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めまい dizziness vertigo (060722、070615、110728)

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めまい dizziness vertigo (060722、070615、110728)
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めまい dizziness vertigo (060722、070615、110728)
110728 参考文献 10~17 の内容を追加記載
言うまでもなく、めまいは奥が深い・・・。患者の訴えの頻度も多い。常に知識の整理をしておきたい
のでまとめてみた。フローチャート式に 100%正しい診断するのは不可能と思う。まずは高頻度疾患
から考えて、シマウマっぽい場合には知識をフル活用する。
基礎知識

想定される疾患が多様であるため、一般的な問診から病態を推定し、その後疾患を絞り込んで
いく。

CT は役に立たないことが多く、問診と身体診察から病態生理学的に分析するしかないことが多
い。

解剖:脳幹を腹側から見ると、2 本の椎骨動脈が延髄と橋の境目で一緒になって 1 本の脳底動脈
となり、中脳上端でその先が 2 本の後大動脈になる。

vertigo の定義「自分の身体が空間 に対し、もしくは 空間が自分に対して回転している感覚」
(Behrman 1958)つまり、患者がぐるぐる回る、景色がぐるぐる回ると訴えない限り vertigo といっ
てはいけない。vertigo が起こっているということはその時点で眼振が起こっていたということを間
違いなく意味する。眼振は回転性めまいを表す唯一の客観的徴候である。

回旋性要素のある水平回旋混合性の眼振は末梢性のことが多いが、水平成分のみの眼振は中
枢性眼振の可能性がある。

末梢性眼振は固視で抑制される傾向があるため、注視眼振(左右、上下)の存在は中枢性病変
を示唆することになる。垂直方向の眼振も中枢性めまいの特徴。また、中枢性めまいでは眼球
運動の方向によって眼振の方向が変化することがある。(gaze-evoked nystagmus)

頭位性眼振において、潜時、減衰、慣れの現象が無い場合は中枢性疾患を示唆する。

Shellong テストで異常があるとき、老人ではほとんど間違いなく脳幹に梗塞がある。(もちろん脱
水や出血がなければ)脳幹にある自律神経中枢が壊れると血圧が調節できない。

Quality

回転性、非回転性で末梢性と中枢性を区別できるとされているが、例外が多く、あまり有効
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な問診とはいえない。前者は末梢性、後者は中枢性(意識中枢のある脳幹毛様体が虚血を
起こす、脳幹・小脳などの中枢性の平衡障害)の傾向がいくらかあるという程度。まれに中
枢性でも回転性めまいは起こる。おかしいと思ったらアンカーを引き上げる。

それでも問診の入り口では、めまいの性状を評価することが多いが、教科書によって様々な
わけ方がある。

例1
□ VERTIGO(①頭痛を伴う vertigo、②聴覚障害を伴う vertigo、③単独 vertigo(solo
vertigo))
□ DIZZINESS

例2
□ 回転性めまい(vertigo)、□ 前失神(presyncope)、□ 平行失調(diseqquilibrium)、
□ めまい感(漫然とした浮動感:lightheadedness)

Referred Symptom

BPPV をはじめ、末梢性、中枢性に限らずめまいを起こす多くの疾患は動くと悪化する。動く
と増悪するかという質問はあまり役に立たない。

Time

代償機能が働くため、回転性めまいが数週間以上持続することはありえない。このような時
は患者が回転性と訴えても実態は dizziness を考える。

急性発症の場合、腫瘍、神経変性疾患など進行が緩徐な疾患は可能性が低い。16)
□ 持続時間

めまいを脳または内耳の疾患と決めてかかると循環器系疾患(徐脈性不整脈など)を見逃す可
能性があり、鑑別診断を幅広く考えてすみやかにスクリーニングを行うことが求められる。救急医
療の現場は見逃しとの戦いのため、たとえ症状は軽いとはいえ、まず全身を観察するべきである。
具体的には病歴の聴取に加え、神経学的所見、発熱・貧血の有無、血圧(起立性低血圧の検査
も含む)、脈拍・不整脈の有無、心不全の徴候はないか、眼瞼結膜は貧血様でないかなどの所
見をとり、心電図・血算化学・頭部 CT はスクリーニングとして検査する方がよい。14)
末梢性

眼振の特徴:

水平性または回旋性眼振
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
Alexander's low:眼振の急速相方向への眼球運動で眼振が増大

