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被災地の「地域再生」に地方活性化のヒントあり
2014.5-6 vol.12 みずほ総研 http://www.mizuho-ri.co.jp T imely & T opical 被災地の 「地域再生」に地方活性化のヒントあり 小宮一真 みずほ総合研究所 社会・公共アドバイザリー部 都市・地域戦略アドバイザリーグループ長 東日本大震災から3年余りが経過しました。今なお 20 集落すべてに公共施設を作るのは非効率になりかねず、 万人以上が避難生活を送る一方で、高台や内陸への集団 核となる集落に総合的な公共施設や商業施設などを集約 移転計画が動き出すなど、被災地域では「復旧」の段階 して整備し、他の集落からの移動手段を確保する必要が を経て、 「復興」に向けた本格的な取り組みが始まろうと 生じると考えられます。被災地の地域再生は単に集落を しています。ようやく「地域再生のグランドデザイン」 移転すればよいというわけではなく、そこで生活する人々 を固めていく段階に入ってきたといえるでしょう。 の生活基盤をどのように整備していくか、集落と集落を こうしたなか、 復興庁は昨年度から「新しい東北の創造」 どのようにつないでいくかという視点も重要です。 に向けた取り組みを推進しています。その狙いは震災か 他方で、被災地を含めて、東北には豊かな自然があり、 らの復興を「最低限の生活再建」にとどめるのではなく、 漁業や農業が基幹産業となっています。住民が職住近接 わが国や世界のモデルとなる「創造と可能性の地」をつ で生活してきた地域が多く、東北の復興は、漁業や農業 くることです。昨年 12 月には、復興庁が事業主体となり などの生産から加工、流通や販売までを一手に担う「6 「 『新しい東北』官民連携推進協議会」が設立されました。 次産業化」の取り組みなどが中心になると、私は考えて 現在、被災地では行政のみならず、企業、大学、NPO な います。そのためには自分たちが暮らす地域の魅力を理 どの幅広い担い手が復興事業に取り組んでいます。復興 解し、企業や行政などを巻き込んで経済循環を生みだす を加速させ、東北の持続的な活力に結びつけていくため 必要があります。実際、被災地の宮城県涌谷町では、地 には、そこで活動している幅広い担い手が互いの取り組 元で栽培する生薬の加工・商品化を通じた復興まちづく みについての情報を共有し、連携していかなければなり りを進めています。地域総合整備財団の助成を受けて専 ません。みずほ総研では、昨年度からこの官民連携推進 門家を招聘し、生薬を使った特産品を開発。啓発講座を 協議会の運営に携わっています。 通じて生薬に対する理解を深めることで、地域住民の健 過疎化や高齢化といった課題は日本の地方都市であれ 康づくりも担うという地産地消モデルが生まれています。 ばどこでも抱えていますが、とりわけ東北では、震災後 官民連携推進協議会の活動も含めて、東北に集まる企 の若者の流出などにより、一層深刻な状況となっていま 業や団体などがつながりを得ながら復興事業に取り組ん す。例えば、現在進みつつある集団移転では、住民の合 でいけば、被災地だけでなく、全国の地方都市が直面す 意形成や法律面との兼ね合いから、小規模集落が主流に る課題を解決に導く仕組みも生まれるかもしれません。 なると考えられますが、地域住民が交流・団らんできる 被災地の「地域再生」で起きる変化が日本全体へと波及 公民館のような「場」は必要でしょう。ただし、これら する効果は計り知れないと思います。 (談) 1 R ecent R esearch 消費者物価の見通し ドイツの競争力回復 日銀の「2%物価目標」達成は 期待インフレが高まる 2020年度 中小企業による「雇用の創出・維持」 と 「独自技術重視」 の経営が原動力 みずほ総合研究所は「消費者物価の中期見通し」を公表 2000 年代前半の惨憺たる状況から奇跡的に回復したドイ した。2013 年 11 月以降、円安が輸入エネルギーなどの価 ツ経済。IMF によれば、ドイツの 2014 年の実質 GDP 成長 格を押し上げた影響で、コア CPI(生鮮食品を除く総合消 率見通しは+ 1.6%と、フランスなどを大きく上回る一方、 費者物価指数)は前年比1%を上回る伸びが続いているが、 失業率も東西ドイツ統合後の最低水準で推移している。 今後、円安効果は徐々にはく落すると予測。