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充電器からの無効電力注入による電気自動車 夜間一斉充電時の配電線
電力中央研究所報告 電 力 輸 送 充電器からの無効電力注入による電気自動車 夜間一斉充電時の配電線電圧低下補償手法 キーワード:電気自動車,充電,配電線,電圧調整,自律分散制御 背 報告書番号:H10006 景 低炭素社会実現のため電気自動車(以降,EV)の開発が進んでいる。EV が普及すれ ば,夜間に住居や事業所の駐車場で普通充電 *1 を行うスタイルが中心になると予想され るため,夜間の一斉充電による過負荷が懸念される。過負荷による配電線の電圧低下問 題に対して,従来通り配電線側で電圧補償を行う手法としては SVR*2 の設置が考えられ る。一方,電圧低下を引き起こす EV 充電器 *3 自体により電圧補償を行う手法について は検討されていない。 目 的 EV 充電器に無効電力供給機能を付加することで,配電線の電圧低下を補償する手法 を提案する。 主な成果 1. 提案手法 EV 充電器が配電線から有効電力を得ることにより生じる電圧降下を,その充電器が 自動的に無効電力を配電線に注入することで補償する配電線電圧低下補償手法を提案 する(図 1)。 ・EV 充電器の交直変換回路には,通常,リアクトルを介した VSC 回路 *4 が用いられ る。提案手法では,VSC 回路交流側の電圧の振幅と位相を制御することで無効電力 を配電線に注入する。EV 充電器に加える変更はその制御方法のみであるため,充 電器のコストアップは小さいと考えられる。 ・注入すべき無効電力量 Q は,EV 充電器自端の電圧 V,有効電力量 P,配電用変電 所から EV 充電器までのインピーダンス Z から簡単な式で算出できる。これにより, 配電線の拡張・変更があっても Z の値のみ更新すれば,各 EV 充電器が自ら供給す べき無効電力量を算出して配電線に注入することができる。 2. 適用効果 住宅地域を想定したモデル配電系統により,提案手法の効果をシミュレーション検討 した(図 2)。その結果,EV が電灯需要家数の 50 % に普及して夜間の過負荷となった 場合,対策を講じなければ電圧基準の下限値を下回る箇所が発生するが,提案手法の適 用により電圧低下を抑制してこれを防止できることが明らかとなった。 *1 ここで言う普通充電とは,車載の充電機能を用いて交流 100 もしくは 200 V で充電する方式。通常, 5 ~ 8 時間かけて充電を行う(200 V の場合)。 *2 Step Voltage Regulator の略。単巻のタップ切換え変圧器による自動電圧調整器。 *3 夜間の一斉充電を問題としているため普通充電用の EV 充電器(車載)を指す。以降も同様。 *4 Voltage Source Converter の略。MOSFET や IGBT による PWM 型の整流回路(図 1(a)参照)。 (a)EV 充電器の構成 図1 (b)電圧低下補償の原理 提案する配電線電圧低下補償手法の原理 図2 住宅地域を想定したモデル配電系統における提案手法の適用効果 研究担当者 野田 琢(電力技術研究所 電力応用領域) 問い合わせ先 (財)電力中央研究所 電力技術研究所 研究管理担当スタッフ Tel. 046-856-2121(代) E-mail : [email protected] 報告書の本冊(PDF 版)は電中研ホームページ http://criepi.denken.or.jp/よりダウンロード可能です。 [非売品・無断転載を禁じる] C 財団法人電力中央研究所 平成23年4月発行 ○ 10−012