注視による眼振の抑制がある
良性発作性頭位変換幻暈症 BPPV(benign paroxysmal positioning vertigo)

就寝時に解剖学的に流入しやすいと考えられており、朝ベットから起き上がるときや早朝活動期
にめまいが生じやすい。寝返りを打ったとき出現するのは起立性低血圧では説明できず、BPPV
に特徴的である。めまいの中で一番疾患頻度の高いものは外来では BPPV。まずこれ肯定・否
定する診療が効率的。一回のめまいの持続時間は 1 分以内ですかと聞くことが重要。BPPV に対
しては感度 100%に近い。そうですといえば高頻度疾患の中では BPPV と椎骨脳底動脈循環不
全ぐらいしかない。加えて頭位変換時のみに生じるときは BPPV が最も可能性が高い(パワーズ
症候群なども考えられるが)。誘因無く生じるときには椎骨脳底動脈循環不全を考える。患側耳
が地面を向いたときに出現しやすい。重要な検査として Dix-Hallpike テストがある(参考文献など
参照)。感度 60-90%、特異度 90-95%程度である。明らかな眼振を認めない場合もある。2 回目
以降の手技では眼振を誘発できないこともあるが、それも BPPV の診断根拠となる。めまいの潜
時が数秒(2-20 秒)あり、繰り返すと症状が減少する。潜時と疲労現象がない場合には中枢性を
考える。ちなみに、後方型(最も多い)では懸垂頭位での回旋性眼振が多く、外側型では臥位頭
位 変 換 時 の 水 平 性 下 向 き 眼 振 が 主 体 と な る 。 Dix-Hallpike テ ス ト に 続 い て Epley 法
( http://www.charite.de/ch/neuro/vertigo.html) を 用 い て 治 療 を 行 う こと も 出 来 る 。 奏 功 率 は
84-100%といわれている。制吐薬を投与後に行うのが良い。発作は 1 ヶ月もしないうちに自然に
軽快するが、再発することもある。

「持続時間が 2 分以内」「寝返りで誘発される」の BPPV に対するオッズ比は、それぞれ 3.7、16
であるとされている。さらに、「回転性めまい」の BPPV に対するオッズ比は 8.5 であり、これら 3
つの情報にすべて該当する場合には、もともと有病率の高い疾患なので、BPPV である確率が非
常に高くなる。10)

約半数の患者は 5 年以内に再発を認めるため、同様のめまいの既往は有力な情報。10)

病歴では症状が午前中(特に朝)に強い。10)

消化管出血や血管迷走神経反射による起立性低血圧との鑑別が必要だが、BPPV では全脳虚
血を誘発しない動作、すなわち、寝返りでもめまいを認めることが大きな特徴となる。10)

一般に、起立性低血圧や複合型感覚障害などの他の疾患でも体動時にめまいは増悪する傾向
にある。しかし、寝返りという動作は血圧変動を伴わない頭位・体位変換であるため、起立性低
血圧などの他の疾患によるめまいは増悪しない傾向にある。さらに、寝返り時は立位ではないた
め、複合型感覚障害によるふらつきも出現しづらい。したがって、「寝返りで誘発される」という病
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歴は BPPV を強く示唆する。12)

通常は数週間で軽快する。10)
□ めまいは 1 分(2 分)以内(秒から分の単位)
□ 頭位変換時のみ出現(頭を動かさなければ絶対に出現しない:この病歴に合うものは BPPV
と MPPV しかない)(→頚性めまいも候補に挙がると思われる・・・。)
□ 寝返りで誘発
□ 回転性
□ 疲労減少、減衰減少あり
□ 誘因なく出現
□ 聴覚障害なし
□ 頭痛なし
□ 幻暈のエピソード(数年前、数ヶ月前)
メニエール病

メニエールは急性発症で反復性。内耳のリンパ水腫がおこる。内耳のリンパというのは聴覚系と
前庭系の両方を養っている水なので、聴覚系も前庭系も刺激され、聴覚の症状が起こる。一過
性のめまいに耳鳴と片側性低音性難聴が徐々に起きた場合にはメニエール病を示唆する。発症
は急性で、めまいは数分以内にピークを迎える。どうしてリンパ水腫が起こるかといえばアレル
ギー反応か、自律神経失調(血管運動障害)であり、持続時間は 20 分~2 時間。少なくとも 20 分
はないといけない。(1 時間とする説もある)病体から考えて、30 秒などはありえない。内リンパ液
の蓄積異常が原因と推定されているため、サイアザイド系利尿薬が発作回数減少に役に立つこ
とがある。日本では浸透圧利尿薬(イソソルビド)が一般的。

