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大阪市 立大学看 護短期大学部紀要 ( 氾 1 . 3) 第 3巻 ( 2 エモ リー大学創傷 ・オス トミー ・失禁看護教育 セ ンター研修報告 大阪市立大学看 護短期大学部 田中 結華 Ky o koh 川端 京子 wABATA.Y u kaT如ヾAKA Os a kaCi y Uni t v e r s i y Co t l l e geo fNur s i ng は じめに エモ リー大学 は米国 ジ ョージア州 ア トラ ンタ郊外 にあ り、米国内で最 も有名 な私立大学 の ひ とつであ る。私 た 2年 9月1 1日か ら2 2日までの 2週 間 を大阪市 ちは、平成 1 立大学在外研 究員 として、エモ リー大学医学部創傷 ・オ ス トミー ・失禁看護教育 セ ンターで過 ご し、米 国 にお け る創 傷 ・オ ス トミー ・失 禁 看 護 専 門 ナ ー ス ( 以下、 WOCナース) によるフッ トケアを中心 に研修 を行 った。 日本 で はWO Cナース による フ ッ トケアにはあ ま り注 目 されていないが、生活習慣 の欧米化等 を背景 に、糖尿 病性足病変や下肢 の静脈癌が増加 している。 エモ リー大 写真 1 Cナース養 成 コースで は、 フ ッ トケア に重点 を 学 のWO ドロシー ・ダフテ ィ先生 ( 後列 中央) と クラス メー トた ち 置 いた教育が な されている。私 たちは ここで、最新 の知 識 ・技術 を駆使 して優れたケアを行 う専 門ナースの働 き 者 は約3 0名。私 たちの他 、 日本 人は 1名 い た。彼女 はオ に触 れ、様 々な意見交換 を行 った。本稿で はその内容 に ース トラ リアの大学 を卒業 してお り、英語 は ( 私 たち と ついて紹介 し、 日本 での看護婦 によるフ ッ トケアの課題 違 って)相当 に堪能である。 ドレッシ ング材 の販売会社 について考 えてみ たい。 に勤務 し、看護婦 と して専 門的 に活動す るために会社 の バ ックア ップ を得て、正規 に コース に入学 していた。 ち ( WOCナース) なみ に、 日本 で は年 2回、 6ケ月の コースが東京で行 わ 養成 コース 0人であ る。彼女 の ように企業 に就 れてお り、人数枠 は2 日本では平成 7年か ら日本看護協会 による認定看護 師 職後、短期 間で資格 を得 るには米国での コースで ない と 制度が発足 し、中で も創傷 ・オス トミー ・失禁看護認定 不可能 な状況 であ り、同様 の例 は今 も珍 し くない。私 た ( WOCナース)は20名あ ま りが活躍 している1)。 ち も同様 に、教 員 を続 け なが ら日本 でWO Cの資格 を取 I.創傷 ・オス トミー ・失禁専門ナース 看護師 WOCナース による創傷 ケアは、 もともと米国のEnt e r o s - ることは困難 である。 t o ma lT he r a p i s t ( F) がス トーマ ケアを応用 して慢性創傷 今 回の参加 者 は年齢、性 別、人種 も様 々で、米 国 ・カ のケアを行 った ところか ら発展 した。あわせ て、 ドレッ ナ ダの各地域 か ら来 ていた。養成期 間は、 9週間の コー シ ング製造 の技術 開発 と、分子 レベ ルでの創傷 治癒 メカ Cナ ース養 成期 間は 8 ス になってい る。他 の多 くのWO ニズムの解明によって飛躍的に創傷 ケア技術が向上 した。 週 間であるが、エモ リー大学 で はフ ッ トケアの内容が他 WOCナ一一スたちは、 これ らを取 り入れ た様 々 な技術 を に比べ充実 してい るか ら、 1週 間長 くなる。但 し、創傷 駆使 し、医師や他 の職種 と協力 しなが ら、科学 的 にケア ケアのみ、ス トーマ ケアのみ な どの部分的 な資格 の取得 を行い、患者やス タッフナースの教育 にもあたっている。 も可能である。通信制 の コース もあ る。今 までで最 も遠 Cナースの組織 が あ り、 その認 定教 育機 米 国で はWO 距離 か らの受 講者 は、中国のナースが受講 していたそ う 関 で は入学 資格 と して大学 卒 で あ る こ と、登 録看護婦 である。 