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利下げに踏み切った中国

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利下げに踏み切った中国
みずほインサイト
アジア
2014 年 12 月 2 日
利下げに踏み切った中国
みずほ総合研究所
調査本部
「選択的金融緩和」からの離脱とその背景
アジア調査部中国室
03-3591-1385
○ 中国人民銀行はこれまで小規模・零細企業などに対象を限定した「選択的金融緩和」主体の金融政
策を採用してきたが、11月22日に2012年7月以来となる利下げに踏み切った
○ 政府は、雇用の安定などを理由に、依然経済は合理的な範囲内で推移中との認識を崩してはいない
が、インフレ圧力低下による実質金利上昇が景気に悪影響を与えるのを懸念し、利下げを実施
○ 今回の利下げがどの程度の景気下支え効果を持つかを巡っては不確実性もあり、追加的な利下げや
法定預金準備率の引き下げ、インフラ投資の積み増しなどが行われる可能性がある
1.2012 年 7 月以来、2 年 4 カ月ぶりの利下げに踏み切った中国人民銀行
2014年11月21日、中国人民銀行は、22日より貸出基準金利、預金基準金利を引き下げると発表した。
前回利下げが行われたのは2012年7月6日であり、実に2年4カ月ぶりのことであった。引き下げ幅は、1
年物についてみると、貸出基準金利が0.4%Pt、預金基準金利が0.25%Ptであり、引き下げ後の金利水
準はそれぞれ5.6%、2.75%となった(図表1)。
このように中国政府は久しぶりに利下げに踏み切ったわけだが、それまでは対象を絞った「選択的金
融緩和」にとどめ、基準金利や法定預金準備率の全面的な引き下げは行ってこなかった。具体的には、
2014年4月頃から、小規模・零細企業や「三農(農業・農村・農民)」、バラック地区の改造などに対
図表 1
基準金利の調整状況
(単位:%)
預金基準金利
調整日
種別
2012年 2014年
7月6日 11月22日
普通預金
0.35
0.35 一般貸出
定期預金 3カ月
2.60
2.35
6カ月
2.80
2.55
1年
3.00
2.75
2年
3.75
3.35
3年
4.25
4.00 個人住宅
積立金貸出
5年
4.75
貸出基準金利
種別
6カ月以内
6カ月超1年以内
1年超~3年以内
3年超~5年以内
5年超
5年以下
5年超
調整日
2012年 2014年
7月6日 11月22日
5.60
5.60
6.00
6.15
6.00
6.40
6.55
6.15
4.00
3.75
4.50
4.25
(注)1.今回の調整により、預金金利の変動幅の上限が基準金利の1.1倍から1.2倍に拡大された。
2.金利決定に関する銀行の裁量権を増やすため、今回の調整では、貸出基準金利の期間の
一部統合や5年物の預金基準金利の廃止が行われた。
(資料)中国人民银行「中国人民银行决定下调金融机构人民币贷款和存款基准利率并扩大存款利率
浮动区间」2014年11月21日、「金融机构人民币贷款基准利率调整表」2012年7月6日、「金
融机构人民币存款基准利率调整表」2012年7月6日
1
象を絞る形で、部分的な預金準備率の引き下げ、担保補完貸出(Pledged Supplementary Lending、略
称PSL)1、手形再割引枠の拡大などが行われてきた(図表2)。また、住宅投機の再燃を警戒しつつも、
マイホーム取得世帯、買い替え希望世帯に対する住宅ローン要件の緩和が図られてきた。それに加え、
中国人民銀行は、公開市場操作や中期貸借ファシリティー(Medium-term Lending Facility、略称MLF)
2
