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日消外会誌 1 3 ( 1 2 ) : 1 2 9 7 ∼1 3 0 9 , 1 9 8 0 年
宿題報告 2
消化器外科 におけ る高 カ ロ リー輸液
一 適応 と限 界一
大阪大学 第 1 外 科
岡
正
田
INTRAVENOUS HYPERALIMENTAT10N(TOTAL PARENTERAL NUTRIT10N)
IN CASTROENTEROLOCICAL SURGERY.WITH SPECIAL REFERENCE TO
IT'S APPROPRIATE INDICAT10N
Aktta OKADA,M.D.
First Department oF Surgery,Osaka University Medical School
消化器外科領域 における栄養管理の重要性は古 くより痛感 されていたが,適 切な栄養補給手段は確立 さ
れておらず この方面 の発展はあま りみ られなか った。私達は1971年高 力 Fリ ー輸液 の研究 に取組 んだ。 ま
ず安全 ・確実かつ簡便な実施法 の完成を第一 日標 とし,基 礎的実験 お よび臨床検討 を重ね,現 行 の標準実
施法を確立するに至 った.次 いで本輸液が有効 と思われる消化器疾患 ・病態 に対 し臨床応用を試み,そ の
適応効果 お よび治療 限界を明確 に した。 またそれぞれの病態 に適 した実施法の検討を行 った。高 力Fリ ー
輸液 の導入 に より消化器外科は大 きく変貌 を遂げつつあ り,ま た新 しい臨床栄養学,臨 床代謝度が著 しく
進歩 しつつ ある。
索引用語 :高 力 ,リ ー輸液,消 化器外科,栄 養管理,静 脈栄養,臨 床栄養
経 口摂取不能或 いは不充分な患者の栄養維持 は ,古 来
臨床医学 の大 きな課題 であった。そ して1960年代後半,
1)か
経静脈的な完全栄養補給 の可能性が示 されて め以来,
は末梢静脈 よ り定期的に必須脂肪酸補給用 として用いる
“
ものである。以下 この ような Standerd Hyperalimenta‐
tiOn"を 中心 として述べ る。
全世界において静脈栄養に関す る基礎的臨床的研究が幅
I)実 施法について
広 くなされ るようになった.阪 大第 1外 科教室 において
も1971年以来本輸液法 を 外科管理 の一環 として 取 り上
1)静 注 システムに関する検討
カテーテルを正 しい位置 に留置す るには ,様 々のアプ
げ,安 全確実な実施法 の完成を第一 日標 として検討を行
って きた°.
本論に入 る前に高 力 Fリ ー輸液 の定義に若千触れてお
F― チが考え られ る。われわれは鎖骨下到達法に よる鎖
骨下静脈直接努刺法 が血栓形成 ,あ るいは管理 の面 で有
きたい。現在各国各施設において種 々の高 力 ,リ ー輸液
がなされている。例えば複数 の糖 を用いて行 うもの,あ
るいは 力 ,リ ー源 とL/ての脂肪 を重要視 し,大 量 の脂肪
乳剤を用 いるものなどである。しか しなが ら現在全世界
で最 も普遍的に用い られているのは ,高 張 グル ヨース ・
ア ミノ酸液 を主体 とした栄養液を上大静脈内に留置 した
カテーテルを通 じて持続輪液す る方法であ り,脂 肪乳剤
利 と考え,以 来 この方法を取 り上げて施行 して きた 。現
3%,小 児
在 まで1,025例に行 い , 穿 刺成功率は成人96。
79。1%,全 体 として94,3%で あ る。合併症 としては表 1
の 如 く気胸が2.5%,た だ し ドレナージを 要 し た もの
よ うち 0。
6%,そ の 他動脈努刺 1.1%, カ テーテル 栓
“
塞0。1%で ある.ま た必ず しも 合併症 とはいえ な い が
mislodgingが,5.0%と 多い。 主 として内頚静脈への誤
挿 入であるが この点手技上 の一層 の工夫が望まれ る。
消化器外科 にお け る高 力 Pリ ー輪液
14(1298)
日消 外会 誌 13巻
12号
表 1 鎖 骨下静脈直翠穿 刺 に基ず く合併症
(1025穿
刺中9 0 件)
殖源 となることがその大 きな原因 として挙げ られ る。共
同研究者笠原 らは高 力 Fリ ー輸液剤 お よび 5%ブ ドウ糖
と―
――
十一―
-51(5.0挽)
誤挿入(misodEinθ
――――――‐26(25恥)
気 胸十一一一―
液 内におけ る各種微生物 の生育状態について検討を行 っ
たの。 そ の結果 ,高 カ ロ リー輸液内ではほ とんどの菌種
持続吸' │ を要 したもの一―一一――- 6
― ‐1 1 ( 1 . 1 7 6 )
動脈葬刺 一―十一―十 一
血胸 十
十
が死滅す るが Candida allicansの
みが著 しい増殖を示 し
た .こ れに比 し5%ブ ドウ糖液 ではほ とん どの菌種 が増
一 ――一 ――- 1
胸膜外血腹 ――十一―― ― ―一 一一‐ 1
度下血腫 ― ―一 ―十一一 ――――― - 3
カテ ー テル栓基 ( 澄残) 一 ―― 一 - 1 ( 0 1 7 9 )
胸督葬刺 得阪 胸) 一―――――一 ――- 1 ( 0 1 恥
殖を示 し,Candida allicansの
み死滅 した。
次に高 カ ロ リー輸液 の輸液回路 において ,菌 汚染が実
際にはどの程度起 っているのか ,ま た如何にすれば これ
)
90(88挽 )
阪 大 第 一 外 料 昭 和 5 5 年6 月 1 5 日
を最少限 に食 い止め得 るかにつ いて検討を行 った。高 カ
ロ リー輸液を受け る患者を対象 として ,点 滴瓶,留 置 マ
イクFフ ィルター前 ,フ ィルター後 の 3ケ 所 よ り採液 し
培養 を行 った.そ の結果 フ ィルター前後で菌 の培養率は
静脈内に カテーテルを留置す るとかな りの頻度 で血栓
形成が起 こ り,時 には これが肺栓塞や敗血症 の原因 とな
り得 る事が知 られている。また血栓形成 の程度は留置す
るカテーテルの材質に よ り強 い影響を受ける。教室 の池
6%お よび 1%と 明 らかな差を示 し,フ ィルター留置 の
有用性を示す ものと考え られため.
田は現在市坂 されている 4種 のカテーテル ,す なわち ン
リコン,シ リヨン化 ポ リエチ レン,ポ リエチ レン,テ フ
フ ィルターを持続留置す ると点滴剤中の微粒子などに
よ り,日 づ ま りが起 こ り, トラブルの原因 となる事 が知
られている。そ こで高 力,リ ー輸液を受ける患者を対象
Fン よ りなるカテーテルを用いて ,雑 種成犬 の上 ・下大
静脈内にそれぞれ 2週 間 カテーテルを留置 し,血 栓形成
の程度を調べた 。その結果 カテーテルを と り函む ように
して生ず るカテーテル周囲血栓 ,お よび カテーテルが血
として ,フ ィル ターにおけ る目づ ま りの頻度お よび同部
における菌陽性率 との相関をみた 。その結果 ,表 3に 示
管壁を刺激 して生す る壁血栓共に ,シ リコンは他 の 3種
のカテーテルを留置 した場 合に比べ て一番少な く (0∼
I)以 上 4種 の うちでは高 カロ リー輸液 に最適 である事
が判明した 。D(表 2).
