蛋白質核酸酵素:超遠心機の安全な運転を願って

解 説
超遠心機の安全な運転 を願って
小泉正博
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は じめ に7年
前 の 日航 ジ ャ ンボ機 の大 惨 事 の 原 因 は
学 機 器 のな か では 比 較 す る もの もな い ほ どの 超 高 速 で回
金属 製 の圧 力 隔 壁 に生 じた 亀 裂 が 原 因 とされ て い る。 亀
転 す る重 い部 品 を も って い るの で， 事 故 の 程 度 は 大 規 模
裂発 生 の遠 因 は 着 陸 時 の損 傷 で あ った。 ま た ，英 国航 空
に な ら ざ るをえ な い。 こ こ数 年 の 間 に お い て も， ユ ーザ
の ジ ェッ ト機 の墜 落 事 故 以 来 ，航 空機 事 故 の多 くが 金 属
ーか ら， 大 事 故 に至 らな い まで もそ れ に 近 い 種 々の 事 故
疲労 と関連 して発 生 して い る。 この よ うな損 傷 あ る いは
の例 が 報 告 され て い る。 そ れ ら のな か に は 使 用上 の 誤 り
金 属 疲 労 に原 因 す る航 空 機 事 故 は ， 超 遠 心機 を使 用 して
に 起 因 す る もの も多 く含 まれ て い る。 さ ま ざ ま な研 究 施
い る研 究 者 に と っ て は身 近 な問 題 であ る。
設 で さ ま ざ まな メー カー の機 器 の 破 損 事 故 を ，管 理 者 か
わ れわ れ の周 辺 に実 に さ ま ざ ま な科 学 測 定 機 器 が 存 在
ら聞 く機 会 が 多 い。 最 近 の超 遠 心 機 は 防護 装 置 が完 全 で
す る よ うに な っ た が， 金 属 の塊 を超 高 速 で回 転 させ る事
あ る の で ， よほ どの ミス が重 複 しな いか ぎ り， 人 身 事 故
例 は ，超 遠 心 機 に 限 られ るで あ ろ う。 最 近 の一 層 の高 速
は まず 起 こ りえ な い。 しか し， い った ん 事 故 が 起 こ る
化 の要 望 に応え て， 最 高 回 転 数 は10万rpmに
と， ユ ー ザ ー の貴 重 な サ ンプ ル を失 い， さ ら に修 復 に伴
達 しよ
う と して い る。 生 物 化 学 あ る い は分 子 生 物 学 の 領域 に お
う費 用 は数 百 万 円 の金 額 とな る場 合 が少 な くな い。 思 わ
い て は， 超 遠 心 機 は 日常 の研 究 に不 可 欠 な もの とな って
ぬ 出費 が 必 要 に な り他 者 の研 究 に も支 障 が お よぶ の で，
き てお り， 多 くの 研 究 室 や 生 産 現 場 で 超 遠 心機 が 活 用 さ
事 故 を起 こ した 研 究 者 の精 神 的 そ して場 合 に よ って は 経
れ て い る。 した が っ て， 使 用 者 の使 用 経 験 の 程 度 は 幅 広
済 的 な負 担 は著 しい。 また ， 事 故 に至 らな い ま で も以 下
い。 取 扱 い 説 明 書 を 片 手 に操 作 す る初 心者 の数 も少 な く
の よ うな 事 例 も耳 に して い る。 ① 超 遠 心 機 の チ ャ ンバ ー
な いは ず であ る。
（ロ ー タ室 ）内 に赤 い液 体 （臭 化 エ チ ジ ウム）が よ く こび
りつ い て い る，② ロー タの蓋 を 上 下逆 に して運 転 し た ，
最 近 の超 遠 心機 は マ イ ク ロプ ロセッ サ ー の組 み 込 み に
よ り取 扱 いが簡 便 とな り， 運 転 の安全 性 も著 し く向上 し
③ 前 任 者 が 辞 め た の で ，使 用 記 録 帳 （log book） が 見 あ
てい る。 した が って ， メ ー カ ー側 か らの操 作 指 導 も ，経
た らな い ， ④ 記 録 帳 の 記 載 が 不 完 全 ， あ るい は 行 な わ れ
験 の 少 な い 人 に も容 易 に 操 作 で き る装 置 とい うこ とを 前
て い な い。
提 と して 行 な って い る。 しか し， 最近 で は， 基 本 的 な 使
いず れ の機 器 に お い て も使用 者 に 一 定 の モ ラル が要 求
用 法 が 無視 され る， あ る い は メー カ ー側 の 想 定 を 大 き く
さ れ るが ，超 遠 心機 の場 合 に は 上述 の よ うな 性 格 上 か
逸 脱 す る事 例 が 増 え て きて い る。 メー カ ー側 と しては ，
ら， 一 段 と厳 しい モ ラル が確 立 され て い る こ とが必 要 で
この よ うな状 況 に対 応 して安 全 性 を 高 め て い く必 要 が あ
あ る。 多 くの 超 遠 心機 の 管理 者 あ るい は 責 任 者 か ら，
"ど う管 理 教 育 を行 なえ ば よい のか ” とい うご相談 を 受
る が， 運 用 す る側 での 安 全 性 に 対 す る配 慮 が なけ れ ば 事
故 の絶 滅 を 期 待 で き な い。 こ の点 で も，航 空機 の 場合 と