めまいが専門でない実地医家の問では、めまい患者をたとえ蝸牛症状がなくとも Meniere 病(症
候群)と安易に診断してしまう傾向がいまだに存在する。めまいのみの場合や高齢発症のめまい
の場合には Meniere 病でないことが多い。11)
□ 急性発症
□ 聴覚障害と前庭の障害
□ 症状は反復しているか
□ 持続時間は 20 分~2 時間(最低でも 20 分)
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前庭神経炎

前庭神経炎は嘔気、嘔吐、めまいの症状が強烈。臥床状態で運ばれ、症状が強く、自発眼振を
認めた場合にまず考える。一方向性の自発性眼振が特徴。耳鳴りや難聴は聴神経の症状なの
で、基本的には認めない。持続時間は長時間(数時間以上)。典型的には急性症状が 2-3 日続
いた後に自然軽快(徐々に増悪して 24 時間以内にピークに達する)するが、軽度の歩行失調が
数ヶ月間残ることがある(激しい回転性めまいは 1-2 週で改善する)。通常、ウイルス感染が先行
する。先行しない場合は脳幹梗塞や脳腫瘍や TIA などを疑う。鑑別には温度眼振反応 caloric
response が有用。脳幹梗塞や大脳の梗塞で前庭神経核が全部死ぬことは通常無いので誘発さ
れる。前庭神経炎では誘発されない。反応があるときには注意を要する。治療としては、前庭機
能抑制の目的で抗ヒスタミン薬やジアゼパムを用いる。何週間かは症状が少し残って不安定で
あるが、3 ヶ月以内に回復する。

頭位によらない一方向性の水平性眼振が特徴的。11)

急性、かつ、持続性の激烈なめまいで発症し、悪心、嘔吐、患側(眼振の方向とは逆向き)に傾く
歩行障害を呈する疾患。10)

先行感染を伴う症例は半数以下であり、再発はまれである。10)

めまいは持続性で、寝返りで悪化し、蝸牛症状を伴っていない。10)

非注視時に一方向性の水平または回旋性眼振を認め、固視で抑制される。(中枢性病変では、
注視方向性、垂直性水平性などさまざまな眼振を認め、固視で抑制されない。)10)

洗 顔徴候(視覚情報 が遮断される洗顔時 にふ らつきが 増強 する現 象で 、身体診察 における
Romberg 試験を問診で確認するもの)陽性。10)
□ めまいの程度は強烈
□ 持続時間は数時間から数週間(1-2 週)
□ 耳鳴り難聴などの聴神経症状(蝸牛症状)なし
□ 感冒様症状が先行(半数以下)
□ 温度眼振反応陰性
□ 一方向性の自発性眼振(固視で抑制)
□ 患側(眼振の方向とは逆向き)に傾く歩行障害
□ 洗顔徴候陽性
突発性難聴
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
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突然聴覚障害と幻暈が出現。聴覚障害は難聴でも耳鳴でもいい。消失した平行(前庭)機能は
小脳で代償されるので次第に回復するものの、聴覚障害は持続する。(蝸牛神経鞘のみの障害
にとどまればやや改善する)。発症前に感冒様症状があることが普通。(ウイルス感染後の聴神
経炎)しかし、発症前に感冒症状が無い患者の場合は内耳梗塞の可能性も考える。
□ 聴覚障害あり(聴覚障害と幻暈は同時に発症)
□ 感冒様症状が先行(先行しない場合は内耳梗塞も考える。リスクの評価を)
□ 幻暈は急性発症し、延々と続く(メニエールのように繰り返すパターンでない)
□ 持続期間は数日~数週間(1-2週)
神経血管圧迫症候群(NVC)

末梢神経というのは 30 秒以上は発火できない。動脈が聴神経と前庭神経を圧迫するとそこにイ
ンパルスが流れ、キーンと耳がなって景色がぐるぐる回る。solo vertigo の場合もある。
□ 聴覚障害
□ 持続時間は30秒以内
□ 一日に数十回出現することあり
□ テグレトールが奏功する
□ 温度眼振検査減弱
中耳炎

