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米国小売売上高速報 (2007 年 4 月)
経済指標解説 米国 みずほ総合研究所 経済調査部 エコノミスト 中村 正嗣 (03-3201-0549) [email protected] 2007/5/15 米国小売売上高速報 (2007 年 4 月) ○ 4 月の小売売上高は前月比▲0.2%、3 月のイースター効果の反動が出た模様 ○ コア小売は前月比横ばいと、4~6 月期の個人消費は弱めのスタート ○ 雇用の減速やガソリン価格高騰など、先行きの個人消費に懸念材料が多い状況 4 月の小売売上高は前月比 ▲0.2%減少 米国商務省によれば、4 月の小売売上高は前月比▲0.2%減少した(図表 1)。内訳 を見ると、全体の 2 割強を占める自動車が前月比▲1.0%と全体を大きく押し下げ た。加えて、建材・造園(同▲2.3%)、総合小売店(同▲1.2%)、衣料品・アクセサ リー(同▲2.0%)などが前月比減少した。増加したのは食品・飲料(前月比+0.5%)、 ガソリンスタンド(同+1.7%)、非店舗小売(同 1.8%)などであった。4 月の小売 はイースター(復活祭)が昨年より早まった影響で、前月の反動が出たようだ(3 月は前月比+0.7%から同+1.0%に改定)。また、ガソリン価格上昇の影響でガソ リンスタンド売上高が押し上げられた一面も指摘できる。 コア小売は前月比横ばいに 個人消費の趨勢を示すコア小売(自動車、建材・造園、ガソリンスタンドを除く) 留まり、4~6 月期は低調な で見ると、前月比横ばいに留まった。3 月のコアが前月比+0.8%に改定(当初は同 スタート +0.3%)されたため、ゲタが高いものの(5・6 月期が横ばいと仮定しても、4~6 月 期のコア小売は前期比年率+3.0%となる計算)、4~6 月期の個人消費は弱めのスタ ートとなった(図表 2)。 雇用情勢は住宅関連業種の 先行きの個人消費を展望すると、4 月が弱めであったこともあるが、やや減速感 人員調整が本格化すること が出てくる見込みだ。まず一点目の要因として雇用の減速が挙げられる。米国労働 で減速へ 省によれば、4 月の非農業部門雇用者数は前月比+88 千人と前月の同+177 千人か ら大きく鈍化した(図 3)。住宅市場の調整と共に住宅関連業種の雇用への影響は今 後も続く見込みである。今のところ、雇用情勢全体が大きく悪化している兆候は見 られず、雇用統計の先行指標と言われる週間失業保険申請件数は低水準にある(図 4)。しかし、今後、住宅関連業種の人員調整は避けられないことから雇用の減速が 見込まれる。雇用の減速は個人消費に下押し圧力となるだろう。 ガソリン価格高騰は家計の 実質所得悪化要因 二点目はガソリン価格高騰が挙げられる。米国エネルギー省によれば、5 月に入 り、ガソリン店頭価格は 1 ガロン=3.10 ドルと昨夏を超える水準まで上昇した(図 表 5)。ガソリン価格高騰は家計の実質所得を低下させるため、消費者マインドが悪 化傾向にあり、5 月も軟調な展開が懸念されよう。 高値の続く株価動向も要注 意 懸念材料とまでは言い切れないが、株価動向にも目配せしておきたい。ダウ平均 は 13,300 ドル台(小売統計発表日終値:13,326.22 ドル)と高値圏での推移が続いて いる。しかし、今後雇用や個人消費の減速が見込まれる中、現状の高値から調整す るリスクも排除できない。個人消費は減速が見込まれることに加え、取り巻く環境 にも不透明感が強い状況である。 当レポートは情報提供のみを目的として作成されたものであり、商品の勧誘を目的としたものではありません。本資料 は、当社が信頼できると判断した各種データに基づき作成されておりますが、その正確性、確実性を保証するものでは ありません。また、本資料に記載された内容は予告なしに変更されることもあります。 図表 1 0704 (前月比) (寄与度) 小売売上高 -0.2% -0.23% 自動車 -1.0% -0.21% 家具・内装 1.2% 0.03% 電子・家電製品 0.7% 0.02% 建材・造園 -2.3% -0.18% 食品・飲料 0.5% 0.07% ヘルスケア 0.9% 0.05% ガソリンスタンド 1.7% 0.16% 衣料品・アクセサリー -2.0% -0.10% スポーツ・書籍・音楽 -0.8% -0.02% 総合小売店 -1.2% -0.15% その他店舗 0.4% 0.01% 非店舗小売 1.8% 0.12% 外食 -0.1% -0.01% 除く自動車 0.0% -0.01% コントロール 0.2% 0.17% コア 0.0% 0.01% 小売売上高業種別推移 0703 (前月比) (寄与度) 1.0% 0.97% 0.4% 0.08% 1.0% 0.03% -0.8% -0.02% 1.0% 0.08% 0.6% 0.08% 0.6% 0.03% 3.2% 0.29% 2.2% 0.11% 2.8% 0.05% 1.6% 0.21% 3.0% 0.08% -2.7% -0.18% 1.4% 0.14% 1.1% 0.89% 1.1% 0.81% 0.8% 0.53% 0702 (前月比) (寄与度) 0.6% 0.56% 0.8% 0.17% -0.1% 0.00% 0.4% 0.01% -0.7% -0.06% 0.9% 0.11% 0.7% 0.03% 1.6% 0.14% -1.7% -0.09% 0.3% 0.01% -0.7% -0.09% 0.5% 0.01% 6.2% 0.39% -0.7% -0.07% 0.5% 0.39% 0.6% 0.44% 0.5% 0.30% 0701~03 (寄与度) 1.5% 1.49% 0.6% 0.12% 2.2% 0.06% -0.6% -0.01% -0.4% -0.03% 1.8% 0.23% 1.3% 0.07% 5.6% 0.49% 1.2% 0.06% 2.2% 0.04% 0.9% 0.12% 1.0% 0.03% 4.7% 0.30% 0.1% 0.01% 1.7% 1.37% 2.0% 1.41% 1.5% 0.91% (10~12月期比) (注)コントロールは自動車、建材・造園を除いたもの。コアはコントロールからガソリンスタンドを除いたもの。 (資料)米国商務省 図表 2 コア小売の推移 図表 3 3カ月前比年率 (左目盛) (%) 11.0 10.0 9.0 8.0 7.0 6.0 5.0 4.0 3.0 2.0 (10億ドル) 235 (千人) 230 300 225 200 220 100 215 0 210 ▲ 100 コア小売(左目盛) 図表 4 週間失業保険申請件数の推移 非農業部門雇用者増加数 0504 図表 5 0510 0604 0610 0704 110 4週移動平均 消費者マインドとガソリン価格の推移 カンファレンスボード消費 者信頼感指数 ガソリン店頭価格(右) (Pt) 115 新規申請数 360 サービス業 (注)雇用者増加数 (資料)米国労働省 (千人) 380 鉱工業・建設業 400 0510 0601 0604 0607 0610 0701 0704 (注)コアは自動車、建材、ガソリンスタンドを除く (資料)米国商務省。 非農業部門雇用者増加数の推移 ドル/ガロン 1.0 1.5 105 2.0 100 340 2.5 95 320 3.0 90 300 3.5 85 0505 280 0607 0609 (資料)米国労働省 0611 0701 0703 0705 0511 0605 0611 0705 (注)消費者信頼感指数は85年=100。ガソリン店頭 価格の5月は第2週までの平均。右逆目盛でプロット。 (資料)カンファレンスボード、米国エネルギー省 以上