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アジア経済の 2012・13 年見通し

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アジア経済の 2012・13 年見通し
リサーチ TODAY
2012 年 2 月 23 日
アジア経済の 2012・13 年見通し
常務執行役員 チーフエコノミスト 高田 創
2月15日にみずほ総合研究所は内外経済見通し(2012年2月)を発表した1。下記の図表はその中のアジ
ア経済見通しの総括表である。昨年12月時点では2012年のアジア成長率を6.9%と見ていたが、今回は
6.8%へとわずかながら下方修正を行った。今回の世界経済全体の見通しでは、前回同様欧州の見通しを
下方に修正したことが特徴だが、アジア地域も含め、これまでのストーリーラインに大きな変化はない。
■図表:みずほ総合研究所のアジア経済見通し総括表(2012年2月)
(単位:%)
2009年
2010年
2011年
2012年
2013年
前回
アジア
中 国
NIEs
韓 国
台 湾
香 港
シンガポール
ASEAN5
インドネシア
タ イ
マレーシア
フィリピン
ベトナム
インド
6.1
9.2
-0.7
0.3
-1.8
-2.6
-0.8
1.6
4.6
-2.3
-1.6
1.1
5.3
7.0
9.3
10.4
8.3
6.2
10.7
7.0
14.5
7.0
6.2
7.8
7.2
7.6
6.8
8.7
7.5
9.2
4.0
3.6
4.0
5.0
4.8
4.7
6.5
1.6
4.8
3.7
5.9
7.4
6.8
8.6
2.1
2.5
2.2
1.4
0.5
4.5
6.1
3.1
2.9
3.3
5.5
6.9
6.9
8.8
2.6
3.1
2.2
1.7
1.8
4.5
6.1
3.1
3.0
3.3
5.5
6.7
6.7
8.4
1.8
2.1
2.0
0.8
0.7
4.4
5.4
3.9
2.9
3.5
5.0
6.9
(注)1.実質 GDP 成長率(前年比)。網掛けは予測値。
2.平均値は IMF による 2010 年 GDP シェア(購買力平価ベース)により計算。
3.前回欄は『みずほアジアオセアニア経済情報』(2011 年 12 月 14 日)での予測値。
(資料)各国統計、みずほ総合研究所
今回の見直しでは、アジア地域の見通しを、欧州の債務危機に伴う景気減速を受けた欧州向け輸出
の減少を主因として、さらに下方修正した。加えて、欧州危機のアジアへの影響で懸念されるのは、欧州
銀行による資産圧縮の動きの波及である。次ページの図表はBIS加盟銀行のアジア向け与信の内訳で
ある。欧州の銀行は今年6月に向けて自己資本比率を引上げるために資産圧縮に動く可能性があり、そ
の影響がアジアにも及ぶことが懸念される。ただし、図表から分かるように、資本増強が迫られている諸
国からの与信は、アジア向け国際与信全体の10~15%程度を占めるに過ぎず、資産圧縮が及ぼすアジ
アへの影響は限定的とみられる。
1
「2011・12・13 年度内外経済見通し」(みずほ総合研究所 『内外経済見通し』 2012 年 2 月 15 日)
1
リサーチTODAY
2012 年 2 月 23 日
■図表:BIS加盟銀行のアジア向け与信内訳
(単位:億ドル)
オフショア金融 東アジア・東南
南アジア向け
センター向け
アジア向け
3,263.6
6,861.5
1,339.5
(37.7)
(51.5)
(43.3)
資本増強が不要な
欧州諸国の銀行
4,494.0
4,731.8
1,283.5
(51.9)
(35.5)
(41.5)
資本増強が必要な
欧州諸国の銀行
894.5
1,740.2
471.4
(10.3)
(13.1)
(15.2)
8,652.1
13,333.4
3,094.4
(100.0)
(100.0)
(100.0)
欧州以外の銀行
合計
(注)1 各地域とも、統計入手が可能な範囲で集計。カッコ内はシェア(%)。
2.オフショア金融センターは香港、マカオ、シンガポール。
3.東アジア・東南アジアは、日本とオフショア金融センターを除く。
4.資本増強必要額が小さいオランダは、不要国に含めた。
(資料)BIS
以上を踏まえれば、アジア地域は欧米を中心とした経済減速の影響を2012・13年に受けるものの、グ
ローバルな水準からみて、比較的高い水準の成長を続けるというのが、みずほ総合研究所のストーリーラ
インである。こうなると世界で最も高い成長地域であるアジアに位置する日本にとっては、その成長の果
実をできるだけ多く確保することが、最大の成長戦略になる。今日の日本の政治課題であるTPPの議論
もこの成長戦略のなかで考える必要があり、また、日本が経常収支の黒字を維持するためにも、アジア当
該地域の成長を取り込むことは大きな課題である。
欧米の減速のなかでアジア地域が比較的安定した環境を維持している背景には、アジアにおいては
総じて各国の経常収支の黒字が続き、金融面での不安が生じにくいことも大きい。他方で、経常収支が
赤字の場合は、外貨の制約が生じやすい。みずほ総合研究所は、経済が高成長ではあるものの経常収
支の側面からは一定の注視が必要な新興国として、インドとブラジルに注目してきた。
両国については、先週それぞれの足元の経済環境を分析するレポートを発表しているので参照いた
だきたい2。インド経済については、ソブリン危機や通貨危機に至る可能性は少ないと考えながらも、資本
流入の停滞が成長を制約する懸念があり、国内の政治問題にも注目が必要と考えている。一方、ブラジ
ル経済については、景気の一段の失速は回避されるが、2012年の成長率は3%台前半に止まると展望
している。ブラジル経済への海外からの期待は強く、その期待の反映としての高水準の直接投資が同国
の大きな支えになっている。従って、インドもブラジルも政策への信認が安定した経済持続の鍵を握る。
新興国市場は今年の日本にとって最大の重点地域であるだけに、みずほ総合研究所としても両大国
の動きには注目を続ける所存である。
2
小林公司 「不安定化するインドへの資本流入」(みずほ総合研究所 『みずほインサイト』 2012 年 2 月 14 日)
西川珠子 「再浮上を図るブラジル経済」(みずほ総合研究所 『みずほインサイト』 2012 年 2 月 16 日)
当レポートは情報提供のみを目的として作成されたものであり、商品の勧誘を目的としたものではありません。本資料は、当社が信頼できると判断した各種データに基づき
作成されておりますが、その正確性、確実性を保証するものではありません。また、本資料に記載された内容は予告なしに変更されることもあります。
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