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痛みの分子機構と Genetic Pharmacobgy

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痛みの分子機構と Genetic Pharmacobgy
痛 みの分子機構 とGeneticPharmacology
伊藤誠二
痛みは外傷や病気に対する生体防御のための有用な警告反応である一方,慢性的な痛み
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はそれ自体が有害な病態をもたらす.慢性的な痛みでは,侵害性刺激に対する閾値が低下
する痛覚過敏反応だけでなく,本来痛みをひき起こさない触覚刺激が痛覚となるアロディ
ニアを発生し,その発生には神経の可塑性が深 く関与している.これまで,痛みの発症機
構について膨大な研究がなされてきたが,分子生物学の進歩によ り,“
生理学”や“古典的
薬理学”から“生化学”や“genetic pharmacology” で書き換えられ,痛みの発生機構
はブームともいえるほど多様な分野の研究者の関心を集めている.本稿では,最近のトピ
ックスに焦点をあて,痛みの分子機構について概説する.
【ア ロ デ ィ ニ ア 】 【プ ロ ス タ グ ラ ン ジ ン】 【神 経 の 可 塑 性 】
genetic pharmacology
は じ め に 炎 症 に よ る痛 み は組 織 障 害 の結 果 , 炎 症 部
合 も多 い . 痛 み は これ まで 多 くの 研 究 者 に よ り詳 細 に
位 で 産 生 され る ブ ラ ジ キ ニ ン , セ ロ トニ ン, ヒ ス タ ミ
検 討 さ れ て きた が ,"geneticpharmacology”
ンや 水 素 イ オ ン な ど の 発 痛 物 質 や プ ロ ス タ グ ラ ン ジ ン
よ り分 子 レ ベ ル で 痛 み の 発 生 機 構 が 解 明 され , こ の よ
の導 入 に
(PG)な ど の 感 作 物 質 に よ りひ き起 こ され る. この よ う
う な 研 究 を 基 に 新 しい 鎮 痛 薬 の 創 製 が 可 能 に な りつ っ
な ‘
感 作 ス ー プ ’は 皮 下 の 自 由神 経 終 末 の 侵 害 受 容 器 を
あ る .’
さ ら に,PET(positronemissiontomography)
活 性 化 し て 痛 み の 信 号 と し て1次 求 心 性 線 維 を 介 し て
やfMRI(functionalmagneticresonanceimaging)
脊 髄 後 角 に 伝 達 さ れ る (図1) . 脊 髄 後 角 に伝 え ら れ た
な ど非 侵 襲 的 方 法 は 高 位 中 枢 で の 痛 み の部 位 の 同 定 を
末 梢 組 織 か らの イ ンパ ル ス は反 対 側 の前 側 索 を上 行 し,
可 能 に した. 本 稿 で は , 誌 面 の 制 約 上 ,"pain” に 関 す
視 床 に 投 射 す る. さ ら に, 大 脳 知 覚 領 に至 り, 痛 み の
る急 激 な 関 心 の 高 ま りに つ い て の 最 近 の トピ ッ ク ス と
認 識 ・識 別 と そ れ に 伴 う情 動 反 応 や 自律 性 反 応 と い う
筆 者 ら が 得 た 最 新 の 実 験 結 果 を交 え な が ら, カ プ サ イ
プ ロ セ ス を た ど る . ア ス ピ リ ン に代 表 され る非 ス テ ロ
シ ン とPGの
イ ド性 消 炎 鎮 痛 薬 は 末 梢 組 織 で のPG産
痛 み の発 症 機 構 に焦 点 を あて, 生 化 学 ・分
生 の抑 制, モ
子 生 物 学 的 見 地 か ら概 説 す る . な お , オ ピオ イ ドに 関
ル ヒ ネ に代 表 さ れ る オ ピ オ イ ド系 鎮 痛 薬 は 中 枢 性 に 作
し て は本 小 特 集 の 佐 藤 , 下 東 の 項 , 痛 み全 般 に 関 して
用 す る と考 え られ て き た が , 神 経 因 性 疹 痛 [
→今 月の
は 他 の 総 説Dを
参照 された い.
Key Words(p.1378) ] で み ら れ る ア ロ デ ィ ニ ア
(allodynia)*1や慢 性 痛 で は従 来 の 鎮 痛 薬 が 効 か な い場
Seiji Ito,
関西 医 科 大 学 医化 学 講 座
versity,Fumizono,Moriguchi,Osaka
Molecular
Mechanism
of
(
〒570-8506守
口 市 文 園 町10-15)
[Department
of
Medical
Chemistry,Kansai
Medical
Uni-
570-8506,Japan]E-mail:[email protected]
Pain
and
Genetic
Pharmacology
1349
Ⅰ
4
蛋自質
核酸
酵素
Vol.44
No.9(1999)
生 理 的 な条件 下 で は, 侵 害
性刺 激 は末 梢 の侵 害 受容 器 を
活性 化 し, 痛 み信 号 と して 中
枢 に伝達 され,警 告 反応 とな
る. 図2に 示す ように, 侵害
受容器 に は, 無髄 のC線 維 *2
を介 して熱, 化学 ,機 械 的 な
多様 な刺 激 に反応 す る ポ リモ
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図1
TTXR:
痛 み の 研 究 に お け る'genetic
pharmacology'と
テ トロ ド トキ シ ン非 感 受 性Na+ チ ャネル ,TTXs:
GluR: グ ル タ ミン 酸 受 容 体 ,SP: サ ブ ス タ ンスP,NKI:
非侵 襲 的測 定
テ トロ ド トキ シ ン感 受 性Na+ チ ャネ ル,
ニ ュ ー ロ キニ ン1受 容 体 ,OR:オ
ピオ
イ ド受 容 体 ,PG: プ ロ ス タ グ ラ ンジ ン,PGS: プ ロス タ グ ラ ン ジ ン合 成 酵 素 ,PGR: プ ロス タ グ
ラ ン ジ ン 受 容 体 ,DRG:
脊 髄 後 根 神 経 節 ,NT: 神 経 栄 養 因 子 ,Trk: 神 経 栄 養 因 子 受 容 体 ,
VRl: バ ニ ロイ ド受 容 体1,VRL-1:
ダー ル受 容器 *3と細 い有髄 の
Aδ 線 維 を介 す る高 閾値 機 械
的受容 器 が あ る. 痛 み をひ き
起 こ さない触覚 や圧 な どの非
バ ニ ロイ ド様 受 容 体1.
侵 害性 刺激 は非 侵 害受 容器 か
ら太 い 有 髄 のAβ
線 維 を介 し て 伝 達 さ れ る . こ の よ う
に , 痛 覚 と触 覚 は 末 梢 か ら脊 髄 に伝 達 す る1次
求心 性
線 維 で 区 別 さ れ る . 病 的 な 条 件 下 で は, 末 梢 組 織 の 炎
症 や 組 織 損 傷 な どで 産 生 遊 離 さ れ る ‘
感 作 ス ー プ ’は ポ
リモ ダ ー ル 受 容 器 を持 続 的 に 活 性 化 し, 侵 害 性 刺 激 に
対 す る 閾 値 を 下 げ て 痛 覚 過 敏 反 応 を ひ き起 こす と と も
に , 触 覚 や 圧 刺 激 に よ り誘 発 さ れ る痛 み (ア ロ デ ィ ニ
ア) を生 じさせ る (
図2) .