カテーテル敗血症は,高 力 Fリ ー輸液を行 う際最 も警
表 3 フ ィルターにおける目づま りと菌陽性 との
関係 (全70例中)
菌陽性
我すべ き,ま た時 として重篤な合併症 の 1つ である。こ
れはカテーテルを静脈内に長期間留置す ること,お よび
輸液剤 自体 が敗血症 の主因を占め る Candidaの よい繁
表2 カ
菌陰性
計
=2_6.54(Pく
24
70
0.025)
テ ーテ ル挿 入後 2週 間 目の血栓形 成
カテ ーテルの種類
Polyethylene
(Sliconized)
Polyethylence
Te刊 on
静 内 カテーテル周囲血桂
部
I
口
lll
脈位
ABCDE AB C D E ABCDE A B C D E
SilasJc
計
目づ ま り ( + )
目づ まり ( ―)
壁
0
血
I
栓
田
15(1299)
1980年12月
した如 く目づ ま りとフ ィルター部 の菌陽性率 との間 に,
め
有意 の相関がみ られた 。 したが って以上 2ち の実験結
果をまとめれば ,高 カ ロ リー輸液 におけ る静注回路 をで
減少傾向を示 し昨年度は 7%で あった 。
各施設 において高 カ ロ リー輸液 が安全 にされ るために
きるだけ無菌に保 つためには フ ィルターは必ず留置 し,
確立 され る必要がある。そ こでわが国におけ る高 カロ リ
ー輸液 に基づ く敗血症発生 の現状 についてアンケー ト調
しか も日づ ま りが起 こるまでに定期的に交換す るのが よ
い とい うことになる。
静注回路におけるも う 1つ の重要な菌 の侵入源 は カテ
ーテルの皮膚刺入部 であ る。この部 は患者 の体重 ととも
敗血症 の重篤性が認識 され ,適 切な管理対策が施設毎に
査を行 った 。 アンケー ト送付先 は 大学病院 の 外科教室
155施設 ,300床 以上 の一般病院572施設 ,お よび300床以
に絶えず tO and frO acjonを
続けてお り, 決 して閉鎖
い.し
とはな
り得な
たがって この部 よ りの菌汚染 の頻
創
下 で高 力 ・ リー輸液 を行な っている337施設 ,計 1,064施
設 である。回答は569施設 よ り得 られ,回 収率は53.5%で
あった 。 なお , こ の うち高 力 Fリ ー輸液実施設 は546施
度 は高 く,こ のため定期的 に厳重な消毒を行 い ,常 に密
閉 して お くことが 望 ましい。 われわれは 1974年以来表
設 (96%)で あった 。これ よ りみればほんどの施設が高
力 Pリ ー輪液を施行 しているとい う事 になるが ,む しろ
4に 示 した静注 システムの管理基準 に従 って施行 してい
るが , と くに カテーテル 皮膚刺入部 については 年毎に
実施施設 か らの回答が高か った と考えるべ きであろ う.
表 4 静 注システムの管理 (1974∼1979)
①
カテ ー テ ル皮膚 刺 入部 の 消毒
② 点滴 セ ッ トの交 換
…
…
2回 /週
2回 /週
… 2回 /週
ー
③ フィルタ (02″ )の 交換
ー
テルの入れ換え
1回 /月
テ
④ 中心静脈カ
(成人のみ、左右交互に1978年まで実施)
図 1 年年度別菌陽性率の変化
壊
回答施設を全国地域別にみ ると関東 が122で最多 であ
り, 次 に近畿 106, 中部79, 九 州68, さ らに東北 , 中
国,ゴヒ陸 ,四 国,北 海道 の順 で続 いている.次 にこれ ら
の施設 の高 力 Fリ ー輸液開始年度 をみ ると昭和46年よ り
51年まで急上昇 してお り,以 下少 1ン
ずつ下降 している.
したがってゎが国においては高 力 ■ リー輸液 の導入時期
は よ うや く過 ぎさ りつつ あるとも言えるであろ う。
昭和54年 1年 間におけ る全国施設の高 ガ マリー輸液総
施行症例数は6,566症例 であった 。 これを 施設当 りでみ
( % ) 皮 膚刺 入部
薗 陽忙 孝
ると平均31.2例,ま た ,大 学病院 では47.0例,300床 以
上 の病院 で30.8例, 300床以下 では20.8例である。 総施
行 日数 は377,216日,一 施設当 りの平均施行 日数 は781.0
日,一 症例当 りでは22.8日であった 。
さて カテーテル敗血症 の定義に関 しては施設に よ り,
また施行者 によって 考え 方が 若千異 な りあいまいであ
る。また一般に考え られ ているよ うな重篤性 に関 して も
症状 があるにも拘 らず カテーテルを抜去せず放置 した場
合 と,早 期 に処置 した場 合とでは臨床症状 が全 く異なっ
て くる。
したがって現時点 であま り厳密に決めると落ち こばれ
の生ず る事 ,ま た施設 によって差 が生ず る事 よ り retrO_
SPeCtiVeな所見を重要視す る事 とし,「 発熱 ,白 血球増
消毒法 を変更 し,そ の差異を比較検討 してきた 。その結
果現在 の如 く,ア セ トンでまず脱脂を行い ,次 いでイソ
ジ ン,イ ツジンゲルの順 で消毒 した場合一番菌培養率が
低 く効果的 である事が明 らか となった 。図 1に おいて フ
ィルターお よび ,カ テーテル先端 の培養結果 ,敗 血症発
生頻度 いずれ も症例増加 とともに一 たん増加 し,そ の後
多,核 の左方移動 ,血 糖 の上昇などの臨床所見 ,及 び カ
テーテル抜去 に よる症状 の軽快 の 2点 を備えた もの」 と
した。この定義に対 して これで よい と答えた 施設 は354
(64.8%)あ った 。 一方不充分 であると答 えた186施設
に対 し補足事項をお願 い したが ,カ テーテル以外 に感染
と思われ る原因がない (62.9%)が 一番多 く,抜 去され
た カテーテルよ り菌 が増殖 された (53.2%),動 脈血 よ
り菌 が培養 された (37.6%)の 順 で続 いている。これ ら
消化器外科 におけ る高 力 「 リー輪液
16(1300)
日消 外会 誌 1 3 巻
それぞれ の項 目については充分条件 とはな り得 て も,必
表 6
要条件 とはな り得ない点 もあ り今後 の問題 と思われ る。
今回は一応敗血症 と記載 された ものをすべ て集計 した。
輸渡 内容 ・投 与基準
敗 血症総数は1,862例(11.2%)となった 。 敗血症 の発生
回数は少 し多 く2,238回(13.5%)となる.回 数を総施行
日数 で害」
ると1/16,8と
な り,16.8日 に 1度 の害」
合が敗血
こってい
が
よる死亡
る
に
となる。
なお
血症
症 起
事
,敗
は39例 (0.24%)で あった 。 ここで その 発生頻度を 今
までの 報告例 と 比較 してみ ると 表 5の 如 く,MasSach_
Ryanヵ ヽ
usetts Ceneral HosPitalの
