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設備・雇用が示唆する物価上昇圧力の強さ

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設備・雇用が示唆する物価上昇圧力の強さ
景気循環研究所レポート
設備・雇用が示唆する物価上昇圧力の強さ
2013 年 12 月 27 日
11 月のコアCPIは前年比 1.2%上昇
デフレ脱却の動きが一段と鮮明になっている。11 月の全国消費者物価
指数(生鮮食品を除く総合=コアCPI)は前年比 1.2%上昇と、10 月(同
0.9%上昇)から上昇幅が拡大した。食料(酒類を除く)及びエネルギー
を除いた「コアコアCPI」の前年比上昇率についても、11 月は 0.6%ま
で拡大しており(10 月は 0.3%)、98 年 8 月以来、約 15 年ぶりの高水準
となっている。なお、三菱UFJモルガン・スタンレー証券景気循環研究
所が、東京都区部の 12 月中旬速報値をもとに試算したところ、12 月の全
国コアCPIおよび同コアコアCPIの前年比上昇率は、いずれも 11 月
と同水準になる見通しだ。
嶋中 雄二
景気循環研究所長
日銀短観(13 年 12 月調査)では、雇用人員判断 DI(全規模合計・全産
業)の大幅な低下(「不足」超幅が 12 月に▲5 から▲10 へと拡大)と、生
産・営業用設備判断 DI(同)の低下(「過剰」超幅が 12 月に+3 から+2 へ
宮嵜
浩
と縮小)が確認された。両 DI を合成した「設備・雇用加重平均DI」は、
シニアエコノミスト
03-6213-6573
miyazaki-hiroshi
@sc.mufg.jp
福田
圭亮
シニアエコノミスト
03-6213-2608
fukuda-keisuke
@sc.mufg.jp
足元で、07~08 年とほぼ同水準の「不足」超幅に達している(図 1)
。イ
ンフレ率の先行指標である「設備・雇用加重平均DI」の最近の動きは、
07~08 年当時と同様、景気拡大を追い風にした物価上昇圧力の強さをう
かがわせるのみならず、物価上昇が今後、一段と加速する可能性が高いこ
とを強く示唆しているといえよう。
図 1. 設備・雇用の過不足感とインフレ率の関係
( % ポイント)
30
本レポートは、嶋中雄二の見方に
基づき、宮嵜・福田が執筆を担当
しています。
(前年比、%)
4
40
不足
3
コアCPI(右目盛)
20
2
10
1
0
0
-1
-10
-2
-20
-30
景気循環研究所
東京都千代田区丸の内 2-5-2
三菱ビルヂング
-40
過剰
日銀短観
設備・雇用加重平均DI(左目盛)
-3
-4
91 92 93 94 95 96 97 98 99 00 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14
(年、四半期)
(注1)設備・雇用加重平均DIは、生産・営業用設備判断DIと雇用人員判断DIを分配率ウエイトで加重平均して算出。
(注2)コアCPI=消費者物価指数(生鮮食品を除く総合)。消費税率引上げの影響を除去。直近は13年10-11月平均値。
(資料)日銀「短観」、総務省「消費者物価指数」をもとに三菱UFJモルガン・スタンレー証券景気循環研究所作成
2013 年 12 月 27 日
現在は 13 年 3 月を底
11 月のコアCPIの季節調整値は、前月比で 0.2%上昇した。2 ヵ月連続
にした物価上昇局面
の前月比上昇であり、コアCPIの上昇基調は一段と鮮明になっている。3
月に付けたコアCPIのボトムから、直近 11 月までの上昇率は年率 1.8%と、
前回のコアCPIの上昇局面(07 年 3 月→08 年 8 月、同 1.8%)と同水準で
ある。同様に、食品・エネルギー価格の影響を除いたコアコアCPIをもと
に上昇ペースを比較すると、前回の年率 0.5%(08 年 3 月→08 年 10 月)に
対し、今回は同 1.1%(13 年 2 月→13 年 11 月)となっている。より基調的
な物価の上昇ペースは、07~08 年当時よりも今回のほうが速い(図 2)。
コアコアCPIの
上昇ペースが加速
実際、11 月のコアコアCPIは前年比 0.6%上昇と、08 年 7 月に付けた既
往ピーク(0.3%)を 5 年 4 ヵ月ぶりに上回った(図 3)。仮に、現在の上昇
ペースが継続すれば、コアコアCPIの前年比上昇率は一段と拡大し、14 年
の春頃には 1%を上回ることになる。コアCPIについても同様に、現在の
ペースで行けば、14 年中に前年比で 1%台後半の上昇率が実現してもおかし
くない(消費税率引上げの影響を除く)。物価上昇のすそ野が食品・エネル
ギーから一般サービスにまで拡がりつつある中(表 1)、コアCPIの前年
比上昇率が 14 年度中に 2%に達する可能性は一段と高まったといえよう。
