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アジアの空を飛躍する格安航空
海外通信 from Singapore アジアの空を飛躍する格安航空 今年の夏休みは、安くて近いということでアジア は、中長距離路線の格安航空を全額出資で 1 年以内 旅行が人気だという。そこで、最新のアジアの航空事 に設立することも表明した。2008 年のリーマン・ 情についてリポートしたい。 ショック以降、同社の客数は頭打ちとなっており、 格 安航空が新たな客層を開拓すると期待されている。 シンガポールからクアラルンプールへ 片道260円 筆者の駐在するシンガポールから、300 キロ離れ Everyone can fly!(みんなが飛べる!) 格安航空が仕掛けた運賃の低下は、消費者にとっ たマレーシアのクアラルンプールに行くとしよう。 て望ましいことだ。アジアにおける所得向上の追い 飛行機を予約するには旅行代理店に行くところだ 風に乗り、従来は飛行機に乗れなかった人たちの が、パソコンで格安航空会社のホームページにアク 需要が掘り起こされたと評価できる。ある格安航 セスしてみた(本稿執筆時の7月7日) 。試しに8月15 空会社のキャッチフレーズ通り、 「みんなが飛べる 日に出発して 18 日に帰る日程で検索すると、片道 (Everyone can fly)」ようになり、アジア域内のヒト 4シンガポールドル(以下Sドル、4Sドル≒260円)と の移動を刺激して、観光等における経済波及効果も の表示。空港税や燃料サーチャージ等を加えても、往 産み出されている。 復で61Sドル(約4千円)の格安料金だ。 わが国でも、日本航空が格安航空に参入を検討中 なぜ格安なのか。欧米で発展したビジネスモデル と報じられ、全日本空輸は格安航空「エアアジア・ がアジアにも導入されたからだ。第一に、チケット販 ジャパン」 (エアアジアとの合弁)と「ピーチ・アビ 売はインターネットで行い、人手を省く。第二に、単 エーション」の 2 社を来年から就航させる予定だ。ア 一の機種を採用し、乗員訓練や機体整備の費用を節 ジアから日本への観光客誘致が課題となっているこ 減する。第三に、定時運行に努めて時間のロスを少な とから、これら日系格安航空がアジアの需要を掘り くし、機体の稼働率を高める。この他にも、機内飲食 起こす効果に期待したい。 サービスは有料といった特徴がある。 安さを武器に、アジアでは格安航空会社が急成長 みずほ総合研究所 アジア調査部 している。主な会社は 10 社近くあり、なかでも代表 シンガポール駐在 小林公司 格はマレーシア系のエアアジアだ。2001 年、起業家 [email protected] が経営難に陥っていた航空会社を 1 リンギ(当時の レートで約32円)で買い取り、わずか2機の航空機で 再出発した。それが 2010 年には 101 機を保有するま でに成長し、旅客数も 2,500 万人を突破した(図表)。 昨年 12 月からは、東南アジア中心の路線に羽田∼ク アラルンプール便も加わり、日本への乗り入れを果 たしている。 既存の航空会社も価格競争に巻き込まれている。 例えば、高品質の旅客サービスで人気の高いシンガ ポール航空も格安ビジネスに乗り出しており、2003 年に設立のタイガーエアウェイズに 33%出資して、 主に短中距離路線を運行している。今年 5 月に同社 12 ●アジア主要航空会社の旅客数 (万人) 3,000 シンガポール航空 エアアジア 2,500 2,000 1,500 1,000 500 0 2002 03 04 05 06 07 08 09 10 (年) (資料)各社ホームページ