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不発に終わるクリスマス商戦

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不発に終わるクリスマス商戦
US
みずほマーケットインサイト
みずほ総合研究所 市場調査部
エコノミスト
下園 瑞穂(03-3591-1248)
[email protected]
上席主任研究員・シニアエコノミスト
小野 亮(03-3591-1219)
[email protected]
2008/12/19
不発に終わるクリスマス商戦
~家計の財政悪化で個人消費は氷河期へ~
○ 11 月小売売上高は前月比▲1.8%と 5 カ月連続で減少
○ 主因は自動車関連売上高(前月比▲1.0%)とガソリンスタンド売上高(同▲14.7%)の落ち込み
○ クリスマス関連 5 業種の売上高は前月比+1.3%と底堅く推移も、12 月は伸び悩む公算
11 月の小売売上高は 5 カ月
米商務省が発表した 11 月の小売売上高は前月比▲1.8%と、5 カ月連続でマイナ
スとなった(図表 1)。過去最大の下落幅となった 10 月(同▲2.9%)に引き続き減
連続で減少
少傾向にあり、自動車販売高とガソリンスタンド販売高の悪化による影響が大きい。
自動車は前月比▲1.0%の減少となり、内訳を見ると自動車・部品が同▲2.8%、
乗用車・小型トラックは同▲3.3%と、自動車部門の売上高が全面的に下落してい
ることが分かる。
さらに、ガソリンスタンドの売上高が前月比▲14.7%と過去最大の落ち込み幅を
記録した。11 月の米国内ガソリン小売価格平均は 1 ガロン=2.15 ドルと、10 月平
均の 1 ガロン=3.05 ドルから 3 割程度下落し価格高騰前の水準に戻ったことによる
売上高減少が大きい。
ブラックフライデーの売り上げ
一方、全米小売業協会(NRF)がクリスマス関連業種と定義している家具・内
装(前月比+1.0%)、電気製品(同+2.5%)、衣料品・アクセサリー(同+2.6%)、
は底堅く推移
スポーツ・趣味・書籍・音楽(同+2.2%)、総合小売(同+0.9%)はそれぞれ前
月比増加しており、11 月全体でみれば、これら業種では底割れが回避された(図表
1)。米国では感謝祭(11/22)明けからクリスマス商戦がスタートしており、注目
された感謝祭翌日の金曜日(ブラックフライデー)と感謝祭明けの月曜日(サイバ
ーマンデー) は小売店の販促活動や例年と比べて早期の大幅な値引きなどが奏功
し、底堅い売り上げとなったと報じられている。米Web調査会社の comScore は
11 月 30 日、小売店の積極的な販促活動や値引きへ消費者がポジティブに反応し、
2008 年のブラックフライデーのオンライン支出額(旅行、オークション除く)は 5
億 3400 万ドルと、前年比+1%の微増になったとの調査結果を発表した。
12 月入り後の小売売上高は
伸び悩み
クリスマス商戦は山場を迎えた。例年同様、小売店によるクリスマス前の販促活
動が活発化し、またクリスマス終了後の在庫処分セールなどが実施されているとみ
られるが、11 月のようにクリスマス関連業績の売り上げがプラスの伸びを維持する
のは難しいだろう。実際、12 月に入ってからの消費の動きは鈍さが目立つ。12 月
13 日終了週の売上について米調査会社のレッドブック・リサーチが発表した小売売
上高指数は前年同期比▲1.4%、国際ショッピングセンター評議会(ICSC)とゴー
ルドマン・サックスが発表した米チェーンストア売上高指数は▲0.4%と、いずれも
マイナスとなった(図表 2) 。
当レポートは情報提供のみを目的として作成されたものであり、商品の勧誘を目的としたものではありません。本資料
は、当社が信頼できると判断した各種データに基づき作成されておりますが、その正確性、確実性を保証するものでは
ありません。また、本資料に記載された内容は予告なしに変更されることもあります。
家計の財政は大きく悪化、個
人消費は氷河期へ
個人消費支出の抑制要因としては、
(1)雇用情勢の急速な悪化、
(2)個人資産価
額の目減り、
(3)金融危機による消費者ローン、クレジットカード等の信用収縮が
あげられる。この中で(2)
、(3)はいわゆるバランスシート調整を指す。
(1)については米労働省から発表された雇用統計において、11 月の非農業部門
雇用者数が前月比▲53.3 万人と 1974 年 12 月以来の減少を記録し(図表 3)
、また