図2. 消費者物価指数の推移:季節調整値
108
107
106
105
104
103
102
101
100
99
98
97
96
図3. 消費者物価指数の推移:前年比
(10年 =100)
3
コアコアCPI
( 前 年 比、 % )
2
コアCPI
1
0
-1
-2
コアCPI
コアコアCPI
-3
97 98 99 00 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13
97 98 99 00 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13
( 年 、 月次 )
(年 、 月 次)
(注 ) コアCPI: 消 費 者物 価 指 数( 生 鮮 食品 を 除く 総 合 )、
( 注) コアCPI:消 費 者 物価 指 数( 生 鮮 食品 を 除 く総 合 ) 、
コアコアCPI: 消 費者 物 価 指数 ( 食料 ( 酒 類を 除 く )及 び エネルギーを 除 く総 合 )
コアコアCPI: 消 費 者物 価 指 数( 食 料( 酒 類 を除 く ) 及び エネルギーを 除 く 総合 )
(資 料 ) 総務 省 「 消費 者 物 価指 数 」 をも と に 、三 菱 UFJモ ル ガ ン・ ス タ ンレ ー 証 券
( 資料 ) 総 務省 「 消 費者 物 価 指数 」 を もと に 、 三菱 UFJモル ガ ン ・ス タ ン レー 証 券
景気 循 環 研究 所 作 成
景 気循 環 研 究所 作 成
表1. コアCPIの内訳
図4. コアCPI前年比の要因分解
( 前 年 比 、% )
コアCPI
1.5
財
(除.生鮮食品)
13年2月
3月
4月
5月
6月
7月
8月
9月
10月
11月
-0.3
-0.5
-0.4
0.0
0.4
0.7
0.8
0.7
0.9
1.2
-0.6
-0.7
-0.9
0.0
0.7
1.3
1.6
1.4
1.4
1.8
公共
サービス
0.2
0.2
1.0
1.0
1.0
1.0
0.9
1.0
1.9
1.9
一般
サービス
-0.2
-0.4
-0.3
-0.3
-0.2
-0.2
-0.2
-0.2
-0.1
0.1
コアコア
CPI
-0.9
-0.8
-0.6
-0.4
-0.2
-0.1
-0.1
0.0
0.3
0.6
食品・
エネルギー
1.0
1.2
0.2
-0.1
0.7
2.1
2.3
2.7
2.4
2.3
(前 年 比 、 %)
1.0
0.5
0.0
-0.5
-1.0
-1.5
コアコアCPIの寄与
-2.0
-2.5
09
( 注 ) 食料 ・ エネルギー価 格 は コアCPIから コアコアCPIを 除い た 当 研 究所 試 算 値 。
食品・エネルギー価格の寄与
コアCPI
10
11
12
( 年 、四 半 期 )
13
( 資 料 )総 務 省 「消 費 者 物 価指 数 」 を もと に 三 菱UFJモル ガ ン ・ スタ ン レ ー証 券 景 気 循環
( 注) 直 近 は 13年 10-11月 平 均 値。
研 究 所 作成
( 資 料) 総 務 省「 消 費 者 物価 指 数 」を も と に 三菱 UFJモ ル ガ ン・ ス タ ン レー 証 券 景 気循 環
研 究 所作 成
巻末に重要なお知らせを記載していますので、ご参照ください。
2
2013 年 12 月 27 日
食品・エネルギー
価格の動向
一方、円安・原油高に伴う輸入物価の上昇は、引き続き食品・エネルギー
価格の上昇圧力となっている模様だ。エネルギー価格は、為替や商品市況の
変動を最終製品・サービス価格に転嫁する仕組みが比較的整っていることも
あり、足元の電気料金およびガソリン価格は、引き続き高水準の前年比上昇
率を維持している(図 5)。もっとも、燃料コストの変動が 3~5 ヵ月遅れで
反映される電気料金に関しては、14 年 2 月にかけて前年比上昇率が拡大する
見込みで、さらに 14 年 4 月には中部電力の家庭向け電気料金値上げの影響か
ら、上昇ペースの一段の加速も予想される。
財・サービスともに
上昇圧力が強まる
今後については、景気の拡大が続く中、これまでのエネルギー・原材料価
格の上昇が、それ以外の財・サービスに対する価格上昇圧力として、徐々に
波及する展開が予想される。財価格については、企業間取引ベースの価格上
昇が消費者物価ベースの財価格の上昇を牽引するという構図に変化はみられ
ない(図 6)。サービス価格についても、外食店の客単価上昇に象徴される
消費者の高付加価値志向の高まりが、人件費コストの急上昇とあいまって一
般サービス価格を引き続き押し上げる展開が予想される(図 7、図 8)。
図5. 電気料金とガソリン価格の推移
40
図6. 消費財価格の推移
( 前 年比 、 % )
6
13年12月24日
ガ ソリン価格(週次 ) 158.1円/㍑
