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Title Author(s) Citation Issue Date URL 高分子絶縁材料のボイド内放電による劣化と特別高圧ケ ーブルの開発に関する研究( Abstract_要旨 ) 安井, 貞三 Kyoto University (京都大学) 1969-11-24 http://hdl.handle.net/2433/213249 Right Type Textversion Thesis or Dissertation none Kyoto University 【1 9 4】 安 井 畠 やす い てい ぞう 学 位 の 種 類 工 学 博 士 学 位 記 番 号 論 工 学位授与 の 日付 昭 和 4 4年 11 月 24 日 学位授与 の要件 学 位 規 則 第 5粂 第 2 項 該 当 学位論文題 目 高分子絶縁材料 のボイ ド内放 電によ る劣化 と特別高圧 ケーブ 氏 r 名 博 第 31 5号 ルの開発 に関す る研究 (主 査) 論 文調 査 委員 教 授 田 中 哲 郎 論 文 内 教 授 阪 口忠 雄 容 の 要 教 授 大 谷 泰 之 旨 この論文 は, 高分子絶縁材料 を用いた特別高圧 ケー ブル の開発 と実 用化 に当た って最 も問題 にな る電気 的劣化, す なわ ち コロナ放 電 によ る劣化 の メカニズ ムに関す る著者 の研究 と, その研 究 結果 を もとに して 開発 した 6 6 KV∼7 7 KV の特別高圧 ケー ブル の性能 , な らびに製造上 の諸 問題 につ いての検討結果をのべ 9章 よ りな ってい る。 た もので, 3部 1 第 1 部 は コロナ放 電 によ る劣化 の機構 を扱 った もので, 本論文 の最 も重要 な部分 であ るが, 各章 の内容 を要約す る とつ ぎの とお りで あ る。 第 1 茸 : ケー ブル に電圧 を印加 したのち破壊 にいた るまでの放電発生 量 の時間 的変化 を観測 し, その発 生 量 が破壊 の寸前 に急増 す る こと, 放 電 が絶縁 物 内部 の ボイ ド, 不純物, 異 物 あ るいは導体 と絶縁物 との 問 の空隙部 か らは じま る こと, 放 電 によ る樹枝状 浸食跡 ( t r e e ) が絶縁 破壊 の機構解 明 に大 きい手がか り を与 え る こと, な どを のべてい る。 第 2 章 : 放 電 や劣化 の機構 に関 して従来公表 され た文献や報告 を もとに, 放 電現象, 放 電機構, 高分子 絶縁材料 の耐 コロナ性 な どを整理 して問題点 を明確 に してい る。 第 3章 : 球状 ボイ ド内放電 を定量 的 にはあ くす るた めに, 球状 ボイ ドの大 きさ と放 電 開始電圧, 放電電 荷 壷 , 放 電 エネルギ - な ど との関係 を解析す る とともに, 実験 によ って これを確 か め, さ らに一般 回転楕 円体状 ボイ ド内での放 電 の諸量 が計算 によ って求 め うる ことをのべてい る。 第 4章 : 針状 ボイ ド内に放電 が起 こった場 合 にその尖端か ら t r e eが生 じ, これ が高分子絶縁材料 の破 壊 電圧 が比 較 的低 い ことの原 因 にな ってい ることを見 出 し,t r e eの発生 な らびに進展 の メカニズ ムにつ い r e e の発生 時 には針状 ボイ ドの先端部 におけ る放電 エネル ギー密度 が 1×1 0 3 ジ ュ ー ル/ て論 じてい る.t c m2 (普通 の平板間 隙 の場合 の約 1 0 0 倍) に達 してお り, 1 -5/ J mの直径 を有 す る管状 の t r e e は, 放 電 が その先端部 に到達す ると前方 にのびて ゆ き, その速 度 は 1 0 0ピコクー ロンの電荷壷を もつ一 つ の放電パ ル ス当た り3 -5×1 0 5mmで, 普通 の放電 によ る表面 浸食速度 の約 1 05倍 にあた り, しか もか な り低 い電界 で -6 1 8- t r e eの進展が生 じることが観測 され, これが劣化 の機構 のお もな部分をな してい るとのべてい る 。 