け る。 筆 者 は ベ ックマ ン製 品 だ け に か か わ らず ，広 くす
事 情 が似 て い る と いえ よ う。
べ て の超 遠 心機 メー カ ー の製 品 の事 故 例 も考 慮 に 入 れ
て ，基 本 的 な ロー タ取 り扱 いや 破 損 事故 を未 然 に防 ぐた
超 遠 心 機 の取 扱 い に お い て基 本的 な ミスが あ る と， 科
Masahiro Koizumi，べ
ツ ク マ ン （株 ）科 学 機 器 事 業 部 営 業 企
(Japan)Ltd.,Sanbancho Comments on Safe Operation of
画 部
（〒102東
京 都 千 代 田 区 三 番 町6番
地 ） ［Beckman Instruments
6,Chiyoda-ku,Tokyo102,Japan]
Ultracentrifuge
【超 遠 心 機 】 【安 全 】 【事 故 防 止 】 【ロー タ】
181
Ⅱ
82
蛋 白 質
核 酸
酵 素 VoL38No.2（1993）
うに表 示 され る。 超 遠 心機 に お い ては ，駆 動 部 と ロ ー タ
が 一 体 とな っ て動 作 す るの で ， 駆 動 お よび 制 御 部 分 の特
性 も あわ せ て検 討 され る。 と く に， 開 発 す るべ き ロ ー タ
と駆 動部 につ い て の振 動 分 析 （vibrational analysis） が
重 視 され る。
コ ン ピ ュー タ に よ る モ デル 実 験 と並 行 して ， 冶 金 工 学
研 究 室 で は金 属 材 料 につ い て の 研 究 を 行 な って ， ロ ー タ
の材 料 とな る合 金 や 採 用 す る熱 処 理 の 方 法 を 決 定 す る。
合 金 につ い て は， 試 験 片 を 使 って 実 際 の応 力試 験 を 実 施
して， 引 張 強 度 （抗 張 力） や破 砕 強 度 が調 べ られ る。 一
方 ， 製 造 技 術 者 は そ のロー タ の製 造 工 程 を何 度 も検 討 す
る。
次 に， プ ロ トタイ プ ・ロー タが 作 られ ， そ れ に対 して
非 破 壊 お よび 破 壊 の 両 試験 が行 な わ れ る。 要 塞 の よ うに
堅 固 な コ ン ク リー ト製 の建 物 の 中 で ，金 属 疲 労 に よ る寿
定 角 ロ ー タが 運 転 に 際 して 受 け る応 力 の
モデ ル 実 験 に よ る予 想
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図1.固
命 を 評 価 す るた め に 最 高 回転 速 度 で の運 転 試 験 が何 度 も
く り返 され る。 さ らに ，特 別 の試 験 用 遠 心 機 で そ の ロ ー
め の 注 意 事 項 に 関 す るセ ミナ ー を各 所 で行 な っ て きた 。
タの 許 容 回 転速 度 以上 で故 意 に破 壊 す る。 この破 壊 試 験
本 稿 では ， そ の よ うな経 験 に立 っ て， 超 遠 心 機 の安 全 な
（single-cycle burst test）の過 程 を ， ビデ オ テ ー プ に 記
運 転 に役 立 つ 情 報 を 提 供 した い。 まず ， ベ ッ クマ ン社 に
録 して ， そ れ を も とに ロー タ の物 理 的 な破 砕 限 界 と周 囲
お け る ロー タ開 発 状 況 を 紹 介 す る。 製 造 者 側 で の高 度 の
の 障 壁 の 防 護 効果 を調 べ る。 防 護 効 果 は接 線 方 向 と鉛 直
安 全 へ の配 慮 の み な らず ， それ で も使 用 者 側 に充 分 な安
方 向 に対 して徹 底 的 に検 討 され る。 これ は運 転 中 に ロ ー
全 へ の配 慮 が 要 求 され る超 遠 心機 ロー タ の特 殊 性 を 読 み
タが 破 砕 され て も， 断 片 が遠 心 機 内 に"封
取 って い た だ きた い。 次 に ， ロー タ の正 しい使 用 と保 守
る こ とを確 認 す る た め で あ る。 この よ うに， 遠 心 機 本 体
に つ い て解 説 す る。
は も と よ り，個 々の ロー タ の開 発 に お い て も， ユ ー ザ ー
じ込 め ” られ
へ の安 全 対 策 を常 に考 慮 してい る。
Ⅰ
．
ロ ー
タ の 開
発
他方 ， ア プ リケ ー シ ョ ン研 究 室 で は， 実 際 に こ の プ ロ
トタイ プ ・ロー タを 使 って ，分 離 の対 象 とな る こ とが 予
自 然 科 学 や 医 学 分 野 で の バ イ オ テ ク ノロ ジ ー の 研 究 機
想 され る種 々の試 料 を遠 心 し， 取 扱 い上 の 問題 点 や 分 離
関 や 企 業 の 需 要 に 応え て ， 種々 の ロ ー タ の 開 発 が 行 な わ
結 果 の 良 し悪 しに つ い て検 討 す る。 こ の結 果 に よっ て は
れ て い る 。 市 場 で の 需 要 が 見 込 ま れ る と， 新 たに 開 発 す
タの設 計 か ら も う一 度 や り直 さ な けれ ば な らな い場