消費増税後は、 ユーロ下落によるドイツ製品の EU 域外向け輸出の拡大 駆け込み需要の反動と実質所得の減少が個人消費を中心に が、景気と雇用を回復させたといわれるが、それ以上に大 国内需要を押し下げ、需給バランスの改善が足踏みするこ きな役割を果たしたのは、労働市場改革だ。1990 年代後半 となどから、コア CPI の伸び率が鈍化し、日銀の物価目標 以降、労使協調による賃金や労働時間の柔軟化が競争力を 「2年で2%」 (15 年度中に2%)達成は困難と予想している。 高め、2000 年代前半の「ハルツ改革」がそれをさらに推し しかし、安定的な物価上昇に必要な「期待インフレ率」 進めることになった。失業者の就労を促すなど、伝統的な には変化の兆しがうかがえると指摘。過去の物価上昇局面 労使協調と大胆な制度改革を通じて雇用の創出・維持と賃 では期待インフレ率が主たる押し上げ要因となっており、 金抑制を実現したことが、回復の原動力となったのだ。 家計の期待インフレ率を推計したところ、12 年末の 1% 同時に、 「ミッテルスタンド」と呼ばれる中小企業群の存 台後半から 13 年末には 3%台へと伸びが高まり、企業の 在が果たした役割も大きい。中小企業の中でも、付加価値創 それもおおむね家計と並行して推移しているという。GDP 出力の優れる中規模企業のシェアが他のユーロ圏主要国と ギャップがプラスに転じる 17 年度以降は、インフレ期待が 比して高く(図) 、地域的なすそ野の広がりもあり、これら 高まりやすくなり、20 年度には2%インフレが実現すると予 企業による雇用の維持と独自技術を重視した経営が、ドイ 測する(図) 。金融緩和と成長戦略の相乗効果により、人々 ツ経済を支えてきた。中小企業の数では日本も世界一とも の期待に働きかけ続けることができれば、中長期的に2% いわれるほど多く、独自技術を有する企業も多い。日独の の物価上昇は非現実的ではない、としている。 競争力の差が何によるのか、いま一度考える必要があろう。 ■インフレ率の中期推計 ■企業数と粗付加価値額の比較(製造業) ■ イタリア ▲ ● 88 日本 ● 86 ■ 84 従業員数1∼19名 82 ▲1 80 ▲2 ドイツ 95 00 05 10 15 20 (年度) (千ユーロ) 0 100 200 300 1企業あたりの粗付加価値額 ■ スペイン フランス 90 0 8 ■ 企業数シェア 92 1 中規模企業 9 94 企業数シェア 賃金ギャップ要因 需給ギャップ要因 インフレ期待要因 予測値(2014 年 3 月時点) インフレ率 2 10 (%) 96(%) 小規模企業 3 (前年比、%) ● 7 ▲ 6 4 従業員数 20∼49名 3 2 ▲ 従業員数 50∼249名 1 0 ● ● ■ 5 ● ■ (千ユーロ) 0 2000 4000 6000 6000 1企業あたりの粗付加価値額 注:日本の中小企業については、個人企業は従業員数 1 ~ 9 名に含めた。また、従業員 数 50 ~ 249 名の中企業は、日本の場合は 51 ~ 300 人。2011 年の平均ユーロ円 為替レートにて換算。粗付加価値=売上総利益 + 人件費として計算している。 資料:Eurostat"Structual business statistics"、中小企業庁「中小企業実態基本調査」よ りみずほ総合研究所作成 注:インフレ率は米国基準コアCPI。2013 年度までは実績値の寄与度分解(2013 年 度はデータ公表分の平均) 。2013 年度までの期待インフレ率要因はインフレ率の実 績値から需給ギャップ要因と賃金ギャップ要因を除いたもの。2014 年度以降は推 計結果および予測値(2014 年 3 月時点)。 資料:内閣府「国民経済計算」、総務省「消費者物価指数」などよりみずほ総合研究所作成 『みずほインサイト』2014 年 2 月 27 日 ドイツ経済はなぜ蘇ったか 〜労働市場と中小企業から考えるドイツの強さ〜 ☞ h ttp://www.mizuho-ri.co.jp/publication/research/pdf/ insight/eu140227.pdf 『みずほインサイト』2014 年 3 月 24 日 消費者物価の中期見通し〜 2%インフレ率達成の道筋〜 ☞ h ttp://www.mizuho-ri.co.jp/publication/research/pdf/ insight/jp140324.pdf お問い合わせ・取材のお申し込み みずほ総合研究所総合企画部広報室 03-3591-8828 または [email protected] 2 P roducts & S