もっ とも、実習 だけは必 要 なプ リセ プ ターが 中 ( RN) と して入学 直前 に 1年以 上 の臨床経験 が あ るこ 国では得 られ ないので、米 国で行 った とい うことであ っ た。 とな どを定 めてい る。今回参加 したエモ リー大学 の コー 写真 1) とジ ョ スで は、 ドロシー ・B ・ダフテ ィ所長 ( クラスへの参加者 は、大学 卒で、すで に病 院 ・地域 な ア ン ・D ・ウ オル ドロ ップ先生 の専任教員 2名、パー ト どで臨床 を十分経験 してい る現役 ナースであ る。 また、 タイムの講師 1名、秘書 で運営 してい る。 クラスの参加 大学で教員 を している とい う人 もいた。 ほ とん どは実際 -7 9- 大阪市立大学看護短期大学部紀要 に創傷 ケアをお こなった経験 をもってお り、 自分 の扱 っ 01 . 3) 第 3巻 ( 2 れたテキス トである。単元 ご とに目標 、知識 、 ケースス た症例 をアルバ ムに して クラスメー トに見せていた学生 タデ ィと、明快 に構成 されている。私 たちが参加 したの もいた。彼 らに、「 なぜ資格が欲 しいのか ? 」と尋ねると、 は創傷 ケアの部分のみであったが、 5日間で、そのテキ 「 すでに創傷ケアについては実践 しているし、知識 もある。 ス トのほとんどを講義 しおえて しまったのには、驚いた。 しか し、系統立 てて学 び、資格 を得 る と、ケアの質 を向 毎 日予習 を しない と追いつか ない。夜 な夜 な、ホテルの 上 させ ることがで き、合法的 にいろんな処置がで きる。 部屋で医学辞書 とくびっぴ きになって単語 を調べ 、か な そ して何 よ り、医師が私 を尊重 して くれ る。 」米 国で も り寝不足 になった。 日本 と同様、医師 と看護婦の間には上下関係があ り、ナ ースの意見が通 らず、尊重 されていない現状 はある。 し か し、彼 らにとっては、 よ り高い資格 を得て、質の高い Ⅰ.創傷 ケアの実際 1.受診患者の疾患 もっ とも多いのは、下肢静脈性 の下腿潰癌 である。創 ケアをす ることが、一つの解決策 になっていると痛感 し 傷 ケアセンター受診患者のほ とんどが この疾患であった。 た。 ここでの授業 の様子 は 日本人の 目か らみれば、驚 くこ 静脈性 の下腿潰壕 は、下肢 の静脈弁 の機能が障害 され る とばか りである。服装 はてんで ば らば ら。水着の ような ために血流 が うっ滞 して下腿 に重度 の浮腫が 出現す る。 へそ出 しもあれば、ワ ンピースの学生 もいる。授 業中に 重症の場合 には皮膚 に潰虜 を形成す る。創部以外 の皮膚 立 ちっぱな しでポケ ッ トに手 を突 っ込 み、入 り口の壁 に は、角質層 が肥厚 し、乾燥 して、掻痔感 に悩 まされる。 もたれて授業 を受 けてい る男子学生 もいた。 しか し、他 そ して創部 は、非常 に浸 出液が多 く、管理が難 しい慢 性 人に迷惑 をかけず、 ま じめに授 業 を受 けているか ぎり、 創傷 となる。そのため、包帯及び ドレッシ ングを行 う上 誰 も何 も言わない。授業 中に飲 み物や食べ物 も平気であ での条件 は、 る. ドロシーが 自ら、学生 にコー ヒーをご馳走 して くれ ( ∋ 下腿全体 に必要な圧迫を加 えて、浮腫の軽減 を図る。 たこともあった。 ちなみ に、携帯電話 は一度 も鳴 らなか ② 創傷 を被覆 して浸 出液 を十分 に吸収 し、治癒 のため った。 の湿潤環境 を保つ。 を満たす ことが必 要である。 しか し、授業 の内容 は、みんな真剣 に聞いている。聞 いているだけではな く、 ドロシー先生が説明するごとに、 ここで見 たのは、従来 日本で行 われていた単純 な弾性 r r ha t Sr ig ht ! "な どと声がかか り、学生 は自分が理解 し 包帯 による もので はな く、非常 によ く考 え られた、シス ている と、積極 的に表現す る。話 の途 中で も、 まるでデ テマテ ィックな包帯 と ドレッシングの組み合 わせであっ ィスカ ッシ ョンの場の ように、質問、意見、 自分が知 っ た。