1. 侵 害 受 容 器 , バ ニ ロ イ ド受 容 体 遺 伝 子 の ク ロ ー ニ
ング
末 梢 か ら脊 髄 後 角 に投 射 す る1次 求 心 性 線 維 の細 胞
体 は脊髄 後 根神 経節
(dorsal root ganglion;DRG)
に局 在 し, 痛 み に関 与 す るC線
イ シ ン 感 受 性 の 小 型 のB細
Aβ 線 維 は 大 型 のA細
維 やAδ
線 維 は カ プサ
胞 ,触 覚刺 激 に関 与 す る
胞 に由来 す る. カプ サ イ シンは
唐 辛 子 の 辛 み の 成 分 で , 皮 下 に 注 入 す る と痛 み を ひ き
*1
触 覚 や圧 な ど, 通 常 で は痛 み を誘 発 しな い 非侵 害 性 刺 激 に よ っ て 誘 発 され る異 常 な 痛 み を ア ロデ ィニ ア とい う. 坐 骨 神 経 損 傷 に よ
る ア ロ デ ィ ニ ア で は, 神 経 傷 害 に よ っ てNGFな
どの 取 り込 み が 障 害 され ,C線 維 終 末 が 萎縮 ・変 性 し, 本 来C線 維 が 入 力 す べ き
脊 髄 後 角 の第Ⅱ 層 部 にAβ 線 維 が侵 入 す る とい う構 造 的 変 化 が ,1つ の 原 因 と して 考 え られ て い る . また , 急 性 の 炎 症 性 ア ロ デ ィ
ニ ア で は別 の機 構 が 提 唱 され て い る.
*2 神 経 線 維 はそ の伝 達 速 度 か らA,B,C線
維 に分 類 され る.A線 維 :15∼100m/ 秒 ,B線 維 :3∼14m/ 秒 ,C線 維 :2m/ 秒 .A線
維 とB線 維 は有 髄 線 維 で ,C線 維 は無 髄 線 維 で あ る. 痛 み を伝 達 す る1次 求 心 性 線 維 は,A線 維 の う ち伝 達 速 度 の低 いAδ 線 維 と
C線 維 で あ る. 前 者 は鋭 い 痛 み (1次痛 ) を, 後 者 は 鈍 い 痛 み (2次痛 ) を伝 え る と考 え られ て い る.
*3 痛 み を誘 発 す る 刺 激 (熱 , 機 械 的 , 化 学 的 な刺 激 )は侵 害 刺 激 (noxious stimuli) とよ ば れ , 皮 下 の 求 心 性 線 維 の 自 由 神 経 終 末 の
侵 害 受 容 器 (nociceptor) を興 奮 さ せ る. 侵 害 受 容 器 は, 脊 髄 後 根 神 経 節 (DRG) に細 胞 体 を もつ双 極 型 ニ ュー ロ ン の 末 梢 側 軸 索
の 末 端 が 形 態 的 に 特 殊 化 した 装 置 で あ る. ポ リモ ダ ー ル 受 容 器 は, 熱 , 機 械 的 刺 激 , 化 学 的 刺 激 の い ず れ に も応 答 し, 興 奮 を神 経
線 維 に伝 え る侵 害 受 容 器 で あ る.
1350
5
痛 み の 分 子機 構 とGenetic Pharmacology
サ イ シ ン に感 受 性 で ,pHの
低 下 に よ り分 の オ ー ダー で
持 続 的 に活 性 化 さ れ る こ とか ら, 痛 覚 過 敏 反 応 に 関 与
す る と考 え ら れ て きた . カ プ サ イ シ ン は脂 溶 性 で あ り,
受 容体 が存 在 す るのか どうか疑 問視 され ていた が,偶
然 , トウ ダ イ グ サ か ら抽 出 され たresiniferatoxinが
焼
け る よ う な 痛 み を ひ き起 こ す カ プ サ イ シ ン様 活 性 を強
力 に 示 す こ と, カ プ サ イ シ ン と共 通 の ホ モバ ニ リ ン酸
部 分 が 生 物 活 性 を もつ こ とが 明 ら か に さ れ , バ ニ ロ イ
ド (vanilloid)受 容 体 と名 づ け られ た . ご く最 近 まで ,
カ プ サ イ シ ン受 容 体
(= バ ニ ロ イ ド受 容 体 ) と カ プ サ
イ シ ン感 受 性 チ ャ ネ ル は 別 の 分 子 と し て 考 え られ て き
た が3)
,Juliusの
グル ー プ4,5)
は , カ プサ イ シ ンが 細 胞 内
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カ ル シ ウ ム 濃 度 を 上 昇 さ せ る 性 質 を利 用 し て, ラ ッ ト
DRGのcDNAラ
よ りVR1の
は6回
イ ブ ラ リー か ら発 現 ク ロー ニ ング 法 に
ク ロ ー ニ ン グ に 成 功 した . そ の結 果 ,VR1
膜 貫 通 領 域 を もっ838個
子 量95Kの
の ア ミ ノ酸 か らな る 分
蛋 白 質 で , カ プ サ イ シ ン受 容 体 そ の もの が
陽 イオ ン チ ャネ ル で あ る こ とが わ か っ た.VR1はDRG
で 産 生 さ れ , 末 梢 と脊 髄 後 角 に運 ば れ 痛 覚 伝 達 に関 与
図2 末梢 か ら脊 髄 へ の痛 覚 伝 達
す る もの と考 え られ る .VR1は
, カプサ イシンだけで
起 こ す 一 方 , 感 覚 神 経 の 一 時 的 な 脱 感 作 を起 こす . さ
な く42℃ を こ え る と熱 に よ っ て も活 性 化 され る. さ ら
ら に , 生 直 後 の 動 物 の 皮 下 に 注 入 す る と, 痛 み を伝 え
に興 味 深 い こ とに ,pHが7.4か
るDRGのB細
で も活 性 化 さ れ る よ う に な る. この よ う に ,VR1は
胞 とC線
維 やAδ 線 維 を 特 異 的 に破 壊
ら6.4に 下 が る と37℃
カ
し, 痛 み の 感 覚 を永 久 的 に除 去 す る こ とが で き る こ と2)
プ サ イ シ ン, 熱 ,pHで
が 知 られ て い る. 最 近 , 痛 み 物 質 の宝 庫 で あ るDRGの
受 性 が 増 大 す る こ と か ら, ポ リ モ ダ ー ル 受 容 器 の 性 質
cDNAか
を 備 え て い る.VR1の
ら ク ロ ー ニ ン グ され た カ プ サ イ シ ンの 標 的 蛋
活 性 化 され , 炎 症 時 に はそ の感
ア ン タ ゴ ニ ス ト, カ プサ ゼ ピン
白 質 で , 熱 刺 激 を 伝 え る バ ニ ロ イ ド受 容 体1(vanilloid
で ど の 活 性 化 も抑 制 さ れ る こ とか ら, 共 通 の 機 構 で 活
receptor1;VR1)
性 化 さ れ る と考 え られ るが , どの よ う に 活 性 化 さ れ る
が 注 目 を集 め て い る .
組 織 障 害 や 炎 症 部 位 で は虚 血 に 陥 り乳 酸 が産 生 され ,
pHが
低 下 す る.1次 求 心 性 線 維 の神 経 終 末 に は水 素 イ
か は今 後 の 課 題 で あ る.
