...

下請制工業の本質に つ いて

by user

on
Category: Documents
12

views

Report

Comments

Transcript

下請制工業の本質に つ いて
染
谷
孝
太
郎
わ れ わ れ は 、 戦 後 の 今 日 に お い て さ え も 、 日 本 資 本 主 義 の構 造 的 変 化 に つ い て の 理 論 的 研 究 と 、 故 小 宮 山 氏 の戦 前
ら 批 判 さ れ な が ら も 、 そ の ま ま 採 用 さ れ て い る 場 合 が 非 常 に多 い 。
故 小 宮 山 氏 の ﹁日 本 中 小 工 業 研 究 ﹂ に お け る 、 巾 小 工 業 の 本 質 規 定 と そ の存 立 形 態 に 関 す る 分 類 と は 、 多 く の 論 者 か
戦 後 、 日 本 資 本 主 義 が 変 容 し 、 そ れ に と も な って 、 そ の構 造 分 析 と 中 小 工 業 研 究 が 一目 発 展 し た に も か か わ ら ず 、
つ で あ る 。 賛 否 いず れ に し ろ 、 氏 の著 書 か ら の 引 用 が な さ れ な か っ た こ と は 、 ほ と ん ど そ の例 を み な い ほ ど で あ る 。
故 小 宮 山 氏 の ﹁日 本 中 小 工 業 研 究 ﹂ は 、 こ の分 野 に お い て 、 戦 前 、 戦 後 を 通 じ て も っ と も す ぐ れ た 理 論 的 研 究 の 一
故 小宮 山 琢 二氏 の存 立 形 態 論 に つ いて
中 小 企 業 論 に お け る ﹁問 屋 制 マ ニ ュフ ァ ク チ ュア ﹂ に つ い て
小 宮 山 氏 と 対 比 さ れ た 意 味 に お け る藤 田 敬 三 氏 の 下 請 制 工 業 論 に つ い て
故 小 宮 山 琢 、一
氏 の 存 立 形 態 論 に つ いて
小 宮 山 琢 二 ・藤 田 敬 三 両 氏 の下 請 制 の 理 論 に よ せ てー
下 請 制 工業 の本 質 に ついて
1
一
二
三
(95>
下 請 制工 業 の 本質 につ い て 一
一
95
96
学
論
叢 一
商
一
(96)
の研究 成果 を十 分 検 討 し て、 こ こから中 小 工業 研 究 を 反 省 的 に出 発 さ せなけ れば な ら な いよ う に思 わ れ る 。
故 小 宮 山 氏 は、 ﹁中 小 工業 一般 で はな く 日本 の工業 生 産 のな か で大 工業 と し て確 立 し て いな い工業 経 営 の社 会 的 経
済 的 内 容 と発 展 傾 向 を 朋 ら か にし、 そ の複 雑 な 構 成 層 に歴 史 的角 度 を与 え﹂ る こと を目 的 と しなが ら、 ﹁日本 中 小 工
業 が存 立 す る か た ち を生 産 資 本 確 立 の視 点 から﹂ 次 のよう に規 定 さ れ て いる。
﹁ (A ) 中 小 工 業 の独 立形 態
(B ) 中 小 工 業 の従 属 形態
(1) 支 配者 が問 屋 あ る い は商業 資 本 輸 出 貿易 資 本 百 貨 店 資 本 等 たる場 合 (問屋制工業)
(a) 下請 業者 の生 産 が 資 本 家的 生産 たら ざ るも の (
旧問屋制工業あるいは家内工業)
(注 1 )
(b ) 下請 業者 の生 産 が 一応資 本 家 的 生 産 の内 容 を備 え て いるも の (
新問屋制工業)
(2 ) 支 配 者 が 大 工 業 、 あ る い は 工 業 資 本 た る 場 合 (下請 工業 )﹂
以 上 の 小 宮 山 氏 の 中 小 工 業 の存 立 形 態 に お い て 注 意 す べ き 点 は 次 の諸 点 で あ る 。
(一) 中 小 工 業 の 従 属 形 態 だ け が 問 題 に さ れ て お り 、 そ の 独 立 形 態 の 究 明 が ほ と ん ど 除 外 さ れ て し ま っ て い る こ と
であ る 。
す な わ ち 、 (A ) の 独 立 形 態 の う ら に は 、 ﹁前 期 的 要 素 ﹂ を 含 ん で い る 独 立 手 工 業 と 、 ﹁資 本 家 的 生 産 を 営 み な が
ら 、 需 要 そ の他 の事 情 の た め に大 工 業 た り 得 な い 工 場 制 工 業 ﹂ が 存 在 す る 。 こ と に後 者 は 、 ﹁大 工 業 へ向 う 生 産 集 中
の過 程 に あ る﹂ も の と 考 え ら れ 、 中 小 工 業 問 題 か ら 除 外 さ れ て い る 。
し か し 、 氏 が 考 え る よ う に 、 中 小 工 業 が 大 工 業 へ向 う 生 産 集 中 の過 程 な ど 、 原 則 と し て 日 本 資 本 主 義 に お い て は 考
え 得 ぬ 方 向 であ る 。 す な わ ち 、 マ ニ ュ フ ァ ク チ ュ ア や 手 工 業 が 産 業 革 命 の恩 恵 を う け て 工 場 制 工 業 化 し た ち ょう ど そ
(97)
下 請 制工 業 の本 質 に つ い て 一
一
97
のとき 、 目本 資 本 主 義 の頭 部 に は独 占資 本 が形 成 さ れ、 そ れ ら は中 小 工業 化 す る 以外 生 き る べき 道 を与 え ら れ な か っ
た。
こ のよ う に し て形 成 さ れ た 中 小工 業 は、 独 占 資 本 のも と に直 接 ・間接 に従属 し て下 請 ・再 下請 化 す る半 面 、独 立 中
小 工 業 と し て存 続 し た。 こ の場 合 、独 立 中 小 工 業 も 、 独 占資 本 の経済 的支 配 から 絶 対 的 に独 立性 を保 持 し得 た ので は
な く 、 独 占価 格 、 原 材料 供 給 、市 場 、 資 金 、技 術 、 重 税 など の方 面 か ら独 占 資 本 の体 制 的 圧 迫 を受 け て 、原 則 と し て
大 工 業 化 す る道 を遮 断 さ れ た 。今 日 にお いて は、大 工業 で さ えも 、 独 占資 本 の体 制 的収 奪 に よ って中 小 工業 的 存 在 に
お か れ て いる。
独 立中 小 工業 と い われ る場 合 の ﹁独 立 ﹂ は 、相 対 的 意 味 におけ るも の であ って、そ れ 以 外 の意 味 を も たな い。 し た
が って 、 従属 形態 だ け が中 小 企 業問 題 の範疇 に含 め ら る べき も の では な く、 独 立形態 も中 小 企業 問 題 の 一環 と し て重
視 さ れ なけ れ ば な ら な い。
小 宮 山 氏 の中 小 工 業 の独 立 形態 の理 解 は、 この方向 に 再編 成 され な け れば な ら な い。
(二)、氏 にお いて は、 従 属 形 態 は ﹁社 会 的 経 済 的 非 独 立性 と いう 視 点 か ら 工業 発 展 の異 な る 段階 に位 す る経営 を 一
括 し﹂、 ﹁こ の中 か ら近 代 性 と 前期 性 を飾 い分 け ﹂ て得 ら れ た も のであ る。 す なわ ち、親 資 本 の性 格 (
商業資本なり や
産業資本 なりゃ)と 下請 業者 の性 格 (
家内工業 なりゃ近代資本家的工業なりや)と のそ れぞ れ の場 合 にお け る 組 合 せ によ つ
て、従 属 形態 の分 類 が 行 な わ れ て いる。
問 屋 制 工業 は、中 小 工 業 が 商業 資 本 に従 属 す る場 合 の形態 であ り、 下請 工業 は 、そ れが 産 業 資 本 (工業資本)に従 属
す る場 合 の形態 であ る。
(1) 問屋 制 工業
叢
論
学
98
一'商
(98)
a 、旧 問 屋 制 工 業
﹁筆 者 (
小 宮 山 氏) が 旧 問 屋 制 工 業 と 呼 ぶ の は 、 問 屋 あ る い は 商 業 資 本 が 直 接 生 産 に 従 事 し な い商 人 で 、 下 請 業 者
が ま った く 資 本 家 的 性 格 を も た ず 、 生 産 が 機 械 お よ び 原 動 力 を 使 用 せ ず に 行 な わ れ る 場 合 で あ る 。 具 体 的 に は さ ら に
(i ) 農 家 の細 君 や 娘 が 織 元 か ら 糸 の 支 給 を 受 け て賃 機 を す る 場 合 (
農 村 的家 内 工業 )、 (︰
11) 大 都 市 こ と に ス ラ ム の自
宅 で 材 料 を 支 給 さ れ て な さ れ る 、 い わ ゆ る 内 職 の 場 合 、 た と え ば 、 鼻 緒 、 刺 繍 、 裁 縫 、 製 本 、 セ ル ロイ ド 、 玩 具 、 マ
(注 2 )
ッチ箱 貼 な ど (
内 職 的家 内 工業 )、 (揃 ) 手 工 業 的 親 方 が 問 屋 に依 存 し て 生 産 に 従 事 す る 場 合 、 漆 器 、 焼 物 、 金 物 等 (
職
新 問 屋制 工業
人的家内 工業) の三 つ の形 態 に分 つ ことが でき る ﹂。
b
﹁筆 者 (
小宮山氏)が 新問 屋 制 工 業 と名 付 け る のは、 下 請 業者 が商 業 資 本 家 あ る いは問 屋 の支 配 下 に立 ち な が ら機
械 お よび 原 動 力 を 使 用 す ゐば か り で はな く 、多 く の賃 労 働 者 を 雇用 し、 一応 工 場制 の組 織 と条 件 を持 ち、 そ こ に拒 み
難 い現 代 的 特 質 が 見 い出 さ れ る 場合 であ る。 ⋮ ⋮新 問 屋 制 工業 の下 請 業者 は 、
(
i) 手 工 と 単純 協 業 の代 り に分 業 と機 械 力 お よび 動 力 を 使 用 し、
(注 3 )
(
^
11) 自 己 お よ び家 族 の労 働 力 よ り む し ろ雇 用 労働 力 に依 存 し、 農 婦 や家 婦 の半 端 な 労力 で は なく 、 完 全 労働 力 に
よ る規 則 的 生産 に向 い、
下請 工業
(
垣 ) 下 請 業 者 と は い え 直 接 労 働 者 で は な く 、 経 営 主 あ る い は 雇 主 と し て の社 会 的 性 格 も お び て い る -::﹂。
(2)
﹁支 配 の 主 体 が 商 業 資 本 で は な く 工 業 資 本 と し て 、 つま り 支 配 が 工 業 資 本 、 あ る い は 産 業 資 本 の機 能 化 と し て 現 わ
れ る 場 合 に は 、 た と え 、 同 じ 下 請 の 名 の 下 で 従 属 が 示 さ れ て も 、 そ の社 会 的 経 済 的 内 容 は 余 程 変 っ て く る で あ ろ う 。
(99)
請 制 工 業 の 本質 に つ い て 一 一
一R下
99
・
:⋮ も っと も 純 粋 な か た ち で下 請 工 業 を 想 定 し て み る と 次 の ご と き 特 徴 を 拾 い 得 る よ う だ o
(
i ) 支 配 者 た る 大 工 業 は 、 生 産 の 基 本 的 部 分 を 運 営 す る 内 部 的 主 導 者 であ り 、 下 請 は 生 産 工 程 の 中 の 係 り 合 い で
(注 4 )
あ る こ と 。 こ の 点 問 屋 制 工 業 が 原 則 と し て 生 産 の外 部 に 立 ち 、 新 間 屋 制 工 業 の 場 合 の ご と く 部 分 工 程 を 掌 握 す る こ と
が あ って も 、 そ れ が 多 く 生 産 の商 業 的 金 融 的 支 配 の手 段 で し か な い の と 対 比 的 で あ る 。
(
︰
11) 支 配 者 の 根 拠 が 生 産 外 部 か ら の 前 期 的 収 取 で は な く 巨 大 資 本 に よ る 小 資 本 の 圧 倒 で あ る こ と 。
(
■
●
-) 親 工 場 と 下 請 と が 生 産 工 程 上 の関 係 を も っ て多 か れ 少 な か れ 右 機 的 に結 合 す る こ と 。
(・
V) そ れ 故 下 請 工 場 は 産 業 資 本 の諸 条 件 を 十 分 備 え な が ら 、 な お 大 工 業 へ の祥 属 者 と し て 現 わ れ 得 る こ と ﹂。
-
以 上 、 小 宮 山 氏 の 中 小 工 業 の存 立 形 態 論 は 、 手 工 業 、,家 内 工 業 、 工 場 制 工 業 等 の 工 業 経 営 の歴 史 的 発 展 形 態 (この
なら べかた は、 カー ル ・ビ ュ ッヒ ァーの工業 経 営 の発展 形 態 に関 し て の考 え方 に基 礎 を お いて いる よう に思 わ れ る) を 基 本 的 な 前
提 と しな が ら 、 しか も 、現 実 に お い てそ れ ら が外 部 から の資 本 た る商 業 資 本 、 も し く は、 工業 資 本 にど のよ う に従 属
す る か を 基 に し て併 列 的 に 考 案 さ れ た も の で あ る と い い 得 る 。 し た が っ て 、 氏 の中 小 工 業 の 本 質 は 、 諸 多 の 工 業 経 営
