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ドル円相場:2015年1月の回顧と2月の相場展望

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ドル円相場:2015年1月の回顧と2月の相場展望
外貨投資の視点
(No.200)
リサーチ部 チーフ為替ストラテジスト 植野 大作
2015年1月30日
ドル円相場:2015年1月の回顧と2月の相場展望
ポイント

1 月のドル円相場は中旬に一時 115 円 86 銭まで軟化、その後の戻りも鈍く、月足は 7 ヶ月ぶりの陰線か

2月のドル円相場は一時的に方向感を喪失。116円割れでは底堅い一方、当面は120円台も遠い印象

米国の「そのうち利上げ期待」が「早期利上げ期待」に変わるまで、円安再開を忍耐強く待つ姿勢を堅持
1 月のドル円相場~上旬
は、1 ドル=120 円台での
上値が重たく伸び悩み
2015年新春のドル円相場は1ドル=120円台の上値が重く、弱含み気味のスタートとな
っている。月初来の動きを振り返ると、上旬は頭打ち。元日未明に始値119円78銭を刻ん
で取引休止になった後、2日に対欧州通貨でドル高が進むと一時120円74銭まで上昇し
た。ただ、同日夜の米12月ISM製造業指数が弱い結果になると119円80銭台に急落、そ
の後は一旦120円台を回復したが、3日(土)に独政府筋によるギリシャのユーロ離脱容認
論が伝えられると週明け5日から6日にかけては世界同時株安が進んで市場のリスク許容
度が萎縮、原油価格の暴落も嫌気され、一時118円06銭まで差し込んだ。ただ、この水準
では下値が堅く、7日に原油価格が下げ止まると8日かけて国内外で株価が反発、国内
長期系資金の外貨買いが連日観測されたほか、対欧州通貨でのドル高も追い風になっ
て119円90銭台まで持ち直した。ただ、120円00銭手前の上値が重く、9日の欧州市場に
かけて119円台前半まで反落した。同日夜の米12月雇用統計で非農業部門雇用者数が
市場予想を上回ると119円77銭へ急騰する場面もあったが、同時に発表された賃金の伸
びがマイナスだったことが嫌気されると反落、原油価格の続落も重石となって118円台半
ばに押し戻された。118円50銭で週末取引を終了。
1 月のドル円相場~中旬
は、一時 1 ドル=115 円台
まで続落した後 117 円台
に持ち直し
中旬のドル円相場は続落後に小反発。週明け12日は東京祝日で薄商いの中、欧州株
高を背景に一時119円30銭台へ急伸したが、NY市場で原油が続落すると13日早朝にか
けて118円台を割り込み、117円70銭台に急落した。同日の東京市場で国内輸入企業や
本邦長期系資金によるドル買いが観測されると118円台を回復したが、原油が5年9か月
ぶりの安値圏に突入するとクロス円も交えた円全面高が再加速、翌14日のNY市場で米
12月小売売上の弱い結果が伝わった直後には116円07銭まで差し込んだ。急ピッチの下
落への警戒感が台頭すると15日午後には一旦117円90銭台へ持ち直したが、同日夕刻
にスイス中銀(SNB)が無制限介入によるユーロスイスの下限を撤廃すると欧州通貨市場
が大混乱して市場のリスク許容度が萎縮、16日には一時115円86銭と12月16日以来の水
準まで続落した。ただ、116円00銭を割り込むと押し目買いが湧出、国内輸入企業、長期
系資金などのほか、「海外ファンド勢もドル円を買っている」との指摘があって反発、米1月
ミシガン大指数の好結果も追い風になり、117円台後半まで買い戻された。週明け19日に
本資料は信頼できると思われる各種データに基づいて作成されていますが、当社はその正確性、完全性を保証するものではなく、利用に際し
てはお客様ご自身でご判断くださいますようお願い申し上げます。巻末に重要な注意事項を記載していますので、ご参照下さい。
-1-
外貨投資の視点
中国当局の信用規制で上海株が急落すると116円90銭台に反落する場面もあったが、
117円00銭を割り込むと下値が堅く、ドイツ株の史上最高値更新が好感されると上値を伸
ばし、117円台後半まで持ち直した。
図1:最近のドル円相場(日足)の推移
122円
122円
ボリンジャーバンド
2σ上限
120円
120円
118円
118円
116円
116円
20日移動平均線
114円
114円
112円
112円
ボリンジャーバンド
2σ下限
110円
