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世界の仕事と暮しを考える

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世界の仕事と暮しを考える
月│1干 」
世 1界 │の1労 1働
■ オ ラ ンダ の非 典 型 雇 用 の現状 と 課 題
︱解 雇規制 を 軸と した フレキ シキ ュリ テ ィー
■ スベ イ ンにお け る非 正規労 働 の現 状 と 課題
■ ド イツの非 正規雇用 ︵
不安定雇用︶に関する法規制 の特徴
︱ 日本法 への 示唆 ︱
■ イギ リ スにお け る有 期 契 約労 働 ・派遣 労 働 の法 規制
■ 韓 国 の非 正規労 働 の現状 と 課題
■ 日本 にお け る非 正規労 働 の現状 と 課題
I
ロTMM日□ 追 う べ き 雲 は 多 々 あ る を
ー
特1集
固 目 目 目 國 図説 I L O ・
第 一〇 回 ︵
社会保障 ︶
0月 。1月 ︶
□ 協 会 だ よ り ︵1
1
新 刊 ﹁デ ィ ー セ ント ワ ー クと ジ ェンダ ー 平 等 ﹂
小 林 征 雄
殊
権 丈 英 子
里^ 学
有 田 謙 司
橋本 陽 子
岡部 史 信
本庄 淳 志
中村
□
回
□
□
□
□
□
□
国
世 界 │の1仕
―
事 ど暮│レ を 考│える
権 丈 英 子
︵
亜細 亜大 学 経済 学 部 准 教 授 ︶
図 ■ のよう に、 日本 の雇用者 に占 め る非 正規労 働者 の割
0 非 正規労働 者 の趨勢的増 加と景気 悪化 の影響
日本 におけ る非正 規労働 の現状 と課題
1 日本 の非 正規労 働 の現状
とも な い非 正規労 働者 の解 雇 が急激 に行 わ れ、社会 問 題と
年 ま では、主 に女 性 の﹁パート ・ア ルバイ ト﹂が増 加 し た が、
一%と上昇 し てき た。 こ の内 訳を みると、 八四年 から九 六
合 は、 八 四年 一五 去 一
%、九 六年 二 一・
五%、 〇 八年 三 四 ・
も な った。 こ の背 景 には、最近 の非 正規労働者 の急 増 と そ
派遣 、契 約 、嘱託他﹂が著 しく伸
それ以降 は、男女 とも に﹁
シ ョ ツク以降 、雇 用情 勢 の悪 化 に
昨年 九 月 のリ ー マン・
の質 的変化 に適 切 に対応す る仕 組 みが でき て いな いと いう
八年 には 一 一・
八% へと急 増 し た。 な お、景 気 悪 化 を受 け
第 1∼第 3四半期平均︶に は、非 正 規 労 働 者 割
て、 〇九 年 ︵
る割 合 は、 二〇 〇 〇年 に は 四 。
〇% にす ぎ な か った が、 ○
派遣 、契 約 、嘱託他﹂が雇用者 に占 め
構造的 な問 題 があ る。緊急支援 的 な対策 はそ ろ ってき た が、 び てき た。男女計 の﹁
構造的 な問 題 への対策 は いま だ見え て いな い。
ここ では、 日本 におけ る非 正規労働 の現状 を確 認 したう
え で、中長期 的 な観点 からそ の対策 に ついて考え てみる。
合 は 三三 ・
五% へと若 干減 少 し て いるが、 こ の減 少 は、男
世界の労働 2009・ 12
-2-
雇用者 に 占め る非正規 労働者 の 割合 の推移
1
図
圃 女性 (派 遣 、契
約 、嘱 託他 )
・
圏 女性 (パ ー ト
アル バ イト)
日 男性 (派 遣 、契
y男 性 (パ ー ト・
約 、嘱 託他 )
アル バ イト)
派遣 、契 約 、嘱託他﹂に集 中 し て起 こ った。
性 の﹁
こ の間 に、働 き方 の多 様化 を促 す よう な労働市場 の規制
緩和 が行 わ れた。 八六年 に施行 された労働者派遣法 は、当
初 は派遣対象 が 一三 の専 門業務 に限ら れ て いた が、 そ の後
段 階的 に拡張 された。九九年 には 一部を除き原則自 由 化 、
〇四年 には ﹁
物 の製 造﹂業務 も含 めた自 由化 が進 んだ。 同年