などを通じて流動性の供給や金利の下方誘導を図ってきた(図表3)。
2.利下げ実施の背景
~インフレ圧力低下による実質金利上昇への懸念~
(1)「選択的金融緩和」が続けられてきた理由
このように金融政策の手段が「選択的金融緩和」からあらゆる経済主体に直接的に影響を与えうる
基準金利の引き下げへと広げられたことについて、一般に市場では意外感をもって受け止められた。
中国経済が減速傾向をたどり、2014年7~9月期の実質GDP成長率が前年比+7.3%に低下したとはいえ、
中国政府が1,000万人という都市部での年間雇用創出目標が前倒しで達成されたことなどを挙げ、経済
は「合理的な範囲内」にあるとの認識を繰り返し強調していたためだ。それゆえ、景気刺激策を強め
なければならないとの緊迫感が中国政府内ではさほど高くなく、社会的弱者の救済や民生改善、所得
格差の縮小に資する領域に絞った金融緩和、あるいは、不動産市況の底割れを防ぐことを目的とした
限定的な金融緩和が当面は続けられるだろうとの観測が少なからず共有されていた。
また、①実質金利を低めに誘導してきたこと3が債務の急拡大といった経済のひずみを生み出し、そ
の結果としてリスクプレミアムが上昇し、資金調達コストの高まりにつながったとの認識、②小規模・
零細企業を中心とする資金調達コストの問題は構造要因によるところが大きく、金融緩和よりも構造
図表 2
主要な「選択的金融緩和」策
図表 3
発表日
政策ツール
4月25日 預金準備率
引き下げ
6月16日 預金準備率
引き下げ
7月21日
8月8日
9月30日
10月15日
11月6日
政策の内容
県域農村商業銀行と県域農村合作銀行の預
金準備率をそれぞれ2%Pt、0.5%Pt引き下げ
「三農(農業・農村・農民)」や小規模・零
細企業向け貸出比率が一定水準に達してい
る商業銀行の預金準備率を0.5%Pt引き下げ
担保補完貸出 2014年4月に人民銀行が国家開発銀行に対し
てバラック地区の再開発向けの資金1兆元
(期間3年)を供給したとの報道
手形再割引枠 一部の人民銀行の支店に対して、手形の再割
の拡大
引の枠を120億元拡大。拡大分をすべて三農
や小規模・零細企業向けの資金供給に充てる
ことを指示
その他(住宅金 住宅ローンの要件緩和など住宅関連金融の
融の緩和)
緩和を発表。1軒目のローンを完済していれ
ば、2軒目購入についても1軒目と同じ貸出条
件の適用が可能に
その他(住宅金 住宅積立金の利用条件を緩和
融の緩和)
中 期 貸 借 フ ァ 人民銀行が、2014年9月にMLFという資金供給
シ リ テ ィ ー 手段を創設し、9月に5,000億元、10月に2,695
(MLF)による 億元の資金(期間3カ月物)を供給したと発
表。対象は、国有銀行、株式制商業銀行など
資金供給
(資料)中国人民銀行ホームページなどよりみずほ総合研究所作成
2
公開市場操作による流動性供給
10,000
(億元)
5,000
0
▲ 5,000
回収
供給
純供給額
▲ 10,000
▲ 15,000
2013/01
2014/01
(資料)中国人民銀行、CEIC Data
(年/月)
改革により解決されることが望ましいとの考えが中国人民銀行などから出ていたことも4、利下げに対
する慎重姿勢が続くとの観測を生んだと考えられる。
(2)「選択的金融緩和」から利下げへの転換の背景
では、中国人民銀行が今回このタイミングで利下げに踏み切った背景には、何があるのだろうか。
中国人民銀行のプレスリリースなどから推察するに、①インフレ圧力の低下傾向が明らかになった、
②経済の自律的な回復力は引き続き弱い、との情勢認識から、経済が「合理的な範囲」を超えて減速
するリスクを抑えるために、
「選択的金融緩和」から更に一歩進んで利下げが必要だとの判断が下され
たのだろう。具体的には次のとおりである。