以下 に代表的 な 2種類 の圧迫包帯 システム と、 ドレ ている症例では どんな風 に していたかな ど、教師 ・学生 ッシングの方法や材料 について紹介す る。 間でボ ンボ ンと会話が交わ され る。出 される質問はすべ 2.4層 圧 迫 包 帯 シ ス テ ム て よい質問であるとい うわけで はないが、実 に発言 しや (商 品 名 :プ ロ フ ォ ア すい雰 囲気であ り、授業 を最大限 に活用 し、楽 しみ、学 Pr of or e) んでい こうとい う意欲 がったわって くる授業であった。 4層のそれぞれ機能の異 なる包帯 を一定の方法で巻 き、 教 師の授業内容 も負 けず に非常 に面 白 く、理解 しやす 長時間にわたって一定の圧迫 を下腿 にかけ、筋肉の収縮 い、魅力的な内容であった。例 えば、静脈性下腿潰壕の mus c l e の際 に適度 に圧迫 を加 えて静脈 を還流 させ る ( 病態 について ドロシーは、以下 の ように説明 した。 「 静 脈弁 の機能が障害 されて うっ血 し、血管 か ら組織へ多 く p ump) 0 第 1層 は、 クッシ ョンのための厚 みのある フェル ト状 の白血球がでていって しまう。 ところが、白血球 ってい の包帯。 これは、皮席 を保護 し、浸 出液 を吸収 させ るこ うのは、A m とが 目的である。第 2層 はそれを固定 し、吸収 の機 能 も y( 軍隊)みたい な細胞 だか ら、 (目つ き悪 く見 回す ジェスチ ャーを して)いつ もけんかっ早 くて、 あるご く柔 らかい弾力包帯。第 1・2層 は、 らせ ん帯で 敵 を見つ けては戦争す る。そのため に、非常 に炎症反応 巻 く。 が克進 して しまうの よ。 」 な- るほ ど !うまい説明 にこ 第 3層 か ら圧迫包帯 になる。 これは、包帯 の中央 に黄 ちらも思わず うなずいて しまうことが しば しばであった。 色 の線が はいった、かな り強めの圧迫 をかけることがで 学生 は、経験が豊か なナースたちであ るだけに、 よ り きる弾性包帯である。一定 の圧 をか ける為 に、特別 な巻 実践 的で、質の高い内容でない と納得 しない。 しか し、 き方 を行 う。す なわち、下肢 を一周す るご とに、50% は ドロシー先生 は非常 に自信 に満 ち、 よ く構成 された内容 オーバーラ ップ させて巻 く。 ここで、包帯 の中央 にある なが らユーモアを交えて、魅力的な授業 を展開 していた。 線が非常 に役立つ。つ ま り、 この線 をガイ ドラインに し それでいて、授業の進度 は決 して遅いわけではない。講 て、 1周前 に巻いた包帯の黄色の線 と、次 の一周の包帯 0 0ページに もわた るテキス トが学 義が始 まる前 には、3 の下端が合 うように巻いていけばよい。 これは、 なかな 生 に渡 される。創傷 ケア、失禁 ケア、ス トーマ ケアと、 か優れたアイデ ィアで、誰 で も簡単 に50% の重 な りが得 分野 ごとに各 1冊づつ、すべ て この学校 で独 自に作成 さ られる。 さらに、 この包帯 は50% のス トレッチで巻 いて -8 0- 大阪市立大学看護短期 大学部紀要 い く。それ を得 る為 には、下腿-巻 きごとに、い ったん 第 3巻 ( 2 ∝) 1 . 3) 生率は米国ほ ど高 くない。 しか し、履物が靴 中心 にな り、 00%、つ ま り最大 に伸展 させ、次 に、お お よそ 包帯 を1 食生活や生活習慣 の欧米化 に伴 って、今後増加す る可能 その半分の長 さになるまで緩めて巻 く。そ して、足関節 性 は高い と考 え られる。 よ り中枢へ向かって巻いてい く際 には、 らせ ん帯 ではな 欠点 は、 まるでギプスの よ うに下肢が被 われ るため、 く、 8の字 を描 いて しっか りと巻 く。下地 の包帯 がある. 外見が良 くな く、包帯 の厚 みのため、靴が はけな くなる ため、ゆるむことはない。 ので、専用 のサ ンダルが必 要 な点である。 最後 に、固定 のための第 4層 の包帯 をま く。 これはコ Co ba n) と言 う、包帯 どう しだけ互い に接着す -バ ン ( 3. ウンナの ブーツ ( Unna sboo t ) る包帯である。 