以降 、派 遣労 働者 に占 め る男性 比率 は、
一気 に上昇 した。
な か でも男性 は、 〇三年 ま では派 遣労 働者 の四分 の 一程度
しか占 め て いな か ったが、最近 は 四割 に達 し て いる。ま た
〇 四年 には、労働基準法 の改 正 により、有期労働契約期 間
の上限 が 一年 から 三年 へと拡張 さ れた。
図 2によ れば、非正規労 働者 の割 合 は、 二〇〇〇年 と ○
八年 とも に、 いず れ の年 齢 階層 でも男性 に比 べて女性 が高
い。ま た、 こ の割合 は、男性 では若年 層と高年 層 で高 いU
字 型を示 し て いる こと から分 か るよう に、男性 は、労 働市
場 への参 入と退出 の時期 に非 正規労 働 が多 い。
一方 、女性
では、非正規労 働者割合 が年 齢 にとも な い上昇 し、非 正規
労 働 が再就 業時 の典 型的 な働 き方 と な って いる。 二〇 〇〇
年 に比 べ て〇 八年 では、男女 とも にす べて の年齢 階層 で非
-3-
)
09(年
04
2000
96
92
出所 :2000年 以前は厚生労働省「労働力調査特別調査」2月 調査、2004年 以降は厚生労働省「労働力調査 (詳
細集計)J年 平均 よ り筆者作成。
注 :雇 用者には役員 を除 く。2009年 は、第 1四 半期か ら第 3四 半期 までの平均。
図2
性別年齢階層別非正規労働者の割合
K2
80 .巡 』
70
ω∞ 8年 )
飢
60
ゞ
女性(2000年 )
♂
♂
〆
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〆 警
50
40
…
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10
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銀 癬 総ぷ
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鶴
男 性 120∝ 0/〆
ヽ 、峰
鮨
鴨
鶴
ヽ
饉
屯〆
髯
男 性 (Ю ∞
0
″
鶴
警鱈
轟
繭
繭
線
帝
轟鰊
0
15-24
25-34
35-44
45-54
55-64
65- (歳
)
2008年 平均 より筆者作成。
2000年 8月 、
「労働力調査詳細集計」
出所 :「 労働力調査特別調査」
注 :雇 用者には役員を除 く。15-24歳 は学生を除 く。
図3
雇用形態別雇用者数 の対前年変化 (男 女計 )
100 鯉
回 契 約社 員・嘱託 ロ
その他
80
20
回
ロトド
40
ノ
ゝ ゝ
同
60
明 派 遣社 員
ヽ
″
/
・アルバ イト
Elパ ー ト
田 正社 員
0
-20
回
-40
‐ 雇 用者 計
■
\
□
-60
2003
04
05
06
07
08
ヽ
09
(4手
)
出所 :厚 生労働省「労働力調査 (詳 細集計)」 年平均 よ り筆者作成。
注 :雇 用者には役員を除 く。2009年 は、第 1四 半期か ら第 3四 半期 までの平均。
-4-
世界 の労働 2009・ 12
日本 にお ける非正規労働の現状 と課題
♂争`ネネ瞥お`も冬秦憮ヽ
2007年 よ り筆者作成。
出所 :総 務省統計局「就業構造基本調査」
注 :学 生を除 く。パー ト・アルバ イ ト、派遣社員、契約社員の500-599万 円には、500万 円以上を含む。
正規労 働者 の割合 が高 ま って いる。男性 に ついてみれば、
〇八年 の非 正規労 働者 の割合 は 二五∼ 三 四歳 で 一四%、 三
五∼ 五四歳 では八% であり、働 き盛 り の年 齢 の男性 にも非
正規 が広 ま ってき た こと が確 認 でき る。
…檬 ヽ契約社 員
書 正 社 員 …ト パ ー ト
・アル バ イト 螂 派遣社 員
図 3より、最近 の雇用者数 の対前年 度変化 を みると、 ○
三年 ∼ 〇七年 ま では純 増 し、 そ の対前年 増加 数 は次第 に大
