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「記紀」 における 「死」 と 「他界」 の構造

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「記紀」 における 「死」 と 「他界」 の構造
「他界 」の構 造
と
おけ る 「死」
「記 紀」
﹁記 紀 ﹂ で の 死 の 記 述
紀 ﹂ に お け る﹁死 ﹂ と ﹁ 他 界 ﹂ の構 造
1
。
記
松 田 良 一
稲 種 、 粟 、小 豆 、 麦 、 大 豆 が 生 ま れ た ︵﹃記 ﹄︶。 こ う し た 死 体
二I
第一 にあげら れるの が政争 によ る﹁死﹂であ る。表︵I ︶の﹁﹃記紀﹄おけ る死 の記 述﹂に記 したよう に謀反、政権
﹁記紀﹂ や ﹃風土記﹄ の記 述では死 の諸相をお およそ五 つに書き分け てい る。
関す る神話や説話 を古代社会 はど のよう に伝え よう としてし て いた のか。たとえ ば ﹃古事記﹄﹃日 本書紀﹄、 いわ ゆる
るも のと思 われ る。
﹁死 ﹂が﹁生﹂を生 む。死は 虚無なこと ではな いこ とを意味 づけて いる神話で ある。こうし た死に
化生モチ ーフの神話 には死 に直面 し﹁ 絶望か回生 か﹂と いう 局面 で の、人々 の死 への対処 の仕方 が色 濃く反映し て い
速須佐之男 命に殺 された大気 津比売 の死 体から 、 蚕
イ ザ ナ ギ命 に よ っ て 首 を 切 ら れ た 迦具土 ノ 神 の 死 体 よ り 、正 鹿山上津見 神 な ど 多 く の 神々 が 生 ま れ、ま た
紀﹂ の時代 にお いて も﹁死 の超 克﹂ は重要 なテ ーマであ った。
よんだ 。こ の﹁死 ﹂と いう人間 にと って根元 的 な局面 に対し て人 々は どのよう に対 処し、記録し ようとし たのか。﹁記
ヤス パースは平素 は無自覚 に いる人 も、生きて いる限り不可 避的 に死 や苦悩 に直面す るしかな い状況を限界 状況と
¬
三一
抗争 、反乱 、不服従 が、その主な理 由であ る。古 代に おける権力闘 争のす さまじさは ﹃記﹄﹃紀﹄の断片記 事にも満 ち
て いる。
﹁ 記紀﹂には権力闘 争 の勝者の正統 性を誇示 すると同時 に、彼の権力 の偉大 さが誇示 さ れている。時 には、天
皇自 ら刀 をと って斬殺し たりし ている。む ろん天皇 の手 を汚 さないで他 の誰か が密 かに代行 する組織 が未 整備で ある
こと 、 いわ ば国 家組織 の脆弱 さを 物語 って いること は言うまで もな い。一 方、こ の記 述には直 接的に乎 を下 す天皇 の
怒り の大き さを表すとと もに、
こ の容赦 のな い怒りに触 れたら、空恐ろし い目に遭う と人 々に思 い知らせ る効果も あっ
た にち がいない。権力者 の天皇 も当 時は、 怒りを周囲 にぶちま ける生身 の人間で あり 、政敵 を謀殺し たりす る、し た
た かな政治家 の一人で あった。
仁 徳朝に おける大山守 皇子は皇 太子に されなか ったこ とを恨 み、皇太子 とな った大 鶴鵜皇子 暗殺を計画 す るが、逆
に河 に 落 と さ れ て 死 ぬ 。 ま た 仲 哀 朝 の 忍 熊王 は 、息 長 帯 比 売 の 謀 略 にひ か か っ て 将 軍・伊 佐 比 宿 禰 と 共 に 海 に 大 っ て
死 ぬ ︵﹃記 ﹄︶。 そ の 後 も 、 有 馬 皇 子 、 大 友 皇 子 、 大 津 皇 子 、 長 屋 王 な ど 、 ス サ ノ ヲ 以 来 謀 略 に よ る 戦 法 が正 当 化 さ れ、
反 乱 者 ︵政 敵 ︶ は 次 々 と 謀 略 に よ う て 死 を と げ た 。 ま た ﹁ 仁 徳 天 皇 即 位 前 紀 ﹂ の 太 子 菟 道 稚 郎 子 の死 や ﹁ 神 武 即 位
前 紀 ﹂の 稲 飯 命 の 大 水 死 。三 毛 入 野 命 の 常 世 国 渡 り は 、折 口 信 夫 の 言 う よ う に 、稲 の 霊 、御 食 野 の 霊 と い う 威 霊 の 名
で あると同 時に、政争 に敗れた 皇子 のこと であ った と思わ れる。死は政 治の力学 の中で勝者 と敗者に分 かつ究極 の方
法 であ った。たとえそ れ が自殺 と他殺 の違 いはあ っても、政敵 を排除す ると いう 政治力学 にお いて は等 価な意味 をも
つもので あった。
第二に あげられ るのは、﹁愛の相克 ﹂によ る死 があ る。﹃常 陸風 土記﹄ 香島郡 の憧子 の松原伝 説に おける海上 の安是
の嬢子と那 賀の寒田 の郎子は愛 ゆえ に時 の経つ のも忘 れて、暁 に及 んで も別れ がたく、とう とう二本 の松と化し てし
まう。妻争 い伝説 の葦 屋菟原処女 は血沼壮 士、蒐原 壮士 の二人 から の愛 の栓桔 ゆえ に黄泉 へ旅たち、二 人の壮士 もそ
「他 界」 の構 造
と
「 記 紀 」 こお け る 「死 」
の後を追 って行く。 勝鹿の波間 娘子も﹁夏 嗇の火 に入 る が如、水 門人に船漕 ぐ如く﹂
︵万一 八〇七︶と多 くの男性 に愛
され、困り 果てた のち 波の間に おの れの死 に場所を見 つけてし まう。ま た万 葉集巻十 六の﹁ 由縁あ る雑歌﹂の なかの
楼子 は二人 の壮士 の死 をかえり みな い争 奪戦に﹁古 より今に至 るまで、 聞かず、見 ず、一人 の女の身 にして、二 つの
門 に往適く といふこと を﹂と樹 に懸 かりて経 き死んでし まう。ま た三 人 の 雄 の恋心に襖 悩した娘子 は、とうとう池 の
水 底に沈 む。その三人 の男 の一 人は﹁ 無耳 の池 し恨 めし吾 妹子 が来 つつ潜 かば水は涸 れなむ﹂
︵万三 七八八︶と嘆 き詠
んだ。