前 年比+7.3%
30
20
(前 年 比 、 %)
企業 物価指数
うち消費財
4
( 13年 11月 )
3.2
2
10
1.8
0
0
-20
-2
14年2月
7,873円
前年比+8.2%
-10
電気料金( 月次)
-4
消費者 物価指数
(生鮮食品を除く 財)
-6
-30
-8
-40
09
10
11
12
14 ( 年 )
13
07
08
09
10
11
12
13
( 年、 月 次 )
14
( 注) 電 気 料 金は 東 京 電 力 の平 均 モデル、 ガソリン価 格 は 全国 レギュラー店頭 現 金 価 格 。
( 資 料 ) 総務 省 「 消 費者 物 価 指 数 」、 日 本 銀 行 「企 業 物 価 指数 」 を も と に、
( 資料 ) 東 京 電力 資 料 、 資 源エネルギー庁 資料 を も と に 三菱 UFJモ ル ガン ・ ス タ ン レー
三菱 UFJモ ル ガン ・ ス タ ンレ ー 証 券 景 気循 環 研 究 所 作成
証 券 景気 循 環 研 究 所作 成
図7. 外食の客単価と一般サービス価格
6
図8. 派遣職員時給と一般サービス価格
( 前年 比 、 % )
( 前 年 比 、% )
1.8
1.5
( 13年 11月) 1.2
0.9
2.8
0.6
0.3
0.1
0.0
-0.3
-0.6
-0.9
-1.2
外食店の客単 価(左目盛)
-1.5
-1.8
(年 、 月 次 )
11
12
13
14
6
消費者物価 指数
一般サービス価格 (右目盛)
4
2
0
-2
-4
-6
07
08
09
10
( 前 年 比 、% )
( 前 年 比 、 %)
4
2
0
-2
-4
-6
08
( 資料 ) 総 務 省「 消 費 者 物 価指 数 」 、 日 本フードサービス協会 「 外 食 産業 市 場 動 向 調査 」 を
1.8
1.5
( 13年 11月 )
1.2
3.2
0.9
0.6
0.3
0.1
0.0
-0.3
-0.6
-0.9
派遣職員の平 均時給(左目盛)
-1.2
-1.5
-1.8
11
12
13
14 ( 年 、 月次 )
消費者物価指数
一般サ ービス価格(右目 盛)
09
10
(注 ) 派 遣 職員 の 平 均 時 給は 、 三 大 都市 圏 ( 関 東 ・東 海 ・ 関 西 )の 募 集 時 平 均時 給
も と に、 三 菱 UFJモル ガ ン ・ ス タン レ ー 証 券 景気 循 環 研 究所 作 成
( 製 造・ 物 流 ・ 軽 作業 ・ そ の 他 を除 く ) 。
(資 料 ) 総 務省 「 消 費 者 物価 指 数 」 、 リクルートジョブズ「 派 遣 スタッフ募集 時 平 均 時給 調 査 」
を もと に 、 三 菱 UFJモ ル ガ ン ・ス タ ン レ ー 証券 景 気 循 環研 究 所 作 成
(以
上)
みやざき
ひろし
(13.12.27 宮嵜
巻末に重要なお知らせを記載していますので、ご参照ください。
3
浩)
2013 年 12 月 27 日
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
本資料は信頼できると思われる各種データに基づいて作成されていますが、当社はその正確性、完全性を保証するものではありません。本
資料で直接あるいは間接に採り上げられている有価証券は、価格の変動や、発行者の経営・財務状況の変化およびそれらに関する外部評価
の変化、金利・為替の変動などにより投資元本を割り込むリスクがあります。ここに示したすべての内容は、当社の現時点での判断を示している
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Copyright ◯
〒100-0005 東京都千代田区丸の内 2-5-2 三菱ビルヂング 三菱 UFJ モルガン・スタンレー証券株式会社 景気循環研究所
(商号)
三菱 UFJ モルガン・スタンレー証券株式会社 金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第 2336 号
(加入協会) 日本証券業協会・一般社団法人金融先物取引業協会・一般社団法人日本投資顧問業協会・一般社団法人第二種金融商品取
引業協会
本資料は、英国において同国the Prudential Regulation Authorityとthe Financial Conduct Authorityの監督下にあるMitsubishi UFJ
Securities International plcが配布致します。また、米国においては、Mitsubishi UFJ Securities (USA),Inc.が配布致します。
巻末に重要なお知らせを記載していますので、ご参照ください。
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