きく な って いた。も っとも、 〇三年 ∼ 〇五年 ま では、全体
2雇用量 が増加 し て いる際 にも正社員 は減少 し ており 、正
-5-
規 から非 正規 へと雇 用 が代替 され て い つた様 子をう かが い
知 ること が でき る。 〇八年 に雇 用者数 は減少 に転 じ、 〇九
第 1∼第 3四半期平均︶に は前 年 に比 べ て一
年︵
雇用 者 は 五 八
万人減 少 した。 こ の減少 の中 では、派 遣社員 三 二万人減 が
最も大 き か った。
0 低賃金 の非 正規労働 者
次 に、非 正規労 働者 の賃金 を確 認 し てお こう 。図 4は、
雇 用形態 別 の雇 用者 ︵
学生を除ぐ︶の年 収 分布 を 描 いたも の
であ る。非 正 規労 働 者 の多 数 を占 め る パー ト ・ア ルバ イ ト
では、年収 九 九 万円 以下 の者 が ほぼ半数 に及 ぶ。派遣社 員 、
雇用形態別雇用者 の年収分布 (男 女計 )
図4
契約社員 では、年収 二〇〇∼ 二四九 万円階級 が最も多 く 、
)
歳
(
ぴずプごプざぴダダ∫∫
正社員 に比 べれば相当 に低収 入 であ る こと が分 か る。
パ ー トタイム
男性 ロ
パ ー トタイム
・●
・ 女性 ロ
500
もち ろん、一
雇用形態 間 の年 収差 は、非正規労働者 が正規
‐
1000
労 働 者 に比 べ て、男性 よりも ︵
年収 の低 じ 女 性 の割 合 が高
フル タイム非 正 規
・▲
・ 女性 ロ
1500
アル
いと いう 構 成 比 の違 いや、非 正 規 労 働 者 ︵
特 にパート・
J卜 男性 ロフル タイム 非 正 規
2000
バイト︶は、正 規 労 働 者 に比 べ て労 働 時 間 が短 いこと に よ
っても生 じ て いる。 そ こ で、男 女 別 ・
雇 用形 態 別 に、時 間
当 たり賃金 を確 認 し てお こう 。
フル タイム 正 規
― 男性 ロ
薔■■女性・フル タイム 正 規
3000
世界 の労働 2009・ 12
-6-
図 5より、男性 の フルタイ ム正規労 働者 は、時 間当 たり
賃金 が最も高 いう え 、年 齢 に伴う 賃金 上昇 が大き い。 これ
に比 べて、女 性 の フルタイ ム正規労 働者 の賃金 はかなり低
い。他方 、 フルタイ ム非 正規労 働者 では、男女 とも に、時
間当 たり賃金 は低 く、賃金 カーブ はより 一層 フラ ット であ
る。ま た、 パート タイ ム労 働者 ではそれ以上 に低 い。 ここ
では、 パート タイ ム労働者 には、正規 と非正規 の両者 を含
短
む が、実 のと ころ、日本 では、パート タイ ム正規労 働者 ︵
時間正社員︶は非 常 に少 な く 、常 用 労 働 者 の 一%未 満 で し
かな い。
なお、 雇用形態 によ って、就業者 の属性 や就業 理由 は異
常用労働者 の 年齢 階層別 時間 当 た り賃金
図5
2500
0
2008年 より筆者作成。
出所 :厚 生労働省「賃金構造基本統計調査」
注 :ボ ーナスを含めた年収を総実労働時間で除 して算出。
日本 にお ける非正規労働 の現状 と課題
自 分自 身 の収 入﹂と答え た者 は、 パート タイ ム労 働者 三割
﹁
査員〇七年実施︶によ れば、﹁
生 活 を ま かなう 主 な収 入 源﹂を
な る。厚 生労 働 省 ﹁
就 業 形態 の多 様 化 に関す る総 合 実 態 調
デ ン マー ク やオ ラ ンダ の例 が有 名 であ る が、欧 州 連 合 ︵
E
と労 働 者 の生 活 保 障 ︵
辱 ︶の確 保 を めざ す 政 策 であ る。
∽
①
o
﹂﹃
︵
オ4o
こ望辱 ︶
﹂ユぐとと呼 ば れ、労 働市 場 におけ る柔軟性 貧①
理由を 選 んだ者 は、 パート タイ ム労 働者 では 一二%と少 な
社 員 と し て働 け る会 社 がな か った から﹂と いう 非自 発 的 な
現在 の就 業 形 態 を 選 んだ 理由 ︵
複数 回答三 つま でこ で、﹁
﹁
