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パーキンソン病と食事(120531)
ROCKY NOTE http://rockymuku.sakura.ne.jp/ROCKYNOTE.html パーキンソン病と食事(120531) パーキンソン病患者が日中の蛋白制限を指導されたという。これを機会にパーキンソン病と食 事の関係について、学生と一緒に勉強してみることにした。 wearing-off 現象は、levodopa の持続点滴で血中濃度を一定にすることで軽減されることか ら、off time でも線条体ドパミン受容体の sensitivity は低下しておらず、脳内へ levodopa の 不断の供給があれば off time は発現しないことが推定されている。しかし、levodopa の持続 点滴で有効濃度を一定に保つことは実際は困難であり、現在は off time 発現時に levodopa の追加投与を行ったり、dopamine agonist の bromocriptine を併用する方法が頻用されてい る。2) 蛋白質を多く摂ると、L-ドーパが効きにくくなることがあるので、昼食の蛋白質を制限し、肉、 魚、卵、大豆製品などは夕食時に摂るという方法もあります。1) 最近、有望な治療法として、食事中の蛋白質、とくに neutral amino acids を日中に制限する 方法が提唱されてきた。2) 消化管での levodopa 吸収におけるアミノ酸の阻害作用が推定されている。2) 食事中に含まれるアミノ酸が血液脳関門で levodopa の脳内移行を阻害する。2) 蛋白質をほとんど除去した食事を与えたところ、levodopa に対する sensitivity は著明に上昇 し、off time も軽減した。一方、高蛋白食(蛋白質含量 160g/day)の場合には levodopa の効 果は乏しくなり、1 日中動作緩慢の状態が続いた。この低蛋白食療法は、その後 1 年間の追 跡調査でも、十分な臨床効果が持続していることが判明している。2) 低蛋白食療法では、蛋白質の 1 日必要量が不足し、栄養学上問題であるとする意見が当然 でてくるが、これに対して Pincus らは、夕食以後は蛋白質制限を解除し、1 日通算して必要蛋 白質量を摂取することをすすめている。2) 海外では、蛋白再分配療法は L-ドパの吸収を良くし、症状が改善、特に wearing off に有効と する報告がある。3) Competition with neutral amino acids for transport across the gut and into the brain may be responsible for "offs" that appear following meals . A protein redistribution diet in which most protein intake is reserved for the evening was useful in approximately two-thirds of such patients in small studies, although this type of diet tends to be impractical for long-term use. 4) Patients should be encouraged to take levodopa on an empty stomach and avoid protein at the time of drug administration. 4) 運動症状の改善のために、L-ドパの吸収をよくする方法として、錠剤を砕いての服用、空腹 ROCKY NOTE http://rockymuku.sakura.ne.jp/ROCKYNOTE.html ROCKY NOTE http://rockymuku.sakura.ne.jp/ROCKYNOTE.html 時での服用、レモン水など酸性飲料での服用が挙げられる。3) 吸収を悪くする要因には、消化の悪い食事の後の服用、制酸薬や牛乳と同時の服薬、消化 管の運動低下を引き起こす薬剤との服薬などが挙げられる。3) バナナジュースが L-ドーパの脳以外での代謝を促進し、吸収を低下させる可能性があると いう報告が出ている。1) 日常生活の中でも工夫できることが多いことが分かった。off の症状に困っているなら、チャレン ジしてみていいと思う。もちろん、厳しくやろうとすると長続きしそうにないので、バランスは大事と 思う。 参考文献 1. 竹村 学.パーキンソン病 正しい治療が分かる本.東京,法研,2009. 2. 印東利勝.パーキンソン病の dietary protein therapy 日中に食事中の蛋白質を制限する.醫 學のあゆみ 145(9): 597-597, 1988. 3. 日本神経学会.運動症状の非薬物治療.パーキンソン病治療ガイドライン 2011. 4. Motor fluctuations and dyskinesia in Parkinson disease. UpToDate last updated: 12 14, 2011 ROCKY NOTE http://rockymuku.sakura.ne.jp/ROCKYNOTE.html