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原油市況が鍵を握る米国製造業の復調 - 三菱UFJモルガン・スタンレー証券

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原油市況が鍵を握る米国製造業の復調 - 三菱UFJモルガン・スタンレー証券
景気循環研究所レポート
原油市況が鍵を握る米国製造業の復調
2016 年 3 月 2 日
米国製造業の活動が低迷
米国製造業の活動は低調に推移している。米系調査会社の一部には、
製造業関連の経済指標の悪化を受け、リセッション入りの可能性が高ま
ったとの見方もある。
鉱工業生産の推移をみると、14年12月をピークに約1年にわたり、低下
基調が続いている(図1)
。戦後のデータを確認すると、鉱工業生産が、
12カ月以上にわたり低下して、リセッションと判定されなかったケース
は、89年1月~90年1月の一度きりである。そのケースにおいても、6か月
後の90年7月からは景気後退入りしている。
エネルギーを除く製造業
は拡大基調を維持
しかし、今回の鉱工業生産の低下基調は、シェール産業を中心とする
エネルギー産業の落ち込みを反映したものであり、図1にみられるよう
に、鉱工業生産(除くエネルギー)は上昇基調を保っている。つまり、
エネルギー産業を除いた製造業の業況は、景気後退入りを示唆するほど
には、悪化していないといえる。
ただし、鉱工業生産(除くエネルギー)についても、水準でみると右
肩上がりであるものの、減速感は出ている。次頁図2で、同指数の前年
比を確認すると、エネルギー産業のような落ち込みはみられないが、伸
び率は徐々に低下している。
一部には、エネルギー産業からの悪影響が波及したとみられる。だが、
嶋中 雄二
景気循環研究所長
産業連関表をみると、エネルギー産業は、その他製造業からの中間財の
鹿野 達史
景気循環研究所副所長
シニアエコノミスト
響は限定的と考えられる。
宮嵜 浩
シニアエコノミスト
03-6213-6573
miyazaki-hiroshi@sc.mufg.jp
福田 圭亮
シニアエコノミスト
03-6213-2608
fukuda-keisuke@sc.mufg.jp
購入が比較的少なく、エネルギー産業の低迷が製造業全体に及ぼした影
('97=100)
112
104
100
96
鉱工業生産
(除くエネルギー)
92
88
景気循環研究所
84
三菱ビルヂング
鉱工業生産(全体) 14/12
108
本レポートは、嶋中雄二の見方に基づ
き、宮嵜・福田が執筆を担当しています。
東京都千代田区丸の内 2-5-2
図1.米国の鉱工業生産の推移
07
08
09
(出所)FRB
10
11
12
13
14
15
16
(年、月)
1
2016 年 3 月 2 日
鉱工業生産(除くエネルギー)の伸び率が鈍化している最大の要因は、輸
輸出比率の高い業種
出の減速にあるとみられる。図3は、業種別の生産(限界的な動きを見るた
程、業況が悪化
めに、前年比の前年差を用いた。図中脚注参照)と当該業種の輸出比率の関
係をみたものである。輸出比率の高い業種ほど、生産の伸び率の低下幅が大
きい。輸出の低迷が、製造業の業況を押し下げたと判断できよう。
原油安でカナダ・メ
米国の輸出の落ち込みは、ドル高の影響もあるが、大きくは輸出相手国の
キシコの景気が悪
景気低迷に起因すると考えられる。米国の国別輸出額の 1 位と 2 位であるカ
化、同国向け輸出が
ナダとメキシコを見た場合、14 年半ばから、両国の生産の伸びは低下してお
低迷
り、これに合わせて、米国からの輸出も落ち込んでいる(図4、5)。カナ
ダとメキシコの共通点は、いずれも、経済全体に占める石油産業のウェイト
が大きく、いわゆる資源国あるいは産油国と分類することも可能だろう。両
国とも、原油価格の下落により、14 年半ばから生産が弱含んでいる。
図2.米国の鉱工業生産の伸び
図3.米国の業種別生産と輸出比率
(前年比、%)
(%)
10.0
9.0
8.0
7.0
6.0
5.0
4.0
3.0
2.0
1.0
0.0
-1.0
-2.0
-3.0
-4.0
生
産
(
鉱工業生産
(除くエネルギー)
(左目盛)
)
前
年
比
の
前
年
差
07
08
'09/6
▲15.2
09
鉱工業生産(全体)
(左目盛)
10
11
12
13
14
15
40
(年、月)
輸出 (米国→カナダ)
輸出(米国→カナダ)
(左目盛)
照明
印刷
木材
アパレル
航空
コンピュータ
プラ・ゴム
機械
自動車
0%
10%
20%
30%
40%
50%
60%
(%)
(注)輸出比率={輸出÷(出荷)}、除く石油関連業。
前年比の前年差は、15年1月と16年1月の伸び率を比較。
(出所)Annual Survey of Mfg, International Trade Commission, FRB
図4.カナダ向け輸出とカナダの生産
(前年比、%)
食品
輸出比率
16
(出所)FRB、ISM
0.2
0.1
0.0
-0.1
-0.2
-0.3
-0.4
-0.5
-0.6
-0.7
図5.メキシコ向け輸出とメキシコの生産
(前年比、%)
25
(前年比、%)
40
20
輸出 (米国→メキシコ)
(前年比、%)
25
輸出(米国→メキシコ)
(左目盛)
20
20
20
15
15
0
10
5
(20)
0
10
5
(20)
0
0
(40)
カナダの生産
(ドル/バレル)
(右目盛)
140
(60)
120
100
80
(80)
60
WTI原油先物価格
40
(左目盛)
20
(100)
0
08
09
12
15
07
10
11
13
14
(出所)米商務省、Datastream、Bloomberg
-5
-10
-15
-20
-25
16
16
(年、月)
(40)
(ドル/バレル)
140
(60)
120
100
80
(80)
60
40
20
(100)
0
07
08
メキシコの生産
(右目盛)
2
-10
-15
WTI原油先物価格
(左目盛)
09
10
11
12
13
(出所)米商務省、Datastream、Bloomberg
巻末に重要なお知らせを記載していますので、ご参照ください。
-5
14
-20
15
-25
16
16
(年、月)
2016 年 3 月 2 日
原油市場の持ち直し
このように、原油価格の下落は、米国のエネルギー産業だけでなく、輸出
で米製造業も回復へ
の低迷を通じて、エネルギー以外の製造業にも悪影響を及ぼしていると考え
られる。
しかし、主要産油国は、既に需給改善に向けた話し合いを開始している。
今後は、増産凍結などの措置により、原油価格は緩やかに上昇すると考えら
れる。原油価格が上昇すれば、産油国の景況感も改善し、米国の産油国向け
輸出も持ち直すだろう。
米国製造業は、足元で、ISM 製造業景況指数などに改善の兆しが見え始め
ている。今後、原油市場が持ち直す中で、米国製造業は回復基調を強めると
予想する。
(以
(16.3.2
巻末に重要なお知らせを記載していますので、ご参照ください。
3
上)
福田)
2016 年 3 月 2 日
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
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引業協会
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巻末に重要なお知らせを記載していますので、ご参照ください。
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