110円
108円
108円
106円
106円
200日移動平均線
104円
104円
102円
102円
100円
2014年7月
100円
2014年8月
2014年9月
2014年10月
2014年11月
2014年12月
2015年1月
出所:ブルームバーグより三菱UFJモルガン・スタンレー証券作成
1 月のドル円相場~下旬
は、117 円台前半~118
円台後半の狭いレンジで
一進一退
下旬のドル円相場は狭い値幅で一進一退。20日の仲値公示に向けてドルが買われ、
米国株の堅調が好感されると118円80銭台まで続伸したが、21日の日銀金融政策決定会
合で噂のあった「超過準備の付利引き下げ」が見送られると117円台まで下落した。ただ、
117円台前半では下値が堅く、同日夜にカナダ中銀(BOC)が予想外の利下げを発表す
ると対カナダドルで米ドル買いが進み、ドル円も118円台前半に持ち直した。その後は一
旦117円台に押し戻されたが、22日に欧州中銀(ECB)が月額600億ユーロの証券購入に
よる本格的な量的緩和を発表すると対欧州通貨でドル買いが進行、ドル円も118円台後
半に上昇した。ただ、この水準では上値が重く、翌23日にギリシャ総選挙前の持ち高調
整が進んで117円台後半に反落した後、26日朝方に緊縮財政見直しを唱える急進左派
連合(SYRIZA)への政権交代が確実になると同国債務問題への不透明感が浮上して市
場のリスク許容度が萎縮、117円27銭まで軟化した。その後、117円25銭付近に控える「大
規模なドル買い注文」が意識されると反発したが、118円60銭台では伸び悩み、27日の米
耐久財受注の弱い結果が嫌気されると117円30銭台に軟化した。28日にシンガポールが
予想外の金融緩和を発表すると対星ドルでの米ドル買いが波及して118円台前半まで反
発する場面もあったが、SNBによるユーロ買い介入再開への思惑により対ユーロでのドル
売りが進むと117円台に押し戻された。同日深夜には注目の米連邦公開市場委員会
(FOMC)の声明文が発表されたが、内容は概ね市場の予想通りであったため為替の反
応は鈍く、117円台で推移した。29日の東京市場で月末絡みのドル買いが持ち込まれ、
本資料は信頼できると思われる各種データに基づいて作成されていますが、当社はその正確性、完全性を保証するものではなく、利用に際し
てはお客様ご自身でご判断くださいますようお願い申し上げます。巻末に重要な注意事項を記載していますので、ご参照下さい。
-2-
外貨投資の視点
米国で株価が反発すると一時118円49銭付近までへ上昇したが、一段の上値追求の動き
には発展せず、118円台前半で保ち合った。
2011 年 10 月から 14 年
12 月まで 38 ヶ月続いたド
ル高・円安局面は、過去
最長記録の 40 ヶ月を目前
に、ひとまず小休止
本稿を執筆している1月30日(金)の11:00現在、ドル円相場は118円前後で取引されて
いる。ニューヨーク(NY)市場で月末引けが確定するまで、まだ約半日あるので断言でき
ないが、元日始値の119円78銭を超えて着地するのは難しそうな気配が濃厚で、今月の
月足は7ヶ月ぶりにみる陰線になる可能性が高そうだ。年末年始のドル円相場は、12月8
日に記録した約7年半ぶり高値の121円85銭から1月16日安値の115円86銭まで、最大で
▲4.9%程度も調整する場面もあり、昨年秋以降に加速した猛烈かつ一方的な上値探査
の奔流は、ようやく淀み始めた印象だ。年末年始を挟んで観察されるドル円相場の調整
が、2011年10月から始まって38ヶ月続いたドル高・円安局面の「終わりの始まり」なのか、
過去最長の上昇記録=40ヶ月を更新する途中の踊り場なのか、2月以降の展開が注目さ
れている。以下、本稿では目先の関心事である如月(きさらぎ)相場の注目材料を俯瞰し
た上で、我々が中長期で標榜しているドル高・円安シナリオの蓋然性に関する判断を示
しておきたい。
2 月のドル円相場は方向
感の出にくい展開か
2月のドル円相場は、引き続き方向感の出にくい展開が続きそうだ。日米金融政策サイ
クルのズレを背景とした「ドル円=右肩上がり」の大局観は不変だが、2月に限れば両国
で金融政策絡みのサプライズが起き難いと考えられる上、当面は為替市場関係者の注目
が欧州通貨や産油国通貨絡みのストレート・ドル市場やクロス・カレンシー市場にシフトし
た状態が続きそうだ。この先しばらくの間、ドル円相場は日米両国の経済指標の結果や