ごわ ごわ した肌 ざわ りであるが、 クッシ 圧迫包帯 の一つ だが、 で 、 ウ ンナの ブー ツ ( Unnas ョン機能 もあ り、包帯のゆるみ を防 ぐとともに、下肢 を b 0t ) と呼ばれ るもの もあ り、 これは亜鉛華、ゼラチ ン、 0%のテ ンシ ョンで 保護す ることがで きる。 この包帯 も5 カラマ インな どを成分 とす る軟膏 を塗布 した包帯で巻い らせ ん帯 に巻 く。最後 に、全体 に包帯 を手 で圧迫 して、 てその上か ら前述 した コ-バ ンで巻 き、圧迫 と消炎作用 しっか りと固着 させ る ( 写真 2) 0 の両方 をね らった ものである。巻 き方 は、下腿 にスキ ン 以上がおお よその巻 き方であるが、巻 く前 には、必 ず ケアを行 った後、つ ま先 か ら膝関節下 1イ ンチ まで、- 皮膚 に生理的食塩水 をスプ レー して洗 い、湿疹 ・ドライ 5-8 0%をオーバ ーラ ップす る ように巻 いて 巻 きごとに7 スキ ンなどに対 してスキンケアをし、潰癌がある場合は、 い く。軟膏包帯 その もの には伸縮性 は全 くないが、わず 創部 の ドレッシング材 を貼付 した後 に巻 く。複雑 なよう かにテ ンシ ョンをかけ、下腿 の周囲径 の変化 に合 わせ、 だが、熟練 したWOCナースは、 うっ血で肥大 した下肢 小 さなプリー ツをつ くって しわが寄 らない よう、十分 に を軽 々 と扱 い ( 私 た ち もリフ トを手伝 ったが、結構 な重 0%ス ト フ イッ トさせ て巻 く。 その上 か ら、 コ-バ ンを5 労働 であ った)、 にこやか に処置 をすすめ、おお よそ片 レッチ、5 0%オーバ ー ラ ップ させ て巻 く。私 も実際 に試 方の下肢で 5-1 0 分 もあれば見事 な手際で巻いて しまう。 したが、 ひんや りとした感触 は心地 よ く、適度 な圧迫が プロフォアの交換 は、 5-7日ご とに行 うが、凍傷部 の あ り、外 したあ とも皮膚 は滑 らかであった。 プロフ ォア ドレッシ ング交換 のため にそれ よ り早 く交換す る ことも na l sboot よ りは、 よ り早 く効果があ らわれ、 の方が、Un 1 0である。 ある。価格 は、お よそ$ 費用 も安い との ことであ ったが、静脈性潰壕 の管理 とし プロフ ォアの効果 については、治癒率 は約8 0% と非常 てはゴール ドス タンダー ドで ある との ことであった。 に高い。私 たちは、 プロフォア使用 中の患者 の 1週 間か 4.下腿溝癌の スキ ンケア と ドレッシングの使用方法 0日間の実際の経過 を観察す ることがで きたが、事実、 ら1 下肢静脈性潰癌 の場合 には、前述 した弾性 包帯 を巻 く かな り重症 な下肢浮腫が、み ごとに軽減 してい るの を目 に した。 前 に、創部の処置 とスキ ンケアを必ず行 う。血液が うっ 日本では従来、浮腫軽減 のため に弾性包帯や弾性 ス ト 滞 した下腿 は、角質層 が肥厚 し、全体的 にか さか さした ッキ ングをす るのが一般的であるが、皮膚潰蕩 を伴 った ドライスキ ンで、鱗屑 がみ られ、掻痔感が強 い ことが多 り、皮膚 の角質が肥厚 して炎症 を伴 ってV、る場合 、ある い。WOCナー スたちは、生理 的食塩水 をス プ レー して いは非常 に重症 な浮腫がある場合 には、弾性 ス トッキ ン ガーゼで きれい にふ き取 り、清潔 に した後 に、 ワセ リン グで は、皮膚 の保護 や、有効かつ一定 の圧力 を保持す る や カルモセブチ ンとい う軟膏 、あるいはハ イ ドロコルチ 機能の点で効果が低 い、 と ドロシー先生 は教 えていた。 ゾ ンをていねい に摺 り込 んでいた。 潰蕩部 も同様 に生理 的食塩水 ( 未滅菌) をスプ レー し 日本では米国 と異 な り、 この ような重症 の下腿潰壕 の発 」と我 々は質問 したが、「病 て洗 う。「 未滅菌で良いのか ? 院の環境 は清潔 だか ら未滅菌 で も問題 はない。在宅 ケア ではそ うはいか ないので、滅菌 した生理的食塩水 を用 い ることがあ る。」 