ロー
る べ き ロ ータ の設 計概 念 が提 起 され ， そ の実 現 可 能 性 が
合 もあ る。厳 格 な基 準 にす べ て合 格 した もの だ け が市 販
多 角 的 に 検 討 され た の ち， 実 際 の ロー タ の 設 計 が 始 ま
品 と され る。 もち ろ ん， 製 造 工 程 で も ロー タ は各 製 造 段
る。
階 で厳 し く検査 さ れ る。 製 品 と して の ロー タが 完 成 す る
は じ め に ， コ ン ピ ュ ー タ エ イ デ ッ ド デ ザ イ ン （computer-aided design；CAD）
シ ス テ ムを 使 っ て コ ン ピ ュ
ー タに よ るモ デ ル 実験 が行 なわ れ る
。設計者は基本的 な
と， 品 質管 理 の た め の最 終 試 験 が実 施 され る。 ロー タ の
バ ラ ンス や 最 高 回 転 で の安 定 性 な ど厳 しい検 査 を受 け て
合 格 した もの だ け が市 場 に 出 され る。
設 計 条 件 を コ ン ピ ュー タ に 入力 す る。 コ ン ピ ュ ー タは あ
ら か じ め 与 え られ た プ ロ グ ラ ム に 従 い 自 動 的 に 設 計 計 算
を 行 な い ， ブ ラ ウ ン管 上 に 結 果 を 図 形 と し て 表 示 す る 。
さ ら に ， 二 次 元 お よ び 三 次 元 有 限 成 分 解 析 （two-andthree dimensional finite element analysis）
細心 の設 計 と試 験 を経 て生 まれ た ロー タ で も， 使 い方
の よ うな技
術 を 併 用 して ， 開 発す る ロー タ が運 転 の際 に実 際 に受 け
る と 予 測 さ れ る応 力
182
（stress； 後 述 ） の 分 布 が 図1の
よ
を誤 れば ， 役 に立 た な いば か りか ， そ の寿 命 を 著 し く短
くす る。 これ を避 け るた め に も，ロー タ の限 界 につ い て
充 分 に知 って お い て ほ しい もの で あ る。
83
超遠心機の安全な運転を願 って
起 こす よ うにな る。 ロー タに 生 じ る応 力 が 弾 性 限 界 に ど
の くら い近 いか （どの く らい の 回 転 速 度 でロー タを 運 転
して い た か）， また ， 交 互 に起 こ る"伸 び ” と"ゆ るみ ”
の 応 力 サ イ クルを 何 回 ，経 験 した か （
何 回 ， ロー タを 運
転 した か ） に よ って 時 間的 な違 い は あ る もの の ， この 小
さな 変 化 は つ い に は 微 細 な亀 裂 （crack） とな っ て 現 わ
れ る。 ロ ー タの 使用 を続 け る こ とで， この 微細 な 亀 裂 は
だ ん だ ん と大 き くな って い き， つ いに は ロー タ は破 損 す
図2.ロ
ー タ の 素材 と して用 い られ る典 型 的 な合 金 に
つ い て得 られ た応 力 ∼ひ ずみ プ ロ ッ ト
る。 これ が ロ ー タの金 属疲 労 （metal fatigue） で あ る 。
超 遠 心用ロー タ と他 の低 速 ロー タ とで ベ ッ クマ ン社 の
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保 証 （warranty） の内 容 が 異 な って い る。 これ は金 属 疲
1． 応 力 （stress）
労 の 問題 を考 慮 して い るか らで あ る。 超 遠 心 機 用 の高 性
物 体 は 外 力 に よ っ て変 形 す る と， そ れ に 抵 抗 す る 内力
能 ロー タ の 多 くは， ロー タを 作 って い る合 金 の弾 性 限 界
を 物 体 内部 に 生 じる。 物 体 内 に 仮想 面 を 考 え る と， そ の
付 近 に お い て運 転 で き る よ うに 設 計 され て い る。 そ のた
面 上 では 内 力 は 外 力 と釣 り合 って い る。 この よ うな 面 に
め に， この種 の ロー タ では 一 定 の運 転 回 数 と運 転 時 間 を
おけ る単 位 面 積 あ た りの内 力 を 応 力 （stress）と よん で
越 え る と金 属疲 労 に よ る破 損 の可 能 性 が で て くる。 した
い る。 高 速 回 転 に よ っ て発 生 す る遠 心 力 は ロ ー タ内 に，
が っ て， ロー タ の使 用 頻 度 や 運 転 条 件 が 保 証 の際 に考 慮
応 力 を 生 じさせ る。 図2は ， ロー タ合 金 につ い て の応
され る。 他 方 ， 通 常 の遠 心機 の ロ ー タで は 素 材 合 金 の弾
カ ーひ ず み 線 図 で あ る。ひず み （strain）
とは ，外 力 に よ る
性 限 界 の は るか 内側 で のみ 使 用 され る。 した が って ， こ
物 体 の変 形 量 と物 体 の元 の長 さ との比 であ る。 図2中 ，