他通貨市場から飛んでくる流れ弾などを受け止めながら、日々相応の振幅で動きつつも、
イメージ的には「脇役の通貨ペア」になりそうな気配が漂っており、独自のテーマや材料
によって形成される「骨太の方向感」が現れにくい日々が続くだろう。
日本サイドの注目材料は
中旬に集中
まず日本サイドの予定を眺めてみると、2月は16日(月)の10-12月期国内総生産
(GDP)速報、17日(火)~18日(水)の日銀金融政策決会合、19日(木)の1月通関貿易
収支など、中旬に注目を集めそうなイベントが集中している。だが、いずれもよほど驚愕の
内容にならない限り、ドル円相場に強烈な動意や方向感を植え付けるのは難しそうだ。
16 日(月)の 10-12 月期
GDP 速報、18 日(水)の
日銀会合は、いずれもサ
プライズになりにくそう
先陣を切る16日(月)の2014年10-12月期GDP速報については、我々の円債市場分析
チームでは前期比+0.9%、同年率+3.7%を予想している。昨年4月の消費増税後に2
四半期連続のマイナス成長に陥った反動もあり、今回発表される10-12月期の数字はか
なり高めのプラス成長になりそうだ。ただ、「消費増税ショック」の反動により10-12月期の
実質経済成長率が3四半期ぶりのプラスに転じることは既に市場で織り込まれている。こ
のため、多少強めの数字が発表されてもサプライズにはならないだろう。万が一、「3四半
期連続のマイナス成長」になった場合は、昨年11月17日(月)の7-9月期GDP速報の発表
直後のように、日銀による早期追加緩和期待が再燃して円売りが加速しそうだが、流石に
その可能性は極めて低い。翌17日(火)から18日(水)にかけて開催される日銀金融政策
決定会合では政策委員による景気・物価見通しの改定も予定されておらず、現行の年率
80兆円ペースでの量的緩和の継続が「市場予想通り」に粛々と決定されるだろう。恐らく
は無風通過のイベントになりそうだ。
本資料は信頼できると思われる各種データに基づいて作成されていますが、当社はその正確性、完全性を保証するものではなく、利用に際し
てはお客様ご自身でご判断くださいますようお願い申し上げます。巻末に重要な注意事項を記載していますので、ご参照下さい。
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外貨投資の視点
19 日(木)の 1 月通関貿
易収支は赤字縮小の可能
性が高いが、ドル円相場
の反応は控えめか
19日(木)の1月通関貿易収支については、既往の円安効果による輸出の復調と原油
大幅安による輸入削減の相乗効果で赤字額が縮小しそうだが、今月下旬に公表された
昨年12月分の通関統計で「貿易赤字が前年同期比でほぼ半減していた」との報道に接し
ても、ドル円相場のリアクションは非常に控えめだった。最近ようやく定着し始めた日本の
貿易赤字の縮小傾向は、「円安圧力の緩和」を示唆しているものの、「円高圧力の発生」
を意味している訳ではない。既往のドル高・円安局面で存在感を示していた貿易決済絡
みのドル不足は、今年は「減少に転じるものの、無くなるまでには至らない」イメージだ。
日本側の予定を眺める限り、2月のドル円相場に和製サプライズによるボラ・アップを期待
するのは難しい。
今年中に任期が切れる日
銀審議委員 2 名の後任が
いずれ発表されそうだが、
現行政策に否定的な人物
は指名されそうにない
日本サイドで「日時不定の注目イベント」を敢えて挙げるとすれば、今年任期満了を迎
える日銀審議委員2名の後任人事になるだろう。3月25日に宮尾委員、6月30日に森本委
員が任期切れになることを見据え、既に後任の選定や打診は始まっているようだが、例に
よって発表直前になるまでその時期や候補者のネームは分からない。両委員の任期満
了日から逆算する限り、安倍政権が審議委員の空席を避けるつもりなら、1月26日から
150日間の会期で召集された現在の通常国会の期間中には後任候補を決めねばならな
い。早ければ2月中にも名前が挙がる可能性はあるだろう。衆参両院の「ねじれ現象」は
現在解消されているため、候補者の名前が挙がれば、そのままスムーズに決まりそうだ。
「アベノミクス継続の是非」が争点となった先の総選挙に大勝、「経済最優先」を掲げて再
出発している第3次安倍内閣が選ぶ以上、日銀が現在実施中の量的・質的金融緩和や
必要に応じた追加緩和に賛成しそうな人物が指名されるだろう。その意味では、ドル円相