VR1に
つ いでVR1に
相 同 性 が あるVRL-1(vanilloid
オ ンで 活 性 さ れ る 陽 イ オ ン チ ャ ネ ル の存 在 が 知 られ て
receptor-like-1) が 最 近 ク ロ ー ニ ン グ され た6)
.VRL-
い た . この チ ャ ネ ル の 活 性 化 は サ ブ ス タ ン スP(SP)
1は , カ プ サ イ シ ン や 酸 に反 応 せ ず52℃
や カ ル シ トニ ン遺 伝 子 関 連 ペ プ チ ド (calcitonin gene-
け で 活 性 化 され る特 徴 を もつ . 小 型 のDRGに
related peptide;CGRP)
VR1と
を 遊 離 させ , これ ら の 物 質
異 な り,VRL-1はCGRPを
は局 所 の血 管 を拡 張 させ , 血 漿 の 滲 出 を ひ き起 こす . ブ
胞 や 中 型 か ら大 型 のDRG細
ラ ジ キ ニ ン, セ ロ トニ ンやPGな
DRGに43。Cと52。Cの
どの 発 痛 物 質 や感 作 物
を こえる熱だ
特異 的 な
発 現 して い るAδ 細
胞 に発 現 して い る. ラ ッ ト
異 な っ た 閾 値 を もつ2種
類 の熱
質 は 協 調 的 に侵 害 受 容 器 を 活 性 化 して , 侵 害 性 刺 激 に
活 性 化 イ オ ンチ ャ ネ ル が 存 在 す る とい う報 告 η と も合 致
対 し閾 値 を下 げ て 痛 覚 過 敏 状 態 (hyperalgesia) *4をひ
す る よ うで あ る . バ ニ ロ イ ド受 容 体 以 外 に もプ ロ トン
き起 こ す と考 え ら れ る . この 陽 イ オ ン チ ャ ネ ル は カ ブ
で活 性化 され る陽 イオ ンチ ャ ネル
*4 低 レベ ル の 侵 害 刺 激 に対 して 起 き る過 剰 な痛 み を痛 覚 過 敏 とい う. 持 続 的 な痛 覚 過 敏 反 応 に は細 胞 内2次
リン酸 化 や遺 伝 子 の 転 写 を 伴 っ て お り, プ ロ テ イ ン キ ナ ー ゼCの
(acid-sensingion
メ ッセ ン ジ ャー を 介 す る
γサ ブ タ イ プ (PKCγ ) や プ ロ テ イ ンキ ナ ー ゼA(PKA)
の関
与 が 示 され て い る.
1351
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6
蛋 白質
図3
核酸
酵素
Vo1.44
No.9(1999)
ア ラ キ ド ン酸 カ ス ケ ー ド とPGの
痛 み にお け る役 割
種 々 の刺 激 に よ り細胞 内Ca2+ 濃 度 が 上 昇 す る と ボ ス ホ リパ ー セA2が
酸 は ど の細 胞 ・組 織 に も 共 通 なPGH合
成 酵素
(COX) によ り,PGG2を
成 酵 素 に よ り,PGD2,PGE2,PGF2a,PGIz,TXA2に
変 換 さ れ,そ
活 性 化 され,細
経 てPGH2に
胞 膜 か らア ラキ ドン酸 が 切 り出 され る. ア ラ キ ドン
変 換 され る.PGH2は
組 織 ・細 胞 に特 異 的 なPG合
れ ぞ れ に特 異 的 な 受 容 体 を介 して作 用 す る. 髄 腔 内 投 与 に よるPGの
痛 覚 反 応 を要 約 す る と,PGD2とPGE2は
熱 に対 す る痛 覚 過 敏 反 応,PGE2とPGF2aは
ア ロ デ ィ ニ ア を誘 発 し,PGD2はPGE2の
ニ ア を抑 制 す る. ス テ ロイ ド,ア ス ピ リン な どの 非 ス テ ロ イ ド性 消 炎 鎮 痛 剤 の 作 用 点 は ア ラキ ドン酸 の遊 離 の 抑 制,COXの
こ とが 知 られ て い る.
channe1)
プ に分 か れ る10)
.Vaneら
が ク ロ ー ニ ン グ さ れ て い る8,9)
.
ア ロデ ィ
阻 害 にあ る
に よ り, ア ス ピ リ ン を は じめ
とす る非 ステ ロイ ド性 の 消 炎 鎮 痛 剤 の 作 用 機 序 がPGの
2.
ナ トリウムチ ャ ネル とプ ロス タグ ラ ンジ ンによる
合 成 阻 害 で あ る とい う報 告 が な され て 以 来11)
,PGE、
と
PGI、 が 炎 症 部 位 で発 痛 物 質 とい う よ り, 感 作 物 質 と し
感作機 構
SPやCGRPな
どのペ プチ ドホ ル モ ンや 神 経 伝 達 物 質
て 痛 み に関 与 す る こ とが 知 られ て い る12)
. 熊 澤 ら13)は,
の 多 く は細 胞 内 の 小 胞 に 蓄 え られ , 必 要 に応 じ て 分 泌
ブ ラ ジ キ ニ ン に よ る ポ リモ ダ ー ル 受 容 器 の 感 作 反 応 は
され る の に対 し,PGは
EP3, 熱 刺 激 に よ る 感 作 反 応 はEP2受
蓄 え られ る こ とな く合 成 され る
容 体 を 介 して い
とす ぐ に細 胞 外 に放 出 され , 局 所 ホ ル モ ン と し て 近 傍
る こ とを 示 唆 して い る . 一 方 ,IP受
の 細 胞 に作 用 す る. 図3に
マ ウ ス に お い て , 熱 刺 激 に対 す る痛 覚 過 敏 反 応 を み る
示 す よ う に, 細 胞 膜 か ら遊
離 さ れ た ア ラ キ ドン酸 はPGH合
ゲ ナ ー ゼ ;COX)
路 でPGG2を
成 酵 素 (シ ク ロオ キ シ
ホ ッ トプ レ ー ト試 験 で は , 野 生 型 マ ウ ス と の差 が み ら
に よ り全 身 の ど の細 胞 に も共 通 な 経
れ な い の に対 し , 酢 酸 ラ イ ジ ン グ 試 験 で 反 応 が 消 失 す
経 てPGH2に
変 換 さ れ る .さ ら に細 胞 機
能 に応 じ てPGD2,PGE2,PGF2a,PGI,
サ ンA, (TXA, )が そ れ ぞ れ のPG合
や トロ ン ボ キ
成 酵 素 やTXA合
成 酵 素 に よ り合 成 され る.5種 類 の プ ロ ス タ ノ イ ドに そ
れ ぞ れ の 受 容 体 ,DP,EP,FP,IP,TPが
PGE受
1352
容 体 ノ ッ クア ウ ト
容 体 は さ ら にEP,∼EP、
まで の4つ
あ り,
のサ ブタイ
る こ と か ら,IP受
容 体 は 内 臓 痛 に お け る痛 覚 伝 達 に 関
与 す る こ とが 明 らか と な っ た14)
. そ れ で は,PGは
どの
よ う に して 痛 み の 感 受 性 を増 強 す る の だ ろ う か ?
Na+ チ ャネ ル は細 胞 膜 の興 奮 性 の 制 御 に 関 与 す る こ
とか ら, 組 織 損 傷 や 炎 症 に 伴 う1次 求 心 性 線 維 の 興 奮
性 の増 大 に関 与 す る こ とが 示 唆 され て い る . そ の 理 由
Ⅱ
痛 み の分 子 機 構 とGenetic
sodium
channe1) はDRGに
7
Pharmacology
特 異 的 に発 現 して お り, カ
プ サ イ シ ン処 理 で そ の 発 現 が 低 下 す る こ とか ら, カ プ
サ イ シ ン感 受 性 細 胞 に発 現 し て い る こ とが 明 らか と な
った .EP1,EP3,IP受
容 体mRNAがDRGに
現 し て い る18,19)
こ と か ら,PGE、
強 く発
はcAMP依
存性 に
Na+ チ ャ ネ ル を リ ン酸 化 し , チ ャ ネル 特 性 を修 飾 , 感
作 す る よ うで あ る20)
. 同様 なTTXR
化 機 構 がIPを
Na+ チ ャ ネル 活 性
介 す る感 作 機 構 に も関 与 して い る 可 能 性
が 考 え られ る.