の種 のロー タ の保 証 にあ た って は ， 使 用 回 数 や 時 間 に関
応 力 の増 加 に 比 例 して ひ ず み も増 加 して い る直 線 部分 を
係 な く単 に ロー タ購 入 か らの 年 月 の み が 考 慮 され る。 す
弾 性 領 域 （elastic region） と よぶ が， この 領域 で は 荷 重
な わ ち， ロー タ使 用 の有 無 に か か わ らず ， あ る一 定 の期
を 取 り除 け ば伸 び 変形 は 消 失 し， ロー タ合 金 は も との形
間 が 過 ぎれ ば 交 換 しな け れ ば な らな い。
に回 復 す る。 した が って， こ こでの 変形 は あ くま で可 逆
釣 な 変 化 にす ぎず ，弾 性 変 形 とよば れ る。 しか しなが ら
固 体 が 永 久変 形 す る こ とな しに耐 え る こ との で き る最 大
，
応 力， す なわ ち弾 性 限 界 （elasticlimit）
は材 質 に よ っ て
決 ま って い て， これ を超Yる
と，降伏 点 （yielding point）
3．
応 力 腐 食
湿 式 あ るい は 塩 化 セ シ ウム な どの化 学 薬 品 に よ って 生
じ る 腐 食は,ア
ル ミニ ウム製 の ロー タに と って は最 大 の
敵 で あ る 。 腐 食 の 結 果 と し て 生 じ る"く
ぼ み （pitting）”
に達 して ，加 重 を 除 い て も形 状 や 寸 法 が 永 久 変 形 し て
は ロ ー タ の 質 量 分 布 を 変 化 さ せ る の で ， 通 常 な ら耐 え る
しま う。 この降 伏 点 を 超 え た 領 域 を 塑 性 領 域 （plastic
こ と の で き る 応 力 で も 耐aえ られ な く な る 。 た と え ば ， 水
region） とよぶ 。 遠 心 力に よっ て生 じる応 力 が弾 性 限 界
平 ロ ー タ の バ ス ケ ッ ト底 面 の よ う に 大 き な 応 力 が 生 じ
を超え る よ うな こ とが あ る と， ロータ合 金 の微 細 構 造に
る と こ ろ で"く
亀 裂 が 生 じる可 能 性 が あ る。 ひ とた び 亀裂 が 生じ る と，
的 に 荷 重 が 増 加 す る こ と に な り， い わ ゆ る 応 力 集 中 部
そ のロー タ は破 損 した に等 しい。 ベ ッ クマ ンで は， この
（stress concentrator）
種 の ロー タ の破 損 を避 け る た め に各 ロー タ に つ い て， 許
を 続 け る と 亀 裂 が 生 じ， つ い に は そ の バ ス ケ ッ トは 破 損
容 回転 速 度 と試 料 溶液 の許 容 密 度 を厳 密 に規 定 して い る 。
カミ形 成 さ れ る 。 こ の 状 態 で 使 用
す る 。 こ の 応 力 と腐 食 の 組 合 せ が 応 力 腐 食
rosion）
2． 金 属 疲 労
ぼ み ” が で き る と， こ の 部 分 で は 局 部
（stresscor-
で あ る 。 応 力 腐 食 は ア ル ミニ ウ ム 製 ロ ー タ を 破
損 さ せ る最大 の原 因 で あ る。
いか な る構 造 の金 属 で も く り返 して加 速 を 受 け て応 力
を頻 繁 に受 け る と， そ れ が 仮 に 弾性 限 界 内 で あ って もい
Ⅲ
．
ロー タ の正 しい使 用法 と保 守
つ か は破 損 す る。 ロ ー タが 加 速 して設 定 速 度 に 到 達 した
の ち， 減 速 して 停 止 に 至 る まで を一 つ のサ イ クル とす る
ベ ッ クマ ン社 の ロー タは ，個々 の ロ ー タの 取 扱 い 説 明
と， こ のサ イ ク ル の く り返 しに よ って生 じる ロ ー タ合 金
書 で許 容 して い る最 大 量 を 充 填 して最 高 回 転 速 度 で運 転
の"伸 び ” と"ゆ るみ ” は ， そ の 微細 構 造 に 変 化 を ひ き
す る こ とが で き る。 最 高 許 容速 度 をえ
た 遠 心 な ど過 大
183
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蛋 白 質
核 酸
酵 素
vol.38No.2（1993）
な 応 力 を生 じさせ る よ うな運 転 は， た とえ1回 か ぎ りで
あ っ て も ロー タ の寿 命 を 縮 め る 原 因 とな りうる。 それ ゆ
え ， 各 ロー タ の取 扱 い 説 明 書 に記 載 され た 事 項 は絶 対 に
守 らな けれ ば な ら な い。 高密 度 溶液 や プ ラ ス チ ッ ク ・ア
ダプ タ， あ る いは ス テ ン レス製 チ ュー ブを使 用 す る場 合
には 必 要 に 応 じて 減 速 させ て運 転 しな けれ ば な ら な い。
この よ うな 場 合 に は ，設 計 に さい して 想 定 しな か った 質
量 分 布 とな るか ら であ る。 ま た， 水 平 ロー タ につ い て は
バ ケ ッ トを か け ず ， あ るい は バ ラ ンス を正 確 に とっ て い