場の趨勢に影響はなさそうだが、新任委員の国会同意手続きの期間中に限れば、金融
政策に関する発言内容などが注目されて日中の値幅作りの材料として利用される可能性
はある。一応注意しておきたい。
表1:現在の日銀金融政策決定会合のメンバー
総裁
2013年3月20日
黒田東彦
~
2018年4月8日
アジア開発銀行総裁
岩田規久男
副総裁
2013年3月20日
~
中曽宏
2018年3月19日
学習院大学教授
2013年3月20日
宮尾龍蔵
委員
2010年3月26日
~
2011年4月1日
~
2012年7月24日
~
2010年7月1日
~
2 0 1 5 年6 月3 0 日
東京電力(株) 取締役・電気事業連合会副会長
石田浩二
2016年3月31日
慶應義塾大学 総合政策学部教授
佐藤健裕
委員
2018年3月19日
森本宜久
2 0 1 5 年3 月2 5 日
神戸大学 経済経営研究所所長
白井さゆり
委員
~
日本銀行理事
2011年6月30日
~
2016年6月29日
三井住友ファイナンス&リース(株) 代表取締役社長
木内登英
2017年7月23日
2012年7月24日
~
2017年7月23日
モルガン・スタンレーMUFG証券(株) 債券調査本部長 野村證券(株) 金融経済研究所 経済調査部長
出所:内閣府、各種報道より三菱UFJモルガン・スタンレー証券作成
本資料は信頼できると思われる各種データに基づいて作成されていますが、当社はその正確性、完全性を保証するものではなく、利用に際し
てはお客様ご自身でご判断くださいますようお願い申し上げます。巻末に重要な注意事項を記載していますので、ご参照下さい。
-4-
外貨投資の視点
2 月は年に 4 回しかない
「米 FOMC 声明文の発表
が予定されていない月」
米国側の予定に目を転じても、2月は年に4回しかない「FOMC声明文の公表が無い
月」になる。今週28日(水)に発表された最新のFOMC声明文では、これまで採用されて
いた超低金利政策の継続期間に関する「かなりの間(for a considerable time)」という文言
が削除されたものの、12月会合で導入された「(金利政策正常化の開始を)忍耐強く待つ
ことができる(can be patient)」との表現は維持されていた。昨年12月の会見でイエレン米
連邦準備制度理事会(FRB)議長が示した「patient=2回分のFOMC」との見解を当てはめ
れば、次回3月18日と次々回4月29日のFOMC声明での金利政策正常化宣言は見送ら
れそうだ。米利上げ開始の「Xデー」は最速で6月17日になりそうだが、平均的な為替市
場関係者の目からみた場合、まだ5ヶ月半以上も先になりそうなイベントに対する心理的
距離はかなり遠い。米金利政策正常化プロセスの進捗速度は、今後の景気・物価情勢次
第であり、2月中に米連邦準備制度(FED)の金融政策運営に対する市場の期待が大きく
動く可能性は非常に低い。
2 月中の指標結果だけで
は、米金融政策運営に対
する市場の期待は大きく
動かない
もちろん、2月中のドル円相場は「米FOMCの狭間」にあっても、日々の経済指標睨み
で相応の値幅では動くだろう。だが、6日(金)に発表される米1月雇用統計のほか、前後
に居並ぶその他の景気・物価指標がよほど強弱どちらかに偏った結果にならない限り、
各々の市場関係者が主観的に想定しているFEDによる利上げ開始の「Xデー」への思惑
が大きく前後に動くことはなさそうだ。各指標の結果が判明した直後こそ、ドル円相場は
マーケット・コンセンサスとの乖離度に応じて「強ければ上、弱ければ下」という是々非々
のリアクションを示しそうだが、1か月間を通してみた場合、明確な方向感を見出し難い状
況が続くのではなかろうか。
図2:FOMC参加者の政策金利見通し
(適切な利上げ開始時期の予想人数)
20人
12/18
15人
3/19
12
6/18
10人
5人
12月17日
2
1
1
13
14
15
12
9/17
1
3
0
2
3
2
2
0人
2014
2015
2016
(%)
4.0
3.5
3.0
2.5
2.0
1.5
1.0
0.5
0.0
3.625
3 .750
2.500
各年末のFF金利予想
(参加者全員の中央値)
(2014年12月17日時点)
1.125
0.125
2014
2015
2016
2017
より長期
注:「より長期」の予測は、適切な金融政策運営の下、追加的経済ショックがない状態で収斂すると参加者が考える値
