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インフラ海外展開⑥ 今年が正念場のフィリピンPPP

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インフラ海外展開⑥ 今年が正念場のフィリピンPPP
http://www.jbic.go.jp/ja/report/reference/index.html
インフラ・ファイナンス部
インフラ海外展開⑥ 今年が正念場のフィリピンPPP
2010年6月に就任したアキノ大統領は、就任直後の施政方針演説で、官民パートナーシッ
プ(PPP)によるインフラ整備を政策の柱に据えると発表した。フィリピンでは雇用機会
に恵まれない国民が多い。アキノ大統領は雇用の創出を主要な経済課題とし、雇用に結び
つく製造業に対する海外からの投資を促進すべく、製造業発展の基盤となるインフラ整備
を政策の柱に据えたのである。しかし、貧困支援や社会保障等の必要からインフラ整備に
費やせる財政余力は乏しい。PPPとは、公共サービスに民間の資金や技術、ノウハウを活
用することであるが、そうしたPPPでインフラを整備することが、現政権の課題となって
いる。
ところが昨年1年間のアキノ政権のPPPに関する実績は、国内外のビジネス界から厳しい
評価を受けている。PPPの成否の鍵は事業のリスクを官と民が適切に分かちあうことであ
る。ところが、当初政府は制度変更リスクに対してのみ責任をとり、需要リスク(交通量
リスク等)や資金調達の負担は民間に負わせるとしていたので、官民で適切なリスク・シ
ェアがなされないとの印象が与えられた。10年11月に政府が公表したPPPの優先10案件の
大方を占める都市鉄道や空港を所管する運輸通信大臣が昨年7月に交代し、それまで出され
ていた政策が再検討されたこともプロジェクトの進展を更に遅れさせることになった。ま
た現政権が汚職撲滅のために前政権下のインフラプロジェクトの見直しに終始し、締結済
みの事業契約が進まなくなったことなどもビジネス界の不満を増大させた。かろうじて昨
年12月に地元のアヤラ財閥がダンハリSLEX連結道路プロジェクトを落札したが、この案件
はもともとの優先10案件に含まれていないものだった。
しかしこれまで政権内部でPPPの準備に当たってきた政府高官は、政府にまだ改善すべ
き点はあると認めながらも、この一年半で政府も多くのことを学び多くの成果をあげてき
たと振り返る。同氏によると、現政権が最も大切にしてきたことは透明性の確保だという。
例えば、PPPプロジェクトの事業主体の選定は原則一般競争入札で行われるようになった。
また、入札が始まる前に入札有資格者の意見を取り入れる仕組みを導入したり、資金の出
し手である国内外の金融機関からコメントを求める機会を設けることも心掛けるなど、入
札手続きにおける客観性の確保にも力が注がれている。なお、経済性についても現実に即
した対応が取られつつあり、例えば資金調達についても、プロジェクトの収益性を精査し、
民間資金と併せて部分的に政府支出を行うなど政府の関与を増やそうという姿勢をみせつ
つある。
一方の民間セクターの方でも、PPPを推進しうる地場企業・地場銀行が育ってきている。
フィリピンの電力セクターは、既に01年のEPIRA法によって民営化に舵が切られ、近年ロ
ペス、サンミゲルなど財閥企業も積極的に電力事業に参入してきた。PPPで推進される都
市鉄道、水、空港、道路などにおいても、外資企業のみならずこうした地場財閥企業が鎬
を削って参入しようとしている。また、欧州危機等で欧州の金融機関の動きが保守化する
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http://www.jbic.go.jp/ja/report/reference/index.html
中で、フィリピンの地場銀行は豊富な流動性を背景に、インフラ事業に対してプロジェク
ト・ファイナンスで積極的に対応してきている。
最近VIPという言葉をよく耳にする。中国、インド、タイの次に日本の投資が向かう国と
して、Vietnam、Indonesia、Philippineが注目されているということである。日本からの
フィリピン向け投資の変化が数字としてはっきりと見えるまでにはもう少し時間を要する
であろうが、キャノンや村田製作所などの大手企業が既にフィリピンの進出を決定してお
り、潮の流れが変わる可能性は十分ある。今後フィリピンへの直接投資が伸びていくかど
うかは、PPPによるインフラ整備が進み、投資環境の改善が投資家に認められるか否かに
かかっている。フィリピン政府のPPPに対する取り組みも今年が正念場と言えるのではな
いか。
(国際協力銀行
※
インフラ・ファイナンス部)
この記事は、2012 年 3 月 21 日付の「日刊建設工業新聞 インフラ海外展開」に掲載されたものです。
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