形 態 を 含 む と こ ろ の 中 小 工 業 が 外 部 か ら い ろ い ろ に各 種 資 本 に よ って 支 配 さ れ る 関 係 を 意 味 す る 。
以 上 、 小 宮 山 氏 の中 小 工 業 の 存 立 形 態 論 に つ い て は 、 戦 時 中 、 山 田 文 雄 氏 が ﹁中 小 工 業 経 済 論 ﹂ の な か で 、
.問 屋 制
括 す る こ とも 不霞
ではあ る 鷲
已 と 批判 し て おら れ る・
工 業 と 下 請 工 業 と は 、 こ れ を 資 本 支 配 の機 能 か ら み る な ら ば 、 ﹁現 実 の存 立 形 態 は す べ て広 義 の商 業 資 本 的 支 配 の場
合 であ って・ そ の意 味 にお いて問 屋 制 工業 と し 三
山 田氏 は中 小 工業 の従 属 形 態 を 論 ず る場 合 、 小宮 山 氏 を 批 判 し な が ら 、中 小 工 業 の支配 者 が 問 屋 的 商業 資 本 であ る
か、 工 場 制 工業 資 本 であ る か には 本質 的 差 異 が 存 在 し な い理由 を次 の よう に説 明 し て い る。
﹁下請 工業 が あ る限 度 を逸 脱 す る とき は、 生 産 行程 上 の有 機 的 結 合 は も は や従 属 性 を意 味 ぜざ る こ とと な り 、単 な
論
学
100
る 外 注 形 態 に ほ か な ら ざ る こ と と な り や す い 。 現 に沿 革 的 に は 特 定 の基 幹 工 場 の純 下 請 と し て 発 生 し な が ら 、 飛 躍 的
に 大 規 模 化 す る こ と に よ り 独 立 性 を 加 え 、 現 在 で は 当 初 の 元 方 工 場 へ の従 属 性 か ら 全 く 解 放 さ れ て い る も の も 決 し て
少 な く な い。・
し か し て 、 こ の 場 合 、 生 産 行 程 上 の 有 機 的 結 合 に よ る 従 属 形 態 と 、 外 注 と の 区 別 は き わ め て 曖 昧 であ っ
て 、 も し 前 者 を 広 く 解 す る と き は 、 わ が 国 工 業 の 大 部 分 は 少 数 の 巨 大 基 幹 工 場 を 中 心 と す る 下 請 工 場 に解 消 し て し ま
う であ ろう 。
も し 右 の ご と く であ る な ら ば 、 小 宮 山 氏 の下 請 工 業 を 一般 外 注 か ら 区 別 す る も の は 、 生 産 行 程 上 の有 機 的 結 合 に 基
く 従 属 性 にあ らず し て 、問 屋 制 工 業 と同様 買 占関 係 に よる 商 業的 支 配 に ほ かな ら な い ので はな いか。 かく 考 え る な ら
ば 支 配 者 が 問 屋 的 商 業 資 本 で あ る か 、 工 場 制 工 業 資 本 であ る か に は 、 本 質 的 な 差 異 が 存 し な い の で は な い か と 思 わ れ
(
注6)
る ﹂。
以 上 、 山 田 氏 が 小 宮 山 氏 の中 小 工 業 の 従 属 形 態 論 を 批 判 す る 場 合 、 小 宮 山 氏 の 下 請 工 業 の 特 徴 の う ち 、 ﹁下 請 は 生
産 行 程 の 中 の 係 り 合 い で あ る こ と ﹂、 ﹁親 工 場 と 下 請 工 場 と が 生 産 工 程 上 の 関 係 を も っ て 多 か れ 少 な か れ 有 機 的 に 結 合
す る こ と ﹂ と い う 点 を 中 心 に 批 判 を 行 な って い る よ う に 思 わ れ る 。
山 田 氏 が小 宮 山 氏 の批 判 を行 な った こ の点 は、小 宮 山 氏 の従属 形 態 論 、 こと に下請 工業 論 に おけ る理 論 的 な 中 心 点
であ り な が ら 、 も っ と も 弱 い 点 で も あ る 。
小 宮 山 氏 は 、 親 工 場 と 下請 工 場 と の生 産 工 程 上 の 有 機 的 結 合 関 係 を 、 価 値 的 に は 等 価 交 換 を 前 提 と し な が ら 、 し か
も 、 問 屋 制 工 業 の場 合 と 比 較 し な が ら 、 両 者 の 技 術 的 関 係 を 次 の よ う に 説 明 し て い る 。 ﹁親 工 場 た る 大 工 業 が 生 産 者
と し て の 地 位 を 保 つ た め に生 産 者 的 良 心 を 要 求 さ れ る こ と か ら 、 問 屋 の ご と く 低 コ ス ト 一点 張 り で な く 下 請 工 場 の 技
術 を 考 慮 し て 、 リ ㌧ ソ ナブ ルな 下 請 単 価 を 決 め ざ る を 得 な い 場 合 、 あ る い は 親 工 場 に よ る 原 材 料 の支 給 が 全 く 一定 規
叢 一
一 一・商
(100)
柁 の資 材 を使 用 す る と いう 技 術 的 要求 に基 づ いてな さ れ る場 合 、あ る いは親 工 場 にょ る原 材 料 資金 の前 貸 を積粁 と せ
(注 7 )
ず 、 仕 事 の技 術 的性 質 から 下請 工場 が親 工場 に従 属 依存 し て いる場 合 等 は、問 屋制 工業 に お い て は見 ら れな か った新
し い現 象 は 下 請 工 業 の右 の ご と き 属 性 か ら の み 理 解 し う る であ ろ う ﹂。
右 の と こ ろ か ら 明 ら か な よ う に 、 問 屋 制 工 業 に お い て は 、 主 と し て 商 業 資 本 に よ る 原 材 料 や資 金 の前 貸 を 積 秤 と し
て 下 請 と の 不 等 価 交 換 収 奪 が 問 題 で あ り 、 そ れ に対 し て 下請 工 業 に お い て は 、 大 工 業 が ﹁生 産 者 的 良 心 に を 要 求 さ れ
る こ と か ら 、 そ れ と 下 請 と の 問 に 下 請 単 価 が リ ー ゾ ナ ブ ル に決 定 さ れ 、 こ の価 値 関 係 に お け る 等 価 交 換 関 係 を 前 提 と
し て 、 生 産 工 程 上 の 両 者 の技 術 的 支 配 従 属 関 係 が 問 題 と さ れ て い る 。
親 工 場 と 下 請 工 場 と の間 に お け る 、 価 値 的 等 価 交 換 関 係 (産業 資本 (工業 資本 ) の紳 士的側 面 ) と 技 術 的 に は 支 配 従 属
関 係 (産 業資 本 の支 配者 的 側 面)と は ど の よ う に小 宮 山 氏 に お い て は 統 一さ れ る の であ ろ う か 。 氏 に お け る 技 術 的 支 配 従
属 関 係 は 、 わ れ わ れ が 考 え る よ う な 不 等 価 交 換 を 当 然 考 慮 に入 れ た (前提 にし た) 支 配 従 属 関 係 を 意 味 す る も の で は
な く 、 大 き い も の と 小 さ いも の と の 援 助 協 力 を 内 容 と し た 相 互 依 存 関 係 に す ぎ な い場 合 が 多 い よ う に 思 わ れ るb
-
し た が っ て 、 両 者 の 関 係 は 、 価 値 的 に は 等 価 交 換 関 係 、 技 術 的 に は 援 助 協 力 11相 互 依 存 関 係 と し て 氏 に お い て は 統
一さ れ て い る 。
以 上 の 点 は 、 氏 が 親 工 場 と 下 請 工 場 と の 生 産 分 化 を ﹁社 会 的 分 業 あ る い は 一生 産 部 門 内 の特 殊 分 業 の実 現 であ る ﹂
必 ず し も な く 、 次 の よ う な 場 合 は例 外 で あ って 、 工 業 資 本 に よ る 中 小 工 業 資 本 支 配 で は な く 、 買 占 資 本 に よ る問 屋 制
次 に 小宮 山氏 に お い ては 、支 配 者 が 大 工 業 、あ る いは 工業 資 本 であ れば た だ ち に下請 工業 が成 立 す る と いう ので は
請 か ら 不 等 価 交 換 関 係 を 通 じ て 剰 余 価 値 収 奪 を 行 な う こ と は ま っ た く 除 外 さ れ て し ま って い る 。
と 理 解 し 、 ﹁生 産 物 は 価 値 ど お り に 交 換 さ れ 得 る ﹂ と い って い る と こ ろ か ら も 明 ら か で あ る 。 こ こ に お い て は 親 が 下
(101)
下 請 制 工 業 の本質 につ い て 一
一
101
叢
102
商
学
論fira
(102)
支 配 の範 疇 に属 す る も のと し て規 定 して いる。
す な わ ち、 ﹁下請 工場 を支 配 す る も のが問 屋 であ る か大 工場 であ る か、 そ のも のと し て問 題 のか ぎ り で な い。 た と
えぽ 、 日本 の機 械 器具 生 産 に お いて多 く み ら れ る よう に、 大 工 場 が自 己 の製 作 能 力 以 上 の仕 事 を受 注 し て 、そ の能 力
を越 え る部 分 を そ のま ま外 部 に下請 せし める場 合 、 あ る いは原 材 料 を ま ったく 商業 的高 利貸 的 要 素 と し て下請 工場 に
前 貸 す る場 合 な ど は、 明 ら か に大 工 場 は 工業 資 本 と し て より む し ろ 買占 資 本 と し て問 屋 制支 配 に お い て機 能 し て いる
と 考 う べき であ り、 こ の傾 向 は筆 者 の いう新 問 屋 制 工業 が 盛 行 す る社 会的 経 済 的 地 盤 の上 では決 し て偶 然 ではな い の
で在聾 ど ・
前 者 の下請 は、 混 成 的 下請 、有 機 的 下請 に相当 す る も ので はな く 、 ﹁大 工場 が 自 己 工 場本 来 の製 作範 囲 の完 成 品 を
そ のま ま下請 せ し める場 合 ﹂ の包 括 的 下請 にあ た るも の であ り 、後 者 は商 業 資 本 が原 材 料 を商 業 的 高 利貸 的 に下 請 工
場 に前 貸 す る場 合 に当 るも の であ る と さ れ て いる。 こ こ に形 式的 には 工業 的 下請 の形 態 をも ち な が ら本 質 的 に は商 業
的 下請 の範 麟 に属 す る 氏 の いう意 味 の新 問 屋 制 工 業 が 存在 す る こ と にな る 。
こ の点 は、 小 宮 山 氏 が商 業 的 下請 と 工業 的 下請 と を明 確 に分 類す る にあ た って混 迷 し た点 であ る 。
括 す る ことも 不 可 能 ではあ る ま い と い って 逗㌍
山 田 氏 は、 小 宮 山 氏 の右 のよ う な点 を 指 摘 しな が ら 、中 小 工 業 の存 立 形態 はす べ て広 義 の商 業 資 本 的 支配 の場 合 で
あ って、 そ の意 味 にお いて問 屋 制 工業 と し 三
頁。
(注 1 ) 小 宮 山 琢 二 氏 著 ﹁日 本 中 小 工 業 研 究 ﹂ 七 頁 。
(注 2 ) 前 掲 書 八- 九 頁 。
(注 3 ) 前 掲 書 九 .
頁。
(注 4 ) 前 掲 書 ○ ー =
(注 5 ) 山 田文 雄 氏 著 ﹁中 小 工 業 経 済 論 ﹂ 一八 頁 。
一
(注 6) 前 掲 書 一六ー 七頁 。
(注 7) 小宮 山氏 前 掲書 三〇ー 一頁 。
(注 8) 前 掲 書 一 一頁 。
(注 9) 山 田氏 は、 前掲 書 にお いて中 小工 業 の現 実 の存 立 形態 は す べ て商 業 資本 的支配 の場 合 に 一括 でき ること を述 べた のち 、
中 小 工業 の各種 の存 立形 態 の特質 は支 配者 の資本 家 的性 質 に求 めら れ るの では なく 、従 属 す る中 小 工業 自体 の生産 行 程 の中 に
求 めら れ、中 小 工業 は (
A )内 職 、 (
B )家 内 工業 、 (C) 下 請 工業 の三形態 に分 類 でき ると し て いる。氏 にお け る内 職 は、
農 村 、大 都 市細 民 街等 の自 宅 で、 婦女 子 老 人等 遊 休労働 力 をも って行 なわ れ る不 熟練 手 工業 であり 、 家内 工 業 は、 住居 と や や
区 別 され た仕 事 場 で、 一家 の主人 が 中 心と なり 、 家族 労 働 と少 数 の徒弟 労 働 力 を使 用 し て行 なう 熟練 手 工業 であり 、 下請 工業
は、 主と し て機 械器 具 工業 に お いて旋 盤 など 少数 の工作 機械 を備 え、 機械 器 具 部分 品 より 完成 品 に いたる各 種 の製 品 を製 作 す
る大 企業 の従属 下 の中小 工業 で あ る (こ のよ う な分類 の仕方 には問 題 が あ る)。
小宮 山 氏 と対 比 さ れ た 意 味 に お け る
藤 田 敬 三氏 の 下 請制 工業 論 に つ いて
,
-、
こめ 点 に つい て藤 田 氏 は次 のよう に要 約 し.て いる。 ﹁元 方 たる 大 工場 が 中 小 工 場 を支 配 す る場 合 に かぎ り、 これ を
支配 、利 潤 追 求 と考 え得 る 。.
