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残された者たち ID:38546
注意事項 このPDFファイルは﹁ハーメルン﹂で掲載中の作品を自動的にP DF化したものです。 小説の作者・ ﹁ハーメルン﹂の運営者に無断でPDFファイル及び作 品を引用の範囲を超える形で転載・改変・再配布・販売することを禁 じます。 ︻タイトル︼ 残された者たち ︻作者名︼ ナガレボシ ︻あらすじ︼ うずまきナルトとうちはサスケが、旅立ってから1ヶ月が経とうと していた。上忍となった春野サクラは、来る日も、来る日も、任務に 飛び回っていた。春野サクラと、はたけカカシを中心に描く、 ﹃NAR UTO﹄699話から1ヵ月後の様子・・・。 残された者たち 第四次忍界対戦。それはついこの間まで繰り広げられていた歴史 上最大の戦争だ。この戦争の黒幕﹃大筒木カグヤ﹄を封印したのは、う ずまきナルト、うちはサスケ、春野サクラ、はたけカカシの4人だ。彼 らは忍世界を救った英雄とされた。その称号は、今まで数々の悪事を 働いてきたうちはサスケの罪を免罪するほどだった。これを機に春 野サクラは上忍に昇格し、はたけカカシは木の葉隠れの六代目火影へ と就任した。ナルトとサスケは旅に出たまま、音沙汰がなかった。 ﹁六代目、任務終了の報告に参りました﹂ ﹁ああ﹂ 執務室の中から声が聞こえたのを確認してから、サクラは扉を開い た。少し前ならそこには、綱手の姿があったが、今はかつての師、は -2- たけカカシがそこに腰を下ろしていた。火影になってもだらしそう で、締りのない表情は相変わらずだ。その風貌に火影のみがかぶるこ とが許される帽子、上忍ベストの上から羽織ったマントは、かなり違 ﹂ 和感がある。写輪眼を無くした左目は、相変わらず額宛で隠してい る。 ﹁ご苦労様。で、どうだったサクラ ﹃忍連合軍﹄を結成し、うちはマダラと戦った。戦争の勝利は、五大国 今回の戦争は、かつて憎み合っていた五大国が1つにまとまって に見せないように、窓へ向き天を仰いでいた。 カカシは1つ息を吐いてから、静かに立ち上がった。表情をサクラ ﹁そっか・・・﹂ 多く、任務に当たった忍にも負傷者が増えています﹂ が増えています。またその中には上忍クラスや血継限界を持つ者も ﹁はい、戦争が終わったこの機に、夜盗や抜け忍が小さな村を襲う事件 眠たそうなカカシの瞳に鋭さを帯びる。 ? が手を取り合った友好の証だと言えるはずだった。しかし現実は残 酷だった。戦争が終わり、多くの忍が命を落とした。このことは里を 捨てた抜け忍や、夜盗が、里や村を襲うのには、好都合だった。また 悲しいことにこの中には戦争で親や友を亡くした者たちまで紛れ込 んでいた。彼ら激しい怒りや悲しみの後、は己の無力さを嘆き、現実 に絶望し、里や信念すらも捨ててしまったのだ。 ﹁時代の変わり目ほど、辛い時期はないよ。だがここで己を捨ててし まえば、この戦争で学んだことすら無意味になってしまう﹂ 自身に言い聞かせるように言葉を放ちながら、カカシはゆっくりと 腰掛けた。 ﹁サクラ、俺たちが耐え忍ばないといけないのは今だよ。あいつらが いつ里へ帰ってきてもいいように﹂ ﹁そうですね、カカシせ、じゃなくて六代目﹂ ﹁前みたいに呼んでくれていいよ。それとあまり無理はするなよ﹂ カカシはニコリと笑顔になる。 ﹁ありがとうカカシ先生﹂ サクラも笑顔を返し、一例してから執務室を出る。