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電力中央研究所報告 環 境 報告書番号: V 0 9 0 0 9 微生物変換における複合微生物系の利用 (その1) -固定床式メタン発酵における発酵槽能力と微生物群集への担体の影響- 背 景 廃棄物処理とメタン回収を同時に行うメタン発酵は、バイオテクノロジーを活用 した炭素循環プロセスの一環として注目されている。現在、メタン発酵は廃液を対 象に実用化されているが、稲わらや生ごみ等の固形廃棄物を対象にした場合、処理 速度やメタン回収の安定性などに課題がある。このため、メタン発酵に関わる複雑 な微生物群集注 1) を保持し、処理の安定化を図る目的で、炭素繊維担体を槽内に設 置した固定床式メタン発酵が検討されている。しかし、担体設置に伴い自然に変わ る微生物群集構造の変化や、有機物分解及びメタン生成への効果は十分に解明され ていない。 目 的 固形廃棄物の一例として稲わらを用いて固定床式メタン発酵を行い、発酵槽能力 (稲わら分解とメタン生成)と微生物群集への担体設置の影響を明らかにする。 主な成果 実験室規模(容量 250ml)で、炭素繊維担体を設置した発酵槽(固定床式発酵槽) と担体未設置の発酵槽に、沼の底泥由来の微生物群集と稲わら及び培養液を入れ、 55℃で 45 日間連続運転した。その間、発酵槽能力及び自然に変化する微生物群集の 種や量について調べ、以下の結果を得た。 1.担体設置による稲わら分解とメタン生成の促進 発酵槽能力を比較した結果、担体を設置した固定床式発酵槽では担体未設置の発 酵槽と比べて、稲わらの残存量が 68%減少、メタン生成量が 451%増加し、担体設 置により発酵槽能力が高まることが明らかとなった。 2.担体設置による微生物量の変化 固定床式発酵槽と担体未設置の発酵槽の微生物量を比較した結果、担体上で微生 物群集が高密度に存在することが明らかとなった。群集の中では、遺伝子解析から 酢酸資化性メタン菌と推定される種の活発な増殖が認められ、担体を設置すること で槽内の酢酸資化性メタン菌の総数が約 12 倍増加した。 3.担体設置による微生物種への影響 細菌群とメタン菌群について群集構造を調べた。固定床式発酵槽では存在する細 菌種が多く群集が多様化し、その約半数種は担体未設置の発酵槽では見られなかっ た。一方、メタン菌群については、酢酸資化性メタン菌が優占種であった。 以上の結果、固定床式発酵槽では、担体の設置により槽内の微生物群集が高密度 化かつ多様化することによって稲わらの分解能力が向上し、担体上で酢酸資化性メ タン菌が優占種になることでメタン生成量が向上することが明らかとなった。 今後の展開 微生物群集から、メタン発酵において主要な機能を担う微生物種を個別に取得し、 それらを組み合わせて微生物群集を人工的に再構築し、メタン発酵の安定性を高め ることを目指す。 注 1)微生物群集:ここでは、細菌群とメタン菌群をあわせたものと定義される。 研究報告 V09009 担 当 者 連 絡 先 [非売品・不許複製] キーワード:メタン発酵,固定床式リアクター,担体,微生物群集,稲わら 森田 仁彦(環境科学研究所 バイオテクノロジー領域) (財)電力中央研究所 環境科学研究所 Tel. 04-7182-1181(代) E-mail : [email protected] ©財団法人電力中央研究所 平成22年3月 09-009