な い状 態 で の運 転 は 許 され な い。
最 新 のベ ック マ ン社 の床 置型 の超 遠 心 機 で は ，バ ラ ン
ス の許 容 値 を5mlあ
る い は10％
以 内 の いず れ か 大 き
い ほ う と規 定 され て い る。試 料 が 同 じ密 度 の場 合 に は ，
目分 量 のみ の チ ェ ッ クで運 転 を 行 な う こ とが 可 能 で あ
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る。 駆 動 部 の耐 震 強 度 が 向 上 した た め に ， この よ うな こ
とが可 能 にな った 。 他 方 ， ア ンバ ラ ンス の検 出 限 界 は初
期 加 速 時 にお い て のみ 可 能 であ り，1，000rpm以
下 で回
転 して い る段 階 で作 動 す る よ うに製 作 され て い る。 これ
ぱ， 試 料 の装 着 が ア ンバ ラ ンス の 許 容値 を越 え て い る ，
あ る い は反 対 側 に チ ュー ブを 入 れ 忘 れ た とい った初 歩 的
図3．
悪 い ブ ラ シ （a） と良 い ブ ラシ （b）
な取 扱 い ミス に よる事 故 を 防 止 す る た め の も の で あ
る＊１
して保 証 され て い る の で ロー タ 日誌 は 必 要 な い 。 そ の ロ
0
ベ ッ クマ ン社 の超 遠 心 用 ロー タ には ， オ ーバ ー ス ピー
ド ・デ ィス クが装 着 され て い て， 運 転 者 の 誤 操 作 や 装 置
ー タ の購 入 日を ノー トな どに記 録 して保 存 して お く こ と
が必 要 で あ る。
の不 調 で ロー タ の 回 転 が最 高 許 容 速 度 や 最 大 加 速 率 を 超
ロー タ は チ タ ンあ る いは ア ル ミニ ウ ム合 金 で 作 られ て
え な い よ うに な って い る。 した が っ て， 運 転 者 は ロー タ
い る が， これ ら の金 属 材 料 は 比 較 的 軽 量 で高 強 度 で あ
底 面 の裏 側 に適 正 な デ ィス クが 装 着 され て い るか を 確 認
る。 チ タ ン合 金 は ア ル ミ合 金 と比 較 す る とは るか に腐 食
す る と と もに ， デ ィス クに傷 や 汚 れ が つ い てい な いか ど
を 受 け に くい が ，高 価 で あ る。 塩 化 セ シ ウ ムや 臭 化 カ リ
うか を 調 べ な くて は な らな い。 ま た，ロー タ の種 類 と使
ウム の よ うな腐 食 性 の塩 溶 液 を 頻 繁 に 使 う場 合 は ， チ ダ
用頻 度 に よ って は最 高 回 転速 度 を10%ほ
ど減 速 して使
ニ ウ ム製 ロー タを 選 ぶ べ き で あ る。 ベ ッ クマ ン社 で は ，
用 す る こ とが あ るが ， この よ うな場 合 に は デ ィス クも相
す べ て の ア ル ミニ ウム製 ロー タ に陽 極 電解 処 理 を 施 し
当す る もの に 交換 す る必要 が あ る。 安 全 運 転 を 行 な うた
て ， ロー タ表 面 に酸 化 ア ル ミニ ウム の 不 動 態 被 膜 を形 成
め ， ま た保 証 や交 換 の 問題 も あ る の で，ロー タ 日誌 に は
さ せ， 腐 食 か ら ロー タを保 護 して い る 。 しか し， この皮
きち ん と記 録 す る こ とがた いせ つ であ る。
膜 が破 れ る と容易 に腐 食 され る。 ロー タ表 面 に 引 っか き
他 方 ，通 常 の遠 心機 の ロー タ で は回 転 に 際 して の空 気
傷 な どをつ け な い よ うに充 分 に 注 意 を は ら う べ き で あ
抵 抗 や ロー タ重 量 に よる駆 動 力 制 限 に よ っ て危 険 な 一 過
る。 した が って， 使 用 後 の ロー タの洗 浄 や 清 掃 に あ た っ
性 の過 速 状 態 に陥 らな い よ うに な っ て い る。 しか し，ロ
タ の寿 命 は 過 速 に よ り短 くな る こ と が 考え ら れ る
ーの
で ，運 転者 は遠 心 条件 の設 定 の際 には ロ ー タの 回 転 速 度
ては 予 防 措 置 が 必 要 で あ る。 第 一 に ， ロ ー タバ ケ ッ トを
洗 浄 す る際 に は図3aに
示 した よ うな 通 常 の毛 先 の とが
った ブ ラ シは 絶 対 に 使 用 して は な らな い 。 こ の種 の ブ ラ
を適 切 に設 定 す る こ とがた いせ つ であ る。 この 種 の ロ ー
シの 先 端 部 の 針金 の鋭 利 な切 り 口は ，酸 化 ア ル ミニ ウ ム
タは使 用 頻 度 や運 転 条件 で はな く， あ る一 定 の 期 間 に対
の被 膜 を た や す く損 傷 す る か らで あ る。 図3bに
＊1"オ
ー トバ ラ ン ス” とい う表 現 を 耳 に す る こ とが あ る。 これ は 数千rpm程
ベ ッグ
度 の 低 速 の 遠 心 器 に お い て ， バ ラン ス を と る こ とに
