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胆石は手術したほうがいいのか(150327)

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胆石は手術したほうがいいのか(150327)
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胆石は手術したほうがいいのか(150327)
充満型の胆石を認める患者。精査にて胆嚢癌を認め、手術の方針となった。これを機会に胆石
について復習しておこうと思う。

わが国の成人における胆石保有率は 10%前後とされるが、1997 年以降全国調査は施行さ
れておらず現在の実状は明らかではない。2)

胆石は胆汁成分の結晶化と成長を経て形成される。主な構成成分によりコレステロール胆
石と色素胆石(黒色石、ビリルビンカルシウム石)に大別される。2)

色素胆石はビリルビン代謝異常(黒色石では溶血性貧血や肝硬変症などによるビリルビン
産生過剰、ビリルビンカルシウム石は胆道内細菌感染による不溶性ビリルビンカルシウム析
出)が成因となり、黒色石が胆嚢内、ビリルビンカルシウム石は胆管内に形成される。2)

リスクファクター:胆嚢収縮能低下、腸管機能低下、脂質異常症、ダイエットなどによる急激な
体重減少、食生活習慣 5F(Forty、Female、Fatty、Fair(白人)、Fecund(多産))があげられて
いる。3)

これ(胆石発作)は、食後、特に脂肪食(油もの)を食べた後におこることが多いと言われてい
ます。痛みの部位は、みぞおちから右の上腹部で、背中や右肩が痛くなることもあります。痛
みの強さは、我慢できないくらいの強い痛みのこともあれば、ドーンと重い感じがするだけの
軽いこともあります。2、3 時間でスーっと治ってしまうことがあるのも胆石発作の特徴です。1)

脂肪の多い食後に生じることが多く、右季肋部~心窩部にかけて 30 分~2 時間程度持続す
る。60%は右肩甲骨部に、10%で胸骨後部に放散痛を認め、悪心・嘔吐を伴うこともある。
身体診察所見は右季肋部叩打痛や Murphy 徴候(座位で右季肋下を圧迫した状態で深吸気
をすると痛みのため呼吸が止まる)が特徴的である。2)

胆嚢は右の上腹部にありますが、痛むところはみぞおちなので、胃が悪いと思ってしまう人
が多いようです。胃が悪いのだと思っていたところ、検査したら実は胆石だったということが良
くあります。1)

どの程度の正確な数値はわかりませんが、胆石を持っている患者さんの約半数に腹痛があ
るものの、半数には症状がないとされています。1)

画像診断は胆石の存在部位により感度・特異度が異なり、総胆管結石・肝内結石では US に
加えて他の modality を要する場合が多い。2)

胆石と胆嚢癌には密接なかかわりがあるとする調査結果があります。胆嚢癌の患者さんが
同時に胆石を持っている頻度は高く、40~75%とされています。胆石を持っている患者さんの
中でも、①胆石による痛みなどの症状がある場合、②胆石が大きい場合、③胆石の数が多
い場合、④胆石と診断されてからの期間が長い場合、などは胆嚢癌になる可能性があると
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いわれています。1)

一方では実際に胆石を持っている多くの患者さんたちを長期間にわたり経過をみた調査では、
最終的に胆嚢癌になった方はそれほど多くなかったという結果が報告されています。また、
症状の無い胆石を持っている患者さんたちが胆嚢癌になる頻度は、胆石を持っていない患
者さんたちが胆嚢癌になる頻度と統計上では変わらないという調査結果も多く見られます。
1)

少なくとも、現時点では胆石を持っているからといって、必ずしも胆嚢癌になりやすいとは言
えないようです。しかし、無症状でも胆石があるとわかってからの期間が長い患者さんや大き
な胆石のある患者さん、胆嚢の中に胆石が充満している患者さん、胆嚢の壁が厚い患者さ
んなどは胆嚢癌に注意して経過をみていく必要があります。1)

胆石症は無症状胆石と有症状胆石とに分けて治療方針を立てる。3)

痛みの症状が無い人は基本的には手術を受ける必要はありません。その理由として、症状
の無い人を治療せずに観察した場合、痛みなどの症状を発症する人が極めて少ない(2~
4%/年)ことがあげられます。1)

無症状の場合、具体的には 1 年に 1~2 回の超音波検査で経過観察を行うことを勧めます。
1)

胆石症の特徴的な消化器症状を示さない(自覚しない)場合、これをサイレントストーン(無症
状胆石)と呼ぶ。ガイドラインでは無症状胆石は経過観察を推奨している。ただ、経過観察上
の注意点として、①経過中の有症状化(症状発現)因子、②治療介入すべき症例の特徴も補
足している。有症状化率は年率 2~4%、その危険因子は若年者、複数胆石、胆嚢造影陰性
としている。一方、胆嚢壁肥厚、巨大胆石(径 3cm 以上)、胆嚢造影陰性は胆嚢癌発生の危
険因子とされ、たとえ無症状でも積極的な胆嚢摘出を推奨している。2)

結石多数例、胆嚢造影陰性例、胆嚢壁肥厚例、胆嚢壁評価困難例などでは、無症状であっ
ても手術適応と考えられる例があり、その際は胆嚢摘出術(腹腔鏡下が第一選択)が選択さ
れる。3)

非石灰化コレステロール胆石の場合、排泄性胆道造影検査で胆嚢機能が正常に保たれて
いれば溶解療法や破砕治療(ESWL)が有効である。2)

胆石所有者が治療を希望する場合で、X 線陰性の 15mm 未満の浮遊結石を認めるときには
溶 解 療 法 、 20mm 以 下 の 単 発 結 石 を 認 め る と き に は 体 外 衝 撃 波 結 石 破 砕 療 法
(extracorporeal shock wave lithotrips:ESWL)が選択される。3)

無症状胆石に対する溶解療法は、胆道発作の減少も報告されているが、完全溶解率が約
20%にすぎず、長期投与でも溶解率が改善しないため、1 年を超える長期投与については検
討が必要である。3)

有症状胆石は原則的に手術適応となる。一部の症例は、溶解療法や ESWL の適応となる。
3)
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急性胆嚢炎合併時には、早期の胆嚢摘出術(開腹下、腹腔鏡下いずれでも可)または胆嚢
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ドレナージ(経皮経肝胆嚢ドレナージ術、経皮経肝胆嚢穿刺術、内視鏡的経乳頭的胆嚢ドレ
ナージ術)が必要となる。3)
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腹腔鏡下手術に十分な経験をもつ施設では、腹腔鏡下胆嚢摘出術が第一選択の術式とな
るが、胆嚢がん疑診例や妊娠合併例、高度炎症症例などでは腹腔鏡下ではなく、開腹手術
を選択することもある。3)
(参考文献 2 より引用)
胆嚢癌術後の経過は良好であったものの、この患者は別の原因で他界された。個別の臓器だ
けでなく、全体を診ることの重要性を痛感した症例であった・・・・。医師が考える治療の順番と患
者が考える順番の重要度は常にずれていると認識しておきたいと思う。
参考文献
1.
日本消化器学会.患者さんと家族のための胆石症ガイドブック.
http://www.jsge.or.jp/citizen/kouza/pdf/05_tanseki.pdf
2.
田妻進, 菅野啓司, 大屋敏秀.胆石症の診療と治療方針の実際.Medical Practice 29(1):
67-72, 2012.
3.
小泉大, 佐田尚宏, 安田是和.胆石症, 胆嚢炎, Lemmel 症候群.診断と治療 101(5): 755-759,
2013.
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