行 った報告 では 6
case Controlの行 っ た
%,1972年 米国 Center for Dお
集計報告 では2,078例中 7%で あ り, これに 比 べ て今
表 5 カ テ ーテル敗血症 の発生頻度
年度
患者 数
を蘇
標準維持液(f宵
ィi=↑
具調騒受
1)
1日 40∼
50 cc/kど
グルコース (`〕
アミノ酸 (3)
Na
(mEq)
K
Mg
(m〔 o)
(mEo)
Ca
(mEq)
P
( 耐‖
)
20(24)
47(54)
15
42(44)
液 ■
( m l ) 600
カロリー 丘 ( c 』
)
カロリー / N
600
500(596)
580(596)
,65(,38)
165(133)
12号
レビタ, V H )
ビタミン類 ( プ
BI
(m0
5
B2
(mg)
5
B6
(mg)
3
8々
(″ g) 30
ニヨチン酸 て
rng) 20
バン トテン酸 (m8) Ⅲ 2
葉 酸
Ⅲ
m を)
ピオテン (だ ) 200
C
(rng) ,oo
A
(lU) 2500
D
(lU) 200
E
(m=)
15
K
(mと )
2
嶺 工 元 乗 類 (IVHoM2)
Zn
(′`Ⅲ
。
け 60
Mn
(″ me) 20
Cu
(′rmJ) 5
r m │。() ′
1
Fo
(ntg)
2
,
歎 ヵテ_引 拾 亀 り 症満
RttH)的″抑0 拓5 4% 6%
R3:A)門″ 2073 - - 7%
%H2%
″
2 的把
9眸卜
護 197916566ク
堕
介
霜 1979 6門 ″9 '7% は1%
姿
図 2
BI。 。d sugar ievels during IVH l‐
14th day
回の集計結果 は11,2%と 明 らかに高かった。ただ し,施
設 に よっては極度に多 い所 もあ り,こ の点 さらに施設毎
に検討の予定 である。 原因菌種 であるが, Candidaが
15.1%と 多 く,次 いで Klebsiella,Staphylococcusと
続
tヽ
ている。 そ の他 敗血症発生症例は 悪性腫場患者 に 多
く,次 いで消化管痩孔 ,腸 の炎症性疾息 と続いてお り,
全身状態に よる影響 も大 きな因子 となっているものと考
え られ る。
2)各 栄養素の代謝状態 について
高 カ ロ リー輸液 は各種栄養素を含んだ複雑な多成分 の
輸液 であるな したが って ,製 剤上 の問題点は 極 めて 多
く,更 にそれぞれ の栄養素 の正 しい必要量を配合す るの
は至難に近 い。われわれは薬剤部 の協力を得 て数年 にわ
いるため ,血 糖値 の異常に関係 した種 々の合併症を来た
た り検討 を続け,何 回か の手直 しを加えて ようや く表 6
の如 き投与基準 お よびそれを 含む 薬剤セ ッ トを 作成 し
た 。その基本 となるのは ,高 張 グル コース,電 解質混合
しやすい事 は よく知 られている。共同研究者板倉は,高
カ ロ ツー 輸液時 におけ る血糖値の 変動を詳細に 検討せ
液 (現在市販 されている)で あ り,こ れに使用時 ア ミノ
酸 を加えて基本維持液 とす る。この維持液は,21%グ ル
コース, 3.3%ア ミノ酸 の濃度 であ り, 力 Pリ ー/Nは
165である.
イ)血 糖維持 についてめ1の
本輸液法 では主なる力 Fリ ー源 として グル コースを用
ん として ,安 定期 の成人症例を選び 日内変動を,さ らに
日差変動を検討 した 。図 2は 日差変動をみた ものである
が ,血 糖値はほぼ90∼130mg%に 保 たれ大 きな変動 を示
していない。 一方 これを腹膜炎を 伴 った 腸慶症例 でみ
ると,血 糖値 が200∼300mg%に 達す る著 しい 変動を示
している (図 3)。 そこで この ような血糖値 が 安全限界
である200mg%を 起えるよ うな症例を集め ると表 7に 示
1980年12月
17(1301)
図 3 腸 療症 状 にお け る血糖値 の変動 (辻本 1973)
Biood sugar Leveis
表 7 高 カ ロー輸液 において高血糖 を来 た しや
す い因子
1 ) 感 染 症 ( 全身 は 1 局 所 性 )
図 4 K値 の変動
― 高 ヵ ロ リー輸液施行前 と施行中 の比較一
図 5 成 人 におけ る血 策遊離 ア ミノ酸濃度 ( 高力 ▼
リー輸液前 , 中 , 後 お よび正 常報告値 との比較)
C
‐
Ⅳ H前
IVH中
2)脱
水
合 込 IVHイ受
3)出
血
申
4)呼
吸障害
5)外
傷 ,手 術
6)棒
切 除後 , 重 症解 炎等
7)真
性糖尿病
3)肝
障害
正
常 報告値
9)癌
( 板倉, 1 9 7 4 )
した如 く,感 染症 ,脱 水, 出 tlなど9つ の因子 にまと
め る事 がで きた。これ らは高 力 Fリ ー輸液時におけ る血
糖値上 昇因子 (耐糖能低下因子)と 考え られ ,こ のよ う
な因子を伴なった症例における高 力 Fリ ー輸液 の施行時
には血糖値 の推移 に充分注意す る必要 がある。また ,こ
のよ うな場合には インシ ェリンを使用す るが以前にまと
め た結果 では検索対象 とした217例の息者 の うち30%と
ほぼ173の症例 にインシュ リンを 使用 している。 では 高
力 rリ ー輸液 の施行 自体 が ,耐 糖能を低下せ しめ るのか
とい う事 が問題 となって くる。そ こで施行前お よび施行
中経静脈的糖負荷 テスナを行 い ,K値 を求めてみた とこ
ろ ,2例 が施行前値に比べ て極 めてあずかに減少を示 し
た以外 は全例増加を示 した (図4)。 また 負荷後 10分の
IRI″BSは ,IVH前 に比べ増加を示 した。 したがって
経静脈的糖負荷 テス トでみ るか ぎ り,安 定期症例では,
本輸液時 の耐糖能は維持 されているとい う事 になる.
口)ア ミノ酸組成 について1つ
高 力 Pリ ー輸液組成 の うちでも,ア ミノ酸剤 は体蚕白
f 吉おS 還3 ギさ軍置遅遅占慧F 占豊ゴ
の唯一 の供給源 として重要な意義を持つ ものである。し
か しなが らア ミノ酸剤における各 ア ミノ酸配合組成に関
しては高 カロ ツー輸液が行われ るより以前に市販 されて
いた製剤がそのまま使われてお り,こ れが果 して高 力P
リー輸液に適 した ものであるのか ,病 態 に より変更 の要
はないかな どの問題が未解決 のまま残 されている。そこ
で代謝異常 のない成人を対象 として ,高 カ ロ リー輸液施
行前 ・中 ・後 におけ る血 清 ア ミノ酸 の変動を観察 した .
そ の 結果 ,施 行中 の 値を 施行前後 の もの と比較 す る
と,辞 yChe,Phenyl】 anine,]ysineが若干高値を示 し,
用 いたア ミノ酸組成に よる影響が 示唆 された (図 5).