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1. 脊 髄 後 角 で の 痛 み の 伝 達 機 構
C線 維 とAδ 線 維 が 主 と し て 脊 髄 後 角 第1層
図4
カ プ サ イ シ ン 処 理 に よ るDRGと
生 後2日
目 に 溶 剤 (対 照 群 ) (A,C,E) と カ プ サ イ シ ン (B,D,F)
で 処 理 し た4週
齢 の マ ウ ス のDRG(A,B)
後 角 で のFRAPの
活 性 染 色
(C,D)
免 疫 染 色
小 型 のB細
(E,F)
胞 と脊 髄 後 角
維 の 終 末 が 特 異 的 に 消 失 し て い る . 矢 印 はFRAPの
示 す .FRAP:fluoride-resistant
citonin
gene-related
acid
位 置 を
ど の 非 侵 害 性 刺 激 を伝 え るAβ線
維 は 後 角 の 内 側 を腹
側 に 向 か っ て走 行 し, 第Ⅲ ∼Ⅵ 層 の深 層 に終 末 す る.C
線 維 の 脊 髄 後 角 第1層
はSPやCGRPの
と第Ⅱ 層 の 中 枢 側 の 神 経 終 末 に
ペ プ チ ドが 含 まれ て お り, 図4に
示
phosphatase,CGRP:cal-
す よ う に , 生 後 直 後 に カ プ サ イ シ ン処 理 を 行 な う と小
peptide.
型 のB細
胞 がDRGか
ら消 失 し, 脊 髄 後 角 第1層
と して , ① 組 織 損 傷 に伴 い , 痛 覚 過 敏 反 応 の 部 位 で 電
層 で のCGRP含
位 依 存 性Na+
ウム 抵 抗 性 酸 性 ホ ス フ ァ タ ー ゼ (FRAP)
チ ャ ネ ル の 発 現 やmRNAの
れ る こ と, ② 神 経 成 長 因 子
(NGF)
増加 が み ら
に よ り小 型DRG
細 胞 内 でNa+
チ ャ ネル が増 え る こ と, ③PGE、
トニ ン がNa+
チ ャ ネ ル の 感 受 性 を増 大 させ る15}こ とに
よ る .Na+ チ ャ ネ ル は α, β の2つ
やセロ
の サ ブ ユ ニ ッ トか
らな り, チ ャ ネル 活 性 は α サ ブユ ニ ッ トに あ る16)
.DRG
細 胞 で は テ ト ロ ド トキ シ ン (TTX) 感 受 性
非 感 受 性 (TTXR)
と第Ⅱ
層 の 膠 様 質 に 痛 覚 情 報 を伝 え る の に対 し , 触 , 圧 覚 な
の ニ ッス ル 染 色 と腰 髄
とCGRPの
を 示 す . カ プ サ イ シ ン 処 理 に よ りDRGの
のC線
脊 髄 後 角 の 変 化33)
(TTXs) ,
の 少 な く と も2種 類 のNa+
記 録 す る こ と が で き,TTXsNa+
電流 を
チ ャ ネ ル ,TTXR
Na+ チ ャ ネ ル を は じ め , 複 数 のNa+
チ ャネ ル が 発 現 し
量 が80∼90%
∼Ⅱ
減 少 す る. フ ッ化 ナ トリ
も小 型DRG
細 胞 に 特 異 的 で あ り, カ プ サ イ シ ン処 理 で 脊 髄 後 角 浅
層 か ら消 失 す る.SPはDRGだ
け で な く脊 髄 後 角 の 神
経 細 胞 に も含 まれて い るので , カプ サ イ シ ン処 理 で50%
く らい し か 減 少 し な い .
図5に
示 す よ う に , 末 梢 でC線
維 が活性 化 され る と
脊 髄 後 角 の 前 シ ナ プ ス 終 末 か らSPや
グル タ ミン酸 の2
種 類 の興 奮性伝 達物 質 が遊離 され, 脊髄 後 角 の後 シナ
プ ス 細 胞 に 速 い シ ナ プ ス 電 流 と遅 い シ ナ プ ス 電 流 を 惹
起 す る. グル タ ミン酸 受 容 体 はAMPA(2-amino-3-[5-
て い る.TTXRチ
ャ ネ ル は, お もに カ プ サ イ シ ン感 受
methy1-3-hydroxyisoxa201-4-y1]propionic
acid/ カ
性 の 小 型 のDRG細
胞 に 発 現 して い る こ と, その チ ャネ
イ ニ ン酸 とNMDA(N-methy1-D-aspartate)
の イオ
ル 特 性 か ら, 神 経 因 性 疹 痛 に関 与 し て い る こ と が 示 唆
ン チ ャ ネ ル 型 受 容 体 とmGluR(metabotropic
され て いた . ク ロ ー ニ ング され たTTXR
glutamate
は1,957個
Na+ チ ャネ ル
の ア ミ ノ酸 か らな る分 子 量220.5Kの
質 で , 興 味 深 い こ とにTTXs
蛋白
receptor) の代 謝 型 受 容 体 に大 別 さ れ る. 速
い シナ プ ス電 流 は グ ル タ ミン酸 に よ るAMPA受
活 性 化 に伴 うNa+
Na+ チ ャネ ル でTTXの
結 合 に 関 与 す る と考 え られ る芳 香 族 ア ミノ 酸 は セ リ ン
プ ス電 流 はSPに
残 基 に 置 換 さ れ て い る17)
. このTTXR
に加 え て ,AMPA受
PN3/a-SNS(peripheral
subunit
of sensory
nerve sodium
neuron
Na+ チ ャ ネ ル
channel
3 a
tetrodotoxin-resistant
容体 の
の 流 入 に よ り誘 発 され る . 遅 い シナ
よ る ニ ュ ー ロ キ ニ ン1(NK1)
受容体
容 体 に よ る脱 分 極 でMgブ
ロック
が 解 除 され 活 性 化 され るNMDA受
る 電 流 も含 ま れ て い る (図5) .C線
容 体 やmGluRに
よ
維 を興 奮 さ せ る 程
1353
8
蛋 白質
核酸
酵素
Vol.44
No.9(1999)
プ ス細 胞 の 興 奮 性 を 弱 め る こ
とで 鎮 痛 効 果 を発 揮 す る もの
と考 え られ て い る26)
. γ一ア ミ
ノ酪酸
(GABA)
や グ リシ ン
と い っ た 抑 制 性 ア ミ ノ酸 も 同
様 の機構 で脊 髄神 経細 胞 の興
奮 性 を調 節 し て い る . この よ
うに1次
求 心 性 のC線
す るSPや
維 を介
グ ル タ ミン酸 が 急 性
痛 や痛 覚 過敏 反応 の発症 に関
与 す る こ とが 示 唆 され てい る.
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2.
ノ ッ ク ア ウ トマ ウ ス を 用
いた痛 み の研 究
これ まで受 容体 拮抗 薬 や抗
体 を用 い て 得 ら れ た 実 験結 果
は , 図1に
示 す ように ノ ック
ア ウ トマ ウ ス で 相 次 い で 確 認
図5
脊 髄 後 角 の シナ プス終 末 で の伝 達 と感 作機 構
神 経 終 末 はSPや
グ ル タ ミ ン酸
(Glu)な どの 神 経 伝 達 物 質 を 含 み , さ ま ざ ま な 前 シ ナ プ ス 受 容
体 が そ の 遊 離 を調 節 して い る . 後 シ ナ プ ス 膜 に は , さ ま ざ ま な 受 容 体 や チ ャ ネ ル が 存 在 し, 興
奮 性 と抑 制 性 にイ
云達 を調 節 す る . 後 シ ナ プ ス 神 経 細 胞 が 活 性 化 され る と,NO( 一 酸 化 窒 素 )や
PGが 産 生 され る と同 時 に受 容 体 の リン酸 化 に よ り細 胞 が 感 作 さ れ る .