それ ほ ど注 意 を は らわ な くて も よ い 場 合 に 国 内 メ ー カ ー に よ って 用 い られ て い る 。 規 定 値 を超 え た ア ンバ ラ ン スを 積 極 的 に 補
償 す る機 構 が つ け られ て い る わ け で は な い。 ま して や ， 超 遠 心 機 に お い て こ の種 の機 能 を 期 待 す る こ と は 無 理 な こ とで あ る。
184
超遠心機の安全な運転を願 って
85
マ ン社 か ら 販 売 さ れ て い る ロ ー タ 穴 と バ ケ ヅ ト洗 浄 用 の
ブ ラ シ を 示 した 。 針 金 部 分 は プ ラ ス チ ッ ク で 被 覆 さ れ て
お り， 針 金 の 先 端 部 は 後 方 に 折 り曲 げ られ て い る。 ぜ ひ
と も， この 種 の ブ ラ シを使 用 して もら いた い。
ま た ，ア ル カ リ性 洗 剤 は 酸 化 被 膜 を 腐 食 す る の で ，使 用
を避 ける
（放 射 能 汚 染 を 浄 化 す る の に 使 わ れ る洗 剤 は 強
ア ル カ リ性 で あ る ）。 ベ ッ ク マ ン社 の"Solution 555” の
よ うな 緩 や か な洗 剤 は酸 化 被 膜 を壊 さな い 。 腐 食 性 の溶
液 が ロ ー タ に 付 着 した 場 合 に は ， た だ ち に 洗 浄 しな け れ
ば な ら な い 。 ア ル ミニ ウ ム 製 の 水 平 ロ ー タ や 固 定 角 ロ ー
タ を使 っ て ， キ ャ ップ な しの チ ュ ー ブで 塩 化 セ シ ウ ムな
どの塩 溶 液 を 遠 心 す る場 合 には ， 使 用後 に ロー タを と く
に 入 念 に洗 浄 す る必 要 が あ る。 す べ て の塩 類 は ， ロ ータ
図4．
ロー タ の破 損 に よ って 生 じた 損 傷 の状 況
に 付 着 さ せ た ま ま に して お く と腐 食 の 原 因 と な る の で ，
付 着 した 場 合 に は 必 ず 洗 い 流 さ ねば な ら な い 。 た だ し ，
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水 平 ロ ー タ の バ ケ ッ トは 水 に 漬 け て 洗 浄 し て も よ い が ，
ロー タ主 体 を 洗 浄 や 水 の 中 に つ け て は い け な い。 鉤 掛 け
機構
（hanger mechanisms）
は 乾 燥 に 対 して は 強 い が ，
水 に対 して は 容 易 に腐 食 す る と とも に， い った ん こ の部
分 に 水 が つ い て し ま う と乾 燥 が 非 常 に 困 難 で あ る 。 固 定
角ロー
タは水 に 漬 け て洗 浄 して よ い。 洗 浄 後 ， 固 定 角 ロ
ー タ と垂 直 ロ ー タ は 蓋
（1id） と プ ラ グ （plug） を は ず し
た 状 態 で乾 燥 す る ま で逆 さ に して置 い て お く。 水 平 ロ ー
図5．
パ ケ ッ トの 内 壁 に 腐 食 に よ っ て 生 じ た 多 数 の 窪
タ は バ ケ ッ トキ ャ ッ プ （bucket cap） を は ず し た 状 態 で
置 い て お く。 ロ ー タ は よ く乾 燥 した 机 の 上 な ど に 置 く
剤 を ロ ー タ表 面 に 塗 りつ け て 割 れ や 表 面 欠 陥 を見 つ け る
が ， 遠 心 機 本 体 の上 には 置 い ては い け な い 。 保 管 中 も ロ
方 法 で あ る。
ー タ に湿 気 を 帯 び させ て は い け な い
。
ベ ッ ク マ ン社 で は ユ ー ザ の 要 請 が あ れ ば 技 術 サ ー ビ ス
Ⅳ
．
ロー タ破 損 の 実 態 な ど
部 員 が 研 究 室 を 訪 問 して ロ ー タ を 検 査 す る ， フ ィ ー ル
ド ・ロ ー タ ・イ ン ス ペ ク シ ョ ン ・プ ロ グ ラ ム
（field ro-
超 遠 心機 の運 転 中 に ロー タが 破 損 す る と， ロー タ室 の
と称 す る 保 守 サ ー ビ ス
内 部 は 図4に 示 した よ うな 悲 惨 な状 態 とな る。 ロー タが
作 業 を 実 施 して い る ＊2。 こ の 際 に は ， 金 属 疲 労 に よ っ て
破 損 す る と， ロー タの 更新 と本 体 の大 が か りな修 理 を 必
生 じ る 応 力 割 れ （stresscrack）
要 とす るば か りで な く， 研 究者 に と っ て非 常 に重 要 な サ
tor insPection Program；FRIP）
に 生 ず る応 力 腐 食 割 れ
や ア ル ミニ ウ ム 製 ロ ー タ
（stress-corrosion 検 査 さ れ る。 非 破 壊 検 査
cracking）
（non-destructive が
test） の な か
ン プル を 失 う こ とに な る。
代 表 的 な ロー タで あ るSW-65に
で 最 も 広 く採 用 さ れ て い る も の は ， ロ ー タ 穴 （rotor