﹁ 滅易きこ と露 の如 き﹂ひとり の女の煩悶 のすえ は、死 でし かなかった 。娘子 は壮士 たちに﹁自己 の死﹂を もっ
て争 いの中 止をの ぞむ。むし ろ、そのこ とがかえ って壮士 たち の記憶 の中に強く生 き残 って しまう 。娘子 の幻想 は、
死 によ って逆に心 の内 で生き残 ることを 選択してし まった のである。 個や民間 の表 現を大切 にした﹃万 葉集≒ 風 土記﹄
など古代 の表現資料 は美し い恋の軌跡と して、こう した死を記 録した 。
また一方 では、愛す る二 人 が別 の男によ って引き裂 かれ る姿 も記 録して いる。﹁武烈天皇即 位前紀 ﹂の真鳥大臣 の子
の鮪は、 皇太子︵ のちの武烈天 皇︶ の妃 候補の影媛 と姦通し たと記 されてい る。し かし、実 態は皇太子 ︵のち の武烈
天 皇︶ の横車によ って、鮪 の父 ︵真1 王 ︶の専横 の罪の名 のもとに乃楽 山にて殺 された のである。二人 は、父 ︵真鳥
王 ︶と皇太子 の政治 的な対立 を背景に 、こ の世で の相思相愛 の生活を 続けること が出来 ず死 に至 る。それだ からこ そ
﹁苦しき かな今日、我 が 愛 しき夫 を失ひ つるこ と﹂と悲しみく れる影媛 は、引き 裂かれた﹁ くやし さ﹂で胸ふ さぐ思
いに いっぱいになり ながら歌う 。影媛 の恋は、逆 に政治的対 立を装 った皇太子 ︵武烈天皇︶ の恋 の横 車によ って、よ
り純化 される。権力 者の強引 な恋は、愛 し合う二人 を引き 裂くだけで はなく、謀反 などと 政治的な理 由をつけ て二 人
を死に 追いやる。 そして政治 的理由を つけて二人 の死を巧妙 に正 当化 する。﹃紀﹄ の恋の表現 は ﹃万 葉集﹄﹃風 土記﹄
とは違 った相をも つ。
二三
二四
同 様 に 、﹁ 仁 徳 紀 ﹂ の 雌 鳥 皇 女 ︵﹃記 ﹄ で は女1 王 ︶ と 隼 別 皇 子 ︵﹃記 ﹄ で は 速 総 別 王 ︶ の死 も 鮪 と 影 姫 の 死 に 似 て
いる。仁徳天皇 は、 いわば﹁恋敵 ﹂を殺す にあた って 、雌鳥皇女 と隼別皇子 との恋を ﹁反乱﹂ という口実 でも って二
人 を殺す正当 性を得よう とす る。 それ ゆえ に﹁ 朕、私 の恨を以て 、 親 を 失 はまほしみせ ず、忍 びてなり 、何 ぞき ず
ま すとして私 の事をもて社 稜に及 さむ﹂︵
﹁仁 徳天 皇紀 ﹂四 十年二月 ︶と、私 的な理由 ではなく 、あくまで公 的な理由
室 に 我 を 愛 し と 思 は ば 、吾 と 汝 と 天 の 下 治 ら さ む ﹂
︵﹃記 ﹄︶と 言 っ て 始 ま っ た 狭 穂 彦王︵﹃記 ﹄
から二 人の死 があったと いう言 い訳に似た 論理を強調せ ざ るをえ なかった のであ る。
ま た 、垂 仁 朝 で の﹁ 汝
で は 沙 本 毘 古 ︶と 皇 后︵﹃記 ﹄で は 沙 本 比 責 ︶の兄 妹 の 反 乱 は 、沙 本 比 責︵ 皇 后 ︶が寝 入 る 夫 で あ る天 皇 を 殺 す 段 に な っ
て 、 比 責 が涙 を 流 し た た め に 失 敗 す る 。 計 画 が ば れて 、 狭 穂 彦 王 ︵ 沙 本 毘 古 ︶ は 反 乱 者 と し て 攻 撃 を 受 け る が 、 絶 体
絶 命 に な った 城 に 妹 の皇 后 ︵ 沙 本 比 責 ︶ は 逃 げ 込 む 。 皇 后 は 兄 と 妹 、 夫 と 妻 と いう 二 つ の 愛 に引 き 裂 か れ る 格 好 で 燃
え る 城 の 中 で 死 ぬ こ と を 決 意 す る 。こ の 時 、 皇 后 ︵沙 本 比 責 ︶ の 個 人 的 主 観 の 世 界 、 い わ ば愛 の 感 情 は 燃 え 上 が る 。
仇
に 授 け た ま へ ﹂︵ 垂 仁 紀 五 年 十 月 ︶ と 、 天 皇 へ の 恩 を 語 る
兄 と 夫 へ の思 い に 引 き 裂 か れ た 女 性 の 苦 悩 は 、抒 情 化 さ れ て 強 化 さ れ る 。﹁ 唯 し 妾 死 る と 雖 も 、敢 へ て 天 皇 の 恩 を
の み忘 れ じ 、 願 は く は 妾 が 掌 り し 後 宮 の 事 は 好 き
こ とによ って死 への意思 を固 めると同時に愛 に殉じ る姿 が強化 される。そ の一方で 、
﹃紀﹄は垂 仁天皇 の狭穂彦王 に対
する厳し い処 置の正当 性を婉曲 的に記して いる。皇后 ︵沙本比責 ︶に﹁今 免さ るるこ と得 ずは、乃ち知り ぬ、妾 が罪
有 ることを 。何 ぞ 面 ら 縛 るるこ とを得 む。自経き て死 らく のみ﹂
と 自分の罪 を自覚 させ 、
死 を受 け入 れたこ とを﹃紀﹄
は記し た。そこ に は狭穂 彦王 だけで はなく 皇后 にま で裏切 られ た垂仁天 皇 の個人 的な 感情 は注意 深く 隔離 されて い
る。
﹁愛 の相克﹂ゆえ の死 は、たとえ根 っこに あったも のが私怨で あったとし ても、その私怨 は覆 い隠 されて政治的 な
対 立問題とし て処理 される。当 然、
﹁記 紀﹂には愛 する者同士 の内面、いわば愛 の幻 想を語 る立場は なく、権力者 側か
「他 界」 の構造
と
「記 紀」 にお け る「死 」
ら狭穂彦王 と皇后 の死 を反 逆者として 、政治問 題として記 録し た。
第三 に臆不倫姦 通であ る。
﹁雄 略天 皇紀﹂二 年に記 された百済 の池津媛と 石川楯 の死 は姦 通によ るもので、二 人は
﹁夫婦 の四 支を木 に張 りて、 飯賎の上 に置かし めて﹂火を つけると いう 凄惨 な焚 殺の刑 に処せら れている。姦 通は古
代 社会 の秩 序に背 き、道徳的 基盤を揺 るがすも のとして厳し い罰 が加え られた 。その苛酷 な罰 のた め、続く﹁ 雄略天
皇紀﹂三年 の廬 城部連武彦 は、皇女と姦 通し妊娠 させた流言 を聞き つけた父親 ・根菖喩に よって殺 される。父 は処罰