さ れ , 痛 み の 発 生 機構 と生 体
因 子 の 役 割 が 明 確 に な りつ つ
あ る.NGF(nerve
growth
factor) や そ の 受 容 体TrkA
の ノ ッ ク ア ウ トマ ウス で は,C
度 の 刺 激 を く り返 す と, 脊 髄 後 角 ニ ュ ー ロ ンの 反 応 が
線 維 が 特 異 的 に 消 失 し, 熱 に対 す る痛 覚 過 敏 反 応 が 消
増 大 す る , い わ ゆ る ワ イ ン ドア ッ プ現 象21)は, 海 馬 で
失 す る の に対 し,NT-3(neurotrophin-3)
み られ る長 期 増 強 と同 じ現 象 で ,NMDAやNK1受
体TrkCの
容
体 拮 抗 薬 で 抑 制 さ れ る こ とか ら, 遅 い シ ナ プ ス 電 流 が
関 与 して い る こ とが わ か る. 最 近 ,NMDA受
は プ ロ テ イ ン キ ナ ー ゼCだ
ノ ッ ク ア ウ トマ ウ ス で は 痛 覚 反 応 は正 常 で
あ り, 触 覚 刺 激 に 異 常 が で る こ とか ら, 図2に
容 体22・23) 理 的 な 条 件 下 でC線
け で な くTrkBやSrcな
ど
や その 受容
示 す生
維 が 痛 覚 ,Aβ 線 維 が 触 覚 を介 す
る こ とが 証 明 さ れ た27)
. 古 典 的 オ ピ オ イ ド受 容 体 は μ,
の チ ロ シ ン キ ナ ー ゼ に よ り リ ン酸 化 され , チ ャ ネ ル 活
κ, δ の3種 類 が知 られ て いた が , モ ル ヒネの 鎮 痛 作 用 ,
性 が 調 節 され る こ とが 報 告 され て い る. 一 方 ,AMPA
耐 性 , 嗜 好 性 は い ず れ も μ 受 容 体 を 介 す る こ とが 明 ら
受 容 体24)はLyn-MAPK(mitogen-activated
か に され た28)
. しか しなが ら,SPと
kinase) を活 性 化 してBDNF(brain-derived
protein
neurotro-
そ の 受 容 体NK1に
関 し て は痛 み に 関 す る 実 験 結 果 は報 告 に よ り異 な っ て
phic factor) の 発 現 を増 強 させ る こ とが 報 告 さ れ て い
い る . 詳 細 は 他 の 総 説1)を 参 照 さ れ た い . 筆 者 ら は
る. ま た , カ イ ニ ン 酸 受 容 体 を 介 す る 電 流 は , ①
NMDA受
AMPA受
ウ ス やPGD合
容 体 を介 す る電 流 に比 して 弱 い こ と, ② 脱 感
容 体 ε1,ε4サ ブ ユ ニ ッ トの ノ ック ア ウ トマ
成 酵 素 (PGDS) の ノ ッ ク ア ウ トマ ウ ス
作 が 早 い こ と な ど か ら, カ イ ニ ン酸 受 容 体 の 役 割 が 不
を 用 い て初 め て 明 らか と な っ た 興 味 あ る知 見 を 得 て い
明 で あ っ た が , よ い拮 抗 薬 が で きた こ とか ら, 最 近 , カ
る の で 紹 介 す る.
イ ニ ン酸 受 容 体 も痛 み に 関 与 す る とい う報 告25)が な さ
れた.
1354
脊 髄 レベ ル で 痛 覚 過 敏 反 応 に関 与 す る証 拠 も蓄
積 し て い た こ とか ら, 筆 者 ら は脊 髄 レベ ル に お け るPG
モ ル ヒ ネ は μ オ ピ オ イ ド受 容 体 を 介 し て シ ナ プ ス終
末 か ら グル タ ミ ン酸 やSPの
PGが
分 泌 を抑 制 した り, 後 シナ
の 痛 覚 反 応 に お け る役 割 を調 べ た . 無 麻 酔 下 に 雄 マ ウ
ス の第5,6腰
椎 間 にPGE2を
髄 腔 内 投 与 す る と, 熱 刺
痛 み の 分 子機 構 と Genetic
激 に対 す る 痛 覚 過 敏 反 応 だ け で な く非 侵 害 性 触 覚 刺 激
で さ ま ざ ま なPGが
が ア ロ デ ィ ニ ア を誘 発 した . 触 覚 刺 激 に反 応 す る部 位
与 して い る の か を 区 別 す る こ とは 困 難 で あ った .PGDS
は , 側 腹 部 , 下 肢 , 尾 部 に 限 局 し, 顔 面 , 上 肢 を刺 激
の ノ ッ ク ア ウ トマ ウ ス を用 い る こ と に よ り, 検 出 限 界
して もア ロ デ ィ ニ ア の 反 応 は 生 じな い . 髄 腔 内 投 与 の
以 下 の 超 微 量 の生 理 的 なPGの
PGF2.
め て の 例 で あ る.
もア ロ デ ィ ニ ア を誘 発 したが , 痛 覚 過 敏 反 応 は
ひ き起 こさな か った . 一 方 ,PGD2は
痛 覚 過 敏 反 応 と ア ロ デ ィニ ア を誘 発 で き るの はEP受
体 の サ ブ タ イ プ に よ る. この こ とは, 現 在EP受
産 生 さ れ る こ とか ら, どのPGが
これ ま で ,PGE2やPGF2。
痛 覚 過 敏 反 応 をひ
き起 こす が , ア ロ デ ィ ニ ア は誘 発 し な か った .PGE2が
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9
Pharmacology
関
役 割 が 明 らか に され た 初
の ア ロ デ ィニ ア は, い ず
れ も グ ル タ ミ ン酸 受 容 体 (GluR) 拮 抗 薬 で 抑 制 され る
容
容体 の
こ とか ら, グ ル タ ミ ン酸 が ア ロ デ ィニ ア に 関 与 す る こ
とが 示 唆 され て いた .NMDA受
容 体 には ζ, ε1∼ε4の
ノ ック ア ウ トマ ウ ス を 用 い て確 認 さ れつ つ あ る. 図3に
5種 類 の サ ブ ユ ニ ッ トが 存 在 し, どの サ ブ ユ ニ ッ トが 関
要 約 す る よ う に, 髄 腔 内 投 与 す る こ とに よ りPGが
与 す る か は 不 明 で あ っ た . 図6e,fに
脊髄
PGE2の
か った .PGD2とPGE2は
の ノ ッ ク ア ウ トマ ウ ス で 野 生 型 と 同 じ よ う に誘 発 さ れ
異 性 体 で あ り, 反 対 の生 物 作
用 を 示 す こ とが 多 い. 筆 者 らは す で に,PGD2はpgオ
ー ダー でPGE
ア ロ デ ィニ ア はNMDA受
示 す よ う に,
レ ベ ル で痛 覚 伝 達 に対 し て 多 様 な作 用 を示 す こ とが わ
容 体 ε4サ ブ タ イ プ
た の に対 し, ε1サ ブ タ イ プ の ノ ッ ク ア ウ トマ ウ ス で 消
、の ア ロデ ィニ ア を抑 制 す るが ,PGF2。
の
失 した . 一 方 ,PGF2。
の ア ロ デ ィニ ア は ε1サ ブ タ イ プ
ア ロ デ ィニ ア は抑 制 しな い こ とをす で に報 告 して い る29)
.
