Comments
Description
Transcript
回復基調を強めるアメリカの個人消費
海外通信 from New York 回復基調を強めるアメリカの個人消費 ─ 消費回復の背景とその持続性 ─ アメリカで春の訪れを告げるイベントといえば のの、雇用者数が増加に転じたことから、雇用不安に イースターだ。イースターとは、別名、復活祭ともよ よる消費の下押し圧力は、一時期に比べかなり緩和 ばれ、イエス・キリストの復活を祝うキリスト教の されている。また、昨年来の株価上昇で、家計の保有 お祭りである。アメリカの各家庭では、イースター・ 資産はおよそ 6 兆ドル増加しており、資産効果が富 エッグという装飾を施した卵を飾り、親族や友人ら 裕層を中心に消費を押し上げたとみられる。 とともにご馳走を囲みながらお祝いをするのが一般 ただ一方で、所得が伸びていない点に注意する必 的だ。また当日は、全米各地でイースターにちなんだ 要がある(図表)。上記二つの要因は、いずれも消費者 催し物が開催され、ホワイトハウスのイースター・ の消費意欲を高めるが、消費の源泉となる所得の増 エッグロール(卵転がし)やニューヨークのイース 加にはつながらないからだ。 ター・パレードは春の風物詩の一つとなっている。 消費の持続的な回復には、所得の増加が不可欠。経 済危機で倹約指向を強めたアメリカ国民が、再び消 堅調に推移した春商戦 費を拡大させつつあるのは事実だが、その持続性に ついては、もう少し所得動向を見極めた上で、判断し 実はこのイースター、あまり知られていないが、関 た方がよさそうだ。 連する支出額は、クリスマス、バレンタイン、母の日 に次ぐ規模といわれており、イースター前の春商戦 みずほ総合研究所 ニューヨーク事務所 は小売り各社にとっても重要な稼ぎ時にあたる。昨 上席主任研究員 太田智之 年の春商戦は、経済危機のまっただ中にあって不振 [email protected] を極めたが、今年は、一転、堅調に推移した。 主要小売りチェーン各社の発表によると、3 月の 既存店売上高は、軒並み前年比 2 桁増を記録。ディス カウント・ストアや専門店のほか、不況時の負け組と ●実質雇用者報酬の推移 (2008年=100) 101 いわれたデパートも売り上げを大きく伸ばしてい る。商品では、婦人服やハンドバッグが好調で、宝石、 家具といった高額商品も持ち直し基調が鮮明だ。 100 99 こうした傾向は、主要小売りチェーンに限った話 ではない。小売り全体でみても、3 月は衣料品やアク 98 セサリー、娯楽用品など生活必需品以外の品目がけ ん引する形で増勢を強めている。 97 96 問われる消費回復の持続性 95 2008/1 7 09/1 7 10/1 消費が堅調な理由として、企業のリストラ一服と (年/月) 株価の上昇があげられる。実際、失業率は依然高いも (注)雇用者報酬 (雇用者数×労働時間×平均賃金) を消費支出デフレーターで実質化。 (資料)米労働省、米商務省 12 みずほリサーチ May 2010