資 本 が中 小 工 業 を 支配 ず る場 合 と に お い てあ ら われ るも の であ り 、 双 方 とも 商 業 資 本 の流通 過 程 を 通 じ て の中 小 工業
す る 場 合 にの みあ ら わ れる も ので はな く 、 元 方 工場 の購買 部 の商 業資 本 が中 小 工業 を 支 配 す る場 合 と、 大 商 人 の商業
によ る中 小 工 業 支 配 と の問 にも な んら 差別 が存 在 し な い。 し たが って\ 下請 制 工業 は、 単 に大 工場 が中 小 工場を 支配
本 の商業 資 本 的 性 格 と の間 には、 な んら 差 別 が存 在 し な い。 し かも 、 大 工業 資 本 による 中 小 工業 資 本 支 配 と商業 資 本
あ る こと を 否定 す る論 者 の 中 に藤 田敬 三 氏が お られ る 。 氏 にお いて は、 元 方 工 場 の購 買 部 の商 業 資 本 的性 格 と問 屋 資
山 田 氏 と理 論 的 立 場 は天 分 異 な る が、 一応 、 今 日 の下請 と し て、 商 業 的 下請 と 工業 的 下請 とが 本質 的 に別 のも の で
二
(103)
ド請 制 工 業 の 本 質 に つ い て
一
103
学
論
104
叢 一'
商
一
下請 制 工業 と なす こと は、 そ の商業 資 本 の工業 支 配 の最 高 の形態 た る本 質 を 隠蔽 す る結 果 とも な り 、 工業 の外 部 から
す る支 配 と いう 下請 制 の本 質 の貫 徹 性 を 不 明瞭 な ら し め る と いう 点 にお いて重 大 であ る。 この際 、 元 方 工 場 の購 買 部
の商 業 資 本 的 性 格 と 問 屋資 本 の商 業 資 本 的 性 格 と の間 に 、本 来 そ の差 別 を認 め る べき 理 由 は な い。 下請 の内容 た る加
工過 程 にお いて質 的 相 違 の存 す る こと は、 そ れ自 体 、 資 本 の流 通 過 程 を 通 じ て の利 潤 追求 の性 格 に、 な んら の相 違 を
結 果 す る はず は な いか ら であ る。 かく し て、 私 見 に よれ ば 、 下請 制 工業 は、 上述 によ って明 ら かな ご とく 、.工業 生 産
形態 (工業形態あるいは工業経営形態と い ってもよい)の マ ニ ュ段 階 お よ び 大 工業 段 階 に おけ る 商 業資 本 の工 業 支 配 の 形
(注 1 )
商 業 資 本 た る と 、 元 方 工 場 の 購 買 部 の商 業 資 本 た る と を 問 う こ と を 要 し な い﹂。
さ ら に 、 藤 田 氏 は 、 下 請 制 の 歴 史 的 発 展 形 態 と 存 在 形 態 を 、問 屋 制 家 内 工 業 も し く は資 本 家 的 家 内 労 働
態 の延 長 ﹂ と し て理 解 し て いる 点 であ る。
資 本 で あ る と し て い る 点 で あ る 。 さ ら に 、 今 日 の 下 請 を ﹁問 屋 制 マ ニ ュの 段 階 に お け る 商 業 資 本 の 工 業 資 本 支 配 の 形
場 の 購 買 部 の 商 業 資 本 で あ る 場 合 と 、 問 屋 の 商 業 資 本 で あ る 場 合 と が あ り 、 両 者 と も ま っ た く 性 格 を 同 一に し て い る
以 上 藤 田 氏 の 下 請 制 の 本 質 に関 す る 考 え 方 の な か で 、 誤 り と 思 わ れ る 点 は 、 中 小 工 業 支 配 を 行 な う 資 本 を 、 元 方 工
主 義 段階 であ る と し て いる 。
﹁厳 密 な 意 味 に お け る 下 請 制 工 業 ﹂ を 含 む と し て いる 。 さ ら に 氏 は 、 下 請 制 の最 高 形 態 が 支 配 的 に な る の は 独 占 資 本
る が 、 通 常 、 下 請 工 業 と いう 場 合 、 商 業 資 本 の 工 業 支 配 の形 態 と し て問 屋 制 マ ニ ュフ 一
・ク チ ュア 、 問 屋 制 工 場 下 請 、
制 工 業 ﹂ と し て い る 。 し か も 、 今 日 で も 問 屋 制 家 内 工 業 、 も し く は 資 本 家 的 家 内 労 働 が 下 請 制 の 下 層 部 と し て存 在 す
下請 の歴史 的原 型 だ が、本 来 の下請 では な い)、 問 屋 制 マ ニ ュ フ 一
・ク チ ュア、 問 屋 制 工 場 下 請 、 ﹁厳 密 な 意 味 に お け る 下 請
(発生 的 には
態 であ り 、 そ れ自 体 、 工業 の生産 形態 を意 味 す るも の では な い。 した が って、支 配 す る資 本 が問 屋 ま たは貿 易 商 社 の
(104)
藤 田 氏 は 下 請 制 を 理 解 す る に あ た って 、 資 本 の 実 存 形 態 (
産 業資 本 (丁 業資 本 )、商業 資本 、 貸付 資本 と し ての銀 行 資 本 な
ど の代 表的形 態 を含 む ) と 工 業 資 本 の 機 能 的 循 環 形 態 (
工業 資 本 の運 動 は貨 幣資 本 の循 環 (
Oー 司 ⋮殉⋮司 ﹁ ○、
)、 生産 資本 の
循環 (
勺・
:已く、
ーO、
ー 4<・
:喝)、商 贔資 本 の循 環 (
乞 ﹁ ○、
ー 妻 ⋮喝⋮宅 、
) な ど を含 む) と を 混 同 し て い る よ う に 思 わ れ る 。
の生産黍
化が行なわれる場合 の資本
藤 田 氏 の 大 工 場 が 中 小 工 場 を 支 配 す る 場 合 に お け る 元 方 工 場 の 購 買 部 の 商 業 資 本 と は 、 実 は 、 工 業 資 本 運 動 (Oー
{
暗 )の資 李 あ り、貨幣蒙
,
工業 資 本 家 が 再生 産 過 程 を 中断 せ し めな いた め には 、彼 は 、そ の生 産 を 縮 少 し て、 そ の生 産資 本 の諸 要 素 に転 形す
は中 断 さ れ る か 、 ま た は縮 少 せ し めら れ る。
全流 通 過程 を も 支配 す る 場 合 には、 工業 資 本家 は よ り多 く の流 通 費 用 を 必要 とす る こと にな り 、 そ れ だけ 再 生 産 過程
れ た商 品 を最 終 の消費 者 に販売 す る ま で、 言 葉 を か え て いえ ば 、 工 業資 本 に独 自 的 な 工的 生産 過 程ば か り では な く ∼
今 日 の資 本 主義 社 会 にお いて、 工 業 資 本家 が 、 工的 生 産 に必 要 な諸 商 品 を最 初 の所 有 者 から 購 入 し、 し かも 生産 さ
貨幣 資 本 ・生 産 資 本 およ び 商 品資 本 の相 互 循 環 の過程 でも あ る﹂。
(注 2 )
業 資本 の運 動 過 程 はそ れ ゆ え にま た、 そ の内 部 におけ る 工業 資 本 の機 能 形態 の変 化 の過 程 と し てあ ら われ る と ころ の
工 的生 産 活 動 は生 産 資 本 の循環 が も たら す 商 品資 本 化 の段 階 であ り 、 販 売活 動 は商 品 資 本 の貨 幣 化 の段 階 であ る。 工
る。﹁工業 経 営 活 動 を 工 業資 本 の運 動 の過 程 と し て 理解 す れ ば 、購 買 活 動 は貨 幣資 本 の生 産 資 本 への転 化 段階 であ り 、
て 理解 す る こと なく 、 工業 資 本 におけ る ﹁三 つ の機 能 資 本 ﹂ のう ち の 一つ の資 本 運 動 と し て、 次 のよう に説 明 し て い
田中 豊 喜 氏 は 、 工業 資 本 の購 買 過 程 におけ る貨 幣 資 本 の運 動 を 、 資 本 の実 存 形 態 と し て の商 業資 本 の運 動 に 一括 し
の形態 に 一括 す る こと は 不 可能 であ る。
であ る。 し たが って、 工 業資 本 の購 買 部 に おけ る 貨幣 資 本 に よ る中 小 工 業 支 配 を、 いわゆ る商 業資 木 の工業 資 本 支 配
三 鴫 ・
宇 考と 、
)における警 過程 (
Ωk
(105)
下請 制 工 業 の本 質 に つ い て 一
一
105
106
学
論
叢 一
商
(106)
る資 本 部分 を少 な く し、 より大 き な資 本 部 分 を 、貨 幣 資 本 お よ び商 品 資 本 と し て 、 流 通 過 程 (
購買過程、販売過程) に
機 能 せし めなけ れ ば な らな い。 し た が って流 通 過 程 におけ る資 本 部 分 が 、 つね に生産 資 本 の形 態 で就 業 す る資 本 部分
に比 較 し て大 き く な る から 、 そ れ だけ 再 生 産 の規 模 は縮 少 す る。
工業 資 本 家 の こ のよ う な流 通 過 程 に おけ る活 動 を別 個 の資 本 に委 ね る こと が でき るな ら ば 、 工業 資 本 家 の流通 費 用
はそ れ だけ 節 約 さ れ 、 そ の再 生 産 過 程 への復 帰 は時 問 的 に早 く な り 、 生産 資 本 はそ れ だ け 拡 充 さ れ る こと にな る。 近
代 的 商 業 資 本 は こ のよ う に し て成 立 す る。 ﹁流 通 過 程 に滞 留 す る 工業 資 本 家 の機 能 を 、個 別 的 な特 殊資 本 の特 殊 機 能
(注 3 )
と し て自 立 化 し、 社 会 的 分 業 に よる 、特 殊 な資 本 家 の個 別 的 な機 能 と し て固 定 化 し た も のが こ の商 業資 本 であ る﹂。
商 業 資 本 が社 会 的 に必要 な 比 率 を 超過 し な い場 合 に は、 工 業資 本 の売 買 に必 要 な 資 本 の分 量 を少 な く し 、流 通 時 問
の短 縮 によ って姿 態 転 換 を 速 か にし、 生 産 資 本 の分 量 と 回転 と を速 か なら し め、 も って 工業 資 本 家 の剰 余価 値 生産 と
そ の実現 を倍 加 せ し め る。
し た が って、 今 日 の商 業資 本 は 、 工業 資 本 の流 通 過 程 におけ る活 動 と 同様 の活 動 を行 な う も のであ り、 そ の流 通 過
程 にお け る機 能 を補 促 ・援 助 す る も のと し て別 個 の資 本 た り得 るも の であ る が 、実 在 の商 業 資 本 を 工業 資 本 の流 通 過
程 にお け る貨 幣 資 本 お よび商 品資 本 と 同 一視 す る こと は でき な い。
ふ た た び下請 制 に つ いて であ るが 、藤 田 氏 が商 業 的 下請 も 工 業 的 下請 も ﹁流 通 過 程 を 通 じ て の利 潤 追 求 ﹂、に要 約 で
き る と し て いる点 は、 工業 資 本 の場 合 も 、 問屋 資 本 の場 合 も 、 そ れ ら の購 買 部 の資 本 、す な わ ち商 業 資 本 と いう 誤 ?
た考 え 方 に基 づ いて いる か ら であ る。
藤 田氏 にか ぎ らず 中 小 工業 を 論 ず る人 々の間 に は、 以 上述 べ た よう に、 商 業資 本 の実 在 的 形態 と 工業 資 本 の流 通 過
程 に おけ る機 能 的 循 環 形態 と を混 同 し て いる 人 が多 いよ う に思 わ れ る。
(107)
下 請 制工 業 の本 質 に つい て
一
107
ま た、 大 工業 が中 小 工業 を支 配 す る場 合 、藤 田氏 の いう よう に ﹁工場 の購 買 部 によ る支 配 ﹂ (主として、製 品 買取り
を通じでの)に 限ら れ る も の では な く、 大 工業 の販 売部 や製 造 部 に よる中 小 工業 支 配 と いう こと も当 然 考 え 得 る。 こと
に. 大 工業 の工的 生 産 過 程 を担 当 す る製 造 部 に よる中 小 工業 、 こ と にそ の工的 生 産 過 程 の外 部 的支 配 は、 支 配 の商業
的性 格 よ りも 工業 的 性 格 が中 軸 を なす も ので あ って、 小 宮 山 氏 が いう ﹁支 配 者 が 大 工 業 あ る いは 工業 資 本 た る 場合 ﹂
の中 小 工業 の支 配 従 属 形態 の典 型 的 な も のと考 え得 る。
小 宮 山 理 論 を 全 面 的 に支 持 し 得 る も ので は な いが 、 下請 制 に商 業 的 形 態 と工 業 的 形態 とが 存 在 し、 と も に中 小 工業
の従 属 形 態 であ り な が ら 、そ れぞ れ収 奪 方 式 を 異 にす る と し た点 に つい て、 ふ た たび そ の正 し さ を確 認 せざ る を得 な
い 。
小官 山 氏 は中 小 工業 の従属 形態 を 商 業的 形 態 と工 業 的 形態 と に区 別 しな け れば な ら な い本 質 的 理 由 を次 のよ う に明
ら か に し て いる。 ﹁支 配 の主体 が 商業 資 本 でな く産 業資 本 工業 資 本 と し てあ ら わ れ る場 合 に は、 同 じ 下請 と いう 言 葉
(
注 4)
が 使 わ れ て いる にか か わら ず社 会 経 済 的 内 容 が 全 然別 個 なも の にな る。 ⋮ ⋮ そ の従 属 形 態 が 生 産 上 の根 拠 に基 づ い て
いる 点 で問 屋 制 工 業 と は っき り 区 別 さ れ る ﹂ と し て い る 。
氏 に お け る 下 請 工 業 の属 性 の う ち 、 も っと も 重 要 で あ る と い い 得 る 点 は 、 ﹁支 配 者 た る 大 工 業 は 生 産 の 内 部 的 主 導
者 であ ゲ 下 請 は 生 産 工 程 そ の も の の中 で の 係 り 合 い﹂ で あ り 、 ﹁親 工 場 と 下 請 工 場 と が 生 産 工 程 上 の関 係 を も っ て多
かれ 少 な かれ 有 機 的 に結 合﹂ し て いる と し て いる 5
1
⋮で あ る 。