中国政府は小規模・零細企業を中心に企業の資金調達コストが高止まりしていることに対して警戒
感を抱いてきた。そのため、上述のとおり、小規模・零細企業等への資金供給を促す政策などを採っ
てきた。その政策の成果について、中国人民銀行は、2014年11月6日に発表した2014年7~9月期の「貨
幣政策執行報告」の中で、名目貸出金利が幾分低下し、企業の資金調達コスト問題がやや改善したと
の認識を示していた。例えば、2014年9月の非金融企業の貸出金利は6.97%と、前月と比べて0.12%Pt、
2013年12月と比べて0.23%Pt低下したと中国人民銀行は指摘している(図表4)。
しかしながら、その後、9月、10月と2カ月連続で消費者物価上昇率が+1.6%と2カ月連続で+2%を
割り、インフレ圧力の低下傾向が明らかになったのをきっかけに(図表4)、実質貸出金利が上昇に向
かうことが懸念されるようになったのではないかと推察される。現に、中国人民銀行は、11月21日に
行った利下げに関する記者会見の中で、「物価上昇率が総じて反落傾向を呈しており」、「実質金利が
徐々に合理的な水準に戻るよう促し、企業の資金調達コストが高いというこの際立った問題を和らげ
る」ことが利下げの要点だと説明している5。
それでも景気の自律的な回復力が強ければ、利下げは必要なかったはずだ。しかし、11月半ばに入
り、10月の主要経済指標が明らかになるにつれ、中国経済の成長に対する下押し圧力の残存が改めて
意識されるようになった。例えば、10月の実質工
業付加価値生産額の前年比伸び率は+7.7%と、9
図表 4
月の+8.0%から小幅減速した。固定資産投資につ
いては、10月に名目伸び率が前年比+14.4%と、9
月(同+13.8%)から幾分加速したものの、その
主因はインフラ投資の加速であった。また、12月1
日に中国国家統計局が発表した11月の中国製造業
PMI(購買担当者景気指数)も、10月の50.8から50.3
10
消費者物価上昇率と実勢貸出金利
消費者物価上昇率
実勢名目貸出金利
実勢実質貸出金利
貸出基準金利(1年)
(前年比、%)
8
6
4
2
0
に低下した。
このように引き続き景気が自律的な回復力を欠
いていることも利下げを後押しする要因になった
と推察される。実際、上記記者会見でも、景気下
押し圧力に関し、幾度も言及がなされている。中
3
▲2
2009
10
11
12
13
14 (年)
(注)貸出金利は非金融企業向けの月平均値(通常3カ月
おきに中国人民銀行が発表)。実質金利は、名目
金利-消費者物価上昇率で計算。
(資料)中国人民銀行、CEIC Data
国政府は2014年の全国人民代表大会で通年の実質GDP成長率目標を+7.5%前後に設定したが、実質金
利の水準を幾らか低下させなければ(中国人民銀行の表現では「実質金利が合理的な水準に戻る」よ
う促さなければ)、実質GDP成長率が目標よりも下振れるリスクが高まると判断したと考えられる。
3.利下げの景気下支え効果と今後の金融政策の展望
(1)利下げの景気下支え効果は不透明
中国人民銀行は、今回の利下げは、インフレ圧力の低下による実質金利の上昇を回避するための「中
立的」な措置であり、積極的な金融政策に舵を切ったわけではないし、
「強力な経済刺激策」を打つ必
要もない、と説明している。①中国経済は引き続き「合理的な範囲内」で推移している、②景気下押
し圧力に直面してはいるが、新たな工業化、情報化、都市化、農業近代化によって成長を上向かせる
余地があること、などが中国人民銀行の「強力な経済刺激策」不要論の背後にはある6。
とはいえ、前節でみたとおり、多少の景気下支えは必要だとの認識があるとみるのが自然だろう。
では、今回の利下げは景気下支え役を果たせるのだろうか。