の ノ ッ ク ア ウ トマ ウ ス で は影 響 され な い の に対 し, ε4
PGDSに
サ ブ タ イ プ の ノ ッ ク ア ウ トマ ウ ス で 消 失 し た. こ の よ
は脳 型
(リポ カ リン 型 ) と脾 臓 型 の2種
知 られ て い る が , 今 回 , 脳 型PGDSの
ウ ス を用 い てPGD2の
討 し た .PGDSの
PGE2の
類が
ノ ッ ク ア ウ トマ
ア ロ デ ィ ニ ア に 対 す る役 割 を検
ノ ッ クア ウ トマ ウ ス で は, 予 想 外 に,
う に,NMDA受
容 体 ε1と ε4サ ブユ ニ ッ トの ノ ック ア
ウ トマ ウ ス を 用 い る こ とでPGE2やPGF2aの
ア ロデ ィ
ニ ア の 違 い が 明 らか に な っ た .
ア ロデ ィニ アが 誘 発 されず ,fgオ ーダ ーのPGD2
をPGE2と
同 時 投 与 す る こ とに よ りPGE2の
アロ ディ
ニ ア を誘 発 す る こ とが で きた30)
. さ ら に,DP作
膜 透 過 性cAMP誘
導 体 をPGE2と
動 薬や
同 時 にPGDSの
ノ
3.
ア ロ デ ィ ニ ア と 神 経 可 塑 性:C線
維 は ア ロデ ィ ニ
ア に 関 与 しな い の か
ア ロ デ ィニ ア は 末 梢 組 織 の 治 癒 後 に も , 長 期 に わ た
ッ ク ア ウ トマ ウ ス に 投 与 す る こ と に よ りア ロ デ ィ ニ ア
り持 続 す る慢 性 痛 で 触 覚 刺 激 で誘 発 され る こ とか ら, こ
が誘 発 さ れ, 反 対 に,DP拮
の 発 症 に は脊 髄 後 角 にお け る神 経 可 塑 性 [
→ 今 月 のKey
抗 薬 でPGE2の
アが 抑 制 された . これ らの結 果 はPGD,
ア ロデ ィニ
の作 用 はDP受
Words(p.1378) ] 変 化 が 深 く関 与 して い る もの と考 え ら
容 体 を 介 し て い る こ と を 示 し て い る が , この こ とは 今
後DP受
容 体 ノ ック ア ウ トマ ウ ス を用 い て 確 認 す る予 定
で あ る . さ ら に,PGD2の
GABAが
作 用 に は, 抑 制 性 の ア ミノ酸
介 在 す る 可 能 性 が 示 さ れ,PGD2の
や 嗅 覚 に お い て もGABAが
れ る.C線
維 とAβ 線 維 が 主 として 脊 髄 後 角 第Ⅰ 層 と第
層 の 膠 様 質 に 痛 覚 情 報 を 伝 え る の に 対 し, 触 , 圧 覚
Ⅱ
な ど の 非 侵 害 性 刺 激 を 伝 え るAβ
線 維 は第Ⅲ ∼Ⅵ 層 の
睡 眠作 用
深 層 に終 末 す る. した が っ て , 触 覚 刺 激 を伝 え るAβ 線
関 与 す る可 能 性 を示 唆 す る
維 を介 す る 触 覚 情 報 が 痛 覚 情 報 とな る に は 可 塑 性 変 化
もの で あ る.
が 必 要 と な っ て く る.Woolfら
以 上 の 結 果 は ,fgと い う極 微 量 のPGD2がPGE2の
トに お い て , 一 部 のAβ
は, 坐 骨 神 経 損 傷 ラ ッ
線 維 が 脊 髄 後 角 の 第Ⅱ 層 の 膠
ア ロ デ ィ ニ ア の 誘 発 に 必 要 で あ る こ と, 反 対 にpgの
様 質 に まで軸 索 を 伸 ばす こ と31)
, またAβ
PGD2はPGE2の
末 にSPを
PGD、
ア ロ デ ィ ニ ア を抑 制 す る こ と か ら,
は二 相 性 に ア ロデ ィ ニ ア の 誘 発 に 関 与 す る こ とが
明 らか に な っ た . 従 来 ,PGの
作 用 は 外 部 か らPGを
投
線 維 の神 経 終
産 生 す る よ う に な る こ と32)を示 し, 脊 髄 後
角 に お い てAβ
線維 の情 報 伝達 回路 網 の変化 や神 経伝
達物 質 の発 現 の変化 に よる器質 的 可塑性 が ア ロデ ィニ
与 す る こ と に よ り多 彩 な薬 理 学 的 効 果 が 示 され , ア ス
ア の 要 因 で あ る と報 告 した . これ まで , 触 覚 刺 激 がAβ
ピ リ ン を は じ め とす る 非 ス テ ロ イ ド性 鎮 痛 抗 炎 症 剤 は
線 維 を介 す る こ とか ら, 一 般 的 にア ロデ ィニ ア もAβ 線
COX−2の
維 を 介 す る と考 え られ て きた . しか しなが ら,Woolfら
酵 素 活 性 を 阻 害 す る こ とか ら,PGの
関与 が
示 唆 され て き た が , 全 身 ほ とん どす べ て の臓 器 ・細 胞
が 報 告 した 神 経 損 傷 に お け る ア ロ デ ィ ニ ア は, 数 週 間
1355
10
蛋 白質 核 酸 酵 素 Vo1.44 No.9(1999)
た . 図4に
示 す ように,痛 覚
を伝 達 す るC線
維 に局 在 す る
FRAPとCGRPが
脊 髄後 角
表 層 か ら消 失 し て い る こ と を
確 認 した. つ いで,髄 腔 内投
与 したPGD2とPGE2の
熱刺
激 に対 す る痛 覚 過 敏 反 応 を ホ
ッ トプ レ ー ト試 験 で検 討 した .
図6a,bに
示 す よ うに , 対 照
群 の マ ウ ス で は生 理 食 塩 水 投
与 で は15.3,15.6秒
の潜 時
で 熱 刺 激 に 反 応 す るの に対 し,
PGD2,PGE2髄
腔 内投 与群
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で は, い ず れ の 場 合 で も,9.
