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大国ブラジル、成長持続目指す インフラ整備原動力に

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大国ブラジル、成長持続目指す インフラ整備原動力に
http://www.jbic.go.jp/ja/report/reference/index.html
リオデジャネイロ駐在員事務所
大国ブラジル、成長持続目指す インフラ整備原動力に
ブラジルはさまざまな観点から大国と呼ばれるにふさわしい国である。以前は債務危機
に見舞われた時期もあったが、現在の外貨準備高は3500億㌦(30兆8千億円)以上に達し、
約3000億㌦(26兆4千億円)の対外債務残高を上回る外貨を保有する。さらに、広大な農牧
地に裏付けられた食糧の供給国として、また、豊かな天然資源が存在することによる石油
および鉱物の資源国として、日本のみならず世界においてブラジルの重要性は高まってい
る。
浮沈激しい軌跡
ブラジルの国土は851.2万平方㌔で、世界第5位、人口も約2億人を擁し世界第5位である。
20カ国・地域(G20)において新興経済国の1カ国として大きな存在感を発揮していること
に加え、経済成長が著しい新興4カ国(BRICs)の一角を占めている。
ブラジルの重要性は増すばかりだが、経済の軌跡は、浮き沈みが激しく起状に富み、現
在の状況に至るまでは必ずしも容易ではなかった。
まずは1930年代までのコーヒーに代表される1次産品の輸出動向により大きな影響を受
けた時期がある。この後に、1次産品の市況による影響を軽減すべく政府による経済開発が
進められたが、外国の資本に依存した巨額の開発投資は、その後ブラジル経済が抱えるこ
ととなる大きな問題の萌芽となった。
64年に発足した軍事政権の経済安定化優先策により68年から73年まで「ブラジルの奇跡」
と呼ばれた高度成長を享受した。高度成長が73年のオイルショックで終止符を打つと、累
積債務の増加による債務危機の時代を迎え、80年代は「失われた10年」と呼ばれた。
一時は年率数千%にも達したインフレによる経済の停滞は90年代に入っても止まらなか
ったが、94年に導入されたインフレ抑制策「レアル・プラン」により、ようやく沈静化し
た。その後、2003年から2期8年大統領を務めたルラ前大統領時代、リーマン・ショック直
後の09年にマイナス成長を記録し
たことを除き比較的高い成長率を
達成し、再びブラジルは高成長を
享受した。
しかし、11年に初めての女性元
首として大統領に就任したルセフ
氏の1年目の実質国内総生産
(GDP)成長率は2.7%にとどまり、
12年は景気減速に対応して工業製
品税を期間を限定して引き下げる
などの景気刺激策を導入してもな
お、実質GDP成長率は当初政府が
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目指した3.5%から4.0%の水準を大幅に下回る見通しである。
ブラジルコスト
このような軌跡を描いてきたブラジル経済の現在の課題は、明らかに「安定したマクロ
経済」より「経済成長の持続」に移行している。
減税などによる一時的な景気刺激策は経済運営において重要だが、「経済成長の持続」
という課題を達成するために欠かせないのが、ブラジル特有の制度・環境により生じるビ
ジネスにおける課題「ブラジルコスト」の削減である。高率で複雑な税制、労働者が有利
な訴訟制度による労務問題、治安の問題、インフラの不足による高コストの物流などが挙
げられる。
14年のサッカー・ワールドカップ(W杯)、南米大陸では初めてとなる16年のリオデジ
ャネイロ夏季五輪の開催という大きなイベントを控えていることに加え、ブラジルが経済
成長を続けるためにはインフラ整備は喫緊の課題である。
政府が後押し
ブラジル政府はインフラ整備の重要性を認識しており、12年8月、ルセフ大統領はインフ
ラ投資計画を発表した。この計画は、ルラ前大統領からルセフ大統領に継承された成長加
速プログラムの一貫という位置付けで、民間企業とのパートナーシップに基づき、民間企
業にインフラの建設や運営を移譲するものである。