サクラの気配が 感じられなくなったあとで、カカシは再び窓に眼をやる。 ﹁いつの世も戦いか。なぁ、オビト・・・﹂ 今日の天気は雲ひとつない晴天。眩しすぎる太陽は、嫌でも陰を映 し出していた。戦後の日差しは、いつも暑すぎた。 報告を済ませた足で、サクラは木の葉病院へ向かった。戦争で負傷 して、今だに苦しんでいる者や、任務で負傷した者たちを診るためだ。 病院へ向かう最中、里の至るところに眼をやった。修理されていない 家、ガレキの山、仮暮らしするためのテント。まだ復旧が追いつかな い里の現状がそこには写っていた。 ︵色々ありすぎて時間が経つのを忘れてたけど、まだペインが襲撃し てきた時から、あまり時間が経ってないんだ・・・︶ 急ぎ足で通り過ぎる子ども、修復に負われる大工。うつろな眼をし -3- て座り込んでいる少女。暁や戦争がもたらした爪あとは、痛々しく 残っている。世界が成長するためには、大きな痛みが伴うと言うが、 この痛み ただ痛みを直視し どのくらいの痛みを知れば、人は痛みに慣れるのだろうか の中、自分たちは本当に成長しているのだろうか ジを連れていた。 ﹂ ﹁うん、これから患者さんを診にね。シカマルたちは ﹂ 後、サクラと同じく上忍に昇格した。後ろには山中いのと秋道チョウ 前方からやってきて声をかけてきたのは奈良シカマル。彼も戦争 ﹁おうサクラ、これから病院か せていることすら、どこか言い分けにすら聞こえる。 ラはただ今、自分のできることをやるしかない。だが、そう言い聞か さまざまな疑問が心に過ぎるが、誰も答えなど返してくれない。サク ないために任務に明け暮れている自分は、成長しているのだろうか ? と信じていた。 ﹁あんたはなんかしょんぼりしてるけど、何かあったわけ ﹁はぁ ﹂ ない私のが、隊長には合ってるのかも﹂ ないもんねェ。どっちかって言うと、スマートで小難しいことを考え ﹁ふぅん、まあ、頭でっかちでデコッパチなあんたは上忍ってガラじゃ うつろな笑みを浮かべてみせるサクラ。 たけど、隊長として任務に就くことも多いし﹂ がグッと上がって・・・。今までは部下として行動することが多かっ ﹁ちょっと疲れてるかも。なんというか、上忍になって、任務のランク 衝突に山中いのは訊ねてきた。 ﹂ 彼らの父親、奈良シカク、山中いのいちから受け継いだ﹃火の意志﹄だ 更に技に磨きをかけている。その連携の力こそ、戦争で命を散らした ていた。戦争が終結した今も、こうやって3人は共に任務をこなし、 戦争のときから、彼ら﹃いのしかちょう﹄の連携は他国までに広がっ 後は親父やアスマ先生の墓参りだ﹂ ﹁俺らは任務を終えて、これから六代目に報告にいくところだ。その ? ? ? ? -4- ? サクラの頭、というか指摘されたデコにピシリとひびが入った。 ?? ﹁言ってくれるわねェ。だいたいあんたまだ中忍でしょ ﹂ ﹁・・・・・ ﹂ ﹂ てこないわよ。冗談くらい、サラっと笑い飛ばせないとね﹂ ﹁そんな辛気臭い顔して、色々考えこんでたら、着いてくるものも着い ﹁あぁん 器よ、う・つ・わ♪﹂ ﹁上忍、中忍じゃないっての。私が言ってるのは、隊長としての素質と ?? ﹂ そんなんだからいつまで経っても、デコが広 ﹁ほら、また眼を逸らす ﹂ ﹂ ﹁んだとコラァやるかいのぶた ﹁上等だコラァデコデコ ﹁ほれ、そこらへんにしとけ﹂ 3人はそう言って、その場を立ち去る。最後にチョウジが﹁今度一 や。お前もたまには肩の力抜けよ﹂ ﹁じゃあなサクラ。上忍ってのは思ってたよりもずっとめんどくせー いのは﹁わかってるよ﹂と口を尖らせる。 