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今日のヘッドライン
欧州
2016年10月12日
英国メイ首相はハードブレグジット姿勢を示したが
メイ政権が英EU離脱交渉に強硬姿勢で臨むとの懸念から英ポンドが下落しました。一方、メイ首相はポンド急落を受
け、強硬なEU離脱姿勢の軟化を示すなど先行き不透明で、ポンドは当面変動性の高い状況が続くものと思われま
す。
英国EU離脱通告時期:メイ首相、党大会で
2017年3月の離脱通告を表明
英国メイ首相は2016年10月2日、首相就任後初となる保守
党の党大会で演説し2017年3月末までに欧州連合(EU)離脱
を正式に通告すると表明しました。通告後に始まる交渉の期
限は原則2年で、英国はこの間にEUとの貿易関係などの関
係構築に向けて協議する運びです。なおメイ政権がEU単一
市場へのアクセス維持に努めながらも移民規制を優先させ
る姿勢を示したことから、英国が関税なしで自由にEU域内で
貿易できる単一市場へのアクセスを失う「ハードブレグジッ
ト」が懸念され、ポンドは下落しました(図表1参照)。
どこに注目すべきか:
ハードブレグジット、リスボン条約50条、輸出
ピクテ投信投資顧問株式会社
図表1:英ポンド(対ドル) の推移
(日次、期間:2015年10月12日~2016年10月11日)
1.6
1.5
1.4
1.3
ドル/ポンド
高 ポンド 安
メイ政権が英EU離脱交渉を強硬姿勢で臨むとの懸念から
英ポンドが下落、31年ぶり(1985年来)の安値水準となりまし
た。一方で、メイ首相はポンド急落を受け、強硬なEU離脱姿
勢を軟化させる可能性も示しました。ポンドは当面変動性の
高い状況が続くものと思われます。
市場では穏やかな離脱となる「ソフトブレグジット」への淡い
期待も見られましたが、失望へと変わり、ポンドが急落しまし
た。ポイントは次の2点です。
1点目は、 EU単一市場へのアクセスよりも、移民規制を優
先させる可能性を示唆したことです。「人、財、サービス、資
本」の移動の自由はEUの基本原則で、英国が移民規制を
優先させれば貿易の自由を失う恐れが考えられます。
2点目はメイ首相がスピーチでEU離脱の表明(リスボン条約
第50条の発動)は政府の責任で、政府が単独で責任を負う
と述べ、議会などの関与を否定し、強行にEUとの交渉を進
める姿勢が示されました。
ただし、次の点に注意も必要です。
まず、本当にメイ首相に離脱時期を決定する権限があるか
という問題で、ロンドンの裁判所は10月13日、17日に審理を
予定、その後判断を示す予定です。議会では上下両院で残
留支持派が多数を占めているため、離脱に反対して離脱時期
の延長などが議会で審議される可能性もあります。なお、ポン
ド急落を受けメイ首相は日本時間10月12日に議会に譲歩、離
脱に関する採決を容認しポンドは回復を見せました。
ポンド安には輸出競争力を高めるメリットも見られます。例え
ば8月の輸出額は前年同月比約11%上昇しています(図表2参
照)。しかし、輸入はそれ以上に増えている点に注意が必要で
す。加えて、英国が関税同盟離脱となれば、最大の貿易相手
であるEUへの輸出コストが高まることが懸念されます。英国
政府が過去に試算したハードブレグジットの影響をみると
GDP(国内総生産)がEUにとどまった場合に比べ9.5%落ち込む
ことを示しています。市場の反応を見る限り、経済的にはハー
ドブレグジットも乗り越える壁が高いと思われます。
最後の行く末は政治の問題であり、その意味で先行きは不透
明で、英ポンドは変動性が高い状況が続くものと思われます。
2016年10月
メイ首相がEU離
脱時期の表明
後ポンド下落
2016年6月
英国EU離脱を選択
英ポンド(対ドル)
1.2
15年10月
16年1月
16年4月
16年7月
図表2:英国の輸出と輸入額(季節調整済み) の推移
(月次、期間:2013年8月~2016年8月)
280
億ポンド
270
260
250
240
230
220
13年8月
2016年8月
億ポンド
前年同月比で輸出は
11%、輸入は13%上昇
380
360
340
英輸出額(左軸)
英輸入額(右軸)
14年8月
15年8月
320
16年8月
出所:ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成
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