因み に今回用 いたア ミノ酸剤は FAOrWH0 1963 E/N
=1の ものであるが,こ の中には これ らのア ミノ がか
酸
な り多 く含 まれている。以上市販 のア ミノ酸を高 力 Fリ
消化 器 外 科 に お け る高 カ ロ リ ー輪液
18(1302)
―輪液組成 として用いた場合 ,血 清 ア ミノグラム上では
大 きな乱れはみ られず ,ほ ぼ満足べ きものであると考え
られた。
ハ)水 ・電解質バ ランスについて1の
高 カロ リー輸液時 の水 ・電解質バ ランスの管理 は極め
て重要 である。輸液に よる栄養負荷 に よ り,細 胞内外 の
電解質 のパ ランスが大 きく変動す るか らである。われわ
れは高 力 Pリ ー輸液時 ほぼ 一定量 の 水 ・電解質 を 投与
し,輸 液開始後 3週 日以降 の安定期 を基本的変動把握 の
時期 と考え ,こ の時期 における水 ・電解質 バ ランスを求
め ,こ れを開始早期 の もの と比較検討 した .表 8は 測定
表 8 高 力 ,リ ー輪液時 の水電解質バ ランス
(/kg/day)
Na(mEq)
を示 している。いずれ の電解質 も血清 レベルはほ 貸正常
に保たれた今回はMgに 関 しては検討 を行 っていない。
二)ビ タミン類 について1め
高 カ ロ リー輸液時 におけ る ビタ ミン投与に関 しては ,
製剤的な問題 は もちろんの事 ,そ の代謝 ヵ投与量 に関す
る検討は今までに全 くなされていない。われ′
われは当院
薬剤部 の協力に より13種類 の ビタ ミンすべ てを含む高 カ
■ リー用製剤を作成 した 。これは経 ロー 日所要量を基準
とし,こ れに適宜測定結果を参照 しつつ手直 しを加えた
ものである。現在まで11種類 の ビタ ミンにつ き測定を行
った 。その結果 は表 9に 示す通 りで ,施 行前値 は ビタ ミ
ンの種類 に よってかな り異常値を示す もの もあるが,高
力 Pリ ー輸液開始後 2∼4W後 には大部分健康人値に近
ず いている。 ただ し V・ B12に 関 しては 1日 30μgの 投
与 ではか な り健康人値 を上 まわ る値を示 してお り,一 日
理
,,COTの
7±9
P L P 均 楽 ( 斉)
(31,
Ba(304
C
1斗
昇評
使常大お
付
hθ
田
チ
ラ
忌 仰" ″ ″
ダ彰
占( 1) 2 ・
室光法
,01±031 (51)
653主132
(20)
,14主 017
(31)
3も
1 6 54 せ
2〔6 7 F ' ( 73 4的〔3 3 〕 ( 2 5 )
(赤 血H/rダmか
(白
126主
218
。
047〔
f07〕
0 6 02 せ
〔
♀
55
政″ノdり
1 1 8 ±5 7
(31)
(29) 0 4 4 ( 0 1 3( 02 61 〕
)
9 )0 3 8 ( 0 1 。
338)4 8 う
〕“
(47)
100主 023 (77)
必要量 に関 しては更に検討 の要 がある。
1め
ホ)微 工元素について1°
ー
高 力 Fリ 輸液 におけ る微量元素 の補給 は とくに輸液
が長期間 にわたる場合重要になって くる.わ れわれは以
前微量元素 の特別な補給なしに高 力 Hリ ー輸液 を続けた
患者 に顔面 ,陰 殴部 さらには四妓 に広がる特徴的な皮疹
を認め ,こ れが亜鉛欠乏である事をつ きとめ報告 した。
以来長期高 カ ロ リー輸液時 におけ る各微量元素 の重要性
が認識 され,ま たその代謝状態 が検討 されている。われ
表10 高 力 rリ ー輪液時の糀量元素測定値
(IVH‐M2使 用時)
一日投与登
5
値プ
を行なった水電解質バ ランスを示 したものである (カッ
ヨ内は投与量 である)が ,Pお よび Caが 負 のパ ランス
原
船
般
( )は 投与量
定
赤山募T K 筆 O T P P 効 果は )
行
+08± 10
( 4 0 ±1 3 )
+05±04
( 1 5 ■0 4 )
- 0 0 4 ■0 2 5
(048± 015)
-010■ 023
(027± 015)
】
BI (5mgl
別
ユ
- 0 0 1 ±0 1 6
( 0 3 2 ■0 0 4 )
- 0 0 4 ±0 1 5
(025± 009)
唇激降
)
(3彊
12号
表 9 高 カ ロ リー輪液施行時 におけ る各 ビタ ミン状
態 の評価
値殻″
Ca(mEq)
2め
P(mEq)
■Q
K(mEq)
抑
蜘
Cl(mEq)
-02± 18
( 3 0 ±1 2 )
+09圭 16
( 4 2 ±1 4 )
+07±05
( 1 4 ±0 4 )
■0 0 8 ±0 2 0
(036± 011)
- 0 0 5 ■0 1 1
( 0 2 8 ±0 1 1 )
非飢餓群
+ 2 2 ±9
( 5 0 ±1 1 )
+03± 08
08)
(29±
■1 0 ± 0 9
(37主 11)
十G
水分 (ml)
5の
︲
飢餓 群
い封陀
H
い
中
開始 期 (1週 間以 内)
日消 外会 誌 1 3 巻
101± 62(4)
93± 3フ〈9
94=25(9
241± 65(17)
215± 47
1フ6±38(7)
121±34(32)
103と20
84± 21(6〕)
82士 iO
68と 22(35)
われは欧米諸家の処方 お よび教室におけ る過去の検討結
果 を参考 に亜鉛 の 他 Mn.cu,I「 Feの 5種 類 を含 ん
だ高 カ ロ リーー輸液用微量元素裂剤 (院内製剤 =IVH一
M2)を 作成 した (表6).本 剤を用 いて血清 レベルの推
4種 とも,輸 液
移をみているが ,Zn,Mn,cu,Feの
前異常値を示 していて も輸液開始後 2∼ 4週 ではなば健
常人値 に近づいてお り,現 在 の ところ満足すべ きものと
考え られ る (表10).Iに ついては今後検討 の予定 であ
る.
さてわれわれは他 の微量元素 に比べ亜鉛 の欠乏症が極
めて多 くみ られ る事 に注 目し検討を続けて来たが ,そ の
原因 として① 高 カ ロ リー輸液 の施行に よ り尿中に排泄
され る亜鉛 が著 しく増加す る事 ,② 高 カ ロ リー輸液 の
1980年12月
19(1303)
適応 となる疾患 (消化吸収障害を伴 った よ うな良性消化
器疾患)で はす でに 潜在的 に 亜鉛欠乏が 起 こってい る
licと な り
事 , ③ 高 カ ロ リー輸液 の施行に よ り anab。
1°
亜鉛 の需要が増す事などを考えている .高 力Fリ ー輸
液時 の微量金属欠乏症につ いては ,そ の他 ,銅 欠乏症 ,
クロー ム欠乏症な どが知 られているが ,こ れ らの代謝動
態 に関 しては今後 の問題 である。
へ)肝 臓の機能 ,形 態について1り
高 カ ロ リー輸液時 の肝機能 ,肝 形態についてのいまま
での検討結果 を まとめ ると,1.ト
ランスア ミナーゼの
上昇 ,2.過
乗1負荷症候群,3.黄 疸 ,4.ァ ルカ リフ
ォスファターゼの上昇 ,5.脂 肪肝 の 5点 に 要約 で き
る。 高 力 Pリ ー 輸液時血清 トランスア ミナーゼ 値変動
を ,一 カ月以上施行症711105例
を 対象 としてわれはこの
血
ゴ
が群汗
図 6
症例
伊 O t t O 子 , 9 カ 月. 女 子.
0
6 4
碑 6 開 5 5
C 創。
he/絶
0
3
上昇を もた らす事,こ の変化 はア ミノ酸を含まない場合
さらに著 明であることを明 らかに した1ゆ。この事 よ りみ
て グル コース ・ア ミノ酸 の一定比率は肝に とって ,極 め
て重要 である事が伺われ る。
高 力 Pリ ー輸液時 におけ る 「黄疸」 の発生 が注 目され
ている。ほ とんどが小児例 ,こ とに新生児期に発生す る
ものであ り,生 理的黄疸が一たん下がった後 に ,再 び上
2の
昇す るもの,そ のまま遷延す るものが多 い .そ の原因
として栄養素 の配合比率 に関す る問題 ,ま た絶食 に よる
影響などが挙げ られている.わ れわれは この点 に関 し,
新生児 ・乳児症例を中心に検討を続けてきたが,上 記 い
ずれ の困子が関与 しているにせ よ,新 生児期における肝
の未熟性―特異な代謝機能― の把握な しには ,こ の問題
は解決 され得ないものと考え るに至 っている。
長期高 カ ロ リー輸液施行時におけ る 「脂肪肝」 の発生
に関 しては未だそ の原因は明確にされてお らず,現 在種
々の因子が考え られている。しか しなが ら,数 室 での経
験例 をみて も実際 にはその発生頻度 は成人 ,小 児 を問わ
ず少な くな りつつ あ り,こ れには高 力 Pリ ー輸液組成 の
0
6
0
4
E I.V.H.