正
政策 、④ 現代 的 な社会保障制度 、 と いう 四 つの要素 から な
働契約 、② 包 括 的 な生涯学 習 、③ 効 果的 な積極 的労 働市場
を定 め、 フレキ シキ ュリ ティを 、① 柔軟 で信頼性 の高 い労
に対 し て、派 遣労 働者 や契約社 員 では七割 であ った。ま た、 U︶では、 二〇 〇七年 に﹁フレキ シ キ ュリ テ イ の共 通 原 則﹂
か った が、派 遣労 働者 で三七 %、契 約社員 では三 二%を占
と いう 座 標軸 に沿 って評価 し、 そ の評価 に基 づ いて、政策
ここ で、 日本 の労働市場 の変化 を 、 フレキ シキ ュリ ティ
権丈 ︹
近刊︺
他︶。
る政策体系 と定義 し、加盟 国 は、 それぞ れ の事 情 に合 わ せ
て、 フレキ シキ ュリ テ ィ に取 り 組 む こと にな った ︵
詳細は、
め て いた。
2 日本 の非 正規労働 の
課題と政策 対応
か で、人 びと が豊 か で幸 せな生活 を送 る こと が でき るよう
を活 用 でき な いと いう 共 通 した制約 を抱え て いる。 そ のな
る競争 激 化 のも と で、新 興国 のよう には豊富 な低賃金 労働
現在 、 日本 に限 らず 、先進 国 は、 グ ローバ ル経済 におけ
う にみえ る。 つまり、労 働市 場 におけ る規制緩和 により 、
の対応 が、 これま で の日本 ではどう やら不十分 であ った よ
く 、自 ら生計 を立 てる層 にも拡張 し て い った。 こ の変 化 ヘ
大幅 に増加 し、非 正規 の働き方 が家計補助 的 な者 だ け でな
前 述 した よう に、 日本 の労働市場 では、非 正規労 働者 が
課 題を考え てみよう 。
な経済 を維持 す るにはどう したら よ いのか。 そ の 一つの解
フレキ シビ リ ティ ︵
柔軟性︶
を高 め た当 初 は、非 正規 労 働 は
0 フレキシキ ュリ テ ィと 日本 の労働市 場
法 と し て現 在 注 目 さ れ て いる のが、﹁フレキ シ キ ュリ テ ィ
想 を 大 き く 裏 切 り 、 自 ら 生 計 を 立 て る人 び と が 非 正 規 労 働
考 え ら れ て いな か った 。 と こ ろ が 、 規 制 緩 和 後 の経 過 は 予
を 立 て る層 が 今 ほ ど に多 く 利 用 す る よう にな ると は あ ま り
家 計 補 助 的 な 者 に活 用 さ れ ると 考 え ら れ てお り 、 自 ら 生 計
必要 は、解 雇 された労 働者 の生活 を保障 す るた めだ け にと
場 を外 から支え る施策 を整 備す る こと が必要 であ る。 こ の
日本 ではまず 、失業給付 と職業 訓練を主 とす る雇用保険
や、生 活 保 護 等 のセー フテ ィ ・
ネ ットを 充 実 さ せ、労 働 市
0 労働市 場 の﹁
外﹂から の政策︱ セ ーフテ ィ・
ネ ット の強 化
ど ま ら な い。正 規 ・
非 正 規 を 問 わ ず 、現 在 、働 いて いる労
者 の数 を 膨 ら ま せ た の であ る 。
人 び と の生 活 保 障 を 担 う メイ ン ・
シ ス テ ムは 、 家 族 ・
企業
正 規 労 働 者 が 生 ま れ 、 非 正 規 労 働 のあ り 方 が社 会 問 題 と し
こと が 、 一
雇用 情 勢 の悪 化 を 受 け て、 職 も 住 ま いも 失 った 非
備 す る必 要 が ど う し ても で てく る 。 そ れ が 不 十 分 であ った
た め に、 セ キ ュリ テ ィ ︵
生活保 障︶の仕 組 み を 政 府 主 導 で整
き な い人 び と が多 く な った の であ れ ば 、 彼 ら の生 活 を 守 る
強化 は、使 用者 側 にと っても 、一
雇用調整 時 に労 働者 の生活
と にも な るか ら であ る。 さら には、 セ ー フテ ィ 。
ネ ット の
働者 の存在 が、労 働条件 の下方 圧力 を市場全 般 にかけ る こ
