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実在都市キャニオンにおける流れ場に関する 風洞実験

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実在都市キャニオンにおける流れ場に関する 風洞実験
電力中央研究所報告
環
境
実在都市キャニオンにおける流れ場に関する
風洞実験
キーワード:都市キャニオン,流れ場,風洞実験,
レーザー流速計,粒子画像流速計測法
背
報告書番号:V10016
景
建物周辺の風環境を改善することは,省エネルギーや CO2 排出抑制に寄与するだけで
なく,屋内の空気環境やその快適性にも大きな影響を与える。屋外の良好な風通しを確
保するためには,都市キャニオン注 1)内の流れ場の詳細を把握することが重要である。
当所ではこれまで単純化した都市キャニオンを対象に流れ場の検討を行ってきた。しか
し,実在する都市キャニオンを対象にした風洞実験において,流れ場の再現性やその詳
細な構造を検討した例はない。
目
的
実在都市キャニオンを対象とした風洞実験を行い,実測値との比較により流れ場の再
現性を検討する。また,キャニオン内の流れ場の詳細な構造を明らかにする。
主な成果
キャニオン内の流れ場の実測が行われた旧桜堤団地(東京都武蔵野市)を対象に風洞
実験を行った。対象団地周辺の半径約 200m の範囲を縮率 1/150 で再現した実験模型を
用い,キャニオン内の流れ場を計測した(図 1)。
1. 流れ場の再現性
実在都市キャニオン模型を用いた風洞実験の結果を,キャニオン内の多点において実
測値と詳細に比較することにより,実現象に近いキャニオン内の流れ場(平均風速,乱
れ強さ)を再現できることを明らかにした(図 2)。本実験では,建物のベランダなど微
細な構造を考慮しなかったが,平均風速,乱れ強さは実測値と良く一致した。
2. 流れ場の詳細な構造
建物が複雑に並んだ実在都市キャニオンでは,キャニオン端および上空から流入した
風は反対側のキャニオン端に向かうとともに,一部はキャニオン上部へ流れる(図 3)。
また,流れ方向断面には循環渦が形成されており,キャニオン内の風は 3 次元でスパイ
ラル状に流れることを明らかにした(図 4)
。ただし,スパイラル流れの詳細な構造は,
キャニオンの形状や周囲の建物配置,道路幅等の影響を受ける。
今後の展開
本研究と同じ都市キャニオンを対象に当所で開発した気流・温熱評価モデルを適用し,
風洞実験値や実測値との比較によりモデルの再現精度を検証する。
注 1)建物と建物にはさまれた地面から上空までの空間
風
PIV
LDV
実測
地上高 さ/建物高さ(-)
2
風
69mm
中央キャニオン
AB
1
0
-0.4 0 0.4 0.8 1.2
0
0.2
0.4
平均風速/建物の
乱れ強さ/建物の
1.8倍高さの平均風速(-) 1.8倍高さの平均風速(-)
48mm
59mm
118mm
図 1 風洞実験模型と計測対象領域
実測値との比較は,計測領域の中央部に
位置するキャニオン群の最も風上側のキ
ャニオンで行った。当該地域の典型的な
北風を対象(大気安定度は中立条件)と
しており,建物の長辺は風向にほぼ直交
するが,およそ 5-8°ずれている。
キャニオン端
からの流入風
図 2 地点 A における風洞実験結果と実測値
(2004 年 11 月 4 日 12:00-12:10)の比較
実測値は,大気安定度中立・風向北の値であ
る。
風洞実験値は PIV
(粒子画像流速測定法),
LDV(レーザー流速計)の結果である。
キャニオン上空
からの流入風
地上高さ(mm)
0.0m/s
風
鉛直方向
建物側面の
剥離
スパン方向
建物屋根面の
剥離
スパイラルの
流れ
スパン距離(mm)
流れ方向平均風速(m/s)
風速 1m/s
図 3 キャニオン内の流れ場
図 1 の B 断面における風速 3 成分である。
流れ方向の風速はコンター図で示し,スパ
ン方向と鉛直方向の風速は,ベクトル図で
示す。□枠がキャニオン内である。
図 4 キャニオン内の流れ場の概念
建物が複雑に並んだ実在都市キャニオン
では,風上建物の側面と屋根面で剥離し
た流れがキャニオン内で合流し,キャニ
オン内には 3 次元のスパイラル状の流れ
が形成される。
関連研究報告書
V08027「都市キャニオン内の流れと拡散に関する屋外および風洞実験」
V08055「集合住宅周辺の気流・熱拡散に関する風洞実験」
研究担当者
香月 壮亮(環境科学研究所
問い合わせ先
大気・海洋環境領域)
(財)電力中央研究所 環境科学研究所 研究管理担当スタッフ
Tel. 04-7182-1181(代) E-mail : [email protected]
報告書の本冊(PDF 版)は電中研ホームページ http://criepi.denken.or.jp/よりダウンロード可能です。
[非売品・無断転載を禁じる] ©財団法人電力中央研究所 平成23年4月発行
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