2,8.3秒 と潜 時 が短 縮 し, 痛
覚 過 敏 反 応 が 生 じて い る. カ
プ サ イ シ ン 処 理 群 で は,
PGD2,PGE、
髄 腔 内投 与 で ,
22.1,21.1秒
と潜 時 が 延 び ,
生 理 食 塩 水 投 与 群 と有 意 な差
が な くな り, 痛 覚 過 敏 反 応 に
は 予 想 どお り, カ プ サ イ シ ン
感 受 性 のC線
維 が 介 在 して い
る こ とが 確 か め られ た . 次 に ,
カ プ サ イ シ ン 処 理 がPGE2と
PGF2aに
よ り誘 発 さ れ る ア ロ
デ ィ ニ ア に どの よ う に影 響 す
る か 検 討 し た . 図6c,dに
図6 カ プ サ イ シ ン 処 理 マ ウ ス に お け るPGに
(a,b)PGD21ng(a)
,PGE210ng(b)
す よ う に ,PGF2aに
よる痛 覚 過 敏 反応 と ア ロデ ィ ニ ア
または生理食塩水
(a,b)を カ プサ イ シ ン処 理 し たマ
示
よ るアロ
デ ィ ニ ア は カ プ サ イ シ ン処 理
ウ ス と しな い マ ウ ス の髄 腔 内 に投 与 して 熱 刺 激 に対 す る 痛 覚 過 敏 反 応 をみ た. (c,d)PGE210
ng(c) ま た はPGFza1μg(d)
を カ プ サ イ シ ン処 理 した マ ウ ス と し な いマ ウ ス の髄 腔 内 に投 与
し てア ロ デ ィ ニ ア反 応 を み た . (e,f)PGE210ng(c)
また はPGF2aleg(d)
をNMDA受
容体
ε1サ ブユ ニ ッ トノ ッ ク ア ウ トマ ウス (ε1KO) , ε4サ ブユ ニ ッ トノ ッ ク ア ウ トマ ウ ス (ε4KO) ,
に よ り ま っ た く影 響 さ れ な か
っ た が ,予 期 せ ぬ こ と に,
PGE2で
はカ プサ イ シ ン処 理 を
野 生 型 マ ウ ス の髄 腔 内 に 投 与 し て ア ロ デ ィニ ア 反 応 を み た .
した 場 合 , ア ロ デ ィニ ア が ま
っ た く誘 発 さ れ な くな っ て し
か か る ゆ っ く り した 可 塑 性 変 化 を 示 唆 す る も の で あ る
ま っ た .PGE2に
が , 炎 症 性 の ア ロ デ ィニ ア は1時
citatory postsynaptic
筆 者 ら はPGE2とPGF2aに
ニ ア の 作 用 機 構 が1次
求 心 性 線 維 の 違 い に よ るの で は
な い か と考 えた . そ こで,C線
に , 生 後2日
間 以 内 に生 じて くる.
よ り誘 発 さ れ るア ロ デ ィ
維 の 関 与 を検 討 す る た め
目 の マ ウ ス に カ プ サ イ シ ン処 理 を行 な い,
C線 維 を除 去 した マ ウ ス で ア ロ デ ィニ アの 実 験 を行 な っ
1356
よ り 活 性 化 さ れ る 誘 発EPSC(excurrent) が カ プ サ イ シ ン感 受 性
で あ るの に対 し,PGF2、 に よ り活 性 化 され る誘 発EPSC
は カ プ サ イ シ ン非 感 受 性 で あ る こ と, 自発 的 ミニ ア チ
ュアEPSCの
放 出頻 度 はPGE2に
よ り促 進 され たが , そ
の特性 は変化 しなか った .
これ ら の こ と か ら, マ ウ ス の 脊 髄 ス ラ イ ス を 用 い た
Ⅲ
痛 みの 分 子 機 構 とGenetic
表l
PGE2とPGF2aの
ア ロデ ィニ ア誘 発機 構 の違 い
11
Pharmacology
脊 髄 の 後 角 に集 中 して お り, カ プ サ イ シ ン 処 理 で そ の
結 合 活 性 が 消 失 す る こ とか ら, こ れ ま で の 実 験 結 果 と
合 致 す る.
ご く最 近 ,Noc/OFQ前
とPGE2の
駆 体 蛋 白 質 上 にNoc/OFQ
痛 覚 過 敏 反 応 とア ロ デ ィ ニ ア を抑 制 す る17
個 の ア ミノ 酸 か ら な る新 規 生 理 活 性 ペ プ チ ドが 存 在 す
る こ と を見 い だ し, ノ シ ス タチ ン と名 づ けた37)
. さ らに,
電 気 生 理 実 験 でPGE2が
感 受 性 の1次
た .PGE2が
前 シナ プス性 に カプサ イ シ ン
求 心 性 線 維 を 活 性 化 す る こ とが 示 唆 さ れ
前 シ ナ プ ス性 に作 用 す る こ とはPGE2の
ア
ロ デ ィ ニ ア が モ ル ヒネで 抑 制 され るの に対 し,PGF2aの
ア ロデ ィニ ア は 抑 制 され ない こ とか ら も支 持 され ,PGE2
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とPGF2aの
ア ロ デ ィニ ア の 誘 発 機 構 の 違 い は , 表1に
PGE2やPGF2aの
ア ロ デ ィニ ア が グ ル タ ミ ン酸 に よ る
興 奮 性 伝 達 の活 性 化 に よ るの に対 し,Noc/OFQの
アロ
デ ィニ ア は グ リ シ ン に よ る抑 制 性 伝 達 の 脱 抑 制 に よ る
こ とが 判 明 し た36)
.
PGD2は
で もin
ヒ ト, サ ル だ けで な くげ っ歯 類 の 中 枢 神 経 系
vivo,in vitroと も に 生 成 さ れ る 主 要 な ア ラ キ
要 約 され る よ うに , ① カ プサ イシ ン処 理 , ②NMDA受
ドン酸 代 謝 物 で あ る. 生 理 的 な 条 件 下 で は,PGD2が
容 体 ε1と ε4サ ブ タ イ プ の ノ ッ ク ア ウ トマ ウ ス, ③ モ
因 性 に 非 侵 害 性 触 覚 刺 激 に よ り誘 発 さ れ る ア ロ デ ィ ニ
ル ヒネ と④PGD2に
対 す る感 受 性 か ら, 伝 達 経 路 の違
ア が 生 じ な い よ う痛 覚 伝 導 に お い て 重 要 な役 割 を 果 た
い に よ る こ とが 明 白 とな っ た . これ らの 結 果 は , ア ロ
し て い る と類 推 で き る . ノ シ ス タ チ ン は ウ シ 脳 だ け で
デ ィ ニ ア にC線
な くヒ ト脳 や髄 液 に検 出 され て い る38)
が ,Noc/OFQと
維 を 介 す る もの が あ る こ と, そ し て ア
内
ロ デ ィニ ア に は モ ル ヒネ に感 受 性 の もの と非 感 受 性 の
同 じ前 駆 体 蛋 白質 上 に あ る こ と か ら , そ れ らの 産 生 が
もの と少 な くと も2種 類 あ る こ とが 示 され た33)
. これ ま
どの よ う に調 節 され て い る の か 興 味 あ る と こ ろで あ る .
で , 脊 髄 レベ ル で の ア ロ デ ィニ ア の発 症 機 構 はC線
オ ピオ イ ドペ プ チ ド と そ れ ら の 鎮 痛 の 分 子 メ カ ニ ズ ム
Aβ 線 維 が と も に 投 射 す る 広 閾 値 神 経 細 胞
dynamic
rangeneuron)
維,
(wide
につ い て は本 特 集 の佐 藤 , 下 東 の総 説 を参 照 され た い.
の感 受 性 の 充 進 に よ る と提 唱
され て きた が , 最 近 ,Aβ 線 維 が 介 在 ニ ュ ー ロ ン を通 じ
て シ ナ プ ス 前 性 にC線
維 を活性 化す るシナプス前相 互
作 用 モ デ ル34)も提 唱 さ れ て い る.前 者 はPGF2aの
デ ィ ニ ア , 後 者 はPGE2の
アロ
ア ロデ ィニア に対応 す るよ
この よ う に , 末 梢 組 織 か ら の 痛 み の シ グ ナ ル が 脊 髄
に伝 達 ・変 換 さ れ て 高 位 中 枢 に 伝 え られ るが , 痛 覚 と
ア ロ デ ィニ ア は どの よ うに 区 別 さ れ るの だ ろ うか ? こ
う に思 わ れ る.