真珠腫や中耳炎の波及でも末梢性めまいの原因になる。Weber 試験と Rinne 試験で伝音性難聴
と感音性難聴、患側耳を推定する。(Weber で右に変移して聞こえれば右伝音性難聴か、左感音
性難聴である。右の Rinnne 試験で陰性であれば右伝音性難聴、陽性であれば左感音性難聴で
ある。)
外リンパ瘻

最近の頭部外傷(手術)や咳嗽、くしゃみによる突然の中内耳の圧変化が外リンパ瘻によるめま
いの原因となる。気密耳鏡検査、バルサルバ手技、労作で誘発でき、特に段階状に悪化して感
音性難聴が背景に存在すれば可能性が高くなる。
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その他末梢性眩暈の原因

薬剤性:アミノグリコシドなど 17)

梅毒 17)
心因性
うつ病

うつ病のめまいは2~3 ヶ月以上続いて、どこへ行っても治らないというのが一般的なパターン。
□ 持続性のめまい
□ 難治
□ 興味・喜びの消失
□ 抑欝気分
パニック発作

パニック発作の持続時間は 20 分程度。また、呼吸困難や動悸、発汗、広場恐怖など随伴症状が
多彩。口の周りのしびれ感や、四肢のしびれ感などを認めることもある。
□ 持続時間は 20 分程度
□ 呼吸困難
□ 発汗
□ 動機
□ 広場恐怖
身体表現性障害

正書参照。
心因性めまい(恐怖性姿勢めまい(Phobic postural vertigo:PPV))
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
めまいに対する過剰な防衛反応。10)

恐怖心から体位変換を伴う身体診察に強い抵抗を示す例が多い。10)

年単位の慢性的なめまいとなりやすく、日によってめまいの程度に差があることも多い。10)

不安障害、うつ病強迫性障害、身体表現性障害などが基盤にみられることもある。10)

日常生活の制限を取り去り、積極的に体を動かすよう指導するだけで 72%の患者は治癒すると
の報告もある。薬物治療を行う場合には、抗不安薬、抗うつ薬を使用する。10)
□ 体位変換を伴う身体診察に強い抵抗
□ 年単位の慢性的なめまい
□ 日によってめまいの程度に差
多感覚障害性(複合感覚障害)、老人性良性平衡障害 multiple-sensory-defect dizziness

高齢者に多く、視覚障害(白内障)や末梢神経障害(位置覚の障害)、deconditioning、薬剤の影
響などの複数の感覚障害による。臥床時、坐位、立位の時にはめまいを感じないが、歩行時、と
りわけ方向転換時に浮動感を生じる。
□ 白内障
□ 末梢神経障害(痺れ、感覚障害)
中枢性

眼振の特徴:

垂直性、水平性、回旋性眼振。

gaze-evoked nystagmus(注視の方向で眼振が逆になる)。

片眼の眼振。

注視により抑制されない。

老人では手回内回外変換運動は正常でも利き手で円滑な傾向がある。左右差があっても
すぐ小脳梗塞と診断しない。

回転性めまいのうち 85%は末梢性疾患由来であるが、残りの 15%は脳幹障害などの中枢性疾
患に起因する。したがって、回転性めまいは末梢性疾患を示唆するものの、その一事をもつて中
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枢性疾患を除外することは困難である。12)

めまいの原因は多岐にわたるがプライマリケアにおいては、すべての中枢性めまいと聴神経腫
瘍を見逃さないことが essential minimum となる。10)
脳血管障害

脳幹部障害はいろいろな神経学的な症状を伴うが小脳の血管障害はめまいだけ、ふらつきだけ、
あるいは頭痛だけのように、神経学的自覚症状に乏しいことが多い。小脳が傷害されると小脳症
状が出るというわけではない。実は小脳に限らず、脳幹部の梗塞であっても vertigo 以外の症状
が出ない場合もある。vertigo は前庭神経核、傍正中部毛様体(PPRF)、内側縦束(MLF)という
眼球運動に関係するが、錐体路や脊髄神経路とは離れている。しかも延髄では様々な脳神経核
の中で前庭神経核が最も血液が行きにくい場所であり、脳幹の循環不全ではまず前庭神経核の
虚血が起こる。他の症状が起きなくてもいい。運がいいと(悪いと?)梗塞などが三叉神経核に引
っかかり、その症状がでる。教科書によくある三叉神経の領域は末梢の分布であり、中枢は関係
ない。めまいを起こす前庭神経核に隣接する三叉神経核が支配しているのは口の周りだけ。ピ
ンで口唇周囲と頬部を刺激してみる。脳幹の前庭神経核の近くに血管運動中枢があり、ここを巻
き込むと vertigo とともに血圧が異常に高くなる。