@ Oralintake
..-- Calorie
perlg
ような 現象を 過剰負荷症候群 (OVer10ading syndrome)
1°
としてすでに報告 した 。この点 につ き教室 の池田は ,
ラ ッ トを 用 いて 実験的に 検討 を行 い , グ ル コースの過
乗」
負荷 に よ り肝内 グ リコー ゲンが著 しく増加 し COTの
0
2
側
進歩が挙げ られ ると思われ る。
II 臨 床応用
2'2の
1)消 化管外壊
0
8
0
消化管外慶はそのほ とん どが消化器外科術後に発生す
るもので ,極 めて不愉快な症状を塁す る。いずれの場合
にも消化液 に よる局所刺放,さ らには全身栄養状態 の低
下 と相挨 ってますます難治性 となる。その死亡率 は従来
40∼50%と 極 めて高率 であ った。高 力Pリ ー輸液 の導入
Tenperature Tenperature
39℃
は極めて大 きな効果を発揮する事 となった 。すなわち絶
食 とし消化液 の分泌量を減少せ しめ る事に よって創部を
38
3?
図 7 消 化管外療の治療成績
36
<手
術
靴
紛
m例
返:瑠 瑞掛
1
ま とめてみた ところ ,そ の85%が ,経 過 中上 昇を示 して
ヽ
方 ,COT,CPTヵ
変化 を示す
いた (COT>CPT).一
ものの中 で も,肝 腫大 ,急 激な体重増加 , さ らには 脱
水 ,黄 胆な どす るものがある.こ れはいずれ も高 力 Fリ
ー輸液 が過剰に負荷 されていたために起 こった もので,
輸液量 の 減少 に よ り正常化 をみている (図6).わ
れ
安静 に保 ちかつ この問積極的 に静脈 ルー トよ り,栄 養補
給 をはかる事を可能 とし,療 孔治療 において正に一石二
鳥 の効果をもた らした 。教室 におけ る高 カ ロ リー輸液を
用 いた消化管外腹治療成績をみ ると図 7の 如 く68症例の
消化 器 外 科 にお け る高 カ ロ リー 輸液
20(1304)
表1 1 消 化管外痩 にお ける治癒遷延因子
( 手術閉鎖 症例 の分析)
日消 外会 誌 1 3 巻
図 8 高 カ ロ リー輪液前後 にお け る腹部症状 の推移
( 全1 9 例)
厖Z症 状あり
1 嬢 痕化 した康孔――十一十一一-7
状
一
一
一
十
一
一
一
一
―
―
- 3
削後 一
別後
副後 一
前 後 一
唇
V
I
一
2
療
W
3 病 的腸誉 ―――― ――――二―___2
4 肛 門側腸管の通過障害―――-1
5 獲 孔の一 部 に膿場 が存在 ― ―-1
下痢
W
48例 (77%)が 自然閉鎖すなわち手術的に閉鎖 を行わな
いで 自然治競 している。一方 自然閉鎖がみ られず手術治
腹病
V
I
うち治癒は62例 (91%)に おいてみ られてお り,従 来 の
治療成積 に比べて大 きな飛躍 といえる。さらに この うち
獲孔
( 阪大
療 に 踏切 った 症例につ いて 痩子L形態の 分析を行 ってみ
ると,表 11のごとくい くつ かの治癒遷延因子 の うち 1つ
以上が関与 している事 が明確 となった。またこれ らのい
ずれ もが術前高 力 Fリ ー輸液 の施行 に よって栄養状態 は
良好 に保たれてお り,余 裕を持 って後期手術を行 う事 が
で きた ものであ った。
術後縫合不全発生をみた場合 ドレナージその他 の局所
管理を行 う事 はもちろんの事 ,同 時 に高 カ ロ リー輸液を
用 いた確実な栄養輸液管理を行 いなが ら,局 所状態を観
察 し,さ きに述べ た治癒遷延困子 の有無 に よ り手術治療
の可否 ,あ るいはその時期について判断する事が今後 の
消化器外科医に課せ られた任務であると考え る。
2)炎 症性腸疾患20
腸 の炎症性疾患 として ,ク ロー ン病 ,潰 瘍性大腸炎等
様 々の ものが知 られ てい る。この場合食餌に よる腸管粘
膜 の刺激が病態増悪因子 として働 き,こ れに栄養障害 が
12号
―外 1 9 8 0 6 )
表1 2 盲襲症候群
原疾 息
目
吻合意 の部位
臨
床
所
見
体重力少 低督白血在 策血 艇部臣お
dβ
]X101 ,下商
,中
(-9k9)(48プ
意
,平滑筋肉歴 空陽 回 陽
体重減少 低雲白血症
ヨ
十二指隔漬親 胃 空陽
体至減少 ほ蟹白血定 ″
-21k9)(458/d2) (315)
【
犠行結腸
々
厳 部膨満
切) (30引i下痢
(-5k〕“0プ
│二指腺済お 目 空瞬 検行者堀 体重=少 抵雲自血定
(-15k9)(48プロ
リ
空 十二指瞬 空 瞬
L天
性
醤
震
発育還延 ほ 部膨満 下 痢
し
天桂十二指日
十二指瞬 空 瞬
閉鎮症
発育運延
47日
天准十二指g
し
十二指陽 空 線
閉鎖症
た .絶 食高 力 Fり ‐輸液 が腸炎症性疾患を永続治癒せ し
め るか否かはなお ,今 後 に残 された課題 である.
3)盲 襲症候群2つ
盲襲症候群はそのほ とんどが外科手術後 に生 じた もの
加わ ってますます難治性 となっている可能性がある。し
たがって絶食高 カ ロ リー輸液 に よ りす この悪循環 のサ イ
である。腸管内に食餌内容が停滞 し,腸 管 の著明な拡張
お よび腸 内細菌叢 の異常増殖による消化吸収障害が起 こ
クルを絶ち切れば ,病 態治療上有利ではないか と考え ら
れ る。われわれはこの ような観点 よ り炎疲性疾患 19例に
対 し,高 カ ロ リー輸液を用 いて治療を行 った 。そ して う
ような病態に対 しては ,い くら経 口摂取 を積極的 に行 っ
ち16例 (84%)に 一応 明 らかな効果を認めている.腹 部
症状 についてみ ると図 8の 如 く「
区吐 ,下 痢は全例に消失
を見 ″腹痛 は79%に ,濠 孔は84%に 有効 であった 。栄養
状態 に 関 しては ,施 行前低栄養状態 にあ った 結核性腸
炎 ,あ るいは ク ロー ン病などでは体重増加 ,あ るいは血
清曇白,ア ルブ ミン値 の著明な改善をみてお り,他 の疾
患 では栄養 はむ しろ維持 されている程度であった 。以上
高 カ ロ リー輸液 は ,炎 症性腸疾患 に対 しては腹部症状 お
り,次 第 にるいそ う著 しくなるのが特徴的 である。この
てみて も,腹 部膨満お よび腸内細菌を増殖せ しめ るだけ
であ り,全 身 お よび腹部症状 の改善 はみ られない。われ
われは盲襲症候群 7例 (成人 4例 ,小 児 3例 )に 対 し高
カ ロ リー輪液 を施行す る機会を得 た (表12)。 これ らの
症例 は成人例では低蛋白,貧 血が著明であ り,小 児 では
発育遅延 が特徴的 であった 。なお腹部膨満は全例にみ ら
れた。絶食高 力 Fリ ー輸液を平均 39日間 にわたって施行
した ところ全例に腸管 の縮小,栄 養状態 の改善 をみ ,開
よび栄養状態 の改善 に有効 と思われ ,そ の効果 は特 に結
核性腸炎お よび クロー ン病 において著明であった.こ れ
腹術 に踏切 った 。術後経過 はいずれ の症例 も順調 で全治
退院せ しめ得 た 。
4)腸 管大量切除2D
よ り上記疾患 では,他 の例えば潰易性大腸炎な どに比べ
て栄養 と病態 との関係が よ り密接 である 事 が 示唆 され
腸管を大量切除 の已むなきに至 る事がある。この場合残
腸間膜血栓症 ,癌 腫 ,あ るいは先天性腸閉鎖症などで
1980年12月
21(1305)
存腸管だけ では充分に機能を果 し得ず,し たがってこの
間は静脈栄養 で全身状態を保ちなが ら,腸 管粘膜 の代償
肥大を 期待す るとい うのが 一般的な 考え 方である。現
在小腸 の 切除限界に 関 しては 諸説あ るが ,WilmOre20
は小児症例 について 広汎な 文献渉猟 を行 い,そ の 結果
Bauhin弁が 保たれ ていて ,全 小腸が少な くとも37crn
以上なければ 生存 し 得ない と 結論 した 。 教室 での今 ま
での 経験例は小児 10例,成 人 3例 である (表13,14).