ervices ❶ ■2013 年度の主な受託実績 「PPP・PFI 事業」や 「地域再生」関連業務を 2013 年度も多数受託 発注者 社会・公共アドバイザリー部 み 案件名 国土交通省 官民連携による公共施設の集約化・再配置のあり方検討業務 経済産業省 中心市街地活性化施策の効果分析・検証事業 復興庁 「新しい東北」 官民連携推進協議会運営事業 内閣府 PFI 推進室 公共施設等運営権を活用した水道・工業用水道運営事業に 関する検討支援等業務 東京都 官民連携政策投資システムの構築に関する調査業務委託 川崎市 スポーツ・文化複合施設整備等事業 PFI アドバイザリー業務 ずほ総合研究所では、空港・ イザーを務めたほか、国土交通省の 議会ホームページの立ち上げや会員 港湾、上・下水道、鉄道・道路、 「官民連携による公共施設の集約化・ 公募の取りまとめ、会員交流会の開 医療など公共インフラ関連の PPP・ 再配置のあり方検討」の業務を受託。 催などを実施。被災地で活動する企 PFI 案件における調査やアドバイザ また、地域再生に関する業務にも 業やNPOなどが、情報の共有や活 リー業務に数多く取り組んでいる。 積極的に取り組み、復興庁より受託 動の連携が図れるよう態勢作りを推 2013 年度は、川崎市の「スポーツ・ した「 『新しい東北』官民連携推進協 進した。今年度も引き続き同事務局 文化複合施設整備等事業」のアドバ 議会」の事務局運営業務として、協 の運営業務を担当する予定である。 P referred R eports 調査リポート 2014 年 3 ~ 4 月にコーポレート・サイトでアクセス数の多かったリポートから紹介しています。 『みずほインサイト』2014 年 3 月 13 日 米経済を直撃した今冬の悪天候は 製造業の活動に 「下押し圧力」 米国経済に対する悪天候の影響~地域間の差を踏まえた影響度合いの把握~ ☞http://www.mizuho-ri.co.jp/publication/research/pdf/insight/us140313.pdf 調査リポート ウクライナ危機「最大のリスク」は 西側制裁によるロシア経済不安定化 調査リポート 『みずほインサイト』2014 年 3 月 5 日 危機的状況が続くウクライナ~資本流出によるロシア経済への打撃が懸念材料~ ☞ http://www.mizuho-ri.co.jp/publication/research/pdf/insight/eu140305.pdf 『みずほインサイト』2014 年 2 月 28 日 上向き基調の「所定内給与」 本格回復に必要な中小企業の賃上げ オピニオン 賃金は上昇に転じるか~ベア回復で所定内給与は 9 年ぶりに増加へ~ ☞ http://www.mizuho-ri.co.jp/publication/research/pdf/insight/jp140228.pdf 『コンサルタント・オピニオン』2014 年 3 月 11 日 業績改善が進む日本企業が試される 「アベノミクス効果後」の戦略 オピニオン 「異次元の企業戦略」 で社会を変え成長する ☞ http://www.mizuho-ri.co.jp/publication/opinion/business/pdf/business140311. pdf 『エコノミスト Eyes』2014 年 3 月 4 日 市場の期待をつなぐ「次の一手」で 2%物価目標達成への道筋を示せ 黒田日銀「強気シナリオ」 と 「期待醸成力」 ☞h ttp://www.mizuho-ri.co.jp/publication/opinion/eyes/pdf/eyes140304. pdf お問い合わせ・取材のお申し込み みずほ総合研究所総合企画部広報室 03-3591-8828 または [email protected] 3 2014 年 4 月 21 日現在の情報に基づいて作成しています。予定は変更される場合があります。 B iz C alendar 5 (日付は現地時間) 6 2014 月 !1 ▶ 5 月分の電気・ガス料金、全 14 社が一斉値上げ 1 1 ▶「再生可能エネルギー発電促進賦課金」の単価引き上げ (0.75 円 /kWh、~ 2015 年 4 月) 2 ▶アジア開発銀行(ADB)年次総会、ASEAN + 3 財務相・ 中央銀行総裁会議(~ 5 日、カザフスタン・アスタナ) 6 ▶ OECD 閣僚理事会(~ 7 日、パリ) 8 ▶ ECB 定例理事会(ブリュッセル) 10 ▶ ASEAN 首脳会議(~ 11 日、ミャンマー・ネピドー) 12 ▶券種識別性を向上させた改良 5 千円紙幣の発行開始 14 !2 ▶第 46 回日韓経済人会議(〜15日、東京) 15 ▶ 1 ~ 3 月期 GDP 速報値(1 次) 20 ▶日銀金融政策決定会合(~ 21 日) 21 ▶裁判員制度施行から 5 年 ! 