2013年7月の貸出金利自由化7後も、貸出基準金利は実勢金利への影響力を一定程度残している。そ
の典型が個人住宅ローン金利だ8。個人住宅ローンに限っては、金利の下限を貸出基準金利の0.7倍と
しなければならないとの規制が現在も残されている。こうしたことから、今回の利下げは住宅市場の
回復の一助にはなりそうだ。その他の貸出金利、債券などの金融商品の発行利回りが低下する可能性
もある。
ただし、利下げの景気下支え効果を判断するうえで、いくつかの不透明性がある。第一に、実勢貸
出金利の低下が限定的なものにとどまるリスクである。今回の利下げは、貸出基準金利の引き下げ幅
が預金基準金利の引き下げ幅よりも大きく、基準金利ベースでみて利鞘が縮小する。さらには、今回
利下げと同時に、預金金利の上限を預金基準金利の1.1倍から1.2倍に拡大することも発表されたが、
これは利下げ後も預金金利(1年物)の上限が3.3%に据え置かれることを意味する(図表5)9。1年物
貸出基準金利は6.0%から5.6%に引き下げ、預金金
利は上限の3.3%で据え置くとすると、利鞘は利下
げの前後で2.7%Ptから2.3%Ptに縮小する。
図表 5
7.0
貸出・預金基準金利の推移
(%)
6.5
銀行などの預金受入金融機関は、預金金利よりも
高めの金利を提供するインターネット金融や理財
10
6.0
5.5
5.0
商品 などへの預金流出圧力にさらされており、預
4.5
金獲得のために基準金利よりも高めに金利を設定
4.0
する可能性が高い。こうしたなか、銀行などが利鞘
3.5
3.0
の確保を図るため、国有企業などに比べて信用力の
2.5
低い小規模・零細企業などへの貸出金利は下げず、
2.0
利下げの影響力が限定的なものにとどまる可能性
もないとはいえない。
4
貸出基準金利
預金基準金利
預金金利上限
2009
10
11
12
13
14 (年)
(注)貸出基準金利、預金基準金利ともに1年物。
(資料)中国人民銀行、CEIC Data
一方で、利鞘確保のために基準金利に従って預金金利を引き下げた場合には、その金融機関は更な
る預金流出圧力に直面し、貸出残高を預金残高の75%以下に抑えるという預貸率規制のもとで貸出が
抑制されてしまう恐れがある。
(2)今後の金融政策の方向性
今後、中国政府はこれらの不透明性を見極めつつ、金融政策の舵取りを進めていくとみられる。上
述のとおり、債務の急拡大などにつながり、改革に逆行しかねない大幅な金融緩和はよほど景気が悪
化しない限り引き続き回避されるだろうが、追加的な小幅の利下げや法定預金準備率の引き下げが実
施される可能性はある。
その主因は、インフレ圧力の低下が続くとみられるためである。住宅販売面積の前年比伸び率が底
打ちの兆しをみせるなど、住宅市場には幾分明るさも見えはじめてはいるが、住宅販売価格の前年比
伸び率が底打ちするのは早くとも2015年半ばとなる可能性が高い11。加えて、国内の在庫調整圧力が
高めであるうえ(図表6)、WTI(ウェスト・テキサス・インターミディエート、期近の2015年1月物)
が2014年11月28日に1バレル66.15ドルと、約5年2カ月ぶりの水準にまで下落するなど、足元国際原油
市況の軟化が著しいため、インフレ圧力がさらに弱まり、利下げの余地が広がりやすくなっている。
また、経済に下押し圧力がかかる状況にも大きな変わりはないだろう。生産能力過剰問題や不動産
在庫の積み上がりの問題の解消にはまだ時間がかかり、投資の減速が続くと予測されるためだ。また、
欧州や日本の景気下振れによる輸出減速懸念が指摘されるようにもなっている。中国政府は2014年10
月以降、鉄道・空港建設に対する認可を相次いで行うなど(図表7)、インフラ投資の勢いをやや加速
させる姿勢をみせているが、それと併用する形で、緩やかな金融緩和を行い、ソフトランディングを