れ まで , マ ウ スや ラ ッ トを 用 い た 動 物 実 験 にお い て , 痛
4.PG系
と オ ピオイ ド系 の痛 覚 伝 達 制 御 機 構 の 相 互 作
み 様 行 動 が 反 射 で な くな ぜ 痛 み と し て 捉 え られ る の か
と い う素 朴 な疑 問 を投 げ か け られ る こ と も あ っ た . 最
用
最 近 , オ ピ オ イ ド系 とPG系
は脊 髄 レベ ル に おい て 密
近 ,PETやfMRIを
用 い て ヒ トの 大 脳 皮 質 の どの部 位
接 に痛 覚 伝 達 の 制 御 に関 与 して い る こ とが わ か っ て き
が ア ロ デ ィ ニ ア や 痛 覚 に関 与 し て い る の か とい う研 究
た1)
. オ ピオ イ ド受 容 体 μ,x, δの類 縁 体 であ るORL1
が進 み つつ あ るので,簡 単 に紹介 す る.
(opioid receptor-like1)
receptor
subtype
あ る い はROR-C(ratopioid
C) 受 容 体 の 内 因 性 の リガ ン ド と し
カ プ サ イ シ ン を 皮 内 に注 入 し, 数 分 後 に誘 発 さ れ る
痛 覚 過 敏 反 応 と痛 み が 消 失 し た の ち に 誘 発 さ れ る ア ロ
て 単 離 同 定 さ れ た ノ シセ プ チ ン/オ ー フ ァニ ンFQ(Noc/
デ ィニ ア が どの よ う に 大 脳 の 活 動 に影 響 す る か , ヒ ト
OFQ) は17個
の ボ ラ ンテ ィア を用 い てPETで
の ア ミノ 酸 か ら な るペ プ チ ドで , 鎮 痛 作
検 討 され て い る39)
.図
用 を有 す る これ ま で の オ ピ オ イ ドペ プ チ ド とは 反 対 に,
7は , 脳 を水 平 面 に 輪 切 りに した 断 面 を下 位 か ら上 位 に
髄 腔 内 投 与 したNoc/OFQは
並 べ て い るが , 図7aの
痛覚過 敏 反応 とアロデ ィ
ニ ア を誘 発 した35,36)
.PGD2はPGE2だ
OFQの
けで な くNoc/
ア ロ デ ィ ニ ア を抑 制 す るが ,PGD2結
合 活 性が
急 性 痛 で は痛 み の 認 識 に関 係 す
る知 覚 領 (SI)
, 視 床 , 島 が 活 性 化 され て い る のに 対 し,
図7bの
ア ロ デ ィニ ア で はSIと
と も にSⅡ が 両 側 性 に
1357
12
蛋 白質 核 酸 酵 素 VoL44 No.9(1999)
刺激 の侵害 受容 器 は非選択 的
な 陽 イ オ ンチ ャ ネ ル で あ る こ
とが判 明 した. この こ とは, 聴
覚 , 視 覚 な ど他 の 感 覚 と同 様
に, 痛 覚 も イ オ ン チ ャ ネ ル と
ホ ル モ ン受 容 体 を介 し て 中 枢
に伝 達 さ れ , 脳 の あ る特 定 の
領 域 で 認 識 さ れ る とい う図 式
が 描 け る こ とを 意 味 す る . こ
こ で 紹 介 した よ う に , 末 梢 組
織 で の 侵 害 受 容 器 ,1次 求 心
性 線 維 でのNa+
チ ャ ネル に よ
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る感 作 機 構 , 脊 髄 後 角 に お け
る痛 覚 伝 達 ・変 換 機 構 , さ ら
に 高 次 中枢 に お け る痛 み の 認
識 と各 部 位 で の キ ー プ レ イ ヤ
ー が揃 いつ つあ る.個 々の神
経伝 達物 質 や神経 栄養 因子 や
受 容 体 サ ブ タ イ プ を欠 損 さ せ
た ノ ッ クア ウ トマ ウ ス を用 い
た 実 験 は, これ まで の“classical pharmacology”
で蓄 積 さ
れ た 実 験 結 果 を確 認 す るだ け
で な く, 予 期 し な い 結 果 も も
た ら して い る . 痛 み の 薬 理 実
図7 大 脳 で の カ プ サ イ シ ン に よ る 痛 み
カ プ サ イ シ ン投 与 直 後
(a)と 約40分
(A) と ア ロ デ ィ ニ ア
連 面 (intercommissural plane)
床 ,GC:
後 頭 頂 皮 質 ,SⅠ :第1体
帯 状 回 ,PCu:
か ら上 方 へ の 距 離
(mm)
で あ る .INS:
性 感 覚 野 ,SⅡ
験 は 簡 便 で もあ り, 明 瞭 な 実
(B) の 認 識 部 位39)
後 に ア ロ デ ィ ニ ア が 生 じ た と き (b)のPE丁
:第2体
島 ,Pu:
像 。 数 字 は交
被 殻 ,Th:
性 感 覚 野 ,LPi:
視
験 結 果 が得 られ る こ とか ら, ノ
ッ ク ア ウ トマ ウ ス の 導 入 に よ
下 頭
り, 急 性 痛 や 痛 覚 過 敏 反 応 の
頂 小 葉 .
機 構 は さらに飛躍 的 に解明 さ
活 性 化 さ れ て お り, 両 者 で 認 識 が 異 な る こ とが わ か る .
一 方で は
, 痛 覚 と ア ロ デ ィ ニ ア で 活 性 化 さ れ る部 位 の
一 部 が 重 な る こ と も示 して い る
.PETやfMRIは1回
の 実験 が 高 価 で あ るが , これ か ら痛 み の 認 識 機 構 を解
明 す る うえ で 重 要 な 手 段 と な ろ う .
れ る で あ ろ う. そ し て , ア ロ デ ィニ ア の 発 生 , 認 識 機
構 や モ ル ヒネ耐 性*5, 嗜 好 性 といっ た可 塑 性 変 化 が今 後
の 重 要 な 課 題 で あ る.
昨 秋 , ロサ ン ゼル スで 第28回
北 米 神 経 科 学 会 が開 催
され , 多 くの 研 究 者 , 製 薬 会 社 が 痛 み の 研 究 に 取 り組
ん で い る 現 状 を 目 の 当 た り に して , 古 代 ギ リシ ャ の ヒ
ポ ク ラテ スの 「
痛 み を制 す る は 神 の 業 な り」 と い う言
お わ り にVR1受
*5 癌 患 者 の3分
容 体 の ク ロー ニ ン グ の 結 果 , 酸 や 熱
の2以
葉 は , 現 在 ,“ ヒ トの 業 ” に な りつ つ あ る感 が す る. し
上 は中 程 度 か ら重 度 の 痺 痛 を有 して お り, モ ル ヒ ネ な ど に よ る捧 痛 緩 和 治 療 が 現 在 行 な わ れ てい る. しか しな
が ら, モ ル ヒネ の 長 期 投 与 に よ っ て, 多 くの 患 者 で はモ ル ヒネの鎮 痛 効 果 に 対 して耐 性 が 起 き る. そ の分 子 機 構 と して は,PKCな
どに よ る受 容 体 蛋 白質 の 修 飾 を介 した構 造 変 化 と機 能 低 下 , 受 容 体 の 細 胞 表 面 か らの 消失 (細 胞 内 陥 入 ),NMDA受
シナ プ ス 回 路 の 可 塑 性 的 変 化 な どが考 え られ て い る.
1358
容 体 を介 した
痛 み の 分 子機 構 とGenetic
たが って, 日本 にお いて も学 際的な痛 みの研 究 グル ー
プの形 成 と緩和 治療 の積 極 的な取 り組 みが急務 である.
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