が自分 の身にも降り かか るのを恐れた のであ る。また、﹁雄略天皇 紀﹂九年 の 凡河内 直香賜 は宗像神 社の神事 に出向
いた折、 宮中の采女 を奸して斬 殺さ れて いる。采女 は天皇 ・皇 后のそ ばで仕え る女 官で、 それに奸し 触れ ること は天
皇に対 す る不 敬行為 でもあ った。容姿端 麗な女性 たち が多 かっただけ に、あ る意 味であり かちな衝動 的事件と もいえ
た。
第四 に殉死 や自殺 であ る。
﹁ 安康天 皇紀﹂元 年の難 波吉師日香 蚊父子 は皇位継 承問 題で大 草香皇子 が無 罪な のに死
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んだこと に﹁吾 が君、罪元くし て死にたま ふこ と、悲しき かな﹂と 言 い、父子三人 は殉じた 。また、
﹁垂 仁天 皇紀﹂の
十
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田 道 間
守 は
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む さし ひと こ はく び 武 蔵 人
強 頚
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濫 を 防 ぐ
た め に 堤 防
建 設
の 人 柱
に な
っ た の も 容 認
さ れ
る 死
で あ る
人 ゆえに 妃にな れず故郷に戻 され る途 中、恥じて 自ら輿から 落ちて自 殺す ると いう のは特異 な例で ある。多く は﹁景
行天皇 紀﹂の土蜘 蛛のよう に政争に敗 れ、追 い詰めら れて自 殺して いる。
第五 に再 生の ための死 がある。セミ が脱皮して 大きく なるように、古 代の人 もまたI 旦死 んだ のち に再 び生 まれ直
した時 、前よりまし て大 き な存在と なると考え た。後述す るオオ クニヌシノ命 は様々な試 練を受け て、一度 は死 す る
二五
三ハ
が、 その後呼 び名も変 わって再生 する。旧 い自 己を死 なせて、新し い生命 を呼 び起こ す。そうし た命の循 環を、 いわ
ば生 まれ変わ った新生を 、古代社会 は大切 にし て いた 。先に記し た死 体化生 神話に似 て、死は新 し い命を 生み出す の
で ある。死は 虚無では ない、死は生 命を洗 い直すた めの循環の一 つと考え られた。
こう した五 つの死 のほ かに、天 寿を 全う した死 や病死 など、共 同体 に逆らうこと の無か ったかたち の死 があ る。
﹁∼
だ から死 ぬ︵殺 される︶﹂と いう明 確な理由 のな い普 通の死を基 本的に﹁記 紀﹂は記 し ていな い。国 と国と の戦争 のよ
うに 、殺人行為 であ って も、共同体 が承認し た殺人な らば、そ の死 は普通死 で、記録 すべき死で はな い。一 方、病死
は一 般的に普通死 だ が、 疫病や理由 の分から ない死 は、共同体 の構 造に甚大 な影 響を与え るから 普通死で はなく、異
常死で ある。異 常死は葬 儀の仕方も内 容も普通死 とは異 なった。共同 体は異 常死を恐 れたので ある。たとえ ば、宮古
島で は、こ うし た特別 の葬式をケ ガズンニ ガイ と いって、普通 の葬式なら僧 侶だけだ が、シャ ーマンの カンカカリ ア
を呼 んで亡く なった人 の心 中を聞く と いう マブイア カシを執り行 い、葬儀で のご馳走 も多くす る。また埋 葬は畑 や変
死し た場所に埋 めると いう 粗略な仕 方をす る反面 、供 養の仕方は 念入 りに行う 。共同 体を揺 さぶる穏 やかでな い異 常
死に対 する恐 れが、こうし た行動を とらせて いる。
自 ら作 っ たから くり で圧 死
死 の あり方
反乱 ︵ 弟の 密告 ︶
国 見丘 に て斬死
原因
え う
し
兄
滑 が子
反乱
斬死
死 ぬ人
表1 ︵﹁ 記 紀 ﹂ お け る 死 の 記 述 ︶
神 武紀
八やそ十たけ臭る
反乱 ︵ 弟の 密告 ︶
し き
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磯 城
「記 紀」 にお ける 「死」 と「 他界」 の構 造
景
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疑 に た か
天 姦 ら
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宮
通 逆
の 皇 の に
皇 怒 雄
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安 黒 安 た 安
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の
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天 彦 皇 皇 子 の が い 康 天 皇 殺 否 康
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真
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殺
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誄 白 不 天 焚 謀 屍 圓ス 天
殺 殺 意 皇 殺 略 を 大畠 皇
が み
打 が の 抱 臣が ず
ち 自 狩 い に ら て 邸 か
刀 り
に 殉 に ら
殺
さ を 出 死 火 斬
れ 抜 か を 殺
る き け 放
斬 て ち
殺 天 焚
皇 殺
に
放?
