,H.:Clin.
胞と
胞 を接 触 さ せ て 培 養 した とき の増 殖 の倍 加 時
間 に は 及 ぼ な か った 。 と こ ろが , 上室 にCA-12細
,Searle,J.
44(1972)
目か ら は ゆ る や か な増 殖 を 示 した 。MCS-19
抗 体 を 入 れ た も の で は1日
Wyllie,A.H.:AnticancerRes.,5,131-136
10) :臨 床 免 疫 ,23,388−400(1991)
Ohno,H.,Nakamura,T.,Yagita,H.,Okumura,K.,Taniguchi,M.,Saito,T.:J.Immunol.,
与 え るCA-12細
与 え る23Kと168Kの
胞 か ら液 性 増 殖 因 子 と生存 シ グナ ルを
接 着 分 子 を 介 した2系 統 の シ グ
ナ ル 伝 達 系 が 関 与 して い て, 両 者 が 存 在 す る と き完 全 な
147,2100-2106(1991)
11) Moretta,A.,Olive,D.,Poggi,A.,Pantaleo,G.,
Mawas,C.,Moretta,L.:Eur.J.Immunol.,
139
モ
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