インフラ投資計画は高速道路、貨物鉄道、港湾、空港を対象としている。12年8月の計画
発表時に示されたプロジェクトは高速道路と貨物鉄道であり、この分野で総額1330億レア
ル(約5兆3200億円)の総投資額を計画している。高速道路は9区間総延長7500㌔、総投資
額420億レアル(1兆6800億)を予定する25年にわたる事業。貨物鉄道は12路線総延長1万
㌔、910億レアル(約3兆6400億円)を予定する30年にわたる事業である。
高速道路と貨物鉄道に共通するのは、最初の5年間の投資金額をブラジル政府が指定する
点だ。インフラの建設、整備を加速させることを意図している。さらに、開発資金にはブ
ラジル政府が100%株式を保有し、国内でレアル建て長期資金の主たる提供者であるブラジ
ル国立経済社会開発銀行(BNDES)による長期融資が優遇された条件で利用できることも
共通点として挙げられる。
その後、12年12月に港湾および空港に関する概要が発表された。港湾については、総投
資額544億レアル以上を見込んでおり、14年より17年までに主たる投資が行われることを予
定している。空港は総投資額114億レアル以上を見込み、対象にはリオデジャネイロのガレ
オン空港が含まれている。
特に、空港についてはサンパウロのグアルリョス空港を含めた3空港を対象とした12年2
月の入札条件と異なる入札条件が適用される予定である。具体的には、入札参加に必要な
実績として年間取り扱い乗客数をはじめとする条件を厳しくすることで、より高い運営能
力を持つ空港オペレーターのブラジルへの進出を促す形に修正している。ルセフ大統領は
インフラの整備に強い関心を寄せているが、今回の修正は、側近の助言に十分に耳を傾け
たといわれている。
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国民は楽観的
12年末にブラジルの世論調査会社が実施したブラジル国民による13年の経済見通しにつ
いての調査結果が、今年1月1日付の現地新聞の1面を飾った。それによると、12年の実質
GDP成長率は度重なる予想の下方修正により1%程度となることが見込まれるにもかかわ
らず、国民の多くは経済に対して楽観的な見方であることが確認された。
最近ではインフレはかなり抑制されているものの、額面の給与所得は毎年増加してきて
いる。さらに、経済成長に伴い中間層が大幅に増加したことに加え、ブラジル特有の分割
払いの習慣および個人向け融資の拡大により、消費が喚起された状況が続いている。経済
において“体感成長率”という表現があるとすれば、ブラジル国民の体感成長率は依然と
して高い状況が続いている
2003年ごろから、1973年に終えた高度成長期に続く、高い経済成長の継続する時期をブ
ラジルは享受してきた。この経済成長の原動力は個人消費だったが、従来に比べ個人の債
務残高は大幅に増加しており、債務不履行の割合が増加傾向にある。
経済成長の持続を達成するためには、一時的な減税などによる景気対策だけでなく、ブ
ラジルコストを削減することで経済構造を改善し、産業競争力を高める必要がある。実現
するためには、当面は経済成長の原動力を個人消費よりインフラの整備を中心とする投資
に移す必要性に迫られている。
迫られる着実な成果
2011年に就任したルセフ大統領の任期は14年までであり、現在は任期の半分を終えたと
ころだが、現在のルセフ大統領に対する世論支持率は非常に高い。仮に今、大統領選挙を
実施した場合には再選は間違いないともいわれている。しかし、再選のためには14年の大
統領選に向けて残りの任期の間に成果を挙げる必要があることも事実である。
まずは、12年の低成長より抜け出し、高い支持率を背景にルセフ大統領がインフラの整
備を中心とした持続可能な経済成長の基盤づくりにおいて十分な成果を上げられるかが問
われている。13年のブラジル動向には注目が必要である。
(国際協力銀行
※
リオデジャネイロ駐在員事務所
この記事は、2013 年 2 月 4 日号の共同通信社「Kyodo Weekly」に掲載されたものです。
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安井
豊)
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