殺旨
さ
れ
る
「記 紀」 にお ける 「死」 と「 他界 」 の構造
たさのお み こ おとき み
田 狭 臣 の 子 弟 臣
天 皇 の命 令 に不 忠実 な仕 事 ぶり と
日本 に従 属 す る志 があ った
斬殺
誄殺
新 羅王 に反 逆と し て殺 害
国 家 に忠実 な 妻の 樟姫 に殺 害さ れ る
采女 を奸 す
謀反 を 妻に 知ら れ る
高
暴虐 ぶり を 咎め られ る
人
おほしか ふちのあ たひかた ぶ
凡 河 内 直 香 賜
斬殺
麗
のを
文あや
石し小
麻ま呂ろ
身 に つ けて いた 玉 鬘 か ら、大 草 香
しら新
きをう
いく軍
さの吉
きみき
のおみ
しろに よ っ て 斬 殺
征
羅つ将
備び臣
屋を代
斬殺
ねの おみ
根 使 主
不服 従
皇子 を死 に至 らし め たこ と が発 覚
伊 勢 の
天 皇崩御 の 報に反 逆 心を もつ
あさけのいらっこ
朝 日 郎
吉 備 の 蝦 夷
2 共 同 体 と 個 に お け る 死
古代 日本社会 の共同体 から見た ら﹁死 ﹂は どのよう な意味をも っていただ ろう か。﹁死﹂は共同 体構造 の変化 であ る
と同 時に、 カッシ圭 フーの言う﹁生 命の社会 ﹂の変化 である。そ れゆえ に共同 体にと って﹁死﹂ には、肯定 的な死と
否定 的な死 があることを 神話・説話 と いう形 で繰り返し 説 いてみせ て いる。 肯定的な死 とは共同 体に貢献す る死で あ
る。たとえ ば、神 であ っ ても 共同 体 の ため に死 な なけ れ ばな ら な いこ と があ る。国 土 の創成 者 で あ るイ ザナ ギ は
﹁伊 奘諾尊、神功既に畢へ たまひて 、霊運営遷 れたまふ 。是を以て、 幽宮 を淡路 の洲 に構りて 、寂然に長く 隠れまし
き ﹂︵﹃神 代 紀 ﹄︶ と 記 さ れ た よう に 神 々 の 宮 ︵ パ ン テ オ ン ︶ を ア マ テ ラ ス に 譲 り 、 隠 れ る 。出 雲 の国 つ 神 事 代 主 神 は 、
一
﹁ 恐 し 。 此 の 国 は 、天 つ 神 の御 子 に 立 奉 ら む ﹂ と 天 照 大 神 に 服 従 を 宣 言 し た の ち ﹁ 船 を 路 み 傾 け て 、天 の 逆 手 を
一
一
一
三二
青 柴 垣 に 打 ち 成 し て 、隠 り き ﹂︵﹃記 ﹄︶と 海 底 に 消 え る 。 事 代 主 神 の 死 は ヒ ジ リ二 日 知 り ︶、 モ ノ シ リ ︵ 霊 知 り ︶、 ツ キ
ヨミ ︵月 観測者︶と同 様に、司 祭者 の死 であり、出 雲共同 体の政治的 、宗教的支配 力の喪失 と いう共同 体の大 きな構
造変化を 意味した 。逆に いえ ば、共同 体の変化に あわせて 新たな神 々を迎え、旧 い神は死 ななけ ればいけな い。倭勢
力 の出雲 への侵攻と いう状況 に神 々もま た、そ の新し い状況 に対応し なけれ ばならなか った。神 々は人々の上 に君 臨
する が、一 方、そ の命 を人 や共同 体に 捧げなくて はいけな い運命をも つ。事代主 神の死は 新たな支配 者を迎え入 れた
共 同体にと って必然 性のあ るものであ った。こうし た神 々の死 に対応し て根の国 、黄泉 の国 、常世 の国など神 々のた
めの﹁他界 ﹂ が生ま れるので ある。
さり げなくイ ザナ ギや事代主 神の死 の意味を語り 継 いだ古代 の神話 は、そのほ かの神 や英雄、歴史 的人物に ついて
も、彼ら が所属す る共同 体に対 して果 たし た役割と 功績を物語 の中で巧 妙に説 いて い る。ここ で、 ヤマト タケル、オ
ト タチ バナ姫、オ オクニヌ シ、スサノ ヲ、軽太子 ・軽嬢子 の物語 が、共同 体にと ってど のよう な意味 を担って いたか
を述 べて みよう。
A ヤ マ ト タ ケ ル
古 代 の 英 雄 ヤ マト タ ケ ル ︵ 倭 建 命 ︿﹃記 ﹄﹀、日 本 武 尊 ︿﹃紀﹄﹀︶ は ﹃日 本 書 紀 ﹄ と ﹃古 事 記 ﹄ で は そ の 人 物 像 は 違 い 、
前 者 は 政 治 的 色 彩 の 強 い造 型 に な って い る 。 ヤ マ ト タ ケ ル の 一 生 は 戦 いう ち に 明 け 暮 れ た 。 性 行 の 激 し さ ゆえ に 、 父
景 行 天 皇 か ら 恐 れ ら れ 、 敬 遠 さ れ た 。西 征 に つぐ 、 東 征 で ヤ マ ト タ ケ ル は ﹁ 天 皇 既 に 吾 死 ね と 思 ほ す 所 以 か ﹂︵﹃記 ﹄︶
威
を 借 り て 、往 き て 其 の 境 に 臨 み て 、示 す に
と 思 わ ず 、銕 の倭 比 責 に 嘆 い て し ま う 。 し か し 、た と え 東 征 の た め に﹁ 軍 衆 を 賜 は ず ﹂︵﹃記 ﹄︶、 つ ま り 兵 の 増 強 が
許 さ れ な く 少 な い兵 を 引 き 連 れ て﹁ 今 亦 神 祇 の霊 に 頼 り 、 天 白
tの
「 他 界 」 の構 造
と
「記 紀」 にお ける 「死」
徳 教 を 以 て せ む に 、猶 服 は ざ るこ と 有 ら ば 、即 ち 丘ハ を 挙 げ て 撃 た む ﹂︵﹁ 景 行 天 皇 紀 ﹂︶と 言 っ て
、ま
悪つろわ
人ぬひと
等どもと の 戦
いを 決 意 す る 。 景 行 天 皇 に ﹁ 即 ち 知 り ぬ 、 形 は 我 が子 、 実 は 神 人 に ま す こ と を 。︵ 中 略 ︶ 亦 是 の 天 下 は汝 の 天 下 な り 。
是 の位 は 汝 の位 な 力 ﹂
︵﹁ 景 行 天 皇 紀 ﹂︶と いう 甘 い 言 葉 を 聞 か な く て も 倭 朝 廷 共 同 体 の た め に ヤ マト タ ケ ル は自 ら の 生
命 を か け る の で あ る 。 そ う い う 倭 朝 廷 共 同 体 に 対 し て 使 命 感 を 持 ち 、 服 従 す る 英 雄 の 姿 を ﹃紀 ﹄ は力 を こ め て 綴 っ て
い る 。 寿 命 の す べ て を 欲 す る 普 通 の 生 活 者 に は や がて 完 全 な 死 が訪 れ る 。 し か し 、 共 同 体 に 生 命 を 捧 げ た 者 は 永 遠 に
生 き る 。 英 雄 は 自 己 の 死 を 共 同 体 幻 想 の う え に 意 味 づけ る 。 人 々 の記 憶 の 中 で 永 く 生 き るこ と に な る 。 ヤ マ ト タ ケ ル