労働力 を ﹁
窮迫 販売 ﹂せざ るを得 な い。 そし て、 そう した労
日 の生活 にも 困 る人びと は、劣悪 な条件 であ っても自 ら の
な ぜ な ら ば、
一国 のセー フテ イ 。
ネ ット が弱 いと、 そ の
働者全 般 の労 働条件 を高 め るた め にも 必要な のであ る。
て強 く 認 識 さ れ る よう にな った 主 因 であ る。 こう し た 状 況
保障 への心 配 が緩和 され ると いう メリ ットがあ る。
政 府 の三 つであ る。 家 族 にも 企 業 にも 生 活 保 障 を 依 存 で
・
か ら 、 現 在 は 、 そ の反 動 の よ う に、﹁
派 遣 労 働 禁 止 ﹂な ど 、
な ど、緊急 対 策 と し て のセ ー フテ イ 。
ネ ット は徐 々に強 化
も っとも 、雇用保険 の対象 の拡大 や雇 用促進住宅 の活 用
次 に は 、 フレ キ シビ リ テ イと セ キ ュリ テ ィ のバ ラ ン スを
され つつあ る。ま た、生活保護 と 雇用保険 の狭 間を ど のよ
規 制 強 化 を 求 め る声 も 大 き く な って いる。
取 り な が ら 、 弱 く な ってし ま った セ キ ュリ テ ィ の軸 を 適 切
に補 強 す るた め の労 働 市 場 の﹁
内 ﹂と ﹁
外 ﹂から の施 策 を論 じ る。 う に埋 め る べき かと い った課題 に ついては、職業 訓練 の受
講 を条件 に、生活費 を支給す る制度 が暫定 的 に導 入 された。
世界の労働 2009・ 12
-8-
日本 にお ける非正規労働 の現状 と課題
る方策 と見 る ことも でき る。
これ は、﹁フレキ シキ ュリ ティ﹂の考 え 方 から自 然 と導 か れ
つ いても 、 〇 八年 一〇月 に指 令 が成 立 し 、 各 国 は 三年 以内
は す で に国 内 法 の整 備 を 終 え て いる 。 ま た 、 労 働 者 派 遣 に
派 遣 労 働 を 雇 用 創 出 と 柔 軟 な 働 き 方 に役 立 つも のと し て認
に国 内 法 を 整 備 す る こと と な って いる 。 労 働 者 派 遣 指 令 は 、
に生 じ得 る モ ラ ル ・ハザ ードを抑 え な がら、恒 常 的 な 措 置
め ると と も に 、 派 遣 労 働 者 と 派 遣 先 の労 働 者 と の間 の均 等
今 後 は、 セ ー フティ 。
ネ ット の拡 充 によ って、労 使 双 方
を注意 深く設計 し て いく こと にな る。
待 遇 を 定 め て いる。 な お 、 欧 米 で は 一般 に、 パ ー ト タ イ ム
労働市場 を外 から支え る施策 に加え て、労働市場 の内 か
非 典 型 労 働 ﹂と いう 用 語 を
こ で は 、﹁
非 正 規 労 働 ﹂で は な く ﹁
必 ず し も 非 正 規 労 働 者 を 指 す わ け で は な い。 そ れ ゆえ 、 こ
労 働 者 は 、 通 常 の労 働 者 よ り も 労 働 時 間 の短 い者 を 指 し 、
ら の施策 と し て最も重要 な のは、正規労 働者 と非 正規労働
用 いて いる。
均等 待遇﹂原則 の確保
同 労働市 場 の﹁
内﹂から の政策︱ ﹁
均等 待
者 の間 の﹁
均等 待遇﹂の原則を確 保 す る こと であ る。﹁
職 業 別 組 合 を 持 た な い日 本 の企 業 別 労 働 組 合 の下 で は 、 難
均 等 待 遇 ﹂に つ いては 、 欧 州 のよう な 産 業 別 ・
も っと も 、﹁
正規労働者 にと っても 、労 働時 間選択 の自 由度 を高 め、多
し いと いう 指 摘 も あ る 。 確 か に、 企 業 横 断 的 な ﹁
均 等 待 遇﹂
遇﹂の確 保 は、非 正規労 働者 の待 遇改善 にな ると と も に、
様 な働き方 の選択 肢を広 げ る こと にな る。
日本 の労 働 市 場 の現 状 か ら は 、 か な り 距 離 が あ る 。 し か し
