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Title 鉛塩投与が母体および哺乳児の歯牙に及ぼす影響につい ての実験

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Title 鉛塩投与が母体および哺乳児の歯牙に及ぼす影響につい ての実験
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鉛塩投与が母体および哺乳児の歯牙に及ぼす影響につい
ての実験的研究( Abstract_要旨 )
四方田, 禮太
Kyoto University (京都大学)
1962-12-18
http://hdl.handle.net/2433/210991
Right
Type
Textversion
Thesis or Dissertation
none
Kyoto University
【123 】
氏)
四
よ
学 位 の 種 類
方
も
医
田
だ
学
論
医
殖
太
れい
だ
博
博
士
第 6 8 号
昭 和 37 年 12 月 18 日
i
学位授与の要件
学 位 規 則 第 5 条 第 2 項 該 当
学 位 論 文 題目
鉛塩 投与が 母体 および哨 乳児 の歯牙 に及 ぼす影響 につ いて
の実験的研究
(主
論 文 調 査 委員
査)
教 授 鈴 江
論
文
懐
内
教 授 岡本 耕 造
容
の
要
教 授 美濃 口
玄
旨
実験的鉛中毒 の歯牙 におよぼす影響 については, 今 まで に多 くの先輩 たちによ って報 告 されてい るが,
これが乳腺経由による輔乳児 の歯牙 におよぽす影響 について の報告 はきわめて少 ない。 そ こで著者 は白鼠
に酪酸鉛 を投与 して, 実験的 に鉛 中毒を起 させた場合 の母体 および哨乳児 の歯牙 におよぼす影響 について∴
いろいろの角度 よ り詳細 に検索 した結果, つ ぎにのべ るよ うな知見 を収 め ることがで きた。
1. 乳児を有す る授乳期 におけ る母体 に体重 g ごとに酪酸鉛 を 1m g 連 日投与 す ると, 母体 は中毒症状,
すなわち食欲不振, 運動不活償, 呼吸困難等 を呈 し, 大半 は栄死す るが, その他 は中毒症状 のまま体重
は除 々に下降 した。 また乳児 も対照群 に比 し衰弱状態 を続 けなが ら成長 した。
2. 下顎切歯 の発育速度 は母体では対照群 に比 し実験的全般 にわた り遅延状態 を示 した。 また乳児 も対照
群 に比 しその程度は軽度であるが母体 と同様歯牙発育速度は遅延 した0
3.
歯牙 および下顎骨 の C a 量 は母体 においては切歯, 臼歯, 下顎骨 といずれ も対照群 に比 し減量 を示 し,
その比率は臼歯く切歯< 下顎骨 の順 であ った。 乳児 において も母体 と全 く同様 の成績であ った。
無機燐量 は母体 および乳児 とも対照群 に比 し切歯, 臼歯, 下顎 とも増量 を示 し, 母体 で は臼歯, 乳児
では下顎骨 において著 明に増量でたが, その比率 はいずれ も臼歯 において最高値を示 した。
4 . 切歯, 歯牙硬度 は母体 および乳児 とも唇側, 中央 , 舌側部 といずれ も対照群 に比 し低 か った。
5 . 病理組織学的所見
A ・ 歯牙 ; 象牙質で は母体 は外壁象牙質 に石灰球 の異常 出現がみ られ, 一般 に層板 は不明瞭であ るo 乳
児では中央象牙質 においてやや歯小管 の配列が乱れている程度で母体 のごと く著 る しい変化 はなか っ
た。 歯髄 においては母体 および乳児 とも血智 の拡大充血を見 るが, 特 に母体ではそれが顕著 にあ らわ
れ, 固有細胞 の萎縮, 象牙芽細胞 の配列不正, 萎縮化 の傾 向を認めた。
B ・ 肝臓 ; 母体では轡血, 細胞索 の混乱, 肝細胞原形質 の空胞化, 混濁腫脹, 核濃縮等 の退行性変化を
招来す るが, 乳児 においては母体 に比 し軽度ではあるが同様 の変化が見受 け られた。
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C . 腎臓 ; 母体では変化 も顕著で中毒性 ネフローゼの徴候を示 したo すなわち腫大, 混濁腫脹, 硝子滴
変性, 壊死等 が認 め られた。 乳児 において も母体 に比 しやや軽度ではあ るが全例 にわた り同様 の変化
を認 めた。
D . 胸腺 ; 母体 においては実質萎縮, 皮髄不明瞭等著 明な機能低下像を示すが乳児では, 対照群 に比 し
ほ とん ど変化 はなか った。
E . 甲状腫 ; やや機能減退 の傾 向を示 したO すなわち膿胞 中等大以下 のものが多 く, コロイ ドは一般 に
淡染で避胞上皮 は偏平状 のものが多い。 乳児 においては胸腺同様対照群 に くらべ あま り著 る しい変化
はなか った。
F . 勝臓 ; 甲状腫, 胸腺 と同様 , 機能低下 の像を示 した。 すなわち ラ氏 島腺純減 は強度 の萎縮を示 し,
原形質 は著明な変性像 を招来 した。 乳児 は対照群 に比 し特記すべ き所見 には接 しなか った。
論 文 審 査 の 結 果 の 要 旨
鉛 中毒 に関す る研究 は古 くか ら多 く行なわれているが, 中で もとくに注 目され るのは大正後期 に行なわ
れ た 「所謂脳膜炎」 に関す るところのものである。 当時乳児 におけ る鉛摂取が果 して母乳 に由来す る可能
性 が有 るか無 いか とい うことも問題 とな ったが結局 は乳腺経 由によ らず, 母体 の皮膚 に散布 された含鉛 白
粉 が直接乳児 に経 口的 に摂取 された うえでの鉛 中毒 を主体 とす ることが確認 されたのであ った。 しか し母
乳 に混 じて排 出 され る鉛 がけ っ して絶無 とい うわけではな く, 乳腺 および乳汁中に鉛 が証明 され, またそ
れ の哨乳 による移行 に関す る研究観察 も散見 され る。
ところが鉛 中毒 とはかぎ らず, 一般 に母体 の各種中毒症 が乳児歯牙 におよぼす影響 につ いての研究 はき
わめてまれであ り, ことに著者 のよ うな鉛 中毒 についての ものは全 く見 られない。
そ こで著者 は白鼠を実験動物 と して鉛塩投与 による慢性鉛 中毒 を起 こさせ, 出産後一定時 日を経 た乳児
の歯牙萌 出開始を待 って, 母体 および噂乳児 の歯科学的研究を試みたのであ る。 すなわち歯牙 の萌 出発育
状態 , その化学的組成, 物理学的性状を観察 し, さらに歯牙 および主要 内臓器官な どについて も病理組織
学的検索を とげ, 明 らかに母体 のみな らず, 哨乳児 に も鉛 中毒 の所見 を認めたのである。
以上 は, 今 まで ま った くこの種 の研究 のかけていた鉛 中毒 の母子間移行 の歯科学的研究 の領域 において,
興味あ る知見 を補遺す るところのものであ り, したが って本論文 は医学博士 の学位論文 と して価値 あ るも
の と認 め る。
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