と意外 な答 えが返 って きた。経験 的 に 未滅菌 の生理的食塩水 の使用 で感染 をお こ した例 はない そ うで あ る。 生 理 的 食 塩 水 の 他 、 創 洗 浄 料 (例 ; Shur Cl e ns ) もよ く用 い られていた。 下腿潰壕 の創部 は、非常 に浸 出液が多いのが特徴 であ る。そのため、創部 の周囲の皮膚が浸軟 しない ように、 綿棒 を使 ってていねい にカルモセ ブチ ンな どの軟膏 を創 部 を取 り巻 くよ うにぬ って、皮膚 を保護 していた ( 写真 3)。創部 には、 アルギ ネ- ト材 をた っぷ りのせ 、 さら Ada pt e c, J o hns on&J o hns on社製) と にアダブテ ィック ( 写真 2 プロフォアによる下腿 の圧迫 い うワセ リンを塗布 した 目の荒 い メ ッシュガーゼ ( ソフ -81- 大阪市立大学看 護短期大学部紀要 ユール をイメージ していただ きたい) を置 く。 目的は、 Ⅲ. ドレッシングの選択方法 創部 と ドレッシ ングが固着す るの を防 ぎなが ら、アルギ 1.選択 の原則 01 ・ 3) 第 3巻 ( 2 ネ- ト剤 を固定す るためである。その上 に接着性 の無 い 前述 の下腿潰壕 に用いた ドレッシ ングは、過剰 な浸 出 半透過性 ポ リウ レタンフ ォーム ドレッシ ング ( 例 ;L y & 液 の吸収 、壊死組織 の 自己融解 を促 進、創部 の被覆 を目 f or m,スポ ンジ状 の ドレッシングで、外側 はポ リウ レタ 的 としている。創部 の状態 に応 じて どの ように ドレッシ ンフイルム) をのせて、 さらに浸 出液 を吸収 させていた。 ングを選択 す るか は、WOCナース の重 要 な役割 の一つ であ り、講義で も詳 しく教 わる点である。内容 は、 さま ざまな ドレッシ ングの種類 、 目的、使用方法 、禁忌 な ど であった。特 に、選択 の原則 として ドロシーが示 した考 え方が非常 に理解 しやす い もので あ った ( 図 1)。 す な we t o rd r y) と、 わち、創部は湿潤 している乾燥 しているか ( 浅 いのか深 いのか ( s ha l l o wo rdee p) 、の 2つ の尺度 を 組み合 わせ て判断す る とよい と言 う。浸 出液が過剰 に分 泌 される ような ら、 アルギ ネ- ト材 や フ ォーム材 な ど吸 収す る機 能 を持つ ドレッシ ング、乾燥 してい るな ら、湿 潤 を与 えるハ イ ドロコロイ ドドレッシ ングや固形 ジェル シー ト状 ドレッシ ングな どを選択す る。一方、浅 ければ 覆 うだけで よいが、深い場合 は空 間を充填す る もの を選 ぶ。吸収性 のある充填材 と しては臨床 では アルギ ネ- ト 写真 3 下腿溝 痔の処 置 5.WO Cナ ースが行 うデ ブ リー トメン ト 壊死 した組織があれ ば、デブ リー トメン トを行 う。完 全 に壊死 し、健常 な組織 と分離 して切 除で きる壊死組織 材が最 も多 く用 い られていた。 トンネル状 の狭 い創 部 に Sa l t )が用 は高張性 の リボ ン状 の ガーゼ ( 商 品名 ;Me い られることもあ る。被覆す る機 能 として は、 日本 と同 様 、ハ イ ドロコロイ ドドレッシングやポ リウ レタン ドレ ッシング も用 い られていた。 ns e va r i t v eWo undSha rp の外 科的デブ リー ドメン トはCo De br i deme nt( CWSD) と呼 ばれ、米 国のほ とん どの州 でWOCナースが合法的に行 える処置である。私 たちは、 学校 でデブ リー トメ ン トの トレーニ ングをうけた。練習 は最初 にオ レンジを用 いる。 メスや勢刀 を用いて果肉を 健骨組織 、皮 を壊死組織 に見立 てて切 除 してい く。次 に なん と、豚足 が出て きて、 これ も、皮 下組織 と真皮 をち ょきち ょき切 ってい くとい う、実習だ った ( 写真 4)0 WOCナース は、外 科 的デ ブ リー トメ ン トを実 によ く 行 っていたが、壊死組織 のみ を選択 的 に融解 ・除去す る 化学 的デブ リー トメ ン トも頻繁 に行 われていた。