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建国50周年を迎えるシンガポール

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建国50周年を迎えるシンガポール
海外通信 from Singapore
建国50周年を迎えるシンガポール
独立前のシンガポールは、マレーシアの一部を構
購入やオプショナルツアーの禁止などを規定)
、③イ
成していたが、マレー人と華人との民族間対立が激
ンドネシアの景気が減速したこと、
④マレーシア航空
化したあおりで、華人を中心とするシンガポールは
機失踪事件(2014年4月)と⑤タイ政情不安(2013年11
独立することとなった。それが、1965 年 8 月 9 日のこ
月にデモ発生)
で東南アジア地域への渡航ムードが全
とだ。独立後のシンガポールは、このほど逝去した建
世界的に萎縮したこと、などが挙げられる。
2014年12
国の父リー・クアンユー初代首相のリーダーシップ
月28日には、
さらにエアアジア墜落事故が発生した。
の下、低法人税率による外資導入、徹底した官僚の能
エアアジア墜落事故はいまだに記憶に新しいもの
力主義、自由貿易、移民の受け入れ、強力なインフラ
の、その他の影響は 2015 年には緩和されるとみられ
整備の推進などを背景に目覚ましい経済発展を遂
る。これに加えて、建国 50 周年関連のイベントが観
げ、2014年の1人当たりGDPは5万6千米ドルにも達
光客の呼び水となることから、シンガポールを訪問
した。そして2015年、
当地は建国50周年を迎える。
する旅行者数は堅調に回復する可能性が高い。この
結果、レストラン、ホテル、小売といった観光関連業
記念行事による景気刺激効果に期待高まる
当地では本年、ナショナル・ギャラリー(国立美術
種には追い風が吹くと予想される。
揺らぎ始めた過去50年の成功モデル
館)の開業、東南アジア競技会の誘致、大規模パレー
ド(写真)、グルメ関連イベントなど、様々な記念行事
が予定されている。
もっとも、建国50周年だからといって、明るい話題
ばかりというわけでもない。従来シンガポール政府
これにより、シンガポールを訪れる外国人旅行者
は、富裕層・高度人材から単純労働者まで多様な人材
数が回復することが期待されている。2014 年の外国
を海外から積極的に受け入れ、そうした外国人材が
人旅行者数は、世界金融危機が深刻化した 2009 年以
シンガポール経済の成長を支える要因の一つになっ
来の前年比マイナスに落ち込んだ。この背景として
てきた。しかし、近年、外国人材の流入により自分達
は、
①シンガポール・ドル高が進行したこと、
②中国で
の雇用や生活が脅かされていると受け止めるシンガ
旅遊法が施行されたこと(2013年10月、強制的な商品
ポール国民が増え、外国人材受け入れ政策に対する
反発が急速に強まっている。この事態を政府も無視
●2015年のチンゲイパレードの様子
できず、
2010年以降、外国人就労許可証の発給基準が
段階的に引き上げられるなど、外国人材の雇用規制
が強化されている。この結果、繁栄の礎であるヒト・
モノ・カネのハブ機能が揺らいでいる。過去50年に目
覚ましい繁栄を遂げたシンガポールが更なる発展の
活路をどこに見いだしていくのか、重いテーマであ
る。
みずほ総合研究所 アジア調査部(シンガポール在留)
パレード自体は毎年恒例だが、建国50周年を記念して大規模化された
(2015年2月27日筆者撮影)
。
12
主任研究員 稲垣博史
[email protected]
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