は 歴 戦 の 末 、 結 局 伊 勢 の 国 能 煩 野 に て ﹁ 倭 は 國 の ま ほ ろ ば 、た た な づ く 、 青 垣 、 山 隠 れ る 、倭 し う る は し ﹂︵﹃記 ﹄︶ と
ま っら
國 思 歌 を 詠 ん で 死 ぬ 。﹁ 翼 は く は 掲 の日 掲 の 時 に か天 朝 に 復 命 さ む と 。 然 る に 天 命 忽 に 至 り て 、 隙 訓 停 ’り 難
りつかへ
し 。是 を以て 、褐 礦野に臥 す。誰にも語 ること無 し。豊身 の亡びむこ とを惜ま むや。唯愁 ふらくは 、まのあ面た ず なり ぬ る こ と の み ﹂
︵﹁ 景 行 天 皇 紀 ﹂︶と 倭 朝 廷 へ の 熱 い 思 いを 語 る 。 あ ら ゆ る 困 難 に 立 ち 向 か っ て 倭 共 同 体 の 敵 を な
ぎ倒 し た ヤ マト タ ケ ル の死 は 、い わ ば 倭 へ の 殉 死 で あ る 。 ヤ マト タ ケ ル の 神 話 は 勇 敢 な 死 を 受 け 入 れ るこ と に よ っ て 、
永 遠 の 社 会 的 な 生 命 を 受 け る こ と が で き るこ と を 意 味 し て いた 。 共 同 体 は 一 身 を な げ う っ て 戦 う 英 雄 を 必 要 と し た 。
逆 に 共 同 体 に死 を も って 貢 献 す るこ と がな い 者 に は 、 死 後 、 永 遠 の 命 は 保 証 さ れ な いこ と を 説 き 起こ し て い る の で あ
る。
B オト タチ バナ 姫
オト タチ バナ姫は義叔母 の倭比 売が斎宮と して伊勢 神宮に遣 わされ る、 つまり永遠 の処女とし て神に仕え ねばなら
な いのに対し て、一人 の女 として生 きえ た 。倭比売は もともと固有 名詞で はなかった 。それは倭共 同体に仕え 、倭共
三三
三四
同 体を代 表す る女性 であ った。し かし、 穂積氏忍山 宿禰 と いう 豪族 の娘で あった オト タチ バナ姫 ︵弟橘 比売︶ は、
倭 建 命 から﹁ わ が妻よ﹂
︵
﹁阿豆 麻波夜﹂︶と いう三 歎を引き出 すほ どに一身をかけ て倭建命 に尽 くし た。単に倭共
同 体の意向 にそって生 きる存在 ではなく 、自分の意志 をも って ﹁個﹂とし ても生き た女 性で あった。倭 建命 が荒 れる
走水の海 を渡ろうとし た時、ち ょうど﹁ 神武即位前 紀﹂で稲飯命 や三毛人 野命 が海 に飛び込 んだよう にオト タチ バナ
姫 は海に入 る。そ の時、オトタチ バナ姫は﹁妾、御子に易 りて海の中 に入らむ 。御子は 遣はさえし 政 を遂げて覆奏
し たまふ べし ﹂︵﹃記﹄︶と言 って飛 び込 む。 なお ﹃日本 書紀﹄ では﹁願 はくは 賤しき 妾 が身を 、王 の 命 に蹟へ て
海 に 入 ら む ﹂︵﹁ 景 行 天 皇 紀 ﹂ 四 十 年 十 月 ︶ と 語 っ て い る 。 オト タ チ バナ 姫 の 言 葉 に は 倭 共 同 体 の 意 向 よ り ヤ マ ト タ ケ
ル 個 人 へ の 思 い が強 く 出 て い る 。 そ れ は愛 す る 人 の た め に 自 己 犠 牲 を 厭 わ な いと いう 恋 の 感 情 に 似 て い た 。 恋 に よ る
死 を 共 同 体 は 好 ま な い 。 と いう の も 生 命 を 共 同 体 で は な く 、 個 の た め に 使 い 果 た し て し ま っ て い る か ら で あ る 。 し か
し 、 自 分 の た め で は な く 利 他 的 な 生 命 の 喪 失 と いう 犠 牲 的 精 神 に よ り オト タ チ バナ の 死 は 容 認 さ れ る 。 飛 び 込 ん だ 七
日 後 、海 辺 に 打 ち 上 げ ら れ た 櫛 を取 っ て﹁ 御 陵 を 作 り て 治 め 置 き き ﹂︵﹃記 ﹄︶と な っ た 。 倭 共 同 体 の 使 命 を 背 負 っ た ヤ
マ ト タ ケ ル を 救 っ た と いう 意 味 で 、 そ の死 は 肯 定 さ れ た ので あ る 。
C オ オ ク ニ ヌ シ ノ 命
﹃記 ﹄ はこ の 神 の名 が 、五 つ ほ ど の 別 名 が あ る こ と を 記 し て いる。その別名 の一つで ある大穴牟 蓮の名義 を、西 郷信
綱は﹁ オホナの﹁ ナ﹂ が穴と 表記さ れたのは、 ムロヤに おいて修行 されたこの神 の属性で あろうと言 った。オ オクニ
ヌ シの根 ノ国に おける四 度 の試 練を西 郷は﹁注目 され るのは、四 つ のう ち三つま でが ﹃室﹄ におけ る懲らしめで ある
点だ。 どう してこ のような次 第にな るかと いえ ば、それはこ の話 が、孤 独な物忌屋 、つまり ムロヤ における修行 中に
「記 紀」 にお け る「死 」
「他 界」 の構造
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口
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言 は
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訪 れた夢また は幻想に もと づいて いるからで あろう﹂と 述 べ、 それは出雲国 造の就任 儀礼を分析 すれ ば、 実証出来 る
志と
附
犬
神ふ
とし て いる。 成年式は﹁ 一人前 の男 女にな ったことを 社会的に認 められ る式 ﹂のこと であ る。 そこ でオ オクニヌ シの
呼
称
根 ノ国訪問 の段を 成年式 の観点 から見 てみよ う。﹃記﹄で はオオ クニヌ シの呼称 は記述内 容 の進行にと もな って変化
と
兪、
糾
阜
して いる。
①
難
②
叉
手
難
表2 ︵オ オク ニ ヌ シ ノ命 の 呼 称 変化 ︶
③
大
国
主
神
と
三六
つまり、 オオ クニ ヌシノ命 は大 穴牟逞神 、葦原色 許男、大国主 神・宇 都志国玉 神と変化し ている。こ のうち大 穴牟
逞 神から葦原 色許男 の変化に は、人 十神 の迫害 があり 、葦原色 許男から大国 主神 ・宇 都志国玉 神の変化 にはスサ ノヲ
の課する苦行 があ った。﹃古 事記伝﹄は大穴牟 逞神を大 名持 の意 があり﹁天下を 作り治 め知 たまへ る御 名﹂であ ると し