の 底 に お い て重 力 の420，000倍
cavity）
る。19の
の 内 面 を 調 べ る"フ
目視 検 査
ァ イ バ ー ・ス コ ー プ に よ る
（fiber-optics borescopy）
必 要 と認 め ら れ た 場 合 に は"色
trant
＊2ベ
” で あ る。 さ らに ，
素 浸透 検 査
（dye-pene-
analysis） ” を 行 な う。 こ れ は 蛍 光 色 素 を 含 む 浸 透
も のが420kg重
お い て は ，チ ュ ー ブ
の力を受け ること に な
量 とな るわ け でた い へ ん な
差 異 で あ る。 このた め に， 穴 の 壁 に 残 され た1滴 の 水 で
も大 き な事 故 の原 因 とな る可 能 性 が あ る。 ロ ー タ取 扱 い
に は極 度 の慎 重 さが 要 求 され る。 図5は 水 平 ロー タ のバ
ックマ ン社 で は ロ ー タの 出 荷 前 に ほ か に 類 を 見 な い ほ ど数 多 くの 検 査 を 行 な って い る。す で に述 べ た 走 行 試 験 の ほか に ， 以 下
の2種
の 検 査 ， さ らに"X線
検 査 ”，"超 音 波 検 査 ”お よび"渦
電流 測定 ”が 行 な われ て い る 。 渦 電 流 （eddy current） とは導 体
が 不 均 一 な 磁 場 の 中 を 動 い た り，磁 束 の変 化 す る場 所 に 置 か れ た とき に導 体 内 に 誘導 され る 電流 で あ る。 ロー タの 渦 電 流 を 測定
す る と， 表 面 の 傷 の 深 さを 知 る こ とが で き る 。
185
8G
蛋 白 質
図6．
核 酸
酵 素 ア ル カ リ洗 浄 液 で 保 護 膜 の 半 ば が 消 失 した
水 平 ロー タ の バ ケ ッ ト
Database Center for Life Science Online Service
Vo138No.2（1993）
図7．
図8．
応 力 腐 食の た め に 運 転 中に 破 裂 した パ ケ ッ ト
図9.過
大 な 高 密 度塩 化 セ シ ウ ム溶 液 か らの 結 品 生 成
に よ って 起 こ った チュ 一 ブの 底 の 脱 落
パ ケ ッ ト表 面 に 生 じた 亀 裂
ケッ トを半 分 に切 断 して ， 内 部 を示 した もの で あ る。 各
所 に 見 られ る腐 食 に よ る窪 み は ブ ラ シで酸 化 ア ル ミニ ウ
ムの皮 膜 を引 っか いた こ とに 原 因 して い る。 定 期 的 にパ
ケ ッ トの 内側 を 注 意 して観 察 す る こ とが 必要 で あ る。
強 す ぎる洗 浄 剤 を 使 用 す る と， 図6に 示 した よ うに ロ
ー タの 表面 を傷 め る こ とが あ る。 強 い ア ル カ リ洗 浄 剤
は ，酸 化 ア ル ミニ ウ ム保 護 被 膜 を 容 易 に 溶 解 して ， ア ル
ミニ ウ ム素 地 を露 出 させ る。 この よ うに な る と，腐 食 は
急 速 に 進 行 す る。 これ を 避 け るた め に は ， ア ル カ リが 入
って い な い洗 浄剤 の1％
溶液 （
た とえば ，ベ ックマ ン社
のSolution 555） の 使用 を推 薦 した い。
日頃 か ら ロ ータ の外 側 を注 意 して検 査 す る こ とに よっ
て， 損 傷 を 避 け る こ とが で き る。 図7に 示 した この スイ
ングパ ケ ッ トは応 力腐 食 を 受 け ， 損 傷 間 近 に な って い
る。 形 状 に ち な ん で， こ の よ うな 亀 裂 を"カ
モ メ形 亀
図 10， 過 大 な 回 転 数 で 運 転 した た め に 起 こ った
バ ケ ッ トの 破 断
倒 立 させ てあ る。 底 の 部分 が 吹 き飛 んで い る。
裂 ” とよぶ こ とが あ る。
バ ヶ ッ トや ロ ー タ穴 の 内 側 を定 期的 に 検査 す る こ とを
怠 る と， 応 力 腐 食 が 原 因 とな って運 転 中 に損 傷 を起 こす
こ とに な る。 そ の 一 例 を 図8に 示 した。 破 裂 穴 か ら覗 く
こ とが で きる 内壁 に 白色 の 腐 食 窪 み が 見 られ る。
186
ロ ー タ の 破 損 の 原 因 と して は ほ か に ， 高 す ぎ る密 度 の
溶 液 を 入 れたロ
一 タ の オ ー バ ー ロ ー ド， ロ ー タ の 安 全 限
界 以 上 の 過 大 速 度 で の 運 転 ， バ ケ ッ トの チ ュ ー ブ キ ャ ッ
プ の 使 用 間 違 い ， 潤 滑 不 足 な ど を あ げ る こ とが で き る 。
87
超遠心機 の安全な運転を願 って
図9は 高 密 度 の サ ン プ ル を オ ーバ ー ロ ー ドして 回転 さ
り，受 け 軸 か ら離 れ て とび 出 す 可能 性 が あ る。 そ うな れ
せ た た め に起 こ った 損 傷 で チ ュー ブの底 が 円盤 状 に抜 け
ば 遠 心機 本 体 に重 大 な損 傷 を 与 え る。 過 大 速 度 を 避 け る