起立したときにふらふらするめまいがあり、Shellong テスト陽性であれば脳幹にある自律神経調
節中枢の梗塞を考える。(脱水や出血がないとき) 小脳出血、くも膜下出血は突発ピーク型の
頭痛を呈する。長時間続く遷延性の幻暈の場合、一般には脳幹・小脳の障害と前庭神経の障害
を考える。(温度眼振反応:caloric response が鑑別に有用。)

内耳から入った前庭神経のインパルスは脳幹を通って様々なところを通る、結局は視床を通って
頭頂葉の 2v 野に行く。この経路のどこを通ってもめまいは起こる。視床は平衡感覚の中継核で
ある VPI 核、手足の感覚は VPL 核、顔の知覚は VPM 核が隣接している。手、足、口の異常感覚
を認めた場合は視床の病変を疑う。2v 野の異常でもめまいが起こる。2v 野は中大脳動脈と後大
脳動脈の境界領域にあり、どちらの領域がだめになっても大脳性の vertigo が出現する。意識障
害を伴う発作性の vertigo はてんかんの可能性がある。20 歳過ぎの初発のてんかんはまず脳腫
瘍を疑う。

脳幹障害(脳幹梗塞、脳幹出血)によるめまい患者には、ほとんどの場合、手足や顔面の動きに
くさやしびれ感、呂律が回らない、ものが二重に見えるといった症状が伴っている。11)

小脳上部の障害では、構音障害や四肢の運動失調が明らか。11)

問題は構音障害や四肢の運動失調をきたすことがない小脳下部の障害の場合である。こうした
場合は小脳虫部の障害による、起立・歩行障害が唯一の鑑別点となる。片足起立が可能であれ
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ば脳卒中の可能性はきわめて低い。顕著な眼振がないにもかかわらず症状が強く、起立、歩行
が障害されている場合には、小脳下部の脳卒中である可能性が高い。11)

訴えと眼振検査所見との乖離に注意。(後下小脳動脈領域の大きな病巣の梗塞では身体のふら
つきはひどいが注視眼振検査では眼振がはっきりしない。この平衡障害と眼振検査所見の乖離
こそ注意すべきである。)13)

(脳幹梗塞の中で)問題は橋底部から上部延髄の小さな梗塞である。この部の病巣ではめ
まいのみで発症する症例があり、まためまいを伴う突発性難聴様の耳鳴、難聴で発症する
症例もあり、見落とす可能性が考えられ注意を要する。

(小脳梗塞の中で)後下小脳動脈領域では病巣の広がりが比較的大きな梗塞でもめまい、
ふらつきのみの症状で出現するものがあり注意を要する。また、前下小脳動脈領域の梗塞
でも、めまいおよび同側の耳鳴を伴う突発性難聴様の症状で発症することがある。

めまいのみで発症した急性期の小脳梗塞すべての症例にリスクファクターが存在している。13)

めまいの脳梗塞症例とリスクファクターとの関係を検討するために、単純に個々のリスクファクタ
ー(高齢、喫煙、高血圧、脂質異常症、糖尿病、心疾患、ほかの動脈閉塞性疾患の有無に)を 1
項目 1 点に点数化して評価した場合、急性期の小脳梗塞症例で平均 2.9 ポイントである。これら
のことから考えると脳血管障害のリスクファクターを 3 ポイント以上もった症例では、めまいのみ
で、ほかの脳神経症状がみられなくても、脳血管障害の存在を疑うべきである。また、これらのリ
スクファクターは、いずれも未治療の場合は倍のポイントと考えた方がよい。13)

Wallenberg 症候群 15)
・
延髄背外側部を支配する後下小脳動脈領域の循環障害によるが、多くは同側の椎骨動脈
閉塞による。血栓症が多いが、塞栓症や動脈解離でも生じる。めまいは前庭神経核の虚血
により生じるので、末梢性めまいと同様、回転性めまいが生じるため鑑別が重要である。
・
前庭神経核の虚血が生じた場合、前庭神経核周辺の神経核も同時に障害され、他の中枢
神経症状を伴うことが多い。

前庭神経核より頭側の虚血の場合、外転神経核などの動眼系の神経核群があり複視
を訴える。

前庭神経核より尾側の虚血では、

三叉神経脊髄路核の障害により障害側の口唇周囲の痛覚の低下

迷走神経背側運動核の障害により障害側の軟口蓋や声帯麻痺

交感神経下行路の障害では障害側の Horner 症候群(眼瞼下垂、縮瞳、眼球陥
凹)が認められる.