3 ▶日本経団連の新会長に榊原定征氏(東レ会長)が就任 4 ▶ユーロ圏 1 ~ 3 月期の GDP 改定値 5 ▶ ECB 定例理事会(フランクフルト) 9 ▶ 1 ~ 3 月期の GDP 速報値(2 次) 12 ▶一般用医薬品のネット販売が可能となる改正薬事法施行 ▶米州機構(OAS)総会 (~ 5 日、パラグアイ・アスンシオン) ▶日銀金融政策決定会合(~ 13 日) ▶ FIFA ワールドカップブラジル大会開幕 (~ 7 月 13 日、リオデジャネイロほか) ▶ユーロ圏 1 ~ 3 月期の GDP 速報値 17 ▶ ECB 定例理事会(フランクフルト) 22 ▶第 186 回国会(通常国会)の会期末 25 ▶ 1 ~ 3 月期の米 GDP 確定値 26 ▶ EU 首脳会議(~ 27 日、ブリュッセル) 3 ▶ ECB 定例理事会(フランクフルト) 22 ▶欧州議会選挙(~ 25 日) 25 ▶ウクライナ大統領選挙 27 ▶湾岸環境フォーラム(〜 29 日、サウジアラビア・リヤド) 29 ▶米 1 ~ 3 月期の GDP 改定値 ! ▶今年で 10 回目となる夏の軽装「クールビズ」強化期間 スタート(~ 9 月 30 日) ▶復興増税で個人住民税を年 1,000 円引き上げ ▶世界経済フォーラム東アジア会議(~ 23 日、マニラ) 月内 月 27 月内 ▶米 FOMC(~ 18 日) !1 ▶ 3 月決算企業の株主総会集中日 !2 ▶G 7 首脳会議(ブリュッセル) 3 ▶「日本再興戦略」の改訂 ! ▶福島・国際研究産業都市(イノベーション・コースト) 構想研究会、提言とりまとめ ▶プーチン露大統領、中国訪問 ▶日 EU 定期首脳協議(ブリュッセル) ! ① 原 燃料費調整制度に基づく措置で、全社とも料金計算が現行方 式となった 2009 年 5 月以降の最高値で 4 カ月連続の引き上げ。 5 月から転嫁される消費増税分も影響。 ▶「将来の厚生年金・国民年金の財政見通し」公表 ① 円 安や消費増税前の駆け込み消費により、多くの企業が最高 益を更新する見込み。今後は、その果実を生産性向上のため の研究開発・設備投資に結びつけられるかが焦点。 ② 1 969 年から毎年、日韓交互に開催。国交正常化 50 周年を来年に 控え、未来志向の日韓関係の構築などについて専門家を交え討論。 共同声明を採択し、両国政府に提言する。 ② 日 米など主要先進 7 カ国 (G7) が、 ウクライナ問題を受けて、 ロシア・ ソチで開催予定だったG8をボイコットし、代替開催。G 8 からのロ シア追放ではないが、冷戦後の世界秩序は試練を迎えている。 ③ 裁 判員法は、施行 3 年後に制度を見直すと規定しており、法制 審議会で議論が行われている。制度運営で最大の課題となっている 裁判員の負担軽減をどのように図っていくのかが注目されている。 ③ 昨 年 6 月に策定した「日本再興戦略」では踏み込まれなかった 雇用や農業、医療分野を柱に、 「潜在成長力の抜本的な底上げ を図り、持続的な成長」につながる施策の検討を進めている。 P roducts & S ervices ❷ 顧客ニーズに合わせた 「企業内研修・講師派遣」 サービスを拡充 みずほ総合研究所では、企業の社員教 ンなどの関連制度研修がある。また、こ 育ニーズの多様化に対応し、充実した研 れら個別研修プログラムを組み合わせた 修プログラムを多数用意・提供している。 シリーズ研修も実施。特に、受講者個人 新入社員から中堅社員、役員・管理職 の能力を数値化してフィードバックする まで、組織内の階層ごとに身につけてお マネジメント能力診断研修が好評である。 くべきスキルを習得する階層別研修プロ グラムや営業・法務・財務などの職種別 教育事業部 研修、セカンドキャリアやキャリアビジョ 「企業内研修/講師派遣」の詳細はホームページへ ☞ http://www.mizuho-ri.co.jp/service/ solution/edu/training/ 発行●みずほ総合研究所総合企画部広報室 03-3591-8828/[email protected] 発行日● 2014 年 5 月 1 日 c 2014 Mizuho Research Institute Ltd. 4