目指す可能性が高いだろう。
なお、2014年11月30日に、中国国務院法制弁公室が「預金保険条例」案を公表し、同案に対する意
見聴取を開始した12。2014年12月30日が意見聴取の締め切りとされており、2015年の早い時期に預金
図表 6
図表 7
生産・在庫バランス
最近承認された主なインフラ
建設計画
(単位:%Pt)
14/Q1
工業全体
石油・石炭
鉄鋼
素材
非鉄金属
14/Q2
▲ 5.2
14/Q3
14/8月 14/9月 14/10月
▲ 8.7 ▲ 10.1
▲ 9.2
▲ 9.3
▲ 20.1
▲ 8.7 ▲ 15.6 ▲ 17.8 ▲ 18.2 ▲ 16.7
▲ 8.4
▲ 3.1 ▲ 10.1 ▲ 12.7 ▲ 10.9 ▲ 10.1
5.3
8.2
4.2
4.1
▲ 1.1
▲ 0.7
非金属
▲ 1.2
▲ 5.4
▲ 6.7
▲ 7.6
▲ 6.9
▲ 6.8
化学
▲ 0.7
▲ 2.2
▲ 4.1
▲ 5.4
▲ 4.1
▲ 6.1
農副食品加工
▲ 5.9 ▲ 10.7 ▲ 12.3 ▲ 13.0 ▲ 13.3 ▲ 11.9
軽工業 食品製造
機械
▲ 3.9
3.2
▲ 2.6
▲ 7.3
▲ 9.3
▲ 7.4
▲ 5.1
紡織
▲ 3.4
▲ 5.3
▲ 5.7
▲ 5.7
▲ 5.7
▲ 3.6
一般機械
▲ 1.0
▲ 6.3
▲ 6.6
▲ 7.2
▲ 7.1
▲ 7.9
輸送機械
▲ 2.6
▲ 2.6 ▲ 12.9 ▲ 15.9 ▲ 10.8 ▲ 11.2
電気機械
▲ 0.9
▲ 4.4
通信・電子機器
▲ 5.3
▲ 8.0
▲ 2.2
▲ 7.8
4.5 ▲ 10.9 ▲ 16.3 ▲ 18.1 ▲ 15.2 ▲ 16.2
(注)生産・在庫バランス=生産前年比伸び率-在庫前年比伸び率。
在庫は生産者出荷価格指数により実質化。
(資料)中国国家統計局、CEIC Data
5
発表日
10月16日
10月22日
10月30日
11月5日
11月15日
11月25日
11月28日
計
対象
鉄道建設3件
空港建設5件
鉄道建設3件
鉄道建設3件
鉄道建設7件
鉄道建設5件
鉄道建設4件
鉄道建設3件
空港建設1件
鉄道建設28件
空港建設6件
金額
959億元
1,500億元
2,476億元
1,999億元
1,527億元
662億元
510億元
9,633億元
(資料)中国国家発展改革委員会ホームページ、
各種報道より、みずほ総合研究所作成
保険制度の運用が始まるとの観測も出ている。その暁には、更なる預金金利自由化の進展、預貸率規
制や法定預金準備制度といった預金受入金融機関に対する監督管理手法の変化などが予想される。預
金保険制度の導入に伴い、金融政策ツールや金融市場の様相がそれまでと非連続なものになる可能性
がある点については、留意しておいたほうがよいだろう。
1
担保補完貸出は、中国人民銀行が長期の安定資金を低利で金融機関に提供するための担保貸出で、そこで提示される
金利には長期政策金利としての意味合いも持たされている(中国人民银行货币政策分析小组「中国货币政策执行报告
2014 年第 3 季度」2014 年 11 月 6 日)。
2 中期貸借ファシリティーは、マネタリーベースの新たな供給手段として 2014 年 9 月に創設されたものであり、マク
ロプルーデンス管理の要求を満たした商業銀行、政策銀行に対して、中国人民銀行が国債、中央銀行手形、政策性金融
債、高格付債券などを担保に中期資金を供給する仕組みだと説明されている。中国人民銀行はこの中期貸借ファシリテ
ィーを使い、国有商業銀行、株式制商業銀行、比較的規模の大きな都市商業銀行や農村商業銀行に対して、2014 年 9