小 宮 山 氏 の場 合 、 ﹁下 請 を 下 請 工 業 (広義 ) あ る い は 下 請 生 産 ﹂ に 限 定 し て 考 え る と 、 下 請 に は 、 包 括 的 下 請 、 混
成 的 下請 、有 機 的 下請 など が 存,
在 す る。 この う ち下請 工 業 と し て特 に注 目 し得 る も のは、 有 機 的 下請 と 混 成的 下請 の
一部 (鋳造 、鍛 造 など) で 、 こ れ ら の場 合 に は 、 下 請 工 場 は 、 仕 事 の分 量 、 下 請 単 価 、 指 定 原 材 料 の 供 給 (
有 償 も しく
108
商
学
論
叢 一
(108)
は無 償 )、 製 品 規 格 、 技 術 指 導 (
技 術 提携 を内 容 と し た場 合も 含 む)、 製 品 検 査 (
そ の他 特 定金 融、特 定労 働手 段 の供 給) に つ
い て程 度 の 差 は あ る が 、 親 工 場 に隷 属 依 存 す る 場 合 が 多 い。
有 機 的 下 請 は 、 ﹁親 工 場 の製 作 範 囲 内 に属 す る も 製 作 数 量 加 工 精 度 納 期 等 の 関 係 か ら 各 種 部 品 の 一部 ま た は 全 部 の
加 工 、 あ る い は 工 作 を 下 請 せ し め る 場 合 ﹂ で あ り 、 ﹁親 工 場 が 各 種 部 分 品 の仕 上 焼 入 な ど に 先 立 つ荒 削 り 程 度 の作 業
(注 5)
を 外 部 に 下 請 せ し め て い る の が こ の典 例 で あ っ て 、 こ の場 合 、 下 請 工 場 の製 品 あ る い は 作 業 は 多 か れ 少 な か れ 親 工 場
の生産 と 有機 的 関係 に 立 ち、 そ れ 自 身 と し ては ま った く市 場性 を持 たな い のを 一般 と す る﹂。
混 成的 下請 は、 ﹁親 工 場 の製 作 範 囲 に入 るも そ れ 自 身独 立 の構 成 をも つ部分 機 械 であ る か、 あ る いは特 殊 な技 術 と
(注 6 )
設 備 を 必要 とす る か し て専 門 工場 の製 作 ま たは 工作 に委 ね る のを普 通 と す る も のの下請 、換 言す れ ば社 会 的分 業 と し
て成 立 せる 経 営 を親 工場 が 自 己 生産 と の混 成 的 関 係 に お い て支 配す る場 合 ﹂ であ る 。
混 成 的 下請 のう ち、 有機 的 下請 と 同 じ よう に下請 工業 と し て特 に注 目 し得 るも の は、 工作 機 械 工場 のも と で の従 属
鋳 造 工 場 、鍛 造 工場 な ど の場 合 であ る。
小 宮 山 氏 の下請 工 業 、 こと にそ の中軸 を な す有 機 的 下 請 、 混 成的 下 請 (その 一部)に つ いて の理 解 は 、生 産 力 説 的 傾
向 が強 いが、 独 占 段 階 に おけ る産 業 資 本 も し く は工業 資 本 に よ る中 小 工 業支 65 の本 質 を 明 ら か に し得 る方 向 を暗 示 し
てく れ た 点 か ら し て偉 大 であ った と い い得 る 。
現 実 には消 費 手 段 生産 部門 こと に織物 工業 の場 合 、 商 業 的 下請 が支 配的 であ り 、 生 産手 段生 産 部 門 こと に機 械 器 具
工 業 にお いて は、 工 業 的 下請 が歴 史 的 にみ て支 配 的 であ った と いい得 る 。 し たが って、 中小 工業 問 題 の解 明 にあ た っ
て 、中 小 工業 に対 す る 商業 資 本 と産 業資 本 の支 配 と いう 歴史 的現 実 を捨 象 し て、 商 業 的 ・工業 的 と いう 下 請 の区別 を
(注 7 )
な く し て し ま って よ い ど い う こ と に は な ら な い 。
(109)
下請 制工 業 の本 質 に つ い て 一
一
109
工 業 資 本 も しく は産 業 資 本 の機 能 的 循環 形態 は、 前 述 のと ころ か らも 明 ら か な よう に、 貨幣 資 本 、 生 産資 本 、 商 品
資 本 て あ り 、 そ れ ら の機 能 的 循 環 過 程 は 購 買 過 程 、 工 的 生 産 過 程 、 販 売 過 程 で あ り 、 そ れ ら の 循 環 的 活 動 は 主 と し て
購 買 部 の 賄 買 活 動 、 製 造 部 の 工 的 生 産 活 動 、 販 売 部 の 販 売 活 動 であ る 。
工 業 資本 も しく は産 業 資 本 を し て、諸 他 の資 本 た と え ば商 業 資 本 や貨 幣 取引 資 本 から 区 別 す る と こ ろ のも のは 、 工
的 生産 過 程 にお いてそ の運 動 を 担当 す る製 造 部 の生産 資 本 の存 在 であ る。 換 言 す れば 、生 産 資 本 そ れ 自 体 は 、 工業 資
本 運 動 の 一循 環 形 態 を 形 成 す る にす ぎ な いが 、 工 業 資 本 を し て 特 質 的 資 本 た ら し め る も の で あ る 。
話 を 本 論 に も ど し て、 下 請 に つ い て い え ば ど の よ う に な る の で あ ろ う か 。 大 工 業 が 中 小 工 業 を 下 請 的 に支 配 す る 場
,
合 に は 、 大 工 業 の 購 買 活 動 の 一環 と し て 、 そ の購 買 資 本 が 中 小 工 業 を 支 配 す る 場 合 と 、 大 工 業 の 製 造 部 の 生 産 資 本 が
中 小 工 業 を 支 配 す る 場 合 と 、 販 売 部 の販 売 資 本 が 中 小 工 業 を 支 配 す る 場 合 と が あ る 。
い ず れ も 大 工 業 資 本 に よ る 中,
小 工 業 の 支 配 を 直 接 的 に 行 な う 工 業 的 下 請 の 形 態 で あ る こ と に は 相 違 な いが 、 そ の う
ち 工 業 的 下 請 の 本 質 を も っと も 典 型 的 に 示 す も の は 、 大 工 業 の 製 造 部 の 工 的 生 産 活 動 の 一環 と し て そ の 生 産 資 本 が 、
外 部 的 に中 小 工 業 こ と に そ の 工 的 生 産 過 程 の生 産 資 本 の 運 動 を 支 配 し 、 そ れ を も って そ の 経 営 活 動 全 体 を 支 配 す る 場
合 であ る。
工 業 的 下 請 の 典 型 的 な 例 と し て 、、
わ れ わ れ は 戦 前 戦 後 を 通 じ て 機 械 器 具 工 業 の場 合 を あ げ 得 た わ け で あ る が 、 戦 後
的 な も の と し て は 、 こ の 形 態 が 一般 化 す る 傾 向 が 明 確 で あ り 、 家 庭 用 電 気 機 械 器 具 工 業 に そ の例 を み る こ と が で き 、
大 紡 績 ・大 人 絹 会 社 な ど の 下 請 の場 合 に も そ の例 を み る こ と が で き る よ う に な って き て い る 。 これ は 、 産 業 独 占 資 本 ,
も し く は 大 工 業 資 本 の製 造 部 に よ る 中 小 工 業 の 工 的 生 産 過 程 を 中 心 と す る 工 業 的 下 請 、 再 下 請 、 再 々 下 請 を 意 味 す る
辱
(
も ち ろん 、現 実 には産業 独 占 資本 と中小 工業 と の間 に商業 資本 が介在 し て商 業 的下 請 を形 成 す る ことも あり 得 る)。
叢
論
学
商
110
(110)
一方 では 、戦 後 工業 的 下請 が商 業 的 下 請 (
新 .旧の問屋制工業) に比 して優 勢 にな る傾 向 が 顕著 であ るが 、 他 方 、 資
本 主義 の腐 朽 性 の現 象 と し て、 一般 的 に は同 じ 工業 的 下 請 の名 称 を も って呼 び得 るも の であ っても 、 工的生 産 過 程 に
直 接 下 請 の根 拠 を も た な い商 業 的 性 格 をも った 工業 的 下 請 が 戦 前 に比較 し て 一層 明瞭 にあ らわ れ てき て いる。
これ は藤 田 氏 の いう ﹁元方 工場 の購 買 部﹂ に よ る中 小 工業 支配 の場 合 の商 業資 本 的 性 格 をも った 下請 に当 るも の で
あ り 、 ま た藤 田 氏 は見 逃 が し て しま って いる のであ るが 、 元 方 工 場 の販 売 部 に よる 中 小 工業 支 配 (こと に原 ・材料供給
の面での) の場 合 の商 業 資 本 的性 格 を も った下 請 に当 るも の であ る。
前 述 のと こ ろ から 明 ら か な よ う に 、藤 田氏 は、 ﹁元方 工場 の購 買 部﹂ によ る中 小 工 業支 配 を商 業 資 本 によ る中 小 工
よ り多 く の価 値 を含 んだ 商 品資本 1
よ
より 多 く の 貨 幣 資
商 品資本 1
業 支 配 に倭 小 化 し、こ の場 合 の収 奪 を 流 通過 程 収 奪 に還 元 し てし ま って い る。藤 田 氏 の考 え 方 を 拡張 解 釈 す れ ば 、大
工業 の販 売 部 によ る中 小 工業 支 配 も 商業 資 本 によ る流 通 過 程 収 奪 に還 元 さ れ る こと にな る。
生産 資本 1
こ の藤 田 氏 の 考 え 方 の誤 り は 、前 述 の と こ ろ か ら 明 ら か な よ う に 、 商 業 資 本 の循 環 運 動 (貨 幣資本 り多 く の貨 幣 資本 ) と 工 業 資 本 の循 環 運 動 (貨 幣資本 -
本 )と を 混 同 し た こ と か ら お こ った も の で あ る 。 氏 の い う ﹁元 方 工 場 の 購 買 部 ﹂ の資 本 は 商 業 資 本 な の で は な く 、 工 業
資 本 の機 能 的 循 環 形 態 と し て の 貨 幣 資 本 (購 買資 本 ) な の で あ り 、 販 売 部 の資 本 (これ に つ いて は藤 田氏 は い って は おら な
いのであ る が)は や は り 商 業 資 本 な の で は な く 、 工 業 資 本 の機 能 的 循 環 形 態 と し て の商 品 資 本 (販売 資本 )な の であ る 。
(注 1) 藤 田敬 三 ・伊東 岱 吉両 氏 編 ﹁中小 工業 の本 質 ﹂ 二八頁 。
.
(注2 ) 田中 豊 喜氏 著 ﹁工業 経 営論 ﹂ 一.
.
二、
一
頁。
こ の点 は、 カ ー ル . ↓
、ルク ス著 ・長谷 部文 雄 氏 訳 ﹁資 本 論 ﹂ 第 二巻第 一班 一 一九 頁 に明 ら かであ る。
(注 3) 田中 氏前 掲 書 二八 五頁 。
(注 4) 小 宮 山氏 前掲 書 三 〇頁 。
(111)
ト請 制 工 業 の 本 質 に つ い て
111
(注 5 ) 前 掲 書 一
一
三.
頁。
(注 6 ) 前 掲 書 同 頁 。
中 小 企 業 論 に お け る ﹁問 屋 制 マ ニ ュ フ ァ ク チ ュ ア ﹂ に つ い て
(注 7 ) 黒 松 巌 氏 著 ﹁中 小 工 業 史 論 ﹂ 四 九 ー 五 〇 頁 。
三
以 上 、 藤 田 氏 の 現 代 の 下 請 制 は 、 ﹁問 屋 制 マ ニ ュの 段 階 に お け る 商 業 資 本 の 工 業 支 配 の 形 態 の 延 長 と し て ﹂ 理 解 さ
れ て お り 、 こ れ が 下 請 制 に お け る 藤 田 理 論 の基 礎 に な って い る よ う に思 わ れ る 。
氏 は こ の点 に つ い て 次 のよ う に 記 し て い る 。 ﹁こ の問 屋 制 マ ニ ュの 段 階 に お け る 商 業 資 本 の 工 業 支 配 の 形 態 の延 長
段 階 は・ これ を す で に問 屋 制 三
三 お いて み る とも いう こと が で志琶 ・
と し て の、 機 械 制 工 業 の問 屋 に よ る 支 配 、 ま た は 工 場 の購 買 部 に よ る 支 配 を 、 現 在 、 わ れ わ れ は ま た 下 請 と 呼 ん で い
る・ か か る意 味 に お いて・下 請 制 の竺
・藤 田 氏 は 大 塚 久 雄 氏 の ﹁近 代 欧 州 経 済 史 序 説 ﹂ か ら 現 代 の下 請 制 の基 礎 と し て ﹁問 屋 制 マ ニ ュ﹂ を と り だ し た 。 こ
●
の 問 屋 制 マ ニ ュは 、 い った ん 賃 労 働 化 せ る も の 、 ま た は 第 一な い し 第 四 の 段 階 の小 営 業 が 成 長 し て 、 そ の 内 部 に マ ニ
ュ的 組 織 を 含 む に い た った と き 、 商 業 資 本 が そ の マ ニ ュを 支 配 す る 形 態 で あ る と さ れ て い る 。
氏 の ﹁下 請 制 の第 一段 階 ﹂ と し て の ﹁問 屋 制 マ ニ ュ﹂ に つ い て は 次 の 三 点 が 疑 問 視 さ れ る 。 そ の 一は 厳 密 に ﹁問 屋
制 マ ニ ュの 段 階 ﹂ と い わ れ て い る も の が 存 在 し た の か と い う 点 と 、 そ の 二 は 下 か ら 発 生 し て く る マ ニ ュを 上 か ら 問 屋
制 的 に 支 配 す る 当 時 の 商 業 資 本 と 現 代 の 商 業 資 本 と 基 本 的 に は性 幣 が 同 じ で あ る の か と い う 点 と 、 そ の 三 は小 営 業 の
最 後 お よ び マ ニ ュ段 階 に お け る 下 請 (﹁問 屋 制 マニ ュ﹂ ) と 今 日 の 独 占 段 階 に お け る 下 請 と 本 質 的 に 異 な ら な い の か と
いう 点 であ る。
そ の 一と し て 、 厳 密 に ﹁間 屋 制 マ ニ ュ の段 階 ﹂ が 存 在 し た の か と い う 点 か ら 明 ら か に し て お く こ と に す る 。
論
学
商
112
一 一
叢
(112)