だろう行くぞ。俺はこの後、紅先生とこにも顔出すからよ﹂ ﹁ったく里のド真ん中で大声出すなよめんどくせー。いの、もういい ルが仲裁する。 テンションが上がりすぎて、腕まくりをしたサクラといのをシカマ !!! いだけなのよあんたは ﹁あ、ありがとういの・・・﹂ いのはウインクしてみせる。 き、ちゃんと笑って迎えてあげないとダメなんだしね﹂ を伝えないとね。それにあんたは、ナルトやサスケ君が帰ってきたと じゃない。今はできることをひたすらやって、次の世代に﹃火の意志﹄ ﹁色 々 あ る の は わ か る け ど、残 さ れ た 私 た ち が 下 を 向 い て ち ゃ ダ メ いのはイタズラっぽく笑いながら、サクラの額をツンとつつく。 ﹁ほら、さっきよりもちょっとはマシな顔になった﹂ ﹁い、の・・・﹂ く。 サクラはそこで、自分のテンションが上がっていることに気がつ !! ! ! ! -5- ?? 緒に焼肉食べに行こうよ﹂っと付け加えた。 ﹁・・・また励まされちゃった・・・。いのもシカマルも、お父さん死 んじゃったのに・・・﹂ 3人の背中を見送ったサクラはポツリと言う。そして渇を入れる ﹂ ように、自身の頬をパンっと叩く。 ﹁さあて、いきますか 私は、それなりに元気で ゆっくり考えながら、目的地まで向かうことにした。 ﹁ん、俺の顔に何かついてる ﹂ シズネは近くによってきて、カカシの表情を伺う。 ﹁ありがとう、そこに置いておいてくれ﹂ 一方こちらは火影の執務室。シズネはカカシへお茶を淹れていた。 ﹁六代目、お茶が入りましたよ﹂ やっています・・・︶ ︵ナルト、サスケ君。今、何していますか すべきなのか まだ復旧していない里を見て回りながら・・・。これから自分は何を 再び病院を目指す。まだ時間はある。歩きながら行くことにした。 !! ﹂ ﹁サスケ君が里を抜けてから、ずっと思いつめたような顔をしてまし ている。 カカシの細い眼が大きく見開かれた。その瞳一杯にシズネが映っ ﹁俺が・・・ ﹁でも、カカシさん、今のほうがなんかいいですよ﹂ カカシはわざとらしく頭をかいてみせた。 ら、嘘になるかな﹂ ﹁まあ、火影なんて俺のガラじゃないからね。疲れてないって言った しでしょ﹂ 入ってるんです。カカシさん、火影になってから、ずっと働きっぱな ﹁ダ メ で す、今 飲 ん で く だ さ い。そ れ は 疲 れ を 取 る 効 果 の あ る 薬 も ﹁ああ、ま、忍だしね。それにお茶はあとで頂くよ﹂ いですよ﹂ ﹁ええ、お茶を飲むのに、マスクを着けてるのなんて、カカシさんくら ? -6- ? ? ? た。でも今のあなたは、とてもすがすがしい表情をしています。四代 目の、ミナト先生のマントを羽織って、その椅子に座るあなたは・・・﹂ シズネの頬が赤く染まって見えたのは、夕焼けの影響かどうかは、 カカシには見抜けなかった。ただ窓から見える美しい景色を背景に 経つ彼女から、眼を逸らせなかった。 ﹁リンもオビトも、きっと喜んでいます。そして私も・・・。この喜び は、綱手様が立ち直ってくれた時の気持ちとは違います﹂ ﹁・・・・・﹂ カカシは何か考えたあと、火影の帽子、額宛、そしてマスクを順番 にゆっくりと外す。 ﹁ありがとうシズネ﹂ 忍でもなく火影でもないはたけカカシがそこにはいた。先代の火 影岩が見守る狭い執務内の中で、2人の姿はゆっくりと重なっていっ た。 新しい時代の幕開けは激しい動きと、ほんの少しの愛情で彩られて いた。 -7-