月には 5,000 億元、10 月には 2,695 億元を供給した(期間 3 カ月、金利 3.5%)。中国人民銀行は、中期貸借ファシリ
ティーに流動性供給手段のみならず、中期の政策金利の提示手段としての役割も担わせると表明している(中国人民银
行货币政策分析小组「中国货币政策执行报告 2014 年第 3 季度」2014 年 11 月 6 日)。
3 2000~2013 年の実質貸出金利の平均値と同期間の年平均実質 GDP 成長率を比べると、先進国、BRICs 諸国ともに、実
質貸出金利のほうが実質 GDP 成長率よりも高い(それぞれ 1.12%Pt、3.94%Pt 高い)。それに対して中国の場合は、
実質貸出金利のほうが実質 GDP 成長率よりも 7.92%Pt も低く、2013 年単年でみても 3.45%Pt 低い状態にある(人民
银行货币政策司课题组「贷款利率﹑不良贷款率和净息差的国际比较」(『财新网』2014 年 9 月 17 日))。
4 例えば、中国人民銀行研究局主席エコノミストの馬駿氏の論文記事など(马骏「保持稳定货币环境 解决导致融资贵
的深层次问题」(『金融时报』2014 年 9 月 18 日))。
5 中国人民银行「央行有关负责人就下调人民币贷款及存款基准利率并进一步推进利率市场化改革答记者问」2014 年 11
月 21 日。
6 同上。
7 貸出金利の下限は貸出基準金利の 0.7 倍に制限されていたが、2013 年 7 月 20 日にその制限が撤廃された。中国の金
利自由化の歩みについては、玉井芳野「中国の預金金利自由化の展望~鍵を握るのはセーフティーネットの構築~」
(み
ずほ総合研究所『みずほインサイト』2014 年 7 月 1 日、http://www.mizuho-ri.co.jp/publication/research/pdf/ins
ight/as140701.pdf)を参照されたい。
8 中国人民银行「中国人民银行关于进一步推进利率市场化改革的通知」2013 年 7 月 20 日。
9 利下げ前の 1 年物預金金利の上限は 3.0%×1.1 倍で 3.3%、利下げ後は 2.75×1.2 倍で 3.3%。
10 中国最大の電子商取引関連企業であるアリババグループのオンライン決済サービス会社アリペイ(支付宝)が提供
する余剰資金運用サービス(「余額宝」)の年利は 2014 年 11 月 28 日現在 4.055%(
「余额宝」ホームページ)、銀行理
財商品(小口の資産運用商品)の想定利回りは 2014 年 11 月 15~21 日の平均で 5.04%(人民元建ての非仕組物)と、
銀行預金金利よりも高い(「银行理财收益率将破 5%」(『中国证券报』2014 年 11 月 24 日)
)。
11 三浦祐介
「中国不動産市場の底入れはいつか~住宅市場の循環に基づく考察と今後の展望~」
(みずほ総合研究所『み
ずほインサイト』2014 年 10 月 23 日、
http://www.mizuho-ri.co.jp/publication/research/pdf/insight/as141023.pdf)。
12 「存款保险条例(征求意见稿)
」2014 年 11 月 30 日。
[共同執筆者]
アジア調査部中国室長
アジア調査部中国室エコノミスト
伊藤信悟 [email protected]
玉井芳野 [email protected]
●当レポートは情報提供のみを目的として作成されたものであり、商品の勧誘を目的としたものではありません。本資料は、当社が信頼できると判断した各種データに
基づき作成されておりますが、その正確性、確実性を保証するものではありません。また、本資料に記載された内容は予告なしに変更されることもあります。
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