大 塚 久 雄 氏 は 、 ﹁近 代 欧 州 経 済 史 序 説 ﹂ の な か で 、 ﹁問 屋 制 マ ニ ュフ ァ ク チ ュア ﹂ に つ い て 、 そ れ は ﹁な ん ら か 工
業 経 営 形 態 (生産 形態 ) 上 の 一範 疇 であ る な ど と い う の で は な い こ と は も ち ろ ん であ り 、 現 著 者 は か つ て さ よ う な 見
(注 2)
解 を 表 明 し た こ と も な い 。 生 産 形 態 は 端 的 に マ ニ ュ フ ァ ク チ ュァ で あ り 、 そ れ が 問 屋 制 度 的 前 貸 の 支 配 下 に あ る の み
であ る﹂ と し て いる。
問 屋 制 前 貸 的 支 配 関 係 と し て は 、 大 塚 氏 に よ って も 明 ら か な よ う に 、 問 屋 と 家 内 工 業 と の 関 係 か ら ﹁問 屋 制 家 内 工
業 ﹂ が 生 ま れ 、 問 屋 と マ ニ ュ フ ァ ク チ ュア と の 関 係 に お い て ﹁問 屋 制 マ ニ ュフ ァ ク チ ュァ ﹂ が 生 ま れ る 。 次 の 点 も 大
塚 氏 が 明 ら か に し て い る の で あ る が 、 ﹁.﹃問 屋 制 度 ﹄ と よ ば れ る前 貸 的 支 配 の 関 係 一般 を ぽ いき な り 、 な ん ら か 工 業
経 営 (生産 ) 形 態 を 規 定 す る契 機 だ と 考 え る こ と は誤 り で あ る ﹂。 し た が って 、 ﹁問 屋 制 家 内 工 業 ﹂ も ﹁問 屋 制 マ ニ ュ
フ ァ ク チ ュ ア﹂ も 工 業 経 営 (生産 ) の発 展 段 階 (
も し く は存在 形 態 ) と し て の家 内 工 業 、 手 工 業 、 小 営 業 、 マ ニ ュ フ ァ
ク チ ュア 、 工 場 制 工 業 (レー ニソ) な ど の 観 点 か ら は 一つ の発 展 段 階 を 構 成 す る も の で な い こ と は 明 ら か で あ る 。
ヵ ー ル ・ビ ュ ッ ヒ プ ー は 工 業 経 営 の発 展 段 階 と ﹁生 産 形 態 を 支 配 す る も の (商 業資 本 )の 支 配 の諸 形 態 の 発 展 段 階 ﹂
(
商 業 資本 が工 業 経営 を外 部 から 支 配 す る場 合 の発展 段 階) と を 混 同 し て し ま った 結 果 、 工 業 経 営 の 発 展 段 階 を 家 内 仕 事 、
賃 仕 事 、 手 工 業 、 前 貸 制 度 11家 内 工 業 、 工 場 制 工 業 と し て い る 。 す な わ ち 、 ビ ュ ッ ヒ ァ ー に お い て は 、 工 業 経 営 の 一
発 展 段 階 と し て の マ ニ ュフ ァ ク チ ュア の 段 階 が 欠 除 し て お る と 同 時 に 、 工 業 経 営 の 発 展 段 階 の な か に 、 商 業 資 本 が 工
業 経 営 (生産 ) を 外 部 か ら 支 配 す る 場 合 の 一発 展 段 階 と し て の前 貸 制 度 ‖家 内 工 業 (
問 屋 制家 内 工業 ) が 包 含 さ れ て し
ま って い る 。
こ の よ う に 工 業 経 営 の発 展 段 階 の 解 明 に あ た って の ビ ユ ッ ヒ ァー の 誤 り は 、 生 産 と 消 費 と の 間 に 介 在 す る 流 通 過 程
(
﹁財 貨 の流 通 におけ る販 路 の長 さ ﹂) を 基 準 と す る 経 済 発 展 段 階 説 (封 鎖的 家 内 経済 の段 階 、 都 市経 済 の段 階 、 国民 経 済 の段
(113)
下 請 制工 業 の本 質 に?い て 一
一
113
階) の流 通 主義 にお け る誤 り と関 連 し て いる 。
し た が っ て 、 問 屋 制 度 的 前 貸 支 配 関 係 の 両 翼 た る ﹁問 屋 制 家 内 工 業 ﹂ や ﹁問 屋 制 マ ニ ュ フ ァ ク チ ュ ア﹂ な る も の を
工 業 経 営 の 発 展 を 構 成 す る も の と し て 理 解 し て し ま う こ と は 誤 り であ る 。
藤 田 氏 は カ ー ル ・ピ ュ ッ ヒ ァー や そ の後 継 者 た ち が お か し た よ う に ﹁生 産 形 態 の 発 展 段 階 と 生 産 形 態 を 支 配 す る も
の (
商 業 資本 ) の支 配 の 諸 形 態 の発 展 段 階 ﹂ と を 混 同 し て し ま う よ う な こ と は し な か った 。 氏 は 、 は っき り と 両 者 の
区 別 を さ れ て お る 。 す な わ ち 、 ﹁レ ー ニ ン の 場 合 、 ビ ュ ッ ヒ ァー の 場 合 は 、 いず れ も 今 日 工 業 の生 産 形 態 と い わ れ る
も の の発 展 段 階 を 確 定 し よ う と し た 試 み で あ る が 、 下 請 な る も の は 、 本 来 、 これ ら の 生 産 の諸 形 態 を 外 部 か ら 、 換 言
す れ ば 、 流 通 面 か ら 支 配 す る も の の 諸 形 態 の 一つ な の で あ る 。 と こ ろ が 、 こ の外 部 か ら す る 生 産 の 支 配 、 特 に そ の 発
展 段 階 に 関 す る 従 来 の分 析 は 、 は な は だ 不 徹 底 で あ り 、 生 産 形 態 の発 展 段 階 と 生 産 形 態 を 支 配 す る も の (商 業資 本 )の
支 配 の諸 形 態 の 発 展 段 階 と が 混 同 せ ら れ た た め に 、 問 題 の所 在 が 不 明 瞭 な ら し め ら れ た こ と が 、 一再 に し て と ど ま ら
な か った ﹂。 ﹁周 知 の ご と く 、 ビ ュ ッ ヒ ァ ー の 工 業 経 営 形 態 の 発 展 段 階 が 、 家 内 工 業 を 含 ん で い る と い う こ と 、 そ れ に
反 し 、 マ ニ ュ フ ァ ク チ ュア の段 階 を 欠 如 し て い る と いう こ と 自 体 が 、 生 産 形 態 の 発 展 段 階 と 生 産 を 支 配 す る も の の発
(注 3)
展 段 階 と の混 同 の典 型 的 な 一例 であ る 。 し か し 、 か か る 事 例 は 、 今 日 に い た って も 、 決 し て後 を 絶 って い る わ け で は
な い﹂ と 記 し て い る と こ ろ か ら も 明 ら か であ る 。
し か る に 藤 田 氏 は 、﹁生 産 形 態 の 発 展 段 階 と 生 産 を 支 配 す る も の の発 展 段 、
階 ﹂と を 区 別 す る こ と に 専 念 す る あ ま り 、
両 者 の 相 互 関 係 と 基 本 的 に は 後 者 は 前 者 に規 定 さ れ 、 前 者 に よ って統 一さ れ る 関 係 を 明 ら か に し な か った (し かも 、工
業 経営 の発展 段階 は生産 様 式 の発 展 段階 と 不可 分 の関 係 にあ る ことを 理解 し な ければ なら な い)。
︹
も の の 発 展 が 生 産 形 態 の 発 展 に よ って 規 定 さ れ 、 統 一さ れ る 面 を 見 逃 が し て し ま って い る 。
こ と に生 産 を 支 配 す る
商
学
論
{i]14'
一一 一一
叢
`(tl14ノ)
そ の証 拠 と し て 、.﹁下 請 な 偽 鳴 の は パ 本 来 、 こ れ ら の生 産 の 諸 形 態 を 外 部 か ら 、 換 言 す れ ば 、 流 通 面 か ら 支 配 す る も
の の諸 形 態 の 旨 つな の で あ る ﹂.
と し て 理 解 し 、 下 請 の 発 展 段 階 を 、 原 始 的 ・前 期 的 下 請 の 形 態 と し て の問 屋 制 家 内 工
業 ﹁高 次 の 段 階 の第 一形 態 ].す な わ ち 下 請 制 の第 一段 階 と し て の ﹁問 屋 制 マ ニ ュフ ァグ チ ュァ﹂、 ﹁問 屋 制 マ ニ ュ﹂ の
段 階 に お け る 商 業 資 本 の工 業 支 配 の形 態 の延 長 と し て の機 械 制 工 業 の問 屋 に お る 支 配 、 同 じ ぐ 、﹁問 屋 制 マ ニ ュ﹂ の 延
長 と じ て の 工 場 の 購 買 部 の商 業 資 本 に よ る 中 小 工 業 支 配 な ど と し て 流 通 主 義 的 に理 解 し て い る 。
,,本 来 、 生 産 過 程 と 流 通 過 程 と は 同 時 存 在 相 互 予 定 的 関 係 に あ る も の で あ る が 、 究 極 的 に は 、 流 通 過 程 な る も の は特
定 の 段 階 に お け る 生 産 過 程 の あ り 方 に よ って 規 定 さ れ て ・
い る も の で あ る 。 し た が って 、 特 定 の生 産 様 式 お よ び そ れ と
.
ユ
'
、
`: `
` .
`
'
v い・. .
相 互 的 関 係 に あ る 特 定 の 工業 経 営 (
生 産 )の 発 展形 態 が 工業 経 営 (
生 産) を 支 配 す る も の の発 展 形 態 を 規 定 す る こ と に
な る。
﹁問 屋 制 家 内 工 業 ] も し く は ﹁資 本 家 的 家 内 労 働 ﹂ お よ び ﹁問 屋 制 マ ニ ュ フ ァ ク チ ュア ﹂ は 、 小 営 業 段 階 の 最 後 (
も し く は 、 マ ニ ュヴ ァク チ ュ ア段 階 の 初 期 に 発 生 し 、 マ ニ 亘 フ ァ ク チ ュア 段 階 に お い て 、 こと に 産 業 資 本 化 し た商 業
資 本 の 外 業 部 的 支 配 の対 象 (
﹁ 資 本 家的 家 内労 働﹂ は 産業 資本 の外業 部 的 支配 の対 象) と し て も つと も 広 範 に 存 在 し ベ 工 場
制 工 業 の 段 階 に おい て も 、 な お か つ大 企 業 の背 景 に設 け ら れ た 資 本 の 搾 取 部 面 と し て 根 強 く 残 存 す る 。 し た が ,
って さ
﹁問 屋 制 家 内 工 業 ﹂ も し く は ﹁資 本 家 的 家 内 労 働 ﹂ お よ び ﹁問 屋 制 マ ニ ュラ ァ ク チ ユア﹂ は 、 独 自 の段 階 と い わ る べ
き も の を 構 成 し た わ け で は な く 、 歴 史 的 に は マ ニ ユ フ ァ ク チ ュア 段 階 に お け る 産 業 資 本 と して の マ ニ ュぞ れ 自 体 の経
済 的 劣 弱 性 を 外 部 的 に補 充 す る も の と し て 、 産 業 資 本 化 し た 商 業 資 本 の 外 部 的 生 産 の 支 配 形 態 と し て 特 に 広 範 に存 在
し た と い い 得 る にす ぎ な い。
.\
そほ﹂で 結 論 と し て へ 藤 田 氏 の ﹁商 業 資 本 の 工 業 支 配 の形 態 ﹂ と し て の ﹁下 請 制 の 第 一段 階 ﹂ を ﹁問 屋 制 マ ニ ュの 段
ぐ115》
下 請 制 工 業 の 本 質 に つN・ て
一
115
階 ﹂ ど 規 定 す る 段 階 規 定 に は 、 な に か異 常 な 飛 躍 が あ る よ う に 思 わ れ る。
﹁問 屋 制 マ・
ニ ュあ 段 階 ﹂`
が 存 在 し た と 主 張 し 得 る た め に は 、 特 定 の 生 産 様 式 の発 展 段 階 に お い て 、 も つと も 典 型 的
に し て 支 配 的 存 在 と し て の 工 業 経 営 形 態 と し て存 在 し た こ と が 立 証 さ れ る か 、 ま た は 少 な く ど も 問 屋 (大 塚氏 流 に いえ
ば ﹁問 屋 ﹂織 元) が マ ニ ュ フ ァ・
ク チ ュア を 外 部 的 に 支 配 し て 生 産 せ し め る 方 法 が 、 特 定 段 階 の 工 業 経 営 (生産 ) 形 態 に
代 っ て 、 典 型 的 に し て支 配 的 な 形 態 で あ った か し な け れ ば な ら な い。
(注 2 ) の 大 塚 氏 の ま 張 か ら も 明 ら か な よ う に 、 ﹁問 屋 制 マ ニ ュ﹂ は 、 ﹁職 場 主 ﹂ 織 元 を 論 ず る 場 合 に は 、 ほ と ん ど
問 題 にな らな .
いが 、.
,﹁問 屋 ﹂ 織 元 が問 屋 制 度 的 前 貸 の 支 配 下 に マ ニ ュ フ ァ ク チ ュ ア を お い た 場 合 に あ ら わ れ る 。 こ と
・
-﹁
に 大 塚 氏 め い5 ﹁十 六 世 紀 半 よ グ 十 七 世 紀 半 に わ た る 期 間 ﹂ の イ ギ リ ス羊 毛 工 業 に お け る 主 要 な 工 業 経 営 形 態 は マ ニ
.
チ ュアであ る
ュフ ァ ク
そ の マ ニ ュ フデ ク チ ュ﹁
アば ぺ 大 塚 氏 的 に 表 現 す れ ば ﹁巨 大織 元 ﹂、 ﹃国 民 的 ﹄ な 地 盤 に 足 場 を お い て い た と こ ろ の
﹃職 場 主 ﹄ 織 元 べ そ れ に ﹁問 屋 ﹂ 織 元 の 前 貸 的 支 配 の 下 にあ る ﹁職 場 主 ﹂ H ﹁小 織 元 ﹂ (﹁問 屋 制 マ ニュ﹂ を 形成 し た
場合 には そ れ は工業 経営 形 態 上 の 一範疇 で はな い) な ど の内 部 に発 見 さ れ た 。 そ の う ち 大 塚 史 学 に お い て は 第 二 の ﹁職 場
に 分 出 し 成 長 す る の が 歴 史 的 な コー ス で あ る と さ れ て い る 。
主 ﹂ 織 元 と 第 三 の問 屋 の前 貸 的 支 配 下 の ﹁小 織 元 ﹂ 層 (と も に ﹁﹃国 民 的﹄ な中 産 的生産 者 層 の 一基軸 ﹂) と が ﹁近 代 的 職
場 主 層 ︰(
産 業資 本 と
﹁十 六世 紀半 より 十 七世 紀一
半 に わ た る 期 間 ﹂ の羊 毛 工業 に お い て は こ の.