尿素 と Ac c up e) パパ イン酵素が含有 された、 アキュザ イム ( とい う軟膏が非常 に よ く使 われていた。 図1 写真 4 オレンジや豚足を用いたデブリートメントの トレーニング -8 2- ドレッシングを 2つの尺度の組 み合 わせ で 選択 す る 大阪市立大学看護短期 大学部紀要 第 3巻 ( 20 1 . 3) 2.皮膚被膜剤 に よる皮膚 の保 護 とクラステ ィングテ ク ニ ック テープを貼付 す る ときな どは、彼 らが特 に注 意深 く皮 膚被膜材で皮膚保護 を行 っていた ことが印象的であった。 最 もよ く用 い られ ていたのが、 アル コール を含 まないキ ヤ ピロ ン ( ス リーエ ム製)である。 テープ類 を貼 る とこ ろには、必 ず スプ レー していた。 さらに、私 たちが非常 に驚 いた、 クラステ ィングテ ク c ms t i ng t e c hni que)を紹 介 したい。 ス トーマ ニ ック ( の皮膚保護材貼付 部 のび らんに対 し、皮膚保護 剤 パ ウダ ー を散布 した後 キ ヤピロ ンをス プ レー して固め る こ とを 2-3回繰 り返す。パ ウダー に よって浸 出液 を吸収 しな 写真 5 ABt の測 定 は初診 時 に必 ず行 う が ら弱酸性 に保 って静菌作用 を期 待 し、 ス プ レー に よっ て便 な どに よる汚 染 を防 ぐテ クニ ックであ る。 これ は帰 国後 自分 で も試 したが、非常 に効 果 が あ る。便漏 れ な ど 脈 の血圧 を測定 す る。 その収縮期血圧 を上腕動脈 の収 による皮膚 のび らんでは、早 い人 は 1日で上皮化 す る。 縮期 血圧 で 除 し、指 数 を割 り出す。 0 . 8以 下 は下肢 の ドロ シー先 生 に よる と、 ア メ リカ中のWOCナ ー スが用 血管 障害 を意味す る。 いてい る、非常 に効果 があ るテ クニ ックだ との こ とだ。 ⑥ モ ノフ ィラメ ン トに よる、知覚神経 の チ ェ ック ( Se m e s J We i ns t e i nMo no 丘l a me ntTe s t )3)4)。数種類 の Ⅳ.フッ トケアの実際 プラスチ ックの太 い繊 維 を用 い るが、最初 に用 い るの . 0 7 番である。患者 に閉眼 して もらい、第 1,第 3, は5 1. フッ トケアの重要性 前述 した とお り、今 回研修 した病 院でみ た慢 性 創傷 は 第 5足虻 の先端 、 その足祉 のっ け根 の足底 、足底 の鍾 下腿潰傷 、糖尿性 足病変が圧倒 的 に多 か った。病 院の一 0 度 にお さえ、やや たわむ く 側 をモ ノフ ィラメ ン トで9 つ、 De c a t urHo s pi t lの創傷 ケアセ ンターの外 来 で は フ a らい に圧迫 す る。患 者 には、いつ、 どこに触 れてい る ッ トケアが必 須 の技術 で あ る。 またエ モ リーのWOCナ か を答 えて もらう。 も し、感 じなか った場 合 には、 さ ース養成 コースで は フ ッ トケアに重点 を置 いてい る。私 1 0番 に に交換 して,再 びチ ェ ックす る。 らに太 い 6. たちは ドロシーの研 究室で、直接 フ ッ トケアの方法 につ これによ り、足部 を保護す る知覚神経 をチ ェック して、 外傷等 に よる糖尿 病性 足病 変 の可 能性 を推 測す る。 いて教授 を受 けた。 フ ッ トケアは単 なる足 の ケア とい う だけで な く、下肢 の循環 、神経系 を含 めて総合 的 にアセ ⑦ 両 下肢 の アキ レス腔 反射 、膝蓋腔 反射 のチ ェ ック。 他 に、音 叉 よる振 動覚 、 目を閉 じて足虻 を動 かす位 ス メ ン トしなが ら、足 の皮膚 ・爪 のケア を行 う技術 が行 置覚 のチ ェ ックを行 う。 われ てい る。 ⑧ 足指 と爪 のチ ェ ック。足虻 はハ ンマ ー トウや指 の重 2. フッ トケアの方 法 な り、外 反母虻 な ど変形 が ないかチ ェ ックす る。