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水・土砂流出に影響する流域環境の評価

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水・土砂流出に影響する流域環境の評価
電力中央研究所報告
建 設 技 術
水・土砂流出に影響する流域環境の評価
−陸域観測衛星画像を用いた植生判別手法の開発−
キーワード:森林植生,リモートセンシング,地理情報システム,
土壌侵食,水力ダム
背
報告書番号:V11003
景
水力ダムの安定的な運用のためには、水や土砂の流入に影響を与える要因を把握する
ことが重要である。森林の伐採やその後の植栽と樹種の違いは、森林域からの水や土砂
の流出に大きな影響を与えるが、一般に良く用いられる現地調査と空中写真判読によっ
て森林の状況を把握する手法には多大な労力を要する。調査の効率化には衛星情報の利
用が有効とされているが、
これまでの LANDSAT などの広域観測衛星を用いた手法では、
解像度が 30m 程度と低いために、森林の優占樹種の判別を行うことができなかった。一
方、IKONOS などの高解像度衛星画像を用いた手法では、詳細な樹種判別は可能である
ものの、撮影頻度や範囲の制約から短期間で広域の植生データを作成することが困難で
ある。水や土砂の流入予測のためには、流域スケールで樹種や伐採の状況を効率的に把
握するための手法の開発が必要である。
目
的
陸域観測衛星画像(ALOS AVNIR-2)を用いて、広域の樹種や伐採の状況を判別する
手法を開発し、地形や土壌などの情報と統合して流域の土砂発生可能性の評価を行う。
主な成果
1. 衛星画像解析と空中写真判読による植生判別手法の開発と妥当性の検証
広域での樹種判別を可能するために、大気・地形補正後の衛星画像の領域分割結果か
らの空中写真判読によるトレーニングデータ注1)と、輝度やテクスチャなどの統計量を
もとにした決定木分析注2)による判別モデルを組み合わせた植生判別手法を開発した(図
1)。2005 年の台風で大規模な土砂災害の発生した宮崎県耳川流域に本手法を適用した結
果、スギ、ヒノキ、アカマツなどの樹種や伐採地等を、従来よりも広域かつ高精度(判
別率 90%以上)で判別できることが確認された。
2. 植生データにもとづく土砂発生可能性の評価
同流域において植生判別手法を用いて流域全体の植生データを構築し、数値標高デー
タや土壌図などの情報とともに GIS データベースを構築した。文献調査による植生や土
壌、地形による侵食性の違いをデータベースに統合することにより、ダム上流域で土壌
表層からの土砂発生ポテンシャルが高いと推定される地域を抽出することが可能になっ
た(図 2)
。
今後の展開
本手法を樹種構成や環境の異なる流域に適用して有効性を検証するとともに、流出解
析モデルと統合し、ダムへの水や土砂の流入予測手法へ展開する。
注 1: 統計的な判別モデルを作成する場合に、パターンを認識するための基準を定義するデータ。
注 2: トレーニングデータを最もよく二つに判別できる変数を統計的なアルゴリズムによって探索し、分割を繰り返す
ことによって判別のルールを示す樹形状のモデルを構築する手法。
図 1 植生判別モデル構築および土砂発生源評価のフロー
太点線が今回提案した植生判別モデルによる土砂発生可能性評価のフロー
図 2 宮崎県耳川上流域の土砂発生ポテンシャルマップ
植生 GIS データと土壌データ、数値標高モデルを統合することで、
ダム上流の土砂可能性の高いエリアの分布状況が把握できる。
研究担当者
問い合わせ先
阿部 聖哉(環境科学研究所
生物環境領域)
(財)電力中央研究所 環境科学研究所 研究管理担当スタッフ
Tel. 04-7182-1181(代) E-mail : [email protected]
報告書の本冊(PDF 版)は電中研ホームページ http://criepi.denken.or.jp/よりダウンロード可能です。
[非売品・無断転載を禁じる] ©財団法人電力中央研究所 平成23年10月発行
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