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日本海沿岸地域の冬季における風車への雷放 電特性
電力中央研究所報告 電 力 輸 送 報告書番号 : H 0 9 0 0 5 日本海沿岸地域の冬季における風車への雷放 電特性 −仁賀保高原風力発電設備の 2005∼2008 年度冬季雷観測結果− 背 景 近年、日本海沿岸地域の風環境の良好な地点に多くの風力発電設備が建設されてい る。それに伴い、冬季雷による被害が増加し、早急な対策が望まれている。この問題 を解決するために、風車への雷撃様相を明らかにすることが強く求められている。 これまでの研究から冬季雷では継続時間の長い電流波形が多く、雷エネルギー(放 電電荷量)も大きいことが知られており(注 1)、風車ブレードの被害はそのエネルギー によるものと推定されている。そこで、風車ブレードへの雷電流特性やその落雷状 況を明らかにするために、当所では継続時間が長い雷電流波形を正確に測定できる 広帯域ロゴスキーコイル(周波数帯域:0.1Hz∼100kHz)を開発し、2005 年度から仁 賀保高原風力発電所において風車への雷撃様相の観測を行っている(注 2)。 目 的 風力発電設備の雷害対策を策定するため、冬季における風車への雷撃様相に関す るデータを蓄積すると共に、その特性を明らかにする。 主な成果 仁賀保高原風力発電所において、冬季雷の風力発電設備への落雷様相の観測を 2005∼2008 年度まで実施した。その結果、278 フラッシュ(注 3)の雷電流波形、129 件 の落雷状況の静止写真を得ることが出来た。これらを分析した結果から、以下の事 を明らかにした。 1.極性分布 全体の雷撃の内、負極性雷が 76%、両極性雷(注 4)が 18%、正極性雷が 6%の割合で あった。一般的な冬季雷の大地雷撃における負極性雷比率が 50∼70%(注 1)であるの と比較すると、200m 級煙突(注 1)や風車などの高建造物への雷撃では負極性雷の発生 率が高い。 2.雷エネルギー(放電電荷量)特性 各極性の雷放電電荷量の 50%値は、正極性雷で 30.2C、負極性雷で 20.8C である が、両極性雷は 97.8C と最も大きかった(表 1・図 1)。これは両極性雷の電流波高値 と継続時間が負極性雷や正極性雷の値よりも大きいためである(表 1)。この結果か ら、大きな放電電荷量を有することが多い両極性雷は設備に対して過酷な雷である と推定される。 3.多地点同時雷撃 異なる風車に 1 秒以内の時間差で雷撃が発生する多地点同時雷撃が全雷撃の内 30%で観測された。図 2 に今回初めて測定に成功した電流波形の一例を示す。最初 の雷撃(4 号風車)が発生した後に、その持続性雷電流がまだ流れているにも関わら ず、別の風車(1 号風車)で新たな雷撃が開始している。このような同時雷撃の詳細 な時間経過は、多地点での電流観測により初めて明らかになった。これは冬季雷の メカニズムを解明する上で重要なデータと考えられる。 (注 1) 関連報告書:三木、和田、浅川「日本海沿岸地域における冬季雷の上向き雷電流特性」電力中央研究所 研 究報告 T03024 (注 2) 関連報告書:浅川、和田、横山、新藤、蜂屋、兵藤「広帯域ロゴスキーコイルの開発と冬季雷における電 荷量の評価」 電力中央研究所報告、研究報告:H06010 (注 3) 一回以上の雷放電を含む一連の放電過程 (注 4) 1 回の雷放電(フラッシュ)の中で電流の極性が変化する雷。本報告では 0.4 秒の中で極性変化が発生する 雷を両極性雷と定義した。 表1 雷電流パラメータの 50%値 負極性 正極性 両極性 3.12 (212) 156 (147) 20.8 (147) 6.53 (16) 40.0 (16) 30.2 (16) 9.50 (50) 213 (42) 97.8 (42) 波高値 [kA] 継続時間 [ms] 放電電荷量 [C] 図1 (a) 静止写真(シャッター開放時間:250ms) 図2 放電電荷量の累積頻度分布 (b) 電流波形 多地点同時雷撃例 研究報告 H09005 キーワード:風力発電設備,冬季雷,雷電流,放電電荷量,多地点同時雷撃 担 当 者 三木 連 絡 先 (財)電力中央研究所 電力技術研究所 Tel. 046-856-2121(代) E-mail : [email protected] [非売品・不許複製] 恵(電力技術研究所 雷・電磁環境領域) c 財団法人電力中央研究所 平成22年5月 ○ 09−016