よ う な マ ニ ュ フ ァ ク チ ュア の ほ か に 残 存 形
態 と し て の 小 営 業 λ そ れ に 工 業 経営 (生産 ) の 発 展 形 態 の 一範 疇 で は な い が 、 資 本 の 外 部 的 収 奪 の 対 象 と し て の ﹁問
屋 制 家 内 工 業 ﹂ も し く は .﹁資 本 家 的 家 内 労 働 ﹂ な ど が 階 層 的 に 存 在 し た 。
﹁問 屋 制 マ ニ ュ﹂ は 、 こ の 時 期 に お い て ﹁問 屋 ﹂ 織 元 の前 貸 的 支 配 下 に あ る 羊 毛 工 業 の 織 布 工 程 と 仕 上 工 程 の 一部
論
学
116
叢 一
商
一
(116)
分 (
こ れ ら の 工程 にお いても ﹁問 屋 制家 内 工業﹂ の存在 が 認 めら れ たし、 紡 毛 工程 にお いて は ﹁問 屋 制 家内 工 業﹂ の存 在 が圧 倒的
であ った) に存 在 し た に す ぎ な か った こ と は 前 述 の と こ ろ か ら も 明 ら か な と お り で あ る 。
以 上 の よ う に大 塚 氏 は ﹁問 屋 制 マ ニ ュ﹂ の 存 在 が 支 配 的 で あ った 段 階 に つ い て な ん ら 語 って お ら ず 、 そ の よ う な 考
え 方 を 否 定 し て お ら れ さ え し て い る 。 そ れ に も か か わ ら ず 、 藤 田 氏 は 大 塚 氏 の ﹁問 屋 制 マ ニ ュ﹂ の 発 生 ・存 在 時 期 を
﹁問 屋 制 マ ニ ュの段 階 ﹂ に お き か え 、 そ れ を ﹁下 請 制 の第 一段 階 ﹂ と し て理 解 し て し ま って い る 。
大 塚 史 学 に お け る ﹁問 屋 制 マ ニ ュ﹂は 、 中 産 的 生 産 者 層 に 足 場 を お く ﹁問 屋 ﹂ 織 元 の 前 貸 的 支 配 下 に あ る ﹁小 織 元 ﹂
が ﹁職 場 主 ﹂ 織 元 と と も に近 代 産 業 資 本 に 転 成 し て ゆ く 場 合 の 過 程 の 説 明 に お い て 出 て く る も の で あ る 。
封 建 的 生 産 様 式 か ら 近 代 資 本 家 的 生 産 様 式 へ移 行 す る 場 合 、 ﹁生 産 者 が 商 人 お よ び 資 本 家 と な って 、 農 業 的 自 然 経
済 に対 立 し ま た 中 世 的 都 市 工 業 の 同 職 組 合 的 手 工 業 に対 立 す る ﹂ コ ー ス と ﹁商 人 が 生 産 を 直 接 的 に支 配 ﹂ し な が ら 産
業 資 本 家 に転 成 し て ゆ く コ ー ス と が 対 抗 的 に存 在 す る が 、 前 者 は ﹁革 命 的 な 途 ﹂ であ る が 、 後 者 は 保 守 ・反 動 的 で は
(注 4)
あ る が ﹁歴 史 的 ﹂ に し て 現 実 的 な ﹁途 ﹂ で あ る 。 マ ル ク ス H レ ー ニ ン に お い て は 、 後 者 の ﹁途 ﹂ が 前 者 の ﹁途 ﹂ を 圧
倒 す る歴 史 的 過 程 が 近 代 的産 業 資 本 主 義 の成 立 過程 と し て説 明 さ れ て いる。
(マニ ュファク チ ュア主 ) への 範 疇 的 成 長 ﹂ と ﹁旧 来 の 前 期 的 商 業 資 本 (そ の単 な る転 化形 態 とし て の 問 屋 制商
大 塚 史 学 に お い て は 、封 建 的 生 産 様 式 か ら の移 行 が 行 な わ れ る 場 合 、﹁小 商 品 生 産 (商品 生産 を 営 む小 市民 および 農民 )
の産 業 資 本
業 資本 をも含 め て) の 産 業 資 本 (マ ニュフ ァクチ ュア主 ) へ の範 躊 的 転 化 ﹂ と の 二 つ の 対 抗 的 な ﹁途 ﹂が 存 在 し 、 こ の ﹁二
つ の 途 ﹂ の う ち 前 者 が ﹁産 業 資 本 形 成 の 自 生 的 な 途 を 示 す 基 本 的 形 態 で あ る の に対 し ﹂、後 者 は 08 者 に 対 す る ﹁対 応 形
態 ﹂ と し て説 明 さ れ て い る 。 し か も 、 大 塚 氏 の 場 合 に は 、 マ ル ク ス ーー レ ー ニン の 場 合 と は 逆 に 、 ﹁自 ら の 十 分 な 内 的
必 然 性 を も って 産 業 資 本 に 転 成 し 、 従 って 、 全 機 構 的 な 規 模 に お い て資 本 主 義 社 会 の 形 成 を 押 し す す め る と こ ろ の 推
(117)
下 請 制工 業 の本質 につ い て 一
一
117
進 的 な 社 会 的 主 体 と し て作 用 す る の は 、 小 生 産 者 (商 品生産 者 と し て の小 市 民 や農 民) た ち の産 業 資 本 家 へ の成 長 、 こ の
途 あ る の み L で あ り 、 ﹁こ れ に 対 し て 、 前 期 的 商 人 (
問 屋 制前 貸 人を も含 め て) の産 業 資 本 家 への 転 化 の事 実 は も と よ
り こ れ を 否 認 す る の で は な い が 、 そ れ は 自 ら の内 的 必 然 性 を も っ て 遂 行 さ れ る と こ ろ の 自 律 的 乃 至 自 生 的 な 範 疇 的 転
(注 5)
化 で は な く 、 自 己 の足 下 を 掘 り く ず し っ つ小 商 品 生 産 者 層 の 裡 か ら 産 業 資 本 家 が 成 長 し て く る と い う 革 命 的 事 実 に 直
面 し 、 こ れ に 対 抗 し つ つ自 己 の支 配 を 維 持 す る た め に な さ れ る と こ ろ の い わ ば 他 律 的 な そ れ だ﹂ と 説 明 さ れ て い る 。
藤 田 氏 の 大 塚 氏 か ら 理 論 的 に 借 用 し てき て い る ﹁問 屋 制 マ ニ ュ﹂ は 、 後 者 の ﹁他 律 的 ﹂ に し て ﹁対 応 ﹂ 的 な ﹁保 守
的 ﹂ コー ス に お け る 商 業 資 本 に よ って 、 問 屋 制 的 前 貸 の 支 配 下 に お か れ て い る マ ニ ュ フ ァ ク デ ュア だ と は いえ 、 そ れ
は ﹁自 律 的 ﹂ に し て ﹁基 本 的 ﹂ な コー ス に お け る ﹁中 産 的 生 産 者 層 ﹂ の 近 代 産 業 資 本 への 転 化 の 一過 程 と し て あ ら わ
れ る も の で あ る こ と は 大 塚 史 学 に お い て は 明 瞭 で あ る 。 こ の こ と は 前 述 の と こ ろ か ら も 明 ら か な よ う に、 羊 毛 工 業 の
織 布 工 程 、 仕 上 工 程 に お け る ﹁職 場 主 ﹂ 織 元 と ﹁問 屋 ﹂ 織 元 の 前 貸 的 支 配 下 の ﹁小 織 元 ﹂ と の発 展 が と も に範 疇 的 に
は ﹁中 産 的 生 産 者 層 ﹂ か ら 近 代 的 産 業 資 本 への 転 化 を 指 し 示 す も の で あ った こ と を 思 え ば 十 分 であ る 。
藤 田 氏 は 下 請 理 論 を 展 開 す る 場 合 に 、 大 塚 史 学 に お け る ﹁問 屋 制 マ ニ ュ﹂ だ け を 機 械 的 に借 用 す る こ と は でき な い
の で あ って 、 ﹁問 屋 制 マ ニ ュ﹂ を ﹁下 請 制 の第 一段 階 ﹂ だ と す る な ら ば 、 ﹁問 屋 制 マ ニ ュ﹂ の 存 在 そ のも の を ゆ る す
大 塚 史 学 を 認 め な け れ ば な ら な い (た と えば 大 塚史学 に お いては、 問屋 制 支配 下 の マ ニ ・フ ァク チ ュァは 自 律 的 傾向 を も つも
の とし て描 が か れ て いる)。
そ の 二 と し て 、 下 か ら 発 生 し て く る マ ニ ュを 上 か ら 間 屋 制 的 に 支 配 す る 当 時 の 商 業 資 本 と 現 代 の 商 業 資 本 と 基 本 的
に は性 格 が 同 じ で あ る の か と い う 点 を 解 明 す る こ と にす る 。
﹁藤 田 氏 の 見 解 に近 い﹂伊 東 岱 吉 氏 は 、 藤 田 氏 に お け る ﹁独 占 資 本 と そ の 下 請 制 利 用 に お け る ﹃商 業 資 本 ﹄ 的 収 奪 ﹂
118
学
論
叢一
商
一
(118)
レ
に つい ては次 のよ う に い ってお ら れ る。 ﹁これ は 、産 業 資 本 主 義 段階 にお いて産 業資 本 に従 属 した 商業 資 本 と いう意
(注 6)
味 で はな く 、生 産 の外 部 から 支 配 し て 不等 価 交換 を 通 じ て利 潤 を 追求 す る前 期 的 商業 資 本 的 収 奪 の意 味 に理 解 さ れ る
べ き も の と 思 わ れ る が 、 同 氏 の 論 文 で は こ の 点 が 明 確 に さ れ て い な い﹂ と 。
﹁下 請 制 利 用 に お け る ﹃商 業 資 本 ﹄ 的 収 奪 ﹂ を 、 前 期 的 意 味 に 理 解 す る と す る な ら ば 、 あ ら か じ め 前 期 的 商 業 資 本
(ここ では ﹁商 品取 引資 本 ﹂ に限 定 し て考 え る こと にす る) の特 徴 的 存 在 形 態 を 知 って お か な け れ ば な ら な い。
第 一
・に 、 前 期 的 商 業 資 本 は 、 近 代 産 業 資 本 の も と に お け る資 本 家 的 生 産 が 未 成 熟 な 状 態 に あ る 封 建 制 社 会 の解 体 期
'
に 、、
前 期 的 生 産 関 係 の担 い手 た る 農 民 や 手 工 業 者 に よ って 形 成 さ れ る 生 産 者 層 の う え に 支 配 的 ・独 占 的 地 位 を 保 持 し
得 る も の で あ る 。 し た が って 、 近 代 産 業 資 本 主義 の 成 立 と と も に 、 あ る い は没 落 し 、 あ る い は 近 代 産 業 資 本 に 範 疇 的
転 化 を とげ るも の であ る。
、
、
-
第 二 に 、 前 期 的 商 業 資 本 は 、 資 本 家 的 商 品 生 産 の 未 成 熟 を 前 提 と す る 単 純 商 品 流 通 と 貨 幣 流 通 の存 在 す る と こ ろ な
,
らば 自 由 に存 在 す る こと が でき る。
第 三 に 、 前 期 的 商 業 資 本 の獲 得 す る 商 業 利 潤 は 、 不 等 価 交 換 に 基 づ く 譲 渡 利 潤 の 形 式 を も って ﹁商 略 ﹂ と ﹁欺 臓 ﹂
の 結 果 と し て あ ら わ れ る も の であ る 。 換 言 す れ ば 、 市 場 関 係 の 未 成 熟 に よ る 交 換 の 不 等 価 性 お よ び 交 換 の機 会 的 ・偶
(注 η)
発 的 性 質 に よ る 非 法 則 性 が 価 格 体 系 の地 域 的 差 異 を み ち び ぎ 、 前 期 的 商 業 資 本 を し て 、 ,
﹁中 産 的 生 産 者 層 ﹂ の 生 産 し
た 剰 余 生 産 物 か ら 流 通 過 程 を 通 じ て の利 潤 抽 出 を 可 能 にす る 。
以 上 に対 し て 、 近 代 資 本 主 義 が 確 立 し た 段 階 に お け る 近 代 商 業 資 本 (こ こで は、 や はり ﹁商 品 取引資 本 ﹂ に限 定 して考
えろ こ と にす る) は 、 ど の よ う な 特 徴 的 存 在 形 態 を 示 す こ と に な る で あ ろ う か 。
第 一に 、 近 代 商 業 資 本 (﹁商 品取 引資 本 ﹂) は 、 商 品 資 本 の特 殊 的 独 立 形 態 で あ り 、 産 業 資 本 の流 通 過 程 に お け る 特
殊 独 立的 な 機 能 分 担 者 と し て の役 割 を 、
果 す も ので あ る 。 近 代 産 業 資 本 の商 品 資 本 的 機 能 が 社 会 的 分 業 を 契 機 と し て s︿
一
,
、,
、
:
,ー .
商 人 の 特 殊 な 個 別 的 資 本 に よ っ.
て 独 立 化 さ れ だ 機 能 と して 固 定 し た 場 合 に 、 近 代 商 業 資 本 と し て の ﹁商 品 取 引 資 本 ﹂
が成立する。 ,
第 こ に 、 近 代 商 業 資 本 は 、 資 本 家 的 商 品 生 産 お よ び .資 本 家 的 商 品 流 通 を 前 提 と し て 存 在 し 得 る も の であ る 。
.= ∴
、
﹁ , . :.
r
、
'
'
第 三 樽 パ.
近 代 的 商 業 資 本 の 獲 得 す る 商 業 利 潤 は 、原 則 的 に は 等 価 的 礼法 則 的 交 換 に 基 づ い て 剰 余 価 値 の実 現 の控 除
部 分 と し てあ らわ・
れ る も の で あ り 、 [般 的 利 潤 率 の存 在 を 前 提 条 件 と す る も の であ る 。
ふ た た び藤 ,
田 氏 の 商 業 資 本 の性 絡 分 析 に っ い て で あ る が 、 氏 は 商 業 資 本 、
に つ いて、 小 営業 段階 にお いても 、 マ ニ ュ
フ ァク チ ュフ 段 階 に お いて も 本 質 的 に は な ん ら 変 った 点 の な い こ と を 次 の よ う に い わ れ て い る 。
﹁に の 一度 成 立 し た 集 中 北。
し 産 業 資 体 化 し た マ ニ ュ.
(工陽 マ ニ ュ) が 一普 遍 允 す る に い た つた 後 叱 い え ど も 、 問 屋 制
(汀 8 )
¢ 業 は 、 そ の 産 業 資 本 化 し た面 と と も に、 依 然 と し で 在 来 の商 業 資 本 固 有 の 面 を 維 持 し つづ け た の で あ り 、 そ の 限 り
に お いそ \ そ れ は あ く ま で 商 業 資 本 的 本 質 に お い て 里 業 生 産.
を 支 配 ﹂ た も の で あ る こ,
と は 、 否 定 でき な い ﹂。
㍉次 に 氏 は 問 屋 制 商 業 資 本 が マ ニ ュ フ ァク チ ュ ア 段 階 に お い て産 業 資 本 化 し た 面 を 認 め る と 同 時 に 、・
そ の産 業 資 本 化
発 展 が あ る のみ であ る こ之 庖次 のよう に い って いる。
﹂﹁そ し て 、 一度 己 の 形 態 の発 生 を み た 後 で は 、㌦㌫ :問 屋 の自 家
し か も .,
.マ、二、弓段 階 に お け る 問 屋 制 商 業 資 本 お よ び そ れ の 工 業 支 配 の 形 態 と 現 段 階 に お け る そ れ ら と の間 に は 量 的
外 業 部 的 家 内 労 働 収 取 の 手 段 と し て であ った こ と は 、 ま た 、
.周 知 のご と く であ る ﹂。!