第 5章 : 放電劣化のお もな要因をなす針状 ボイ ドの発生原因についてのべてあ り, 放電 が発生 して損傷 を受 ければその個所 に放電が起 こりやす くな り, 集 中的な穿孔が生 じる場合があ りうることを確認 してい る。 第 6章 : 針状 ボイ ドを含む試料がインパルス電圧 で破壊 され る場合に, その破壊値 に大 きい極性効果が 現 われ る場合 があ ることを見 出 し, 材料の種類, 温度, 電圧波形, 繰返 し印加の効果 などを詳 しく検討 し て, 極性効果 の原因について解析的な考察を加えてい る。 第 2部ではケーブルの部分放電の検 出回路を扱 ってい る。 5葺 よ り成 るが全体をま とめてのべ るとつ ぎ の とお りであ る。 著者 はまず長尺 ケー ブルを分布定数 回路で表 わ し, 放電パルスがケーブル 中を反復反射 して検 出端に連続透過波群 とな って現 われ る様子を理論的に解析 し, その結果 と実験結果 とを対比 して検 出回路の設計資料を得, ケ- ブ ルの長 さが短 くな ると従来か ら知 られてい る短尺 ケー ブ ルの場合の結果 に 収赦す ることを明 らかに し, さらに短尺 か ら長尺 まであ らゆ る長 さのケーブル に対 して検 出感度を求 め る ための計算式を導 いて, 放電検 出回路の最適設計を可能 に してい る。 これ らの結果 よ り数 メー トルの短尺 か ら数百 メー トルの長尺 ケ- ブルに至 るすべての長 さのケ ブ- ルに対 して, 放電検 出能力を 1 ピコク- ロ ン程度, 放電パルスの分解能を数 マイクロ秒にす るためには, 検 出用の増幅器の利得を8 0 db, 周波数帯域 Hzか ら約2 0 0 kHzに, 検 出端抵抗を1 0 -3 0 k占 之 , 結合 コンデ ンサの容量を数千 ピコフ ァラッ ド~干 を数 k ピコフ ァラッ ドに選ぶのが望ま しい とのべてい る。 第 3章では第 1部で得 られた結果を もとに して特別高圧 ケーブル, とくに 6 6-7 7 KV架橋 ポ リエチ レン 絶縁 ケーブルを対象 に, その開発 および実用化の問題点 とその対策を論 じてい る。 8葦 よ りな るが要約す るとつ ぎの とお りであ る。 絶縁物の劣化 に対 して最 も問題 とな るのは導体 と絶縁物 との間 に生 じる空隙で あ るが, これを除去す るために1 04占 之- cm 以下の抵抗率を もつ半導電性 コンパ ウン ドの層 を, 導体 と絶縁 物の中間に設 け ることが必要で, これによ りケー ブルの絶縁性能を大幅 に上昇す ることがで きると結論 し てい る。 半導電性 コンパ ウン ドの材料やその加工条件 について も検討を加え, さ らに半導電層 と絶縁物 と の接 着を完全 に してその境界面を平滑 に保つための製造法を開発 し, あわせて絶縁物 中の不純物やボイ ド を低減 させ るための設備や技術上 の問題 な らびにその対策を論 じてい る。 以上の結果を総合 して得 られた 6 6 -7 7 KV 架 橋 ポ リエチ レンケーブルについて試験 し, インパル ス破壊電圧や電圧寿命特性が著 しく向上 す ることを確認 し, さ らに実用上 の問題 としてケーブルの接続部や端末部 に対す る問題点 に検討を加え, その対策を明 らかに してい る 。 論 文 審 査 の 結 具 の 要 旨 高分子絶縁材料を高電圧機器や高圧 ケーブルの絶縁材料 として使用す る場合の最大 の問題 は, 長期間の 使用中に生 じる電気 的劣化を如何 に して防 ぐか とい う点 にあ り, これが従来 この種材料 の実用化を妨 げ る 最大 の原因であ った。 