小児 10例の うち生存 は 6例 (60%)で あ り,症 711Villi
の高さが 優 っている 事 が分 る2ゆ。 これ よ りみて も 可能
な限 り経 口食 を併用 し,ま た増量 しなが ら高 カ ロ リー輸
液 を 行 う事が,本 病態治療において 重要 であ る 事 が分
る。高 力 Fリ ー輸液 お よび成分栄養を有効に用 いなが ら
腸管大量切除例 に対処 した場合,果 して切除限界 (将来
代償肥大 を期待 しうる)は どの程度 となるかは今後 の課
題 である.
5)麻 炎2つ
膵炎 の病態 に関 して ,未 だ不明な点 は少な くない。し
か しなが ら,い かなるタイプの陣炎 であれ食餌刺激が病
態増悪因子 として働 き, また二次的 に生 ず る 栄養障害
表13 小 児腸管大量切除症例
が ,病 態悪化に更に拍車をかけている事 は次第 に認 め ら
れつつ ある.し たがって高 力 Fリ ー輸液 の導入 は ,こ の
3日
小腸32cmo 死甥囃
1日
小腸27cm①死
3日
小陽70onO
生
ような病的膵 の安静 ,お よび栄養改善 の二点 で有効 と考
3日
小腸40onO
生
え られ る (図9).教 室 では現在 まで各種膵炎20例に 対
行後 1 日 自
7日
々ヽ腸 閉 鎖 症
」暢70omO 死濡齢挺憎
4日
小 瞬 閉鎖 症
小陽50cmO
)
死麟盛
書
8 ヵ月
熊肛術後夕発
小瞬寝
mo
小閣1∝
生
2日
小 腸 閉鎖 症
小腸75cm①生
1日
2日
小腸閉鎖症
」暢27omO
生 ( E D 中)
」暢75omO
生 “V H 中)
表14 成 人腸管大量切除例
手行術式
20cn
図 9 膵 炎の病態 と高カ ロ リー輸液
し 現
( う手 )
隅 離
孫
食 飼 刺 激
病
高 カロ ) 一輸 液
【
態 増 悪 ・合 併 症 発 生
性理胞脱あ形成など)
、、
(
9,10以 外は Bauhin弁 あ りかつ残存小腸40cm以 上で
順調に発育 している.症 例 9は 残存小陽27cmで ,通 常
の経 田食 では発育遅延 がみ られ高 力 Pリ ー輸液 にて ,栄
病
1 因
プ
栄 装 障 害
ヲちか
養改善 をみた後 Elemental Dietに切 り換えて順調な体
重増加 が得 られている.症 例 10は残存小腸75cmで ぁる
が残 りの腸管 の 機能不全 でほ とんど経 口摂取 はなし得
し,絶 食下 に高 力 Pリ ー輸液 を施行 して来 た.疾 患内訳
は急性膵炎 5例 ,非 アル コール性再発性陣炎 (主として
胆道系)10例 ,ア ル コール性 の再発性障炎 5例 である.
ず ,静 脈栄養 のみで現在 8カ 月間にわた り,ほ ぼ順調な
体重増加を続けている。成人 の大量腸切除は 3例 に行 っ
表15に示 したごとくである。この うち栄養障害 の強 かっ
た14例 (70%)全 例 が高 力 ■ リー輸液 の施行に よ り,源
明な栄養改善を認 めた 。一方膵炎 の合併症 であ る胸水は
た 。症例 1は 残存小腸20cm,症 例 2は 0で あ るが ともに
経 口摂取 お よび高 カ ロ リー輸液 の併用 に よ り元気に生活
している.
さて腸管 切除後 の代償肥大に関 しては ,そ の困子 は不
明であるが教室 の池田が ラ ッ トを用いて行 った実験 に よ
れば,高 カ ロ リT輪 液成分を静脈か ら投与 した場合 に比
べ ,同 じものを 胃内に注入 した方が小腸重量,あ るいは
2例 とも,本 輸液 の開始 とともに急激な消程 をみ ,仮 性
裏胞を有 した 5例 中 3例 ,膿 易 を有 した 3例 中 2例 が軽
快 をみた ,外 科治療 は計 9例 に行 い ,胆 石 の発見 された
ものでは胆 の う切除術を,ま た病巣が限局化 した もので
は ,陣 頭部 ,膵 尾部切除を行な っている。いずれ も栄養
の改善 した良い状態 で手術を行 ってお り,経 過良好 であ
22(1306)
消化器外科 におけ る高 力 β リー輪液
表15 膵 炎 の症 状及 び高 ヵ ロ リー輪液 ・外科治療
開塙 的
表16
過去10年 間 におけ る術後消化管 出血 の変遷
日消 外会 誌 1 3 巻
12号
において も潰場 の発生 を全 く認めなかった 。これ よ りみ
て も 「ス トレス+飢 餓」 が 胃粘膜に与える影響には大 き
なものがある事が分 る.
7)肝 性脳症3の
肝性脳症 は 重症肝障害時に しば しば あ らわれ る極め
て予後不良の病態 である.従 来肝性脳症 の主因子 として
アンモ ニアが注 目されてきたが ,最 近におけ るア ミノ酸
ア ミン代謝 に関す る研究 の進歩 と共に ,こ れ らの代謝 が
次第 に重要視 され るようになった。 こ とに F41Seneuro‐
transmitlerと
して知 られ る OCtOPamine,Phewlethyl‐
amineな どの PrecurSOrで
ある方香族 ア ミノ酸 が肝障害
のため代謝 されず ,通 常筋組織で代謝れ る同 じく中性の
側鎖 ア ミノ酸群 と B100d Brain Barrierを通過す る 際
に COmpedhonを 起 こす とい う考 えが次第 に一般化 し
つつ ある。 また ,TryPtOPhanか ら生す る SerOtoninに
っ た 。
6)ス
2812め
トレス濃瘍
ス トレス潰瘍 は外科術後 ,外 傷などに しば しば発生す
る.予 後不良の上部 消化管出血 である。さきに教室の中
関 して も肝性昏睡 を来 たす因子 として注 目 されている
(図10)。われわれ は 垂症肝障害時 の ア ミノ酸 パ ター
図10 肝 性脳症 におけるア ミノ酸代謝
川は ,過 去10年間に経験 した術後消化管出血 に つ い て
/乱
M
ヽヽA
中
s
i
十 H
汁
り,む しろ急性腎不全に続発す る比較的少ない出血が増
加 している。しか もこの時期は ,丁 度教室にて高 カ ロ リ
ー輸液 が積極的 に施行 されだ した時期に一致 している.