て いる。し かし、大穴牟 遅神は大 国主神 になる前 の名 であ って大 名持と は同 一では ない。大穴牟 遅神 から葦原色許 男
の変化は﹁土 地の主﹂ にな るた めの成年式 的な死と再 生を意味し て いる。大 林太良 が言う﹁成年 式を済ま せた が、 既
婚 者であ ると は社会的 に認めら れていな い段 階の若者 ﹂として の意味 が、こ の葦原色 許男に はある。だ から、葦原色
許男 から大国主 神・宇 都志国玉 神の変化は 、スセリ ビメ︵須勢理毘 責︶を得 て、 いわば既婚者 となり、生 太刀 と生弓
矢 をもって国 造りをす る名実と もに社会的 に認めら れた個の誕生 を意味し ている。 オオ クニ ヌシ命の神話 は、内容 的
には宗教的 な事績のよう に見え るが、そ の一 方では通 常の共同体 への加入式 ︵イニ シエイ ショ ン︶を意味 して いる。
つまり共同体 に所属す べき者 が、その成員 になるた めに、ど のよう に死し て、他界 で試 練を受 けたのち再 生す る権利
をえ るかを示 唆して いる。八十 神の迫害に よって二度 まで死に 、また再生 する。誰で も死を恐 怖する。死 に対す る免
疫 性を養 い、共 同体へ の犠牲を厭 わな い精 神づくり を訓練す る。こ の神話 は成年、 いわば個人 的な生命よ り社会的 生
命 を大切だと思え る人間 にな るための通過 儀礼を表現 して いた 。そして、共同 体 のためには自 らの命を投 げ出さね ば
ならい恐怖感 やそのスト レスを 浄化 す る作用 を持 って いた。 オオクニヌ シは死 をも辞 さず試練 に打ち勝 って共同体 の
成員 とな る青年 たち のモ デルと なって いた のであ る。
D スサノヲ命
イ ザナ ギの鼻から生ま れた速須 佐之男命 は﹁汝命、 海原を知らせ ﹂と大 神から治国委 任を受 けた が、治 めること な
「他 界」 の構 造
と
「記 紀」 にお ける 「死」
く 激 し く 泣 いて い る ば か り ば か り で あ っ た 。 そ の 理 由 を ﹁ 批 ノ 国 根 の 堅 洲 国 に 罷 ら む と 欲 ふ ﹂ と 告 げ た 。 イ ザ ナ ギは
怒 っ て ﹁ 然 ら ば汝 は 此 国 に 住 む べか ら ず ﹂ と ス サ ノ ヲ の 追 放 宣 言 を す る 。 高 天 原 に天 照 大 神 に 別 れ を 告 げ た ス サ ノ ヲ
は 、 そ の 後 阿 離 、 溝 埋 、 逆 剥 、 尿 戸 の四 つ の 罪 を 犯 す 。 こ の 罪 は 大 祓 祝 詞 の 天 津 罪 に 属 す る 罪 で あ る 。 天 津 罪 と は 農
耕 や 機 織 り な ど の生 産 活 動 に対 す る罪 で あ り 、 人 間 集 団 の な か で 戦 士 、 あ る い は 支配 者 が生 産 者 に 対 し て お かし た 罪
び
。こ の 罪 の罰 は ﹁ 千 位 の 置 戸 を 負 せ 、 亦 髪 を 切 り 、 手 足 の 爪 を 抜 か し
で あ るこ と は 、 大 林 太 良 の 論 じ た と こ ろ で あ
め て 、神 夜 良 比 夜 良 比 岐 ﹂︵﹃記 ﹄︶と いう も の で あ っ た 。 ス サ ノ ヲ は 高天 原 共 同 体 に 対 す る反 集 団 的 行 動 ゆえ に 、日 神
を天 の岩 戸に隠 れさせ﹁ 常夜往く 。ここ に万 の神 の 声 はさ蝿 なす満ち、万 の 妖 悉に発り き﹂と いう事態 を招 いた。
の願望 が、イザナ ミに﹁黄
高天原共同 体を混乱 に陥 れたために追 放の処分を受 けた のである。 結局、スサ ノヲは二重 の追放を受 けた。一 度はイ
﹃紀﹄ 本文、﹃紀﹄八段 二 書第五 ︶では スサノヲ が根ノ国へ入 ったこと を記して いる。
三七
うに ﹃紀﹄ 七段 ︵一 書第三︶ では共同 体からは じき飛 ばされるか のように葦原 中国にも 高天 原に もいられなく 、また
たた めで ある。そう したス サノヲは共同 体の異端児 として 生きなけ ればならな かった。 スサノヲ は表 ︵3 ︶に あるよ
スサノ ヲの個人的 な動機に よったも のであった からだ。 つまり、共同 体の意向と は全く無 関係な利己 的なも ので あっ
泉ノ国訪 問﹂と いう 昔の悪し き記憶を呼 び起こし たこ と が遠因 す る。それだけで はなく ﹁ 批 ノ国 行 き ﹂ が あ く ま で 、
ザナ ギに、二度目 は八百万 の神々に。 イザナ ギによる追放 は、スサ ノヲの﹁批 ノ国行き
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ゝ 1 紀 。
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そ の後 は 大 国 主 の 根 ノ 国 訪 問 に み ら れ る よ う に ス サ ノ ヲ は 青 年 儀 式 に 於 け る主 要 な 役 割 を 演 ず る よう に な る 。 し か
し 、 そ の存 在 は 不 透 明 で 、 ヤ マ ト タケ ル 、 オ ト タチ バナ 姫 と 違 っ て 生 と 死 が明 確 で は な い 。 そ の 姿 は ﹁ 其 の頭 を見 れ
ば 、 呉公 多 な り き ﹂︵﹃記 ﹄︶ で あ り 、 ち ょ う ど﹁ 膿 沸 き 姦 流 る ﹂︵﹃紀 ﹄ 一 書 第 六 ︶ と さ れ た イ ザ ナ ミ の ごと く 、 生 き る
こ と も 死 ぬこ と も 出 来 ぬ 幽 界 の 住 人 で 、 地下 界 の汚 濁 の中 に 存 在 す る か の よ う で あ る。 自 己 の 生 命 を 社 会 的 生 命 に 転
化 発 展 し え な い個 は 、 生 と 死 が あ いま い な か た ち と な るこ と を こ の 神 話 は 物 語 っ て い る よう に 思 え る 。 こ う し た反 共
これ躬
み の
是
同 体 的 な 個 の 存 在 は 、 進 路 だ け で は な く 退 路 ま で 塞 が れ る 。﹃紀 ﹄ 第 七 段 ︵ 一 書 第 三 ︶ は 次 の よう に 記 し て い る 。
時 に 、 霖 ふ る。素菱 鳴尊、青 草 を結 束ひ て 、笠蓑 とし て 、宿 を 衆 神 に乞 ふ 。衆 神 の日 く、
﹁汝 は
行 濁悪 し くして、遂ひ 論めら るる者なり。如 何 ぞ 宿 を我に乞 ふ﹂と いひて 、遂 に同 に距く 。是を以 て 風雨 甚 だ