脳底動脈系の TIA もめまいの鑑別として挙げられる(高齢であれば)。16)
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□ 突発完成(小脳出血、くも膜下出血)
□ 神経症状に乏しい(小脳)
□ 頭痛(小脳出血、くも膜下出血)
□ 様々な神経障害(脳幹)
□ 口周囲の感覚障害(ピンでつついてみる)
□ 異常高血圧
□ 起立時のめまい・Shellong テスト陽性(脱水がないとき)(脳幹)
□ 持続時間は数時間から数週間(1-2 週)
□ 温度眼振反応陽性(前庭神経障害と鑑別)
□ 手、足、口周囲の異常感覚(視床)
□ 意識障害を伴う(てんかん)
椎骨脳底動脈循環不全(これは疾患単位?それとも状態?確認する必要性あり)

末梢性めまいと確定できない高齢者のめまいは椎骨脳底動脈循環不全と暫定的に診断される
ことが多い。頭位とは関係せずに誘因無く出現する数分以内のめまい。数分から 1 時間と記載す
る教科書もある。ハリソンでは、この発作が運動、感覚、視覚、脳神経、小脳などの症状を伴わ
ない再発性のめまいを起こすことは非常にまれとしている。放置すると TIA に移行することもある。
脳梗塞へ移行することもあるが、どの患者が脳梗塞へ移行するのか予測することは難しい。 椎
骨動脈の圧が低下して視覚領野への血液の供給が減ると眼前暗黒間が出現する。突然発症す
る非回転性めまいで、神経学的異常が認められる場合には要注意。前にも述べたように、どの
患者が脳梗塞へ移行するのか難しいので、ちょっとした神経学的異常にも注意を要する(体幹失
調など)。ちなみに頭囲変換時のみに起こるパワーズ症候群というまれな症候群もある。
*Powers syndrome 頚部捻転時に前斜角筋などにより椎骨動脈が圧迫され、めまいなどの間
欠的な椎骨脳底動脈循環不全を呈する症候群。

後 下 小脳 動 脈(posterior inferior cerebellar artery ;PICA)や前下 小脳 動脈(anterior inferior
cerebellar artery;AICA)の虚血が原因だが、末梢前庭障害のような一方向性眼振が生じる場合
には、末梢前庭障害との鑑別が困難になる。通常突発して持続が数分のめまいをくり返すという
特徴から診断が推定できるが、MRI でも異常を捉えることができないため、ほかの脳幹や小脳の
症状が出現するまでは確定診断に至らない。11)
□ 誘因なく出現
□ 持続時間は数分以内
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□ 中高齢者
□ 目の前が暗くなる感じ
聴神経腫瘍

聴神経腫瘍は聴神経に腫瘍が出来ることが多いのでめまいはそれほど多くない(めまいで発症
するのは 2 割以下)。難聴はほぼ必発であり、耳鳴りも多い。難聴は緩徐に進行するので自覚症
状は遅れる。難聴が軽度でも語音弁別能が早期に傷害されることが特徴。難聴の自覚が軽度で
も電話が聞き取れなくなる。

失調系で一番負荷がかかるのは単脚起立検査(one-foot stand)。ついで Mann 検査(継ぎ足立
ち tandem stand)。ついで準継ぎ足立ち検査(semi-tandem stand)高齢者ではできないこともあり、
準継ぎ足立ち検査(semi-tandem stand)で 10 秒できたら合格とする。

深部感覚の検査として Romberg テストをおこなう。
□ 難聴
□ 耳鳴
□ 語音弁別能の低下
良性再発性幻暈症(BRV : benign recurrent vertigo , BPV : benign paroxysmal vertigo of childhood)