Barrier
/ 町
年間 (1972∼1976)で はこのよ うな大量出血は少な くな
Blood Brain
﹀
が
e
h
片
︺
ギ
P
分析を行 った (表16).そ の 結果 ,前 期 5年 間 (1967∼
1971)で は大量 出血を伴 うス トレス潰瘍 が多 く,後 期 5
また個 々の症例 を分析 してみた ところ,術 後長期にわた
り不充分な栄養補給 の続 いた症例 に出血例 が多い事 ,ま
た大量出血 の排続す る息者 に高 カ ロ '一 輸液 が効果的 で
あった .
ス トレス潰瘍 の発生 お よびその経過に,「 飢餓」ある
いは 「栄養」が何 らかの役割を果 している可能性が示唆
されたので,共 同研究者中川は この点につ き,実 験的 に
検討を行 った。 SDラ ッ トを特殊 ゲージに収容 し毎 日5
時間ず つ 6日 間にあたって水浸を続けると強 い出血性 ビ
ランが 胃粘膜全体に生 じる.こ のよ うな持続的反復 ス ト
レスを加え,この間輸液を行ない,その効果を検討 した.
この結果水浸拘束を加える間水分 のみ投与 L′
た第 I群 で
は 7例 中全体が,ま た この間 5%グ リコースを主体 とし
たいわゆ る低 カ ロ リー輸液 を投与 した第 ■群 では ,5例
中 3例 60%に 潰易発生をみた .一 方 ,こ の間高 力Pリ ー
輸液を行 った第 皿群 では 9例 の全例に潰瘍発生 を認めな
かった 。また ,ス トレスを加えず絶食 のみ とした第W群
ンの 検討 よ り Phenylalaninc,l vrOsine,Methionine,
Tryptophanなどが上昇を示 している事 ,一 方側鎖 ア ミ
ノ酸群すなわ ち Valine,Leucine)IsOleucineなどが正
常 よ り低値を示 している事 よ り,こ のよ うな低下を示 し
ているものを増加せ しめ ,ま た逆に高値を示 しているも
のを低下 せ しめ るようなパ ター ンのア ミノ酸剤 (HEP_
23(1307)
1980年12月
3ゆ
I)を 作成 した .今 までに15例の 肝性脳症 (慢性 12
例 ,急 性 3例 )に 対 して ,こ のよ うな肝不全用特殊 ア ミ
ノ酸 を使用 し,12例 (80%)に 効果を認 めている。一方
このよ うな ア ミノ酸剤 の使用 が ,脳 内ア ミノ酸 ア ミンの
輸液群 (高カ ロ リー輸液群)で は ,正 の平衡を示 した 。
ー
体重 お よび肝重量 の変動 につてみ ると5%グ ル コ ス群
消長に実際 どのような影響 を与えているかが問題 となる
が,教 室 の鎌田は ラ ッ トに門脈下大静脈吻合を行 い ,こ
の程度 を正 しく評価 で きない。そ こで機能的な評価 の 1
つの 指標 として ICC最 大除去率 を求め,比 較 してみ
れに食餌中の特定 のア ミノ酸を増加せ しめて ,脳 ア ミノ
酸 ア ミンに与え る影響の検討を行 った 。そ してTyrOSine,
kg/min
た。その結果 ,肝 切除直後 の ICG Rmax 2.Omg′
ー
ロ
べ
のみ2.6と
に 比 ,高 カ リ 輸液群
明 らかな 増加 を
のみ肝重量 は変 らず ,他 の 2群 はほぼ同様 の体重増加率
を示 した 。一方 この ような肝の形態所見 のみでは ,再 生
m in
認 めたのみで他 の 2詳 ではそれぞれ 2.0,2.lmg/kg′
ー
Noradrenaline,Adrenaline SerOtOnin, OctoPamine
ど な とほぼ同値に留 まった.こ れ よ り高 カ ロ リ 輸液 の施行
3つ
は肝切険後 の肝再生 について も形態的機能的に有効 であ
がそれぞれ変動を示す事を証現 している .
III 動 物を用いた実験的研究
るものと考えられ る.
Phenylalanine,Tryptophanな
どの 増量 に 伴 って 脳内
種 々の病態 におけ る栄養の効果を よ り明確 に捉えるに
は ,一 定条件下 でのデー タ集積 が可能な動物実験 が必要
となって くる.こ とに静脈栄養に関 しては ,無 拘束束下
IV 今 後の展望
30
1)業 養評価 について
先 に述べ た如 く高 カ ロ リー輸液 をは じめ とす る新 しい
テ ムを確立すべ く努力を重ね,harness,swivelを
用 いた
3め
無拘束下持続 システムを完成 した .今 回は これを用 い
て術後高 力 Fリ ー輸液 の効果について行 った実験結果 に
栄養治療手段 の開発に よ り栄養改善 の実態 ,お よび栄養
障害 の もた らす悪影響を臨床 の場 でまざまざと見 る機会
が増え,これ とともに,貫白栄養障害を確実 に捉え る事一
栄養評価 を正 しく客観的に行 う事 が急務 となって来た .