爪 は 下肢 とい って も、観察 や ケアは主 に膝 関節 よ り末梢 側 長 さ、厚 さ、色 、匙 を使 って、足 爪特 に第 1祉 を ぐる になる。患者 はゆ った りと座 り、足 を投 げ出す。 ナース っ と爪床 よ りリフ トア ップ し、爪床 と爪が接着 してい は以 下の手順 で アセ ス メン トや ケアを行 う。 ないかチ ェ ック。爪 の周 囲 を圧 して痔痛 や腫脹 の有無 ① 両 下肢 の脈拍 のチ ェ ック ( 足背、後腰骨 、膝 席) を確 かめ る。 ② 皮膚 の色調 、温 度、性状 のチ ェ ック。 上 か ら下へ。 ⑨ 爪が伸 びていれ ば、足 爪専 用 ニ ッパ ーで切 る。爪が 左 右差 が ないか比 較 しなが ら、 同時 にチ ェ ック してい 飛 ばない よ うに人差 し指 で ガー ドす る。陥 入爪 の徴候 く があれ ば、 アル コール綿 を細 長 く切 って足虻 の下 に挿 。 ③ 入す る。 (コ ッ トンボール テ クニ ック) 両足虻 の毛細血 管床 の戻 りをチ ェ ック。指先 で親祉 先端 を圧迫 し、 白 くなった ところで指 をはな し、血液 ⑲ 爪 は紙 やす りを用 いて、滑 らか にす る。 2方 向 にか けて もよい。 の色が戻 る までの秒数 をチ ェ ック。 ④ ⑪ 下肢 、足 の皮膚 をチ ェ ックす る。 タコや魚 の 目な ど 下肢 を片方ずつ挙上 し、その後 下 にお ろ して、足背 があれ ば、 メス を水平 に用 いて慎 重 に削 り取 る。 の静脈 に血流が満 たされるまでの時間をチェ ックす る 。 ⑫ ⑤ ABI( An kl e Br a c hi a lI nde x,又 はAnkl e Pr es s ur e ドリル に よる削 り取 り ( 写 真 6)D やす りを使 い分 I nde x)のチ ェ ックを行 い、下肢 の循環動 態 を アセ ス けて角質化 した皮膚 を削 りとる。感染 を防 ぐため にマ メ ン トす る 2) 。上肢 の血圧 を両側 で測定す る。次 に足 ス クとゴー グル をす る。 背又は後腔骨動脈 の拍動 を ドップラーを用いて捉 え ( 写 ( 用 いた ドリルの先端 は感 染予 防のためサ イデ ックス 真 5)、足 関節 上 をマ ンシェ ッ トで圧迫 して下 腿 の動 液 に1 0分 間浸 漬す る。 その他 の もの は、 アル コールで -8 3- 大阪市立大学看護短期大学部紀要 拭 く) 01 ・ 3) 第 3巻 ( 2 最 も多 い通常 の壊死 組織 の デブ リー トメ ン ト、 ドレッシ そ の他 、靴 が足 にあ ってい るかのチ ェ ック も含 まれ ングの選択 は まった くWOCナ ー ス の役 割 で あ り、 自 ら てい た。簡単 で面 白か ったの は、紙 の上 に素足 を置い 判 断 し、記録 し、病棟 のス タ ッフナ ースや ホ ームケアナ て足 型 を と り、その上 に靴 をのせ て足 型 と靴 が あ って ースに指示 を出す。医師 はWOCナース に慢性 創傷 の 日々 い るか をチ ェ ックす る ご く簡単 な方法 で あ る.Wo° の ケアを まかせ る こ とがで き、本来 の治療 に専念 で きる ナ ースたちは、非常 に簡単 だが、効果 なアセス メン ト のであ る。 方法 を知 ってお り、 それ らは ケア と一体 になって、一 その他 、患者 に対す る教 育 や、 ス タ ッフナ ースの教 育 連 の手順 と して完成 されてい た。創傷 ケアセ ンターの もWOCナ ースの役 割 で あ る。多 くのパ ンフ レ ッ トをそ 初 診患 者 は、医 師 とWOCナ ース の両 方 が診 察 し、下 ろえ、各病棟詰 め所 にアセ ス メン ト方法 をポス ター に し 肢 の アセス メ ン トを行 う。 プ ライマ リー な問題 をチ ェ て貼 りだ し、病 院で の創傷 ケアシス テム を構 築 ・維持 す ック し、 よ り精査 が必 要 と判 断 されれ ば、適切 な医師 るの も彼 女 らの重 要 な仕事 で あ っ た。 そ の他 、WOCナ に診察 を依頼す るシステム になってい る。 ース養成 コースの プ リセ プ ター と して、実 習指導 に もあ た ってい た。 