ふき ると雖も 、留 まり休 むこ と得 ずし て、辛苦 みつ つ降り き。
この時 、スサノ ヲは共同体 から疎外 され、孤独 な存在とし て雨の中 に佇む。 もし、生き ると いうこ と が、他 者との
三
は
そ れ ﹁ 爾
よ り
ず
こ のか た よ 以 来
、 世 、 笠 蓑
を 著
て 、
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はら へ お は こ れ い にしぇ のこ れ るのり
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記
し
て
い
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また つ かく さ お 亦 束 草
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て 、
共
同
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主
ひ と や
他 人
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関係 のなかに存在 するとす るなら、こ の時のスサ ノヲは己へ の本当の死刑 の意味 を自覚した に違 いな い。さら に﹃紀﹄
第
︶
書
七
い こ れ おか 譚 む 。
此 を 犯 す こ
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る 者
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︵ 一
第
う ち 内
に 入
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段
の
観 ︵ 幻 想 ︶ は 、 時 に は 困 っ て い る 人 を 助 け る と いう 人 間 性 を も 圧 殺 す る 。 共 同 体 か ら 追 放 さ れ た 孤 独 な 個 に た い し て
﹁あわ れみ﹂
﹁ 情 を か け る﹂と いう ご く 普 通 の 人 間 的 な 感 情 を 行 使 す る こ と も 、成 員 た ち に 躊 躇 さ せ る 。 ス サ ノ ヲ の 共
同 体 か ら の 追 放 は 、 共 同 体 成 員 に と っ て悪 し き 見 本 と し て受 け 取 ら れ た に 違 い な い 。 こ の 神 話 に は 古 代 社 会 の 個 と 共
同 体 の関 係 を 寓 話 的 に 表 現 す る と いう 深 層 構 造 が あ っ た 。
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こ の二人 に関して ﹃古 事記﹄と ﹃日本書 紀﹄ で は記 述内容に かなり の違 いを見せ ている。左 表︵4 ︶ がその対照 表
発
端
表4 ︵軽太 子 、 軽 大郎 女 の 記 述 の変 化 ︶
経
過
で ある。
「記 紀」 にお ける 「死 」と「 他界 」の構 造
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表 からもわ かるよう に﹁ 安康天皇即 位前紀﹂ では ﹃記﹄ や﹁允恭 紀﹂に比 べて、太子 の悪の像 を明 確に表 現して い
る。こ の軽太子 事件 の核 にある のは近親相姦 と皇位継承 という政争 であ る。
﹁仲哀 紀﹂の﹁国大 祓﹂におけ る性の禁忌
は﹁上 通下 通婚 、馬婚、牛 婚、鶏婚 、犬婚﹂ であり、大 祓祝詞の国 津罪に あたる。国津 罪は人間 が人間レ ベルから禽
獣 レ ベ ル に 堕 落 し た 罪 、つ ま り 近 親 相 姦 、獣 姦 、食 人 な ど の罪 を さ す 。イ ザ ナ ギ、イ ザ ナ ミ は ﹃紀 ﹄︵第 二 段 一 書 第 二 ︶
死
「他 界」 の構造
と
に﹁此 の二 神 の神 は、青橿 城根尊 の子 なり﹂と あり、兄妹 であ る。こ のよう に人間と神 々の発生 は、し ばし ば近親相
姦によ って成立し て いる。 もしそ れを罪 とす るなら神 々の存在は原罪 的であ る。しかし 、こ の軽太子 の説話 は近親相
たわ つ
み
姦 を ﹁ 粧 け ﹂﹁ 刑 ﹂ と 呼 ぶ。こ の近 親相姦 を﹁卦け ﹂と する共同体 の認識は 、そ の成 員す べて に浸透し ており、軽太子
も﹁刑有 りと雖 も﹂と いう罪 を自覚し た言葉を吐 いて いる。しかし 、恋愛至上主 義思想 を持ち出す までもなく 、近親
者の恋 も正 当な 恋であ る。恋した相手 が偶然、近 親者であ っただけにす ぎな い。恋は個人的 な美し い主 観世界︵幻 想︶
であ ると同 時、男女二 人 がっ くりあ げる主観世界︵幻 想︶で ある。そ れは、しばし ば共同 体 の原 則や意志 と屹立す る。
共同体 にと って 恋愛問題 は最をや っか いな問 題であ る。恋愛、そし て婚姻は出 産と つながり共同体 成員 の増加 を図
るた めには共同体 にと って も認知す べきもので ある。し かし、時 々共同 体 の原 則を、 恋愛 はその 激し い情熱 ゆえ 、損
得抜き に乗り越え 、周囲を 省みること なく逸脱し ようと する。共同体 はこうし た秩序を不 安定に させ る反共同 体的生
命を共同 体の外 側に置こう とする。﹃記﹄ は軽太子を 、
﹁允 恭紀﹂で は軽大郎女 を相手 から引き離し 、伊徐に 流す。国
津罪は祓 わなけ ればなら ないのであ る。一方、共同 体に圧 殺されよう とす る恋する二人 は、二人 の愛 の事実 、いわ ば
心的生命 の永遠 を望む。 恋する二人 がっくり あげる主観 世界︵幻想︶ にと って、死は いわば最終的 な亡命で ある。そ
れ ゆ洸 に共同体 にとって その死は、 肯定す べきもので はなくな る。共同 体に は情死は あからさま な最後の反 抗のよう
にう つるので ある。男女二 人の心は 、永遠に共同 体に帰 属すること なく閉じ られた世界 となってし まう。
四三
れるべき死と 、そうで はな い否定 的な死 があるこ とを﹁ 記紀﹂は記 して いる。整理 すると左 の図︵5 ︶のように なる。
・ ここ にあげた ヤマト タケル以下 の五 つ死は、古 代社会 にとって特記 す べき死 の典型で あった。同 じ死でも 、肯定 さ