落 ち て い る。 塩 化 セ シ ウ ム の濃 厚 溶 液 が チ ュー ブの底 部
た め に は ，密 度 の 高 い 液 体 を 用 い る場 合 や 特 殊 な 条 件 で
で再 結 晶 した こ とが直 接 の 原 因 であ った。 そ の 際 の 密
運 転 す る場 合 に は ，最 高 速 度 を 下 げ る必 要 が あ る。 回 転
度49／cm3は
数 また は 回転 時 間 の い ず れ か につ い て限 度 を 超 え た ロ ー
ロ ー タ設 計 基 準 よ りは るか に高 か った 。
回 転 速 度 が 過 大 で あ る と図10に
示 した よ うな損 傷 を
ひ き起 こす。 バ ケ ッ トの 下 部 が ち ぎれ 飛 ん で い る。 こ の
よ うな重 大 な バ ケ ッ トの 損 傷 が 起 こ る と， 脱 落 部 が 壁 に
激 突 す るば か りで な く， ロ ー タ本 体 の回 転 が 不 安 定 に な
タ は， 制 限速 度 を 下 げ て 使 用 す る よ うに取 扱 い 説 明 書 に
記 され て い る。
本 稿 が超 遠 心機 の安 全 な 使 用 に少 しで も役 立 てば 幸 い
で あ る。
超 遠 心 機 ロー タ の 破 損
Database Center for Life Science Online Service
ス ウ ェ ー デ ンの ウプ サ ラ大 学 の化 学 教 室 の廊 下 の シ
い た た め で あ る。 上 下2つ
の 鉄 の ブ ロ ックで厳 重 に 囲
ョウ ケ ー ス の中 に 図1に 示 した よ うな品 物 が 展 示 され
い 込 まれ た ロー タ と他 の部 分 との 間 を結 ぶ もの は， 油
て い る。 同 教 室 の地 下 室 でSvedbergが
が 往 復 す る2本 の パ イ プ と ロー タ の温 度 を制 御 す るた
分 析 用超 遠 心
機 （分 離 用 超 遠 心 機 は ま だ存 在 しなか った ） を 開発 し
め の 水 素 ガ スを 送 る1本 の パ イ プの み で あ った 。
て い た 当 時 に ， ロー タ が運 転 中 に しば しば 破 損 した。
これ と比 較 す る と今 日の超 遠 心機 （こ こで は分 離 用
上 記 の 鋳鉄 製 の 巨大 な コマ の よ うな も のは ， 当 時 の破
の み を 取 り上 げ る） に お い て は ，1つ の ケ ー ス の中 に
損 ロ ータ の1つ で あ る。 こ の程 度 の破 損 は 軽 い ほ うで
す べ て が 組 み 込 まれ て い る。 そ のた め に本 文 中 の 図4
あ り， 図2の
よ うな 高 度 の破 損 も起 こ った 。 ロー タ内
に示 した よ うに ， ロー タ の破 壊 が 生 じる と他 の部 分 に
部 の 傷 や歪 み を 外 部 か ら検 査 す る方 法 が な か った 当 時
波 及 す る こ とは 必 然 的 で あ る。 分 離 用 そ して分 析 用 の
に お い て は ， この よ うな 事 故 は避 け る こ とが 困難 で あ
両 方 の超 遠 心機 の整 備 と保 守 を長 ら く担 当 して こ られ
った。 この よ うな破 損 が 頻 繁 に起 こ った に もか かわ ら
た 小 泉 氏 の解 説 は ， 超 遠 心 機 の安 全 な運 転 に役 立 つ と
ず ， 同所 で の超 遠 心機 の 開 発 は順 調 に進 め られ た 。 そ
信Lて
れ は 当時 の超 遠 心 機 （世 界 中 で ウ プサ ラに しか 存 在 し
ッ クマ ン社 の刊 行 物 ［Pedersen,K．O．
；Fractions，1974，
な か った ） は油 タ ー ビ ン方 式 の駆 動 方 式 を 採 用 して い
Nal，pp．1-8（1974）］ よ り引 用 した 。
い る。 な お ， 図1と2の
（
高木俊夫）
た た め に ，ロー タ部 分 が 他 の 部 分 と完 全 に隔 離 され て
図1．Svedbergが
初 期 に 使 用 した ロ ー タ （通 称1号
ロー タ）。
最 高56，000rpmで
使 用 され た が，1931年11月4目
に破
裂 した 。同 年 に 製 作 さ れ た もの で短 い寿 命 で あ った 。ピー
ス の 花 輪 は 外 国 人 女 子 学 生 の1人 が 帰 国 に 際 して 掛 け た
もの と され て い る。 これ をSvedbergは
大 学 の 自室 に 飾
って い た が ， 現 在 は 廊 下 に 展 示 され てい る。
写 真 と解 説 の多 くは ベ
図2．
砕 片 とな った 通 称Ⅲ 号ロー タ。1940年
7月 ，60，000rpmで
運 転 中 に 破 裂 した 。
1932年5月
に 製 作 さ れ て か ら総 計 して ，
最 高 の70，000rpmで1回
，65，000rpm
で10回
， 常 用 の61,000rpmに
おいて
2，260回 の 使 用 に 耐え た 。
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