(注 9)
と も あ る わ け で あ る 。 し か し 、 こ の問 屋 の マ ニ ュ兼 営 な る も の が 、 単 な る マ ニ ュ的 工 場 経 営 の た め の も の で は な く 、
で の 商 業 資 本 は 、 も ち ろ ん 、 単 な る 商 人 資 本 で は な ∼へ、 \
︰⋮ ・
商 業 資 本 た る と 同 時 に 、 か の純 然 た る マ ニ ュ業 者 た る こ
は 外 業 部 (問 屋 制 マ ニュと ﹁間屋 制 家内 工業 ﹂) を 収 奪 す る た め の 手 段 で し か な か った こ と を 強 調 し て い る 。﹁か か る 意 味
〈↓19)
ド請 制工 業 の 本 質 に つ いて 一
119
120
学
論
叢 一
商
一
(120)
(注 -o )
マ ニ ュを母 体 と す る外 業 部 的支 配 から 、 ⋮ ⋮現 段階 的問 屋 制 商 業資 本 の外 業 部 的 支 配 た る下 請 への発 展 は 、 まさ に い
ま 一歩 で しか な か った﹂ と。
こ こ で疑 問 と思 う 点 は、 産業 資 本 主義 確 立 以後 の段階 におけ る商 業 資 本 こと に、問 屋 制 商 業 資 本 (
主として ﹁商品取
引資本﹂として存在するが、﹁貨幣取引資本﹂と双児的関係 にある) と い えど も 、産 業資 本 の流 通 過 程 におけ る特 殊 独立 的 な
機 能 分 担 者 と し て の役割 を歪 め られ た かた ち だ と は い え、 果 す ので は な いかと いう 点 であ る。
日本 資 本 主 義 の経済 構 造 の 二重 性 を強 調 す る こと のあ ま り、産 業資 本 主義 段 階 以後 におけ る商 業 資 本 、 こと に問 屋
制商 業資 本 を前 期 的 商 業 資本 の性 格 にも っと も近 似 さ せ て理 解 す る こと はゆ き す ぎ な の ではあ る ま いか 。 そう かと い
って日本 資 本 主 義 に ま つわ る封 建 遺 制 を いさ さ かも 軽 視 し よう と す る も の でな い と同 時 に、 それ と密 接 な 関 係 をも つ
中 小 工業 、 こと に下 請 制 の存 在 を忘 れ て い るわ け で は な い。 現 段 階 にお いて わ れ われ は問 屋制 商 業 資 本 に おけ る前 期
性 を 軽視 し な いと同 時 に、 そ れ は本 質 的 に は近 代産 業 資 本 の商 品 資 本 的機 能 の独 立化 さ れ た 個 別 的担 い手 と し て の近
代 商 業 資 本 の範 疇 に属 す る点 を 再確 認 す べき であ る。
大 塚 久 雄 氏 は こ の点 に つい て、 わ れ わ れ と考 え方 を 大分 異 にす る の であ る が 、産 業 革 命 直 前 、 正確 には マ ニ ュ段 階
に おけ る英 国 の十 八 世紀 ラ ンカ シ ャー におけ る問 屋 制 度 の特 質 を明 ら か にす る 場 合 に、次 の よう に い って お られ る。
﹁彼 等 は前 述 の前 貸 機 能 のほ か に、独 立 の農 村中 小生 産 者 から そ の製 品 を購 入 しさ ら にそ れ を売 捌 く と いう純 商 人 的
機 能 を も 兼 ね備 え、 これ を広 く 営 ん で いた の であ るが、 こ の純 商 人 的 取引 に際 し て、 取引 の当 の相 手 方 た る生産 者 が
いわ ば ﹃農 村 の織 元﹄ 型 の近 代 的資 本 家 (マニュファクチ .
テ 所有者) た る場 合 に は、 而 し て そ の経 営 規 模 が 大 き く 経
済 的実 力 が 強 け れぽ 強 い程 、 取 引 は当 の生 産 者 を 商業 的 に支 配 しそ の独 立性 を お び や かす と 言 う問 屋 制 的 な や り方 で
は な く 、 む し ろ正 反 対 に、 そ の経 済 的 独 立 と 産 業資 本 家 的 利 害 を前 提 と し 、 これ と利 害 を共 にす る と いう 仕 方 で行 わ
(121)
卜請 制工 業 の本 質 に っ い て 一
一
121
(注 11 )
れ た の で あ る 。 所 謂 産 業 資 本 の 利 害 へ の 従 属 で あ る ﹂。
右 の引 用 文 か ら も 明 ら か な よ う に 、 マ ニ ュ段 階 に お い て 商 業 資 本 が 産 業 資 本 の 流 通 過 程 に お け る特 殊 独 立 的 な 機 能
分 担 者 と し て 流 通 機 能 を 果 す よ う に な っ た の で あ る 。 そ う だ か ら と い って 、 日 本 資 本 主 義 の問 屋 制 的 下 請 に お け る 商
業資 本 を そ のま ま英 国 と 同 じ よ う に し かも 大 塚史 学 的 に理 解 す る こと は でき な いが 、前 期性 を十 分 考慮 した 上 で や は ﹂
り 近 代 商 業 資 本 の 一範 疇 と し て 考 え る べ き で は あ る ま い か 。
68 述 の藤 田 氏 の説 明 で は 、 問 屋 制 商 業 資 本 が 家 内 工 業 を 支 配 す る 場 合 と マ ニ ュフ ァ ク チ ュア を 支 配 す る 場 合 と は 、
明 確 に そ の本 質 を 異 に す る の で あ る が 、 問 屋 制 商 業 資 本 そ の も の と し て は 、 小 営 業 段 階 に お い て も 、 マ ニ ュ フ ァ ク チ
ュア 段 階 (明 ら か に近 代産 業 資本 の範疇 ) に お い て も 、 今 日 の 工 場 制 工 業 の 段 階 や 独 占 段 階 に お い て も な ん ら 範 晴 的 所
属 の 転 成 (前 期的 商業 資本 から 近代 商 業資 本 への) を み な い の で あ る 。
そ の 三 と し て 、 小 営 業 の 最 後 お よ び マ ニ ュ段 階 に お け る 下 請 (
問 屋制 マ ニ .) と 今 日 の独 占 段 階 に お け る 下 請 と 本 質
的 に異 な ら な い のか と いう 点 を 明 ら か にす る。
藤 田 氏 に お い て は 、 ﹁商 業 資 本 の 工 業 支 配 の 形 態 に は 、 低 次 の 段 階 と 高 次 の 段 階 と の 二 つが あ り 、 問 屋 制 商 業 資 本
の 工 業 支 配 は こ の 二 つ の 段 階 に わ た って お り 、 問 屋 制 家 内 工 業 の形 態 と 問 屋 の マ ニ ュま た は 工 場 支 配 と し て の問 屋 制
(注 12)
下 請 の 形 態 と の 二 つが 存 在 し 、 し か も ﹁こ の問 屋 た る 商 業 資 本 の支 配 の 高 次 の形 態 に対 応 し て 、 産 業 資 本 の 一部 と し
ての (
購 買部 な ど の名 に おけ る) 商 業 資 本 の マ ニ ュま た は 工 場 支 配 の形 態 が 、 工 場 下 請 と し て﹂ 存 在 す る 。
氏 の 商 業 資 本 の 工 業 支 配 の 高 次 の 段 階 の第 一段 階 は 、前 述 の と こ ろ か ら も 明 ら か な よ う に ﹁問 屋 制 マ ニ ュ﹂ で あ り 、
そ の ﹁問 屋 制 マ ニ ュ﹂ は 今 日 の ﹁下 請 制 の第 一段 階 ﹂ を 構 成 す る 。 逆 に 今 日 のド 請 制 は ﹁こ の 問 屋 制 マ ニ ュの 段 階 に
お け る 商 業 資 本 の 工 業 支 配 の 形 態 の延 長 と し て﹂ 考 え ら れ て い る 。 し た が って 、 ﹁下 請 制 工 業 は 、 ⋮ ⋮ 工 業 生 産 形 態
叢
論
学
商
122
(122)
`
: . ' 。
∴
筆 者 注)が 支 配 的 と な る の は勿 論 資 本
ば.
パ
。
.
の マ ニ ュ段 階 お よ び 大 正 業 段 階 に お け る 商 業 資 本 の 工 業 支 配 の 形 態 であ り 、 そ れ 自 体 、 工 業 め 生 産 形 態 を 意 味 す
る も の で は な い﹂ と いう よ う に 声般 的 に 理 解 さ れ て お り 、 ﹁そ れ (下請 制 工業 ]
の 独 占 段 階 に お い て で あ る が ﹂ と つけ 加 え て も な ん ら 意 味 を な さ な い こ と に な る ○
右 の藤 田 氏 の 理 論 を も って す れ ば マ ニ ュ段 階 に お い て 、 多 数 の マ ニ ュフ ァ ク チ ュ ァ は 商 業 資 本 の 問 屋 制 度 的 前 貸 の
支 配 下 に お か れ な が ら 中 小 工 業 化 し 下 請 工 業 化 す る の で あ り 、 し か も 独 占 段 階 に お け る 工 場 制 工 業 や マ ニ己 7 ア ク チ
ュア の 中 小 工 業 化 、 下 請 工 業 化 拡 、 マ ニ ュ段 階 に お け る ﹁商 業 資 本 の 工 業 支 配 の 形 態 ﹂ の量 的 発 展 で あ って パ そ の間
にな ん ら 質 的 発 展 を 内 容 と し な い と いう こ と に な る 。
﹁問 屋 制 マ ニ ュ﹂ を ﹁下 請 制 の 第 一段 階 ﹂ と し て 把 握 し 、 ﹁問 屋 制 マ ニ ュ﹂ の 存 在 を 認 め る 仕 方 は 、 封 建 的 生 産 様
式 か ら 資 本 主 義 的 生 産 様 式 へ移 行 す る 場 合 に お け る 闘 争 的 な ﹁二 つ の途 ﹂ (﹁生産 者 が資本 家 と なる真 に革 命 的 な 途﹂ と
﹁商 人 が生産 者 と な る保守 的 な途 ﹂ ) の理 解 に 対 す る 誤 り か ち 生 ず る 。
小 営 業 は 、 封 建 的 生 産 様 式 か ら の 移 行 が ﹁二重 の 仕 方 ﹂、
で行 な わ れ る さ い に 、 二 つ の 方 向 に発 展 す る 。、
す な わ ち、
(1 ) 小 営 業 が 漸 次 自 己 の作 業 場 を 拡 大 し 、 家 族 労 働 を 中 核 と し つ つも 十 五 人 程 度 の 賃 労 働 者 を 雇 傭 し て 生 産 す る 方
向 であ る。 これ が 、資 本 主義 的 単 純 協 業 た る
(注 13 )
.
﹁手 工 業 的 な 初 期 の マ ニ三 フ ア ク チ ュ ア﹂ (﹁小資 本 家﹂) で あ る (丁しが し
(
D ▽ 原 材 料 な ど の 生 産 手 段 を も ? て の支 払 、 (
E ),
小 営 業 ぺ⋮
そ れ は、資 本 制生 産 様式 のあ る特殊 的 な発 展時 代 の固定 的 ・性 格的 な形態 では な い﹂
。(
2) 小 営 業 は、 商 業 資 本 の (
A)独占
的買占パ (
B ) 高利 貸 付 、 (
C ) 諸 商 品 を も っ て の支 払
(注 14 )
の原 材 料 の 直 接 配 分 な ど を 通 じ て ﹁資 本 主 義 的 家 内 労 働 ﹂ (
﹁事実 土 の賃金 労 働 者 し に転 落 す る 。 ﹁か ぶ ℃ て パ小 営 業 は
,
パ
一方 で は 初 期 マ、ニ ュ フ ァ 〃 チ ュア と し て 、 他 方 で は 資 本 家 的 家 内 労 働 と し て 、 次 にく る 資 本 家 的 ひ 二.
ユ
.
ヴ.
ア ゾ チ ュ,
ア
(注 1
5)
お よ び資 本 家 的 家 内 労 働 段階 の い っき い の萌 芽 を含 む ﹁典型 的 な 小ブ ルジ ョア的構 造 であ る﹂。
〈123)
下 請 制 工業 の 本質 に つ い て 一
一
123
以 上 のう ち 小 営 業 が 資 本 ま 義 的 単 純 協 業 た る ﹁初 期 マ 一
rユ﹂ も し く は ﹁小 資 本 家 ﹂ に 成長 し て ゆ く ﹁途 ﹂.
は 、, ﹁生
産 者 が 資 本 家 とな.
る算 に革 命 的 な 途 ﹂ で あ り 、 逆 に 小 営 業 が ﹁資 本 主 義 的 家 内 労 働 ﹂ を 形 成 し コ事 実 上 の賃 労 働 者 ﹂
と な り 、 商 人 が ﹁事 実 上 の産 業 資 本 家 ﹂ と な る ﹁途 ﹂ は 、 ﹁商 人 が 生 産 者 と な る 保 守 的 な 途 ﹂ で あ る 。
藤 田 氏 が ﹁い った ん賃 労 働 化 せ る も の 、 ま た は 第 一な い し 第 四 の 段 階 の 小 営 業 が 成 長 し て 、 そ の 内 部 に お い て マ ニ
は 、 ﹁二 つ
ュ的 組 織 を 含 む に い た っ た 場 合 は 、 そ こ に い わ ゆ る 問 屋 制 マ ニ ュ (たと えば 、 大 塚氏 のごと き) な る も の が あ ら わ れ
る 。 こ の問 屋 制 マ ﹃ ユ自 体 は 、 :⋮ ・
商 業 資 本 の マ ニ ュ支 配 の 形 態 であ る ﹂ と い う 場 合 の ﹁聞 屋 制 マ ニ こ
の 途 ﹂ の う ち いず れ の ﹁途 ﹂ を た ど る 場 合 に あ ら わ れ て く る も の で あ ろ う か 。 お そ ら く 藤 田 氏 の 場 合 に は 、 ﹁問 屋 制
マ ニ ュ﹂ は 、 ﹁商 人 が 生 産 者 と な る 保 守 的 な 途 ﹂ の進 め ら れ る 過 程 に お い て あ ら わ れ る も の に 相 違 な い。 し か し ﹁商
人 が 生 産 者 と な る 保 守 的 な 途 ﹂ が ブ ルジ ・ア革 命 に お い て 歴 史 的 に圧 倒 的 な と こ ろ で は ・ ﹁第 一な い じ 第 匹 の 段 階 σ
.
-資 本 主 義 的 家 内 ,
労 働 ﹂ の形成 は
小 営 業 が 成 長 し て 、 そ の内 部 に お い て マ ニ ュ的 組 織 を 含 む ﹂ ま で に な ら な い で 、 ﹁マ ニ ュ フ ァ ク チ ュ ア の 付 属 物 と .