頭痛と同時に急性再発性の持続性の vertigo が突然起こる。持続時間は 1 分~24 時間。それが
おさまると頭位変換時の持続時間の短い vertigo が何回か続いて一段落する。常に偏頭痛ととも
に出現するときに疑われる。女性に多い。
□ 偏頭痛
□ ストレス、不眠、疲労、アルコールで出現
□ 聴覚症状なし
□ 温度眼振反応は正常
悪性持続性頭位幻暈症 MPPV(malignant persistent positional vertigo)

ある特定のポジションにすると延々とめまいと眼振が出現。ただし、患者はわざわざめまいの頭
位をとり続けないので、問診をすると数秒と答えるので注意。疲労減少がなく、再現性がある。ほ
とんどの人が小脳と脳幹の正中部に出血、梗塞、腫瘍を認める。
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□ 特定の頭位で出現し、頭位を採り続ける限りめまいは持続
□ 頭痛
□ 聴覚障害なし
頚椎症
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首を曲げたときのみ出現する。首をひねると椎骨動脈がつぶれ、脳幹に血液が行かなくなって
vertigo が出現する。
□ 首を曲げたときのみ出現
頚性めまい
「頚性めまい」を参照
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鎖骨下動脈閉塞症

左腕を使用したときのみ出現する。たとえば車の運転中、左折では起こらないが右折で出現など
と、症状の発生に左右差があるときに疑う。
□ 左腕使用時のみ出現
その他中枢性めまいの原因

片頭痛(前兆として出現することあり。ハリソンによると頭痛を伴わないめまいのみの片頭痛もあ
るようだ・・・・。)、悪性腫瘍(小脳、脳幹、聴神経)、過換気症候群、てんかん、脊髄小脳変性症、
パーキンソン症候群。個人的には不眠、睡眠時無呼吸症候群、肩こり、最近の過労などもめまい
の原因として高頻度のような気がする・・・。
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薬剤性:抗てんかん薬、アルコール、睡眠薬など 17)
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多発性硬化症 17)
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もやもや病 17)
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良性腫瘍:髄膜腫など 17)
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髄膜炎/脳炎 17)
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脳振盪後症候群 17)
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全脳虚血

常に心臓由来の原因を考慮しなければならない。危険因子を評価し、入院や外来でのホルター
心電図検査などを考える。

横になったまま寝返りを打ったり頭位を変えたりしたときにめまいが生じればそれは全脳虚血に
よるめまいでないことを示す。
□ 横になっている状態での寝返りや頭位変換では誘発されない
起立性低血圧

坐位や臥位で軽快する数分以内のめまい。来院時に低血圧や頻脈があるときには、原因として
消化管出血などを忘れない。脈拍増加を伴わない起立性低血圧では糖尿病性ニューロパチー
やβ遮断薬の服用を考える。血圧が正常で立位にても脈拍増加や血圧低下を認めなければ可
能性は下がる。
□ 持続時間は数分以内
□ 坐位や臥位にて軽快
血管迷走神経性反射
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坐位や臥位で軽快する数分以内のめまい。痛みや排尿が原因となることがある。
□ 持続時間は数分以内
□ 坐位や臥位にて軽快
心原性
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常に心臓由来の原因を考慮しなければならない。危険因子を評価し、入院や外来でのホルター
心電図検査などを考える。心筋梗塞では全脳虚血によるめまいと自律神経症状としての嘔吐を
伴うことはまれでない(糖尿病などで典型的症状の出ない患者もいる)。不整脈によるものはどん
な姿勢でも起こりうる。弁膜症、肥大型心筋症、突然死の家族歴にも注意する。そうでないと自
信が持てなければ常に鑑別に入れておく。
□ 嘔吐
□ 発汗
□ 心電図異常
□ 横になっているのに出現
□ 誘引なく突然発症
□ 頻脈の自覚
□ 徐脈の自覚
□ 弁膜症
□ 心筋症
□ 突然死の家族歴
参考文献
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生坂政臣.初めての問診.junior 11.No.436.2004.11
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11. 城倉健.めまい診療を難しいと感じるのは効率的なアプローチ法を知らないからだ.レジデントノー
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13. 寺本和弘, 田渕哲, 山中伸危ないめまいを見極める.レジデントノート, 10(3) : 383-391, 2008.
14. 鈴木博子, 岩田充永.入院, 帰宅, 再診フォローアップの分岐はどこか.レジデントノート, 10(3) :
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17. 田中和豊.Step by Step! 初期診療アプローチ「めまい」診療の達人.10 月号.2007.
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