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野生動物カメラトラップ法の高度化

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野生動物カメラトラップ法の高度化
電力中央研究所報告
環
境
野生動物カメラトラップ法の高度化
−単一カメラ画像の 3 次元座標化による動物サイズ計測−
キーワード:環境モニタリング,体サイズ測定,3 次元モデリング,
カメラトラップ,野生動物管理
背
報告書番号:V11034
景
生態系の保全・管理や環境影響評価等において行われる野生動物の調査では、人目に
触れることの少ない野生動物のデータを効果的に取得する手法として、カメラと赤外線
センサーを用いたカメラトラップ法注)の利用が広がりつつある。カメラトラップ法では、
撮影された動物の種類と撮影頻度の情報が用いられているが、画像に写った体の部位の
定量的な情報は活用されていない。体の部位のサイズデータは、動物個体群の評価や管
理に有用な情報となるが、これまで多大な労力が必要な捕獲に頼っている。
目
的
カメラトラップ法において、単一カメラの画像から野生動物のサイズ計測を可能にす
る手法を開発する。
主な成果
1. カメラトラップ法画像の 3 次元座標化
従来のカメラトラップ法による単一カメラ画像だけでは、動物の空間的位置や向きの
違いにより実際のサイズを計測できないことから、撮影後の画像を 3 次元座標化し、サ
イズ計測を可能にする方法を考案した(図 1)。①複数の角度からカメラトラップ法と同
じ場所を撮影する、②3次元モデル解析により撮影空間を 3 次元座標化する、③3 次元
モデル解析に用いた画像とカメラトラップ法による画像の同じ地点を照合し、カメラト
ラップ法による画像を 3 次元座標化する。これにより動物が地面と接する地点から動物
の空間的な位置を座標化でき、サイズ測定が可能となる。
2. 画像計測の精度と野生動物の体サイズ計測例
撮影場所に長さの異なる計測テスト用のメジャーをセットし、カメラトラップ法で撮
影した画像から長さを計測した結果、誤差は平均 2%であり、一定の精度で計測が可能
である事が分かった。カメラトラップ法により撮影したカモシカおよびニホンジカの測
定では、3 次元における位置の特定と後ろ足や胴体の高さ等の計測や(図 2)
、複数個体
の後足長から体サイズ分布を推定することができ、有用性が確認できた(図 3)。
今後の展開
野生動物の保全・管理等において、
出現頻度に加えサイズ計測を活用した詳細な個体、
個体群の分析に適用できる。今後、精度の向上と撮影・解析作業の効率化の検討を行い、
汎用性の高い手法の確立を目指す。
注)小型の赤外線センサーを単一カメラの内部あるいは外部に装着し、カメラの前方を通過した野生動物
を感知して自動的にその画像を記録する手法。
今回考案した方法
従来のカメラトラップ法
単一カメラ
・カメラトラップ法と同じ場所を対象
に複数(3∼5)の角度から撮影
1a. 撮影
2a. 撮影
・撮影空間の
3次元座標化
2b. 3次元モデル解析
1b. 2次元
・画像上の同じ
地点を照合
2c. 3次元座標化
動物の出現頻度
2d.空間位置特定とサイズ計測
z
x
y
動物の出現頻度
+サイズ計測
+空間的な位置
・同一場所のカメラトラップ法に対し
3次元化処理は1回で良い
・カメラトラップ法の事前、事後を問わない
蓄積された画像資産を分析できる
・カメラの機種によらない
図 1 従来のカメラトラップ法と今回考案した画像 3 次元座標化の考え方
45
40
35
︵
後
足
長
︶
c
m
30
25
子
雌成獣
図 2 ニホンジカ・ニホンカモシカのサイズ計測例
左上図は 3 次元座標化によって特定された写真のニ
ホンジカの位置。
雄成獣
20
図3
ニホンジカ複数個体の
サイズ計測例
縦バーは、計測された後足長
の範囲(最大値−最小値)
、黒
丸は平均値を示す。
研究担当者
竹内 亨(環境科学研究所 生物環境領域)
問い合わせ先
電力中央研究所 環境科学研究所 研究管理担当スタッフ
Tel. 04-7182-1181(代) E-mail : [email protected]
報告書の本冊(PDF 版)は電中研ホームページ http://criepi.denken.or.jp/よりダウンロード可能です。
[非売品・無断転載を禁じる] © 2012 CRIEPI
平成24年6月発行
11−024
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