レ
て の 資 本 主 義 的 家 内 労 働 ﹂ に転 落 す る 。 し た が って 、 ﹁保 守 的 な 途 ﹂、に お い て は 、
み ら れ る が 、 ﹁下 請 制 の第 一段 階 ﹂ と し て の ﹁問 屋 制 マ ニ ュ﹂ は 形 成 さ れ な い。
義 的単 純 協 業 は ・資 奎
義的 マ ニ
フ ・ク三
ア に成 長転 化仁錘
と いう客
に
反 対 に ﹁真 に 革 命 的 な 途 ﹂、 す な わ ち 、 レ ー ニシ が コ 方 で は 、 相 当 数 の 労 働 者 を も つ仕 事 場 は 、 し だ い に分 業 を
と り いれ てゆ き ・ こう し て・ 資 奎
は 、,小 営 業 ← ﹁初 期 マ ニ ュ﹂ ,
(
資 本 主義 的 単純 協 業) ← 資 本 主 義 的 マ ニ ュと し て の 独 立 マ ニ ュ へ の 形 成 の コー スが 説 明
さ れ て いる の で あ ,
って 、.﹁商 業 資 本 の ぽ 、
ニ ュ支 配 の 形 態 ﹂ す な わ ち ﹁問 屋 制 マ ニ ュ﹂ は で て こな い。
し た が って範 疇 的 に は 、 ﹁真 に革 命 的 な 途 ﹂ に お い て は 、 小 営 業 の ﹁初 期 マ ニ ュ﹂ さ ら に独 立 マ、
ニ ュ入 資 本 主 義 的
マ ニ ュファグ チ ュァ▽化 で あ り 、 ﹁保 守 的 な 途 ﹂ に お い て は 、 小 営 業 の.﹁資 本 主 義 的 家 内 労 働 ﹂ ﹃ 事実 上 の賃金 労 働 者 ﹂)
学
論
叢
一
124
商
(124)
化 さ ら に本 来 の 賃 金 労 働 者 化 が あ る の み であ る ぴ ブ ル ジ ョ ア革 命 は こ の ﹁二 つ の途 ﹂ の 闘 争 的 な 過 程 で も あ る が 、 後
者 が 圧 倒 的 に勝 利 を お さ め る 過 程 で も あ る 。 ﹁問 屋 制 マ ニ ュ﹂ な る概 念 は 、 ﹁資 本 主 義 的 家 内 労 働 ﹂ に対 す る 理 解 の
不 十 分 な と こ ろ から あ ら わ れ てき たも の であ る 。
次 に ﹁マ ニ ュフ ァ ク チ ュア の 土 台 が 、 依 然 と し て 手 工 的 技 術 で あ り 、 だ か ら 大 企 業 経 営 も 急 激 に は 小 企 業 経 営 を 駆
(注 17 )
逐す る ことが でき ず 、 営業 者 を農 業 から 完 全 には切 り はなす こと が でき な いと いう事 情 は、 マ ニ
'
ユ ブ ァ ク チ ュア を 小
経 営 に近 いも の と し て い る ﹂。 こ の マ ニ ュ段 階 に お け る ﹁手 工 的 生 産 のも と で は 、 大 企 業 経 営 は 小 企 業 経 営 に た い し
(注 18 )
て 決 定 的 な 優 越 性 を も た な い ﹂。
し た が って 大 マ ニ ュフ ァ ク チ ュア の付 属 物 と し て の 商 業 資 本 や 大 商 人 の 商 業 資 本 は 、 未 だ 力 が 弱 い た め に ﹁賃 金 労
働 者 の 数 が 十 人 に な る か あ る い は こ の数 字 を こ え る ﹂ 程 度 の ﹁小 資 本 家 ﹂ も し く は 小 規 模 マ ニ ュフ ァ ク チ ュア 、 さ ら
に 標 準 的 規 模 の コ 一、 三 十 人 を 雇 傭 す る 程 度 ﹂ の マ ニ ュフ プ ク チ ュア を支 配 す る こ と は で き な い。 こ の 段 階 に お い て
は 中 小 規 模 の マ ニ ュ フ ァ ク チ ュァ の 中 小 工 業 化 や ﹁商 業 資 本 の マ ニ ュ支 配 の 形 態 ﹂ と し て の ﹁問 屋 制 マ ニ ュ﹂ な る も
の を 見 い出 し 得 る こ と は でき な い。
た だ そ こ に 見 い 出 し 得 る 関 係 は 、 資 本 主 義 的 マ ニ ュフ ァ ク チ ュア と そ れ の付 属 物 と し て の ﹁資 本 主 義 的 家 内 労 働 ﹂
と の 間 の問 屋 制 的 な 前 貸 的 な 支 配 従 属 関 係 で あ る (このよ う な関係 を 単 に流 通主 義 的 な、 しか も、 前期 的 なも のと し て のみ
み る こと はあ やま り であ ろ う)。
(注 1 ) 藤 田 ・伊 東 両 氏 編 前 掲 書 二 二︺頁 。
(注 2 ) 大 塚 久 雄 氏 著 ﹁近 代 欧 州 経 済 史 序 説 ﹂ 上 巻 三 二 三 頁 。 氏 自 身 は 問 屋 制 マ ニ ュに つ い て 次 の よ う に考 え て お ら れ る 。
﹁問 屋 制 マ ニ .
こ は 、﹁職 場 主 ﹂ 織 元 -(標 準 的 に は 一応 二 、 一
。
一十 人 を 雇 傭 す る 程 度 の 独 立 自 営 の マ ニ ュ フ ⋮
・ク チ ュア︺ を 論 ず
一
(125)
下 請 制 工業 の本 質 につ いて
一
125
る 場 合 に は ほ と ん ど 問 題 に な ら な い が 、 ﹁問 屋 制 前 貸 人 し と し て の 織 元 、 す な わ ち 、 ﹁問 屋 ﹂ 織 .
兀が 問 屋 制 度 的 前 貸 の 支 配 下
に 、 (家 内 工 業 を お く 場 合 で は な く ) マ ニ ・
一フ ァ ク チ ・ア を お い た 場 合 に あ ら わ れ る ◇
羊 毛 工 業 は 、 通 常 、 紡 毛 工 程 、 織 布 工 程 、 仕 上 工 程 か ら な って い る 。 大 塚 氏 に よ れ ば 、 紡 毛 工 程 は ﹁一般 に 貧 民 の 生 計 の
﹃不 足 を 補 う ﹄ 副 業 的 家 庭 労 働 ﹂ の性 格 が 濃 厚 で あ り 、 こ の よ う な 貧 民 の紡 毛 生 産 が ﹁問 屋 ﹂ 織 元 の 問 屋 制 前 貸 の 支 配 下 に く
み 入 れ ら れ た 場 合 に 問 屋 制 家 内 工 業 が 歴 史 的 に 登 場 す る こ と に な る (し か し 、 ﹁紡 毛 工 の 営 み ﹂ と し て の 問 屋 制 家 内 工 業 が 本
来 の ﹁職 場 ﹂、 す な わ ち 産 業 資 本 と し て の マ ニ ュフ ァク チ ュア に成 長 す る 可 能 性 は 機 構 的 に 存 在 し な か った )。 そ れ に対 し て 織
布 工 程 、 仕 上 工 程 に お い て は 、 ﹁ ﹃問 屋 ﹄ 織 元 に対 す る 関 係 に お い て 、 紡 毛 工 の場 合 に 比 し 、 全 体 と し て 比 較 的 有 利 な 、 あ る
い は いう べ く ん ば 一歩 独 立 に近 い 地 位 に あ った﹂ 小 親 万 あ る いは ﹁職 場 主 ﹂ を 中 心 と す る 本 業 的 労 働 の性 格 が 濃 厚 で あ り 、 そ
れ ら の う ち の あ る も の は 家 内 工 業 の標 準 的 規 模 を 越 え て いわ ば 初 期 マ ニ ュ に成 長 し て い った 。 職 場 の 規 模 が マ ニ ュ に ま で拡 大
し た 経 営 を ﹁問 屋 ﹂ 織 元 が 問 屋 制 度 的 前 貸 の 支 配 下 に お い た 場 合 に いわ ゆ る ﹁問 屋 制 マ ニ ュ フ ァ ク チ ュ ア﹂ な る も の が あ ら わ
れ る (大 塚 氏 に よ れ ば 、 問 屋 制 度 的 前 貸 の 支 配 下 に あ る 小 親 方 あ る い は ﹁職 場 主 ﹂ も 、 自 主 独 立 の自 営 的 ﹁職 場 主 ﹂ も ﹁近 代
的 職 場 主 層 ﹂ (産 業 資 本 ) に 成 長 す る)。
し た が って 、 ﹁問 屋 ﹂ 織 元 の問 屋 制 度 的 支 配 を 中 心 に し て み れ ば 、 羊 毛 工 業 の紡 毛 工 程 で は ﹁問 屋 制 家 内 工 業 ﹂ の 存 在 が 支
配 的 で あ り 、 織 布 工 程 、 仕 上 工 程 に お いて は ﹁問 屋 制 家 内 工 業 ﹂ の存 在 と 同 時 に ﹁問 屋 制 マ ニ ュ フ ァ ク チ ュア﹂ が 広 範 に存 在
し た と いう こと に な る 。
次 に大 塚 氏 は ﹁問 屋 制 度 ﹂ お よ び ﹁問 屋 制 マ ニ ュ﹂ に つ い て ﹁(一) ﹃問 屋 制 度 ﹄ と よ ば れ る 前 貸 的 支 配 の 関 係 一般 を ば いき
な り 、 な ん ら か 工 業 経 営 (生 産 ) 形 態 を 規 定 す る 契 機 だ と 考 え る こ と は 誤 り で あ る 。 ⋮ ⋮ (二) こ こ で ﹃問 屋 制 マ ニ ュ フ ァ ク
チ ュ ア﹄ と 名 づ け る も の を ﹃問 屋 制 度 ﹄ 一般 の う ち に 解 消 し 、 そ れ と 厳 密 な 意 味 で の ﹃問 屋 制 家 内 工 業 ﹄ と の質 的 差 別 を 抹 殺
す る こ と は 誤 り で あ る ﹂ (前 掲 書 三 二 三 頁 ) と し て い る 。
(注 3 ) 藤 田 ・伊 東 両 氏 編 前 掲 書 = 一三 頁 。
(注 4 ) カ ー ル ・マルク ス著 ﹁資 本 論 ﹂ 長谷 部文 雄 氏訳 第 九分 冊 三七 六頁 。
(注 5 ) 大 塚 久雄 氏著 ﹁近代 資本 主 義 の系 譜 ﹂ 上巻 六頁 。
(注 6 ) 伊東 岱 吉 氏著 ﹁中小 企業 論 ﹂ 二五 三頁 。
(注 7 ) 田中 豊喜 氏著 ﹁前 期資 本 主義 史 論﹂ 六 七ー 八頁 。
.
(注 9 )
(注 8 )
前 掲 書同 頁 。
藤 田 ○伊 藤 両氏 編 前掲 書 一三九 頁 。
(注 11 )
藤 田 .伊藤 両氏 編 前掲 書 ニニ八頁 。
大 塚久 雄氏 前 掲書 二〇 六頁 。
〃
(注 12 )
カー ル ・マル ク ス前掲 書 長 谷部 氏 訳第 三 分紐 四 八頁 ・
(注 10 )
(注 13 )
レ ー ニ ン著 ﹁ロ シ ァ に お け る 資 本 主 義 の 発 展 ﹂ 三 六 三ー 六 頁 。
レ日 ニ ンは 、.ヤ ル ク ス の資 本 主 義 的 単 純 協 業 た る ﹁手 工 業 的 な 初 期 の マ ニ ュ フ ァク チ ュア ﹂ を 小 営 業 段 階 に所 属 せ し め て い
る 。 レ か も 、 レ ピ ニ ソに お け る ﹁工 業 に お け る 資 本 主 義 の 発 展 の 三 つ の 段 階 ﹂ は 、 小 営 業 、 資 本 主 義 的 マ ニ コ フ ァ ク チ ュ ア、
機 械 制 大 工 業 で あ る 。 そ れ に 対 し て 、 エ ンゲ ル ス の ﹁中 世 以 降 の 工 業 的 生 産 の 歴 史 ﹂ は 、 手 工 業 時 代 、 マ ニ ュ プ ァ ク チ ュア時
代 、近 代 的 産 業 へ工 場 ) 時 代 で あ る 。 こ の 場 合 、 注 意 す べき こ と は 、 マ.
ル ク ス ‖ エ ンゲ ル ス に お い て は 、 小 営 業 概 念 が 存 在 し
な い が 、 か れ ら に おけ る 手 工 業 は 、 レー ニ ソ の 手 工 業 お よ び 小 営 業 を 含 む と いう 点 で あ る 。 し か も 、 マ ル ク ス ‖ エ ソゲ ル ス に
)
)
論
お け る 資 本 制 生 産.
の 歴 史 的 形 態 は 、 資 本 主 義 的 単 純 協 業 、 マ ニ ュ フ ァ ク チ ュ ア、 工 場 制 工 業 で あ る 。
〃
四五 六頁 ・
前掲 書 三九 五頁 ・
レ ー ニ ン前 掲 書 三 九 四 頁 。
堀江 英 一
層
氏 著 ﹁日 本 の マ ニ ュ フ ァ ク チ ュ ア間 題 ﹂ 二 六 頁 。
、レ ﹂ ニ ンぷ
別掲 書罰二七 六 ー 七 頁 。
)
学
商
)
い る )。
交 換 関 係 の 説 明 が ざ れ て いな い。 ④ ド 請 と外 注 と の区 別 が 不 明 確 で あ る 。 ⑤ 下 請 と 系 列 と の異 質 的 連 関 に つ い て の 研 究 が 欠 除 し て
混 成 的 下 譜 、 有 機 的 下 請 を 説 明 す る 場 合 に 、 親 と 下 雨と の分 業 関 係 、 等 価 交 換 関 係 が 説 明 さ れ る だ け で 、 そ れ を 前 提 と す る 不 等 価
し て い る 。 ⑦ 独 占 資 本 を 頂 点 と す る 収 奪 体 系 の 一環 と し て中 小 企 業 が 存 在 す る 点 が 明 確 にさ れ て い な い 。 ③ 工 業 的 下 請 、 こ と に 、
で に第 一節 に お い て 説 明 し た も の 以 外 に 、 さ ら に次 の 諸 点 が 含 ま れ る 。 ① 構 造 的 分 析 が あ いま い で あ る か 、 も し く は 、 そ れ が 欠 除
(小 宮 山 理 論 に つ い て 、 詳 細 な 検 討 を 加 え る ス ペ ー ス を も た な か った が 、 後 日 批 判 的 に明 ら か に さ れ な け れ ば な ら な い点 は 、 す
注
15
14
)
注
16
'注
注
17
注
18
ユ26
'叢
(126)
Fly UP