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ドイツも企業金融「日本化」、市場は社債に関心

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ドイツも企業金融「日本化」、市場は社債に関心
リサーチ TODAY
2012 年 4 月 9 日
ドイツも企業金融「日本化」、市場は社債に関心
常務執行役員 チーフエコノミスト 高田 創
3月末の欧州出張で市場参加者と議論するなか、マネーフローや企業の財務行動が予想以上に日本
に類似した慎重な運営になっていると感じた。下記の図表はドイツとユーロ圏のISバランス(貯蓄投資バ
ランス)を示したものである。ここでの特徴は、どちらも民間セクターである企業と家計が資金余剰セクタ
ーに転じていることである。ユーロ圏では、南欧中心に、依然、民間セクターが資金不足のまま経常収支
赤字で対外バランスマイナスの国も多く存在するが、ドイツの場合は高水準の経常収支黒字である。そ
の背景には企業を含め民間セクターの大幅な資金余剰が存在する。
■図表:ドイツとユーロ圏のISバランス推移
名目GDP比、%
10
経常収支
家計
ドイツ
名目GDP比、%
8 ユーロ圏
企業
政府
企業
政府
6
8
余
剰
経常収支
家計
余
剰
6
←
←
4
4
2
資 0
金
▲2
→
→
2
資
金 0
▲2
不▲4
足▲6
不▲ 4
足
▲6
▲8
▲8
▲ 10
80
85
90
95
00
05
10
(暦年)
80
85
90
95
00
05
(注)90 年以前は西ドイツ。ユーロ圏 12 カ国ベース。2000 年以前でデータの無い国は除外して算出
(資料)欧州委員会
今日、ドイツでは潜在成長率がせいぜい1~1.5%程度とされ、人口の伸び悩み、低水準の設備投資
状況等、日本との類似性も多い。企業はレバレッジ拡大に慎重で、キャッシュリッチな状況になっている1。
こうした企業行動は2000年代以降のドイツ経済の構造改革のなか、労働市場改革とともに企業マインドも
慎重化するバイアスが働いたからと考えられる。すなわち、2000年代に賃金引下げや労働分配率引下げ
で企業は筋肉質な財務状況を志向した。さらに、リーマンショック以降の金融市場逼迫で、先行き期待低
下と予備的ニーズから従来以上の余裕資金を抱える構造に向かったと考えられる。そして、足元も欧州
の銀行が、依然、資金繰りに苦しむなか、企業行動上、さらにレバレッジに慎重なスタンスに向かいやす
1
同様の指摘は英国でも多く聞かれ、家計と企業の余剰状況、企業がキャッシュを溜め込む状況が伝えられていた。
1
10
(暦年)
リサーチTODAY
2012 年 4 月 9 日
いと考えられる。
日本では1990年代後半に金融危機と先行き期待の大幅な低下が生じた局面において、金融機関側
と企業側の双方でのレバレッジ低下が生じた。その結果、銀行側は貸出圧縮による預貸率低下、企業側
は銀行依存低下と社債市場への依存が生じた。企業自体もレバレッジ低下・バランスシート圧縮となり、
負債が縮小するなかで貸出が社債に代替された。こうした状況は金融危機にある今日の欧州でも確認さ
れるトレンドである。
このような資金フロー環境を筆者は、資金フローの日本化として議論してきた。これまでもTODAYで論
じたように2、「資金フローの日本化」が「金融政策の日本化」に波及し、さらに「金融機関行動が日本化」
するとして、3分野の「日本化現象」が生じるとした。さらに、今回は「クレジット市場の日本化」も加える。
■図表:金融環境の4つの「日本化現象」
「日本化現象」の分野
状
況
資 金 フローの日 本 化 現 象
バランスシート調整に伴い、IS バランス上で、家計と企業の
資金余剰化で資金需要が後退
金 融 政 策 の日 本 化 現 象
①ゼロ金利、②国債購入、③量的緩和、④時間軸政策
金融機関運用の日本化現象
クレジット市場の日本化
金融機関は、期待水準を引き下げ、債券への長短金利差
(キャリー)確保重視の運用に
社債中心にクレジットスプレッド縮小
(資料)みずほ総合研究所
前ページのISバランスの図表に示されるように、企業セクターが資金余剰の状況下、企業のレバレッジ
が低下し、貸出と社債も含めたデット商品トータルの供給は限られる。一方、「金融政策の日本化」にお
いて金融当局が大量の資金供給を行えば、国債の利回りが低下し、その結果「search for yield」でクレジ
ットスプレッドが縮小に向かうことになる。昨今、欧州市場で伝えられるジャンクボンドも含めたクレジット市
場への関心は、限られたクレジットプロダクトへの運用ニーズを反映したものである。
しかも、いまや欧州ではソブリン債、国債への潜在的な不安が存在するなか、高格付け社債とソブリン
商品との比較感で、ソブリン商品が絶対的な信用を確保するような状況ではない。むしろ、日本から見て
欧州国債は「地方債」のような状況であるだけに、ソブリンよりも高格付け企業のほうが信頼されるとの見
方も生じやすい。しかも、欧州には長期の負債をもつ生保や年金3の投資家層の厚みがあるだけに、LDI
(負債対応の投資手法)によるALMマッチングからフィックスインカム商品への選好が従来以上に生じや
すい。欧州ではここ数年の危機以降、先行きの期待利回りの水準が低下しやすくなっているだけにアセ
ットアロケーション上、債券ニーズ、クレジット商品ニーズが生じやすい。
2
「日銀のバレンタインデーの緩和プレゼント」(みずほ総合研究所 『リサーチ TODAY』 2012 年 2 月 16 日)
欧米では長期金利低下によって利回りを保証する確定給付型年金の割引率が低下し、年金の積み立て不足拡大が深刻化
している。一方、運用利回り水準の低下からリスクヘッジとして長期債への志向と年金の給付引下げの年金改革が課題になると
展望される。
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当レポートは情報提供のみを目的として作成されたものであり、商品の勧誘を目的としたものではありません。本資料は、当社が信頼できると判断した各種データに基づき
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