出所:FRB資料より三菱UFJモルガン・スタンレー証券作成
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-5-
外貨投資の視点
米利上げ開始の「X デー」
は、6 月 17 日になる可能
性が高い
ちなみに、米国が最初の利上げに踏み切る時期については、イエレンFRB議長の記
者会見による丁寧な説明が可能な「3の倍数月」になるとの見方が一般的だ。ただ、具体
的な時期に関する見解は人によってマチマチであり、筆者が面識の機会を頂いているお
客様や業界知己との会話から受ける印象では、市場世論の最多数派は、「2015年6月
説」と「2015年9月説」の間で揺れ動いているように思われる。「2015年12月説」も相応の勢
力を保っているがやや少数派であり、「2016年3月以降説」はかなりの少数派、というイメ
ー ジ だ 。 昨 年 12 月 の FOMC 声 明 に 登 場 し て 以 来 、 一 躍 脚 光 を 浴 び る よ う に な っ た
"patient"という単語には「本来ならなるべく早くしたい何かをじっと我慢する」という語感が
ある。昨年夏場以降急速に進行している原油価格の下落やドル高が利上げ開始を遅ら
せる可能性は否定できないが、少なくとも現時点までの影響を踏まえた上で、FOMCは全
会一致で利上げ開始の機会を「忍耐強く(patient)」探るとの表現を採用している。今後の
米国景気がよほど見事にズッコケない限り、今年後半には約6年ぶりに米国の政策金利
がゼロ%近傍から決別して上がり始める局面が来るだろう。我々の外債市場分析チーム
では、「Xデー」は6月17日になるとの見方を堅持している。
2 月の予想レンジは 1 ドル
=115.75 円~119.75 円
以上の考察を踏まえた上で、2月中の予想レンジは1ドル=115円75銭~119円75銭とし
ておきたい。足下の仮需系の為替ポジションは円売り超過に傾いていると推測されるほか、
毎年、2月の中頃からは本邦の3月期末決算を意識したリパトリ玉が「円高系の需給トー
ク」を刺激しやすい時期に差し掛かる。このため、2月のドル円相場が弱めの米経済指標
の波状攻撃に遭った場合は節目の116円00銭を割り込むぐらいの円高はあるだろう。だが、
貿易決済絡みの実需はサイズダウンしつつも依然としてドル買い超過が続いているほか、
年明け後の数営業日を過ぎた頃からは、断続的に訪れるドル円相場の差し込み局面で
「本邦長期系資金」ではないかと噂される買い注文が「下ヒゲ・カッター」として登場する場
面が比較的頻繁に目撃されている。今月15日に勃発した「SNBショック」の余波を食らっ
ても、滞空時間短く下げ渋った115円台後半のレベルは恐らく堅いのではなかろうか。
ドル高循環物色の食指が
再び日本円に伸びてくる
のを「忍耐強く」待つ姿勢
が必要
一方、2月中に限って言えば、年初にキープできなかった120円超のレベルは、ひとま
ず遠くなった印象が否めない。日米の金融政策サイクルのズレによって生じるドル高・円
安の大局観は不変であり、いずれは120円台半ばの空中戦をみることになるだろうが、年
明け後の外国為替市場では、米金融政策の正常化期待をバックに発生しているドル高
圧力が、①原油暴落の影響で予想外の利下げに追い込まれたカナダドル、②ギリシャ債
務問題の再燃とECBによる量的緩和本格化という分かり易い売り材料に恵まれているユ
ーロ、③早期金融引き締め期待の後退とオイルマネーの運用余力低下の影響を地味に
受けそうな英国ポンド、など他通貨市場に向きやすくなっている。昨年10月31日の日銀サ
プライズ緩和の後、先行して猛烈な勢いで吹き上がったドル円は、現在スピード違反の調
整期にあるとみられ、当面はドル高劇場の脇役になるだろう。この先の為替市場で「原油
ネタ」や「欧州ネタ」の鮮度がいずれ落ちてきた暁にはドル高循環物色の食指が再び日
本円に伸びてくる局面が訪れるだろうが、2月にそれを期待するのはやや無理筋だ。米国
で発生している「そのうち利上げ期待」が「早期利上げ期待」に変貌を遂げるまで、ドル円
ファンも「忍耐強く」待つ必要があるだろう。
本資料は信頼できると思われる各種データに基づいて作成されていますが、当社はその正確性、完全性を保証するものではなく、利用に際し
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-6-
外貨投資の視点
図3:各種米ドル価格の推移
