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水力発電、ダム増設なしで 930 万 kW の増強可能

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水力発電、ダム増設なしで 930 万 kW の増強可能
公益社団法人
日本経済研究センター
Japan Center for Economic Research
2015 年 6 月 15 日
水力発電、ダム増設なしで 930 万 kW の増強可能
-実現には規制改革、地元調整に課題-
日本経済研究センター
2015 年 5 月 29 日(金)に第 17 回会合を開き、新たなダム建設なしに水力発電を増
強する方策について討論した。日本には原発8~9基分に相当する量の水力発電が新
たなダム建設なしに増強できる可能性があり、この半分は増強への制約はほとんどな
い。コストも安価な発電になる。議論の要旨は下記の通り。
1.
日本には約 2700 基のダムがあるが、このうち治水や利水、発電など多目的に利
用している 90 水系、2000 のダムを対象に検討したところ、930 万 kW 分の水力
発電の増強がダム建設なしに可能だ。このうち半分は発電機を付設する必要は
あるが、社会的な制約や自然保護といった問題はまったくない。やる気になれ
ば 2030 年に十分に間に合う。11 円/kWh で売電できれば、40 年で確実に投資
を回収できる。ダムの寿命は、60 年ぐらいなので十分に収益があがる。
2.
ただダムは治水、利水など利用目的が決まっており、規制改革を進めないと柔
軟に発電向けとして使えない。目的を変えようとすると2つ以上の法律に引っ
かかり、許認可が必要になる。例えば河川法には資源の最大活用という目的は
入っていない。官僚は法律に基づき行動するので河川行政を担当する部局は、
多目的ダムでの水力発電の申請に厳しく対応してしまう。資源の最大活用とい
う目的が関係法令にないからだ。だから国交省や農水省、資源エネルギー庁な
ど関係省庁が調整する雰囲気はほとんどない。ただ河川法も環境目的を入れる
など過去三回改正しているので、今後、改革の可能性はある。
3.
地域の問題もある。ダムの水源は共有財産という意識が水源地では強い。水力
発電を実施したい企業があっても、地元で根強い反対にあうケースが多い。ま
た地元主体でアイデアを出しても、公平性・透明性を期すために事業主体を公
募するという話になると、地元以外の事業者が事業を手がける可能性もある。
地元が水力発電を推進する動機に乏しい。得られた利益が地元の水源地に還元
する仕組みが大切だ。そのためには、地元に事業資金をファイナンスする仕組
み作りも必要になる。
4.
既存の砂防ダム活用に成功した例もある。福島市の土湯温泉では、地元で信頼
されるリーダーがおり、市と地元民が協力する形で再生可能エネルギーの活用
に成功している。官民で特定目的会社を設立し、3億円を投じて 140kW の発電
機を設置、設備利用率も 70%に達している。
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日本経済研究センター
エネルギー・環境の未来を語るラウンドテーブル
「エネルギー・環境の未来を語るラウンドテーブル」メンバー
座長
岩田一政
日本経済研究センター理事長
座長代理
鈴木達治郞
日本経済研究センター特任研究員/長崎大学教授・核兵器
廃絶研究センター長
有識者
山地憲治
地球環境産業技術研究機構
植田和弘
京都大学大学院経済学研究科教授
橘川武郞
東京理科大学大学院教授
増田寛也
野村総合研究所顧問(元総務相・前岩手県知事)
伊丹敬之
東京理科大学大学院教授
竹内純子
国際環境経済研究所
小山
日本エネルギー経済研究所
堅
小西雅子
理事・研究所長
理事・主席研究員
常務理事・首席研究員
世界自然保護基金(WWF)ジャパン
気候変動・エネルギープロジェクトリーダー
枝廣淳子
環境ジャーナリスト
平田仁子
気候ネットワーク理事
日本経済団体連合会
経済団体
経済同友会
エレクトロニクス、エネルギー、化学、住宅、自動車関連、金融機関、
会員企業
商社、食品、IT、建設機械、エンジニアリング、建設、運輸・通信、
不動産など当センター会員企業 22 社
小林光
アドバイザー
西岡幸一
事務局
日本経済研究センター特任研究員/慶應義塾大学大学院
特任教授・元環境事務次官
日本経済研究センター研究顧問/専修大学教授・元日経コ
ラムニスト
小林辰男
日本経済研究センター主任研究員/政策研究室長
高地圭輔
日本経済研究センター主任研究員
当ラウンドテーブルは、月1回のペースで開催、忌憚ない意見交換を促すため非公
開を原則とするチャタムハウスルール 1* で運営しています。
本稿の問い合わせは、研究本部(TEL:03-6256-7730)まで
※本稿の無断転載を禁じます。詳細は総務・事業本部までご照会ください。
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〒100-8066
公益社団法人 日本経済研究センター
東京都千代田区大手町1-3-7 日本経済新聞社東京本社ビル11階
TEL:03-6256-7710 / FAX:03-6256-7924
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Chatham House Rule。英王立国際問題研究所に源を発する、会議参加者の行為規範である。
チャタムハウスルールを適用する旨の宣言の下に運営される会議においては、当該会議で得ら
れた情報を利用できるが、その情報の発言者やその他の参加者の身元および所属に関して秘匿
する(明示的にも黙示的にも明かにしない)義務を負うというルール。
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