あ る いは ﹁同 一価 値 労 働 同 一賃 金 ﹂を 実 現 す る アプ ロー チ は 、
の定めのな い雇用契約を持 つフルタイム労働︶以外 の働 き方 が
な が ら 、 企 業 内 にお け る ﹁
均 衡 待 遇 ﹂であ れ ば 、 実 現 不 可 能
期間
日本 と 同 様 、欧 州 でも 、 八 〇年 代 以降 、典 型 労 働 ︵
増え てき た が、低賃金 の不安定 雇 用 が広 が ることを避 け る
改 正 パ ー ト タ イ ム労
実 際 に、 〇 八 年 四 月 に施 行 さ れ た ﹁
では な い。
確保 に向 け て取り組 ん でき た。 EU のパート タイ ム労 働指
正 社 員並
働 法 ﹂で は 、 職 務 の内 容 、 配 置 、 労 働 契 約 が 同 じ ﹁
均等 待 遇﹂の
た め、 EUでは、典 型労働 と非典 型労 働と の﹁
令 は九 七年 に、有期 雇 用指令 は九九年 にまとまり、加 盟 国
-9-
るが、合理的な格差 でなければならな いこと︶を 図 る と いヽ
つア
に応 じ て、﹁
均 衡 待 遇 宍 通常 の労 働者 と の処 遇格差 は許容 され
れ ら に違 いが あ る場 合 に は 、 通 常 の労 働 者 と の違 い の程 度
み パ ー ト ﹂と 通 常 の労 働 者 と の﹁
均 等 待 遇 ﹂を 義 務 づ け 、 こ
的労 働 に従 事 す ると いう 、男 女 の役 割 分 業 モ デ ル ︵
男性稼
介 護 を主 に担 いな がら、非 正 規 労 働 者 と し て家 計 補 助
児・
男性 が主 た る稼 ぎ手 と し て の役 割 を担 い、女 性 が家 事 。
育
まり問 題視 され てこな か った面も あ る。 これは、 日本 では、
既婚女性 を 中心 と した家 計補助的性格 を持 つこと から、あ
、
ぎ手 モデル︶が 一般的 であ ったた め であ る 0♂ユ魯 T一
〇〇四︺
プ ロー チ を と って い る ︵
詳 細 は、権 丈 T 一
〇 〇 八じ。﹁
均等待
遇 ﹂が適 用 さ れ る ﹁
正 社 員 並 み パ ー ト ﹂は パ ー ト タ イ ム労 働
しかし、前 述 したよう に、非 正規労働者 が、労働力 人 口
者 のわ ず か 五 % 程 度 にす ぎ な いと いう 点 で不 十 分 で は あ り 、 権丈 曇一
〇〇九︺
他︶。
今 後 の法 改 正 が 待 た れ る が 、﹁
均 等 待 遇 ﹂の原 則 を 打 ち 立 て
﹁
均 等 待 遇 ﹂を 原 則 に し 、 同 じ よう な 仕 事 を し て いる にも か
る が 、 今 後 、﹁フ ル タ イ ム で働 く 非 正 規 労 働 者 ﹂に つ い ても
パ ー ト タ イ ム労 働 法 の対 象 は 、 短 時 間 で働 く 者 だ け であ
族賃金 →目 そ ヨ凋の
とを支払う こと は難 しく な って いる よ
激 化 し て いく 中 で、企業 が 一人 の労 働者 に妻 子 を 養 う ﹁
家
必要性 が認識 され るよう にな ってき た。ま た、国際競争 が
規労働者 の中 に含 ま れ る、自 ら生計 を営 む層 の生活 保障 の
の三分 の 一を超 え るほど に増加 し、景気悪化 の中 で、非 正
か わ ら ず 、 正 社 員 、 期 間 労 働 者 、 派 遣 労 働 者 と いう 就 業 形
う であ る。 さら に、長期的 な労働力確保 政策 の視点 から み
た こと の意 義 は大 き い。
態 の間 に、 際 立 った賃 金 や他 の労 働 条 件 の格 差 が 公 然 と 見
れば、少 子高 齢社会 にお いて、今 後 、労働力 の希 少性 が急
いる状 況を容 認 し て いく よう な経 済的 な余 力 が、 これから
労働 の﹁
行 き止 まり の仕事﹂と し て の非正規労 働 に従事 し て
デ ルを前 提 と しな がら、多 数 の人 び と が低 賃 金 ・
低 スキ ル
激 に高 ま って いく 。 これま で のよう に、男女 の役 割 分業 モ