「 記 紀 」 こお け る 「 死 」
表5 ︵五 つ の死 の あり 方 ︶
四 四
幻想化 ︵観念操作 ︶も無視 できず、 かれら の死 後の処遇 も共同体 は神話構造 の中に取り込 む必要 があった 。死 する者
そこ に残さ れた 遺体ど共同 体の構造 変化 でし かない。そ の一方で、死 んで いこう とす る者が死に あたって の個人的な
差は大 き い。そ の意味で は個人にと って死は ある意味で観 念的な一面 をも つ。し かし、 冷徹な共同 体にと って死 は、
はそ れを自ら積 極的に選択し 、逆説的 な言 い方 だが﹁死﹂ することで 、より生 きたかもし れな いと 捉え るか 、その落
の相を もつ。たとえ ば、 ヤマト タケルの死を倭共 同体に よる圧迫から 逃れな かったも のと するか、 逆にヤ マト タケル
に死 は共同 幻想 ︵共 同主観︶ に圧迫 された究極 のかたち だが、そ れは当 事者 が自己のうち に捉え直し た場合 、全く別
一歩進 めてみ ると 、死に対し て自己主 観化の あり よう が死 の意味を別 のものに する。たとえ ば、吉 本隆明 の言う よう
れ ること ﹂として いる。ま た吉本隆明 は﹁自己幻 想 が極限 のかたちで共 同幻想 に侵蝕さ れた状態﹂と 定義して いる。
死に ついて、こ れまでも さまざま意 味 づけ がなされて いるが、例え ば波多野 精一は死を ﹁実在的他 者と交渉 が絶た
恋
の
成
就
を
の
苦
行
に
耐
え
る
に
根
国
に
追
い
や
ら
れ
る
肯
定
的
行
動
を
支
え
た
幻
想
八 ら
倭 倭
共 共
同 同
体 体
W 心
の の
た た
め
め
だ
け 自
で 己
は を
な
く 省
み
ず
ヤ 戦
う
マ
ト
タ
ケ
ル
を
思
っ
て
海
に
飛
び
込
む
行
動
八
共
同
体
心
の
成
員
と
な
る
た
め
死
八
倭
共
同
体
心
的
行
動
ゆ
え
集
団
死
の
受
け
止
め
方
否
定
的
集
団
集
団
反
集
団
図
っ 反
集
た 団
○ ら
倭
共
同
体
心
的
行
動
で
共
同
体
の
設
け
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国
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罪
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相
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承
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ス
サ
ノ
ヲ
軽
太
子
がこ の世に 残し た強 い思 いをど のよう に鎮 め るか、共同 体は そのこ とに配 慮せ ね ばなら なか った。そ の神話 は無 論
人々へ の警 告と教訓 の1 喩 ︵アレゴリ ー︶として も機能 させ ねばなら なかった。 それ が、根 ノ国、黄泉 国、常世国 な
ど﹁他界﹂ の問題 に深 くつな がって いく のであ る。
︵大 林 太 良 ﹃神 話 学 入 門 ﹄ 昭 四 一 ・ 三 、 傍 線 は 筆 者 に よ る ︶
問 が 現 れ て く る と こ ろ だ 。 こ の 時 代 の 人 間 の 心 を 悩 ま し て い た も の は 、 ま だ 起 源 で は な く 週 末 で あ り 、−死 で あ る ﹂ と 言 う
て い る 。︵ 中 略 ︶ マ ニ ズ ム 太 陰 的 な 世 界 観 の 、 こ の 時 代 に と っ て 特 徴 的 な の は 、 い た る と こ ろ で 死 と 死 の 起 源 に つ い て の 質
は、人 間 は まだ天 体 の運 行 や夜 に注 目し て いな い。人 間 の関 心 の範囲 は 仲間 の運 命を 越え て おら ず、 死 の問 題に 結 びつ い
︵I ︶ レ オ ーフ ロ ペニ ウスは ﹁ マニ ズム の時 代は 、そ れ から 高級 神話 が成 長 す る先駆 とし て の低 級神 話で あ る。 最新 の段 階で
注
︵﹃出 雲 風 土 記 ﹄、﹃延 喜 式 ﹄︶、 大 名 持 ︵﹃延 喜 式 ﹄︶、 大 奈 牟 智 ︵﹃姓 氏 録 ﹄︶ な ど が あ る 。
︵5 ︶ ﹁ 黄 泉 の 国 と 根 の 国 ﹂︵﹃文 学 ﹄ 三 九 巻 一 言 万 昭 四 七 ・ 一 二
︵6 ︶ 柳 田 国 男 監 修 ﹃民 俗 学 辞 典 ﹄︵ 昭 二 六 ︶
四五
︵4 ︶ オ オ ク ニ ヌ シ の 表 記 に は 、 大 己 貴 ︵﹃紀 ﹄、﹃古 語 拾 遺 ﹄︶、 大 穴 道 ︵﹃万 葉 集 ﹄︶、 大 汝 ︵﹃万 葉 集 ﹄、﹃出 雲 風 土 記 ﹄︶、 大 穴 持
昭五 八 ・二︶
︵3 ︶ 益 田 勝 実 は﹁ 宮 を 建 て る 話 は な い か ら 、死 ん で し ま っ た と い う 意 と 取 る こ と が 出 来 る ﹂と 言 っ て い る︵﹃火 山 列 島 の 思 想 ﹄
三︶
れ て い る 。 又 こ う し た 思 考 こ そ 神 話 的 思 想 の 一 般 的 前 提 で あ る 。﹂
︵﹃人 間− シ ン ボ ル を 操 る も のI ﹄岩 波 現 代 叢 書 昭 二 八・
︵2 ︶ カ ッ シ ー ラ ー は﹁ 生 命 の 社 会 ﹂に つ い て ﹁ 自 然 は 一 つ の 大 き な 生 命 の 社 会 で あ り 、 あ ら ゆ る 形 態 の 生 命 が同 じ 血 縁 で 結 ば
「 記紀 」にお け る「死 」 と「他 界」 の構 造
︵7 ︶ 大 林太 良 ﹁葦 原醜男 と 青年 戦士 集団 ﹂︵﹃古代 文化 ﹄第 二三 巻、 昭和 四六 ・七 ∼八 ︶
︵8 ︶ 大林 太良 ﹁古 代日 本に おけ る分 類 の原理 ﹂︵﹃理想 ﹄四 五三 号、 昭四 六 ・二︶
︵9 ︶ 波多 野精 一 ﹃時と 永遠﹄︵昭 一 八・六 ︶
︵10
︶ 吉 本 隆明 ﹃共同 幻 想論﹄︵昭 四三 ∴ 二︶
な お、 本文 引用 は岩 波書 店版 の日 本古 典文 学体 系 ﹃古 事記﹄﹃日 本書 紀﹄﹃風 土記﹄﹃万 葉集 ﹄ によ った 。
四
六
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