160
(2011年平均=100)
↑ドル高↑
150
対日本円
140
対無国籍通貨
(金価格の逆数)
130
対ユーロ
120
110
100
対主要貿易相手国通貨
(英中銀実効為替指数)
90
80
2011
2012
2013
2014
2015
出所:ブルームバーグより三菱UFJモルガン・スタンレー証券作成
図4:長期トレンド・ラインとドル円相場
170円
160円
ドル円相場(A)
150円
52週移動平均線(B)
140円
130円
120円
110円
100円
90円
80円
70円
25%
20%
15%
10%
5%
0%
-5%
-10%
-15%
-20%
52週移動平均線からの乖離率
(A-B)÷B
90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 00 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15
出所:ブルームバーグより三菱UFJモルガン・スタンレー証券作成
本資料は信頼できると思われる各種データに基づいて作成されていますが、当社はその正確性、完全性を保証するものではなく、利用に際し
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-7-
外貨投資の視点
図5:2015年~17年のドル円相場の見通し
140円
135円
予想レンジ
130円
125円
120円
115円
110円
ドル円相場実績値
105円
100円
95円
90円
85円
80円
75円
70円
07年
08年
09年
10年
11年
12年
13年
14年
出所:実績はブルームバーグ提供の週末値。予想は三菱UFJモルガン・スタンレー証券
15年
16年
17年
表2:2015年~17年の為替相場の見通し
予想
2015年
2014年
ドル円
[円/ドル]
ユーロ円
[円/ユーロ]
ユーロドル
[ドル/ユーロ]
2016年
2014 年
10-12月期
1-3月期
4-6月期
7-9月期
10-12月期
1-3月期
4-6月期
7-9月期
10-12月期
2015年
2016年
2017年
(予想)
(予想)
(予想)
119.5-133.5
レンジ
105.23-121.85
113.5-125.5
115.0-128.0
116.5-129.5
118.0-131.0
118.5-131.5
119.0-132.0
119.5-132.5
120.0-133.0
100.76-121.85
113.5-131.0
118.5-133.0
期末値
119.78
119.5
121.5
123.0
124.5
125.0
125.5
126.0
126.5
119.78
124.5
126.5
126.5
レンジ
134.14-149.78
127.1-145.48
128.4-146.1
130.5-147.5
130.9-147.9
130.3-147.2
129.6-146.5
128.8-145.8
128.1-145.1
134.14-149.78
127.1-147.9
128.1-147.2
127.5-145.8
期末値
144.85
138.6
139.7
139.0
139.4
138.8
138.1
137.3
136.6
144.85
139.4
136.6
136.6
レンジ
1.210-1.289
1.085-1.211
1.070-1.210
1.060-1.200
1.050-1.190
1.040-1.180
1.030-1.170
1.020-1.160
1.010-1.150
1.210-1.399
1.050-1.211
1.010-1.180
1.010-1.150
期末値
1.210
1.160
1.150
1.130
1.120
1.110
1.100
1.090
1.080
1.210
1.120
1.080
1.080
出所:ブルームバーグより三菱UFJモルガン・スタンレー証券作成。ユーロドル相場の実績は、小数点以下4桁を四捨五入。
予想は弊社:最終変更日時は1月30日8:00時点шое Спасиб
о
(1月30日 11:00)
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外貨投資の視点
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