ら れ る状 況 を 解 消 す る こと が 、 ま ず は 必 要 であ る 。
3 労
の
的活 と
働
力
積
極
用
ワー ク ・
バ ラン ス
ライ フ ・
正 規 労 働 者 と 非 正 規 労 働 者 の待 遇 差 は 、 非 正 規 労 働 者 が
世界の労働 2009・ 12
―-10-一
日本 にお ける非正規労働の現状 と課題
労 働力 の積 極 的 活 用 を 進
女性も含 めて︶
質 と 量 の両面 から ︵
こう した問 題意 識 のもと 、 これ から先 の日本 にお いて、
と︶で、 男 女 分 業 を し て お く のが 理 に 叶 って いる か ら で あ
被保険者制度 など、家計補助的労働を サポ ートす る仕組 み のも
税制 におけ る配偶者控 除、年金 におけ る第 三号
仕 組 み のも と ︵
、
の日本 に果 た し てあ る のかと いう 問題も考え る必要 があ る。 合 目 的 的 であ り 、 個 々 の大 多 数 の家 計 にと っても 現 行 の
め ると決 め る のであ れば、 そ のた め の方策技術 を述 べる の
Z
り。
しかしな がら、政策 と いう のは、 ミク ロで見 れば合 理性
は難 し いこと ではな い。まず 、家計補助 か主 た る生計維 持
者 かと いう 区別 なく、労働市 場 に参 加 でき る仕組 みを準 備
働者 の待 遇改善 に つと め、働き方 の選択肢 を広 げ、 ライ フ
正規労 働者 の働き方 の柔軟性 を高 め るととも に、非 正規労
こと が期待 さ れ る。
の視点 にもと づく 、強 い意 思を持 った政策形成 がな され る
長期
。
長期 の観点 から調整 し て いく こと でもあ る。 マク ロ。
合 理性 があ るが長期 で見 れば不合 理 であ る ことを 、 マク ロ
、
す ること であ る。 それ には、保育 や介護等 の支援策 に加え 、 があ るが マク ロで見 れば 不合 理 であ ること 短 期 で見 れば
・ステージ に応 じ て、仕事 と仕事 以外 の生活 のバ ラ ン スを
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〇 〇 八ヽ 改 正 パ ー ト タ イ ム 労 働 法 の イ ン パ ク
・権 丈 英 子 公 一
〇 〇 八年 七 月 号 、
ト ¨経 済 学 的 考 察 二 日本 労 働 研 究 雑 誌 旨 一
七 〇∼ 八 三頁 。
〇 〇九 ヽ 国 際 比 較 か ら み る 日本 の ワー ク ・ライ フ
・権 丈 英 子 公 一
一
〇 〇 九 年 八 月 一日 二 五 日 号 、
・
バ ラ ン スニ ジ ュリ スト旨 一
〇 ∼ 二〇頁 。
近 刊 ヽ ョー ロ ッパ に お け る典 型 労 働 と 非 典 型 労 働 ﹂
・権 丈 英 子 ︵
原 田順 子 他 ﹃
多 様 化 時 代 の労 働 ﹄放 送 大 学 教 育 振 興会 。
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参考 文献 ︼
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取 り やすく す る こと が必要 にな る。
と は いえ 、 日本 が、今 日 の男女 の役割 分業 を前 提 と した
社会 から、男女 がとも に仕事 と仕事 以外 の活動 をす る社会
家族
と いう面に着目し て言 い換え ると、﹁
へ翁所得を得る責任﹂
を稼ぐ男性 に経済的に強く依存す る社会から、そ の責任
賃金﹂
を夫婦 で分担しやす い社会 へ︶と変 わ る には、な お多 く の障
害 があ るよう に見え る。
と いう のは、現存 す る個 々の企業 にと って、正規労 働者
と非正規労 働者 の待 遇格差 が容 認 され て いる現状 は極 め て
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