3つ
教室 の 金は ,蛋 白栄養障害 に 陥 り高 力 Fリ ー輸液 の
ついて述べ る。
3つ
教室 の宗田は ,ラ ッ トの回腸を切除後直ちに吻合を
行 い ,5%グ ル ヨース電解質液 (低 カ ロ リー輪液)お よ
施行 を受け る息者を対象 として,そ の間 における体重 ,
血清蛋 白,そ の他 の身体計測値な ど種 々のパ ラメーター
の推移 を比較検討 した.そ の結果 ,4週 間 の高 カ ロ リー
び21%グ ル コース ・4%ア ミノ酸電解質液 (高 カ ロ リー
輸液)を 6日 間投 与 し,そ の効果につ き検討 した。また
一部 の ラッ トには ,術 前 6週 間あらか じめ低蚕白食 を投
輸液 に よ り,筋 蛋白をあ らわす と思われ る指標 が ,い ず
れ も増加を示 した。とくに尿中 3 Met町l hiStidineは
,
動
従来筋蛋 白量を表 わす といわれて きた Creatinineの
与 してお き, 同様 の輸液 を行 って 比較を 行 った .そ の
結果 ,体 重 ,血 清総蛋白,窒 素平衡 , さ らに Buもting
strength(耐
圧)い ずれ も高 カ ロ リー輸液 が 低 力 Pリ ー
きに比べ ,更 に鋭敏 である 印象を受 け ている。 また ,
3 methylhistidineは
手術侵襲時において も,一 時的に増
輸液 に 比 べ て 高値 を示 した 。 また ,両 輸液 に よる 差
は ,術 前あ らか じめ低蛋白とした グルー プにおいて ,一
れ る。
層明確 であった 。すなわち ,術 前低奏白食を摂取 させて
おき術後低 力Pリ ー輸液を施行 した場 合,た とえ短期間
寝た き り点滴 を続け る患者に対 し,携 帯用輸液 システ
ムを着用せ しめ ,家 庭生活,社 会復帰 を可能にす る試み
がなされ るようになった .わ れわれは,1978年以来 ,種
にス トレスをかけない状態 で ,持 続的 に輸液 を行 う事 が
必須条件 といえる。われわれは早 くよ り,こ の実験 シス
の施行 で も体蛋白維持 ,創 傷治癒 の面 よ りみて悪影響 は
強 く,こ の場合高 カ ロ リー輸液 の施行 は極めて有効 であ
る事が明 らか となった 。
30,同 じ
青川は
実験 システムを用いて,ラ ッ トに70%
肝切除を行い, その再生状況 につ き検討 した。 輸液内
容により,5%グ ル コースおよび高 カロ リー輸液,さ ら
に高張 グルコースのみの3群 に分 った.ま ず窒素平衡に
ついてみると5%グ ル コース群,21%グ ル ヨース群はい
ずれも負の平衡を示 した (21%グ ルコース群の方が負の
程度は少なかった)が ,21%グ ル コース ・4%ア ミノ酸
加 を示 し, これは代謝元進率 をあ らわす ものと考 え ら
303り
2)人 工腸管
々の息者 にこの よ うな ジャケッ トを着用 せ しめ ,改 良を
表 1 7 人 工腸 管 の 適 応
1)腸 督大 量切際
腸 間膜血柱 (機塞)症
先 天性小 腸 閉鎖症
広 汎 ア ガ ング リオノ ー ジス
癒 着障害
絶腸 間膜症
2)炎 症性 腸疾 患
クロ ー ン病
漬病性 大腸 炎
非特異 性 多発性 小腸 潰場
3)悪 性腫題 (化学療 法 との併 用)
24(1308)
消化器外科 におけ る高 カ ロ リー輪液
重ね現在 まで22人に施行 して きた .未 だ社会的な受け入
れ態勢その他 で ,問 題 は数多 く存す るが ,今 後発展 の可
能性は大いにあるものと考え られ る.ま た ,こ のよ うな
輸液管理 システムが確立 されれば ,表 17に示 した ような
種 々の疾患 の患者 が恩恵 に浴す るものと考え られ る。
3)食 道静脈層 に対 するアプローチ4o
食道静脈瘤に対 して ,わ が国では もっば ら直達術式が
用 い られている。 一方 , シ ャン ト術式に 関 しては 静脈
瘤 ,腹 水 に関 しては時 として劇的に奏効す るものの ,肝
性脳症を恐れ るあま り顧 りみ られない傾向にあるといえ
る。さきに述べ た肝不全用特殊 ア ミノ酸剤が,肝 性脳症
に対 し有効 であるな らば,手 術術式に関 し再検討がなさ
れて よいではないか と考 え られ る.我 々は 肝硬変 に よ
る食道静脈瘤出血に よ り来院 した49才男子患者に門脈下
大静脈吻合術を施行 した.術 後静脈瘤 の著 しい消槌をみ
たが,そ の後,経過中 2度 にわた り肝性脳症 の発作をみ,
それに対 しア ミノ酸輸液を投与 した所短時間の うちに軽
快をみた 。 患者は 術後約 2年 経過 す るが 将来 ,こ の よ
うなア ミノ酸組成をもった経 口食 が開発 されれば ,こ の
方面 の治療は大いに転開 を遂げ るのではないか と期待 さ
れ る.
4)家 族性高脂血症4つ
家族性高脂血症は稀 なる疾患 であるが ,狭 v心
症発作を
繰返 しその多 くは若年期に死亡す る極めて予後不良 の病
態 である。今まで,外 科的 アプ ローチ としては回腸 パ イ
パス術 ,門 脈下大静脈吻合術な どが行われて きたが
,必
ず しも期待 した経 の成果を挙げていない。われわれは ,
現在 の 高 力 Fリ ー輸液 (Standard HyperalimentatiOn)
組成が無脂肪である事 ,腸 管を介 さない栄養法 である事
な どに着 目し,コ ンステ P― ル低下作用 に期待 して本輸
液 を試みた .症 例は18歳女性でぁるが,カ ロ リー量をや
や少なめに保 ちつつ長期的施行す るようにな り,施 行前
約900mg%で ぁった コレステF― ル値 が , 300mg%あ ま
りに低下をみた。また ,期 間中狭心症の発作頻度 も減少
をみている。高 力 ,リ ー輸液を,患 者 に如何に負担をか
けず安全に行な うかが 今後の問題である。
5)チ ーム医療3o4つ
高 カロリー輸液 を常に必要な患者に正 しく行 うには施
設単位 で 1つ の 治療 チ ームを作 る 事 が 必須 となって く
る。これには医師 のみでな く,看 護婦 ,薬 剤師 ,栄 養士
を も加えたチームが必要 であ り,全 員に よる定期的な回
診 お よび meetingを 絶えず行 い,有 機的な活動を続け
てい く事 が必要 となる。われわれの教室 では ,1974年 以
日消外会誌 13巻
12号
来 この よ うな シス テ ム化管理方式 を と り上げ実施 して き
たが ,こ れ に よ り院 内 の息者 の栄養 管理態勢は随分進 歩
を示 した 。教室 におけ る高 力 Fリ ー輸液施行症例 が年毎
に 著 しく増 加 しつつ あ るのをみて も明 らか であ る。
V ま
と め
以上高 カ ロ リー輸液 につ いて ,実 施上 の問題点 ,臨 床
応用 ,さ らに研究 アプ ローチにつ いて述 べ た 。高 カ ロ リ
ー輸液 の 進歩 は あ らゆ る
病態 におけ る 栄養補給 の 可能
性 を示 し栄養 の関与 を暴 露 しつつ あ る。新 しい栄 養評価
法 の必要 性 を認識 させ ,か つ チ ー ム医療 の重要性 を示 し
つつ あ る。そ して この様 な事実 は ,最 も栄養管理 を必 要
とされ る消化 器外科 領域 において ます な されつつ あ る.
今後 消化器外科 を学 ぶ ものに とって栄 養 の重要性 を充分
に認 識 し,同 時 に高 カ ロ リー輸液 の正 しい技術及び知 識
を充 分 に身 につ け る事 が不可 欠 とされ るであろ う。また
この よ うな新 しい栄養管理法 を駆 使す る事 に よって ,手
術適応 ,手 術 時期 の正 しい選択 がな され ,同 時 に栄養代
謝 に関す る新 しい知見 が次 々 と生 まれ 出す の を期待す る
もので あ る。また ,峰 内に数多 く存在す るか くれた栄養
障害 を見ぬ き,す ばや く適切 な栄養 治療 を行 う事 に よっ
て種 々の疾患 治療成績 が 飛躍的 に向上 す るもの と考 え
る。
(稿 を終 るにあた り,宿 題報告 の機会 をお与 え頂 いた
間 島進会長 に心 よ り謝 意 を表 したい。 また総会 において
司会 の労 をお取 り頂 いた葛西森夫教 授 に深謝す る.
また長年 にわた り本研究 の遂行 を暖 くお見守 り頂 いた
大阪大学 名誉教授 ・現 国立 循環器病 セ ンタ ー院長 曲直部
寿夫博士,大 阪大学 第一 外科教授川 島康生博士,兵 庫医
大第 一 外科教授 岡本英 三 博 士 に深謝す る。
最 後 に,直 接 ともに研究 しと もに歩 んで きた共 同研究
者 の皆様方 に心 よ り感謝 す る.
共 同研究者 :池 田義和, 辻 本雅 一 , 宗 田滋夫, 亀 頭
正 樹,高 木洋治,長 谷川順吉 ,板 倉丈夫,金 昌雄,中 川
公彦,吉 川澄 ,鎌 田振吉,出 下 裕 ,藤 田宗行,笠 原仲
元,紀 氏汎恵 ).
文
献
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