新規失業保険週間申請件数(12/13 終了週)は 55.4 万件(前週比▲2.1 万件)と、
1982 年 11 月以来の件数を記録した前週よりは減少したものの、前年比でみると約
20 万件の増加と依然高い水準にある。また所得環境を見ると、平均時間賃金はプラ
スの伸びが続いているが総労働時間が短縮されており、両者を合わせてみた雇用所
得の伸びはマイナスに転じている(図表 3)。
(2)については、サブプライムローン問題を契機とした住宅バブルの崩壊や米
国株の下落などで個人の純資産が傷ついており、可処分所得対比で 2007 年前半に 6
倍を超えていた純資産比率が現在 5.3 倍まで下落している(図表 4) 。
米国連邦準備制度理事会(FRB)が発表している「Flow of Funds」によると、
2008 年 9 月末時点での家計における住宅資産と金融資産の保有額合計は前年同期
比▲6.9 兆ドルの減少となっている。ミシュキン前FRB理事が 2007 年 8 月に行っ
た講演において、米国における限界消費性向は住宅資産、金融資産とも凡そ 1 ドル
あたり 3.75 セントと述べており、これを元に 2008 年 9 月末の逆資産効果を推計す
ると個人消費への下押し圧力はおよそ▲2,600 億ドルとなり(図表 5)、個人消費支
出対比で 2.5%にも相当する。
(3)の信用収縮については利用限度額の引き下げや金利上昇が相次いでいる様
子が報じられており、純資産の減少と相まって家計における債務のアベイラビリテ
ィや負担は重くなっている。増加を続けてきた住宅ローンは足元で減少に転じてお
り、デフォルト、差し押さえによる影響が現れているものとみられる。バランスシ
ート調整圧力が強い中、消費に回す資金は限られ、今後も家計貯蓄率は上昇傾向を
辿るだろう(図表 6)
。
雇用調整、資産価格下落や信用収縮などで家計の財政状況が一層厳しくなる中、
個人消費は氷河期を迎えていると言えるだろう。
2
以上
【 図表 1 小売売上高(前月比) 】
2.0%
【 図表 2 小売売上高指数 】
(前月比)
(%)
6.0
クリスマス関連5業種
米小売売上高指数(Redbook Research)
5.0
1.0%
米チェーンストア売上高指数(ICSC-Goldman Sachs)
4.0
3.0
0.0%
2.0
-1.0%
1.0
0.0
-2.0%
小売全体
-1.0
-3.0%
07/11
08/2
08/5
08/8
-2.0
07/1
08/11
(注) ともに季節調整後の前月比伸び率。クリスマス関連5業種とは総合小売、衣料
品・アクセサリー小売、家具・内装品小売、電気製品小売、スポーツ・趣味・本・音楽
小売を指す。NRFの予測値も当該5業種の11~12月売上高が対象。
(資料)米国商務省、全米小売業協会(NRF)
【 図表 3 非農業部門雇用者数 】
0.8%
(千人)
(%)
0.4%
07/7
08/1
08/7
(注)値は前年同期比
(資料)Redbook Reseach,ICSC-Goldman Sachs
【図表 4 家計の債務残高 】
200
(10億ドル)
500
0
消費者ローン
住宅ローン
金融債務全体
400
0.0%
-200
3,000
2,000
300
1,000
200
0
100
-1,000
0
-2,000
-0.4%
総労働時間
平均時間賃金
総賃金指数
非農業部門雇用者数(右軸)
-0.8%
-1.2%
07/7
07/11
08/3
-400
-600
08/7
08/11
(注)値は全て前月比
総賃金指数=平均時間賃金指数+総労働時間
(資料)米国労働省
-3,000
-100
01
02
03
04
05
06
07
08
(注)値は前月差
(資料)FRBよりみずほ総合研究所作成
【 図表 5 逆資産効果 】
2007年
9月末
2008年
9月末
【図表 6 純資産と家計貯蓄率 】
4
(%)
変化幅(年率)
(倍)
純資産/可処分所得比率
(右目盛、軸反転)
4.5
3
住宅資産
21.2兆ドル
19.1兆ドル
4.0
▲2.1兆ドル
5.0
2
家計貯蓄率
金融資産
50.1兆ドル
45.3兆ドル
▲4.8兆ドル
5.5
1
6.0
計
▲6.9兆ドル
資産効果(資産価格1ドル当たり3.75セント)↓ 0
6.5
-1
7.0
00
個人消費への影響
(資料)FRB、みずほ総合研究所
▲2592.8億ドル
02
(資料)FRB、米国商務省
05
07
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