著者 はまず劣化 の生 じる機構 について, 種 々の角度か ら検討を加えて これを明 らか にす るとともに, 劣化 を防止す る対策を明 らかに し, これに基づ いて実際に架橋 ポ リエチ レンを絶縁材料 6 -7 7 KV のケ- ブル試作 してその絶縁性能を確 かめ, 実用化の道を開拓 してい る。 とす る6 - 61 9- 著者 はまず長期間諜電 されたケーブルにおいて生 じた劣化を詳 しく観察 した結果, 絶縁物 内部に存在す るボイ ド (空孔), 不純物, 異物および絶縁物表面の放電が劣化の原因 とな ることを確かめ, ついで放電 機構 を明 らかにす るために, 絶縁物 中に人工的な球状 あ るいは針状のボイ ドをつ くって, 広 い角度か らボ イ ド放電の実験を行な うとともに, ボイ ド内部 で放電 が生 じる場合 の放電 開始電圧, 放電電荷量, 放電 エ ネルギーなどを理論的に解析 して定量的な計算を可能 に した。 著者 は と くに針状 ボイ ド内の放電 によ ってその 尖端部 に現われ る t T e e (樹枝状浸食跡) の発生 とその 成長 に関す る定量的な実験を詳細に行 ない,t r e eの発生時 に尖端部 におけ る放電 エネルギー 密 度 が 1× 1 03ジュール/ c m2 に達す ること, 成長速度が 3- 5×10 7/pC に及ぶ ことな ど, その機構を理解す る上 に必要な多 くのデー タを得てい るが, この t r e e 発生 と成長は コロナ放電 によ る劣化機構 の最 も重要な部 分をなすので, 著者 の実測結果 はその機構 の解 明 と劣化対策, あ るいは絶縁物の劣化特性の試験などに大 いに役立つ ものであ る。 実際のケーブルにおけ るコロナ放電 によ る絶縁物の劣化を正確 に とらえ るためには, 放電発生 の有無, 放電開始電圧, 放電量などを観測す るための放電検 出器が必 要であ るが, 著者 はケーブル 中での放電パル スの伝播を理論的に解析 して, 短尺か ら長尺までのあ らゆ る長 さのケーブル に対す る放電検 出回路の最適 設計の方法を明 らかに し, 放電検 出能力が 1 ピコクー ロン, 放電パルスの分解能が数 マイクロ秒の ものを 設計製啓三して, 実際のケーブルについてその性能を確かめてい るが, この設計 に関す る資料 は広 くケーブ ルの コロナ放電の研究 に役立つ もの と考え られ る。 著者 は以上 の基礎的研究の成果を もとに して, 架橋 ポ リエチ レンを絶縁材料 として利用 したケーブルの 開発を世界 にさきがけて行 ない, 6 6 KV∼7 7 KV の高圧 ケーブルをは じめて実用化す ることに成功 した。 実用化 に当た っては絶縁体 中にボイ ドや不純物あ るいは異物の混入を防 ぐとともに, 導体 と絶縁物の問に 生 じる空隙を除去す るために, その中間 に 1 04占 之 一c m 以下の抵抗率を もつ導電性 コンパ ウン ドの層を設 け てい るが, これ らの材料や加工 の条件 について も細心の検討を加えて製造装置を設計 し, 実際に得 られた ケーブルの性能を試験 してその実用性を確認 してい る。 そのほか実用上の付帯問題 としてケーブルの接続 部や端末処理 について も検討を加えて, その実用化の問題をほ とん ど完全 に解決 してい る。 以上要す るに本研究 は架橋 ポ リエチ レンのよ うな高分子絶縁材料を高圧絶縁材料 として使用す る場合の 問題点を究明す るとともに, その結果を超高圧 ケーブルの開発 に応用 した ものであ って, 学術的にも工業 的 に も寄与す るところが多 く, 本論文 は工学博士の学位論文 として価値 あるもの と認 め られ る。 -6 2 0-