V.院 内 でのWOC ナ ー スに よ る創傷 ケ ア システムづ く り おわ りに も う ひ とつ の 研 修 病 院、 De ka l b De c a t ur Me di c a l ce nt e r で はPr e bbl eSmi t hE. T. につ い て、創傷 ケアの実 WO Cナースの制度が始 ま り、ス トーマケア、 日本では、 践 を見学 して まわる こ とがで きた。 この病 院 は病床数約 3 0 、二 人のE. T. で、院内の慢性 創傷 ケ アを行 ってい る。 蒋癒 ケア、失禁 ケアを中心 に発展 をは じめた状況であ る。 wo undOs t omyCo n血e n c eCa r eCe nt e r が 3階 の廊下 の 今後 、様 々 な慢性 創傷 ケアが ナースの専 門分 野 と して確 すみ にあ り、今 回は入 院患者 の ケアを中心 に見学 した。 立 されてい くと考 え られ る。私 た ちは、米 国の実践 に学 pr e bbl eに、現在 の創 傷 ケ アの シス テ ム を どの よ うに し びなが ら、質 の高 い ケア を実践 で きる、優 れ た臨床 家 を て作 ったか を尋 ねた。 この病 院で は1 9 8 1 年 か ら専 門的創 育 て る専 門的看護教育 の必 要性 を痛 感 した。最後 に、 日 傷 ケ ア を始 め たそ うで あ る。最初 は医 師やス タ ッフナー 米 の関係 者 の方 々 に、 この研修 の機会 を与 えていた だい r e bbl e スの理 解 はなか なか得 られ なか った。 そ こで、 P た こ とに深 く感謝 したい。 は様 々な働 きか けを考 え、 1年 に 2回各病棟 で ワー クシ ョップを行 い、創傷 ケ アにつ いての教 育 を行 った。各病 棟 のス タ ッフの中か ら A le r tNu r s eを決 め、A le r tNur s e 【 引用文献】 か ら病棟 の創傷 な どの情報 を得 るようなシステムを作 り、 1) 永 野 み ど り、前 川厚 子 ,佐 藤 エ キ子他 :日本 のET ナ ース な らび にWOC認定 者講 師 にお け る看 護 の専 徐 々 に理解 を得 てい ったそ うであ る。 Ⅵ.創傷 管理 にお けるW O C ナ ースの専 門性 門教 育 , 日本ETt S会学術雑誌 , 1 ( 1 ): 1 2 1 8, 1 9 9 7 . 2) 加 藤 久和 ,高 田徹 , 鳥居修 平 :下肢 糖尿 病性 潰傷 医師の創傷管理 は薬物療法や外科的療法 に着 目す るが、 WOCナ ース の専 門性 は治癒 に最 も適 切 な ドレ ッシ ング の病 態 と治療 ,形 成外 科 ,4 1( 4 ): 3 1 7 3 2 8 , 1 9 9 8 . や包帯類 の選択 に よ り、保存 的 に行 う管理 にあ る。実際 両者 の治療 を組 み合 わせ て、薬物 の指 示 は医師が 出 し、 3) 椎名喜美子 ,仲 木右 京 :末梢 神経損 傷 の知覚評価一 知 覚 再 教 育 に向 けて ,作 業療 法 , 5( 2): 2 3 42 3 5, 1 9 8 6 . 大 き な外 科 的 処 置 を 要 しな い 創 部 の 処 置 は 、 す べ て 4) hu r e l A. Wi e r s e ma Br ya nt ,Br uc eA.Kr a e me r : Va s - WOCナ ース が行 って い た。 また、入 院患 者 に対 す るケ c ul r a a nd Ne ur o pa t hi c Wo unds :The Di a be t i c Wounds ,Ru 血 A.BⅣa nt ( ed) .Ac ut e & Chr oni c Wo undsNur s i ngMa na ge me nt , p 3 0 6,Mo s b y,2 00. の治 療 は医 師 とWOCナースが共 同 して患 者 を診察 し、 アで は、極端 な見方 をす れ ば、包帯交換係 の よ うに次 々 とプ ロフ ォアの巻 き直 し、 フ ッ トケア、蒋唐 の ドレッシ ング交換 とこな していた。 しか し、創部のアセス メン ト、 -8 4-