...

女神様と愛を育むのは間違っているだろうか ID:78151

by user

on
Category: Documents
18

views

Report

Comments

Transcript

女神様と愛を育むのは間違っているだろうか ID:78151
女神様と愛を育むのは間違っているだろうか
L1pt0N
︻注意事項︼
このPDFファイルは﹁ハーメルン﹂で掲載中の作品を自動的にP
DF化したものです。
小説の作者、
﹁ハーメルン﹂の運営者に無断でPDFファイル及び作
品を引用の範囲を超える形で転載・改変・再配布・販売することを禁
じます。
︻あらすじ︼
オラリオ最強といわれた二人のLv7の一人、ウィリウス・スター
ガとその主神である美神アフロディーテ。
これはそんな彼らが、いちゃいちゃしながら周囲を巻き込んでいく
お話である。
目 次 プロローグ │││││││││││││││││││││││
1
プロローグ
もう指の一つも動かすことはできそうにない。
意思に反して微動だにしない身体を、降雨が冷やしていく。
ーーーーーーー俺はここで死ぬのか。
闇に包まれた路地裏で、ふとそう思った。
頭の中に次々浮かんでは消えていく、過去の思い出。
決して幸せだ、と胸を張って言えるものではなかったが、不思議と
満足感が生まれてきた。
ふっと緊張していた身体から力が抜けていくのが分かった。
ーーーーーーーまぁ、それも悪くはなーーーーーーーー。
暗闇へと沈んでいく意識に、身を任せようとしたその時、聞いたこ
ともないような音が耳に届いた。
微かに聞き取れるほどの音量しかないが、確かに耳に残る音。
それも不快ではなく、むしろーーーー。
と、そこで自分が立ち上がって歩いていることに気がついた。
先ほどまでどんなに望んでも動いてくれず、もう諦めようとしてい
た身体が、一人でに動くように足を進めている。
まるでマリオネットになったような気分だが、そんなことに意識を
割いている暇はなかった。
誘われるように路地裏を抜けると、月光が俺を照らす。
これほど月の光が眩しいと感じたことなんてなかった。
眩しさに耐えきれずに細めた目が捉えたものに、思わず息を呑ん
だ。
ーーーーーーーーー綺麗だ。
そんな陳腐な表現すらでてこないほどの光景に息をするのも忘れ
見入る。
輝く月を背景に、屋根に腰をかけた一人の女性が、歌を歌っていた。
整いすぎた肢体に、流れるように美しいブロンド。まるで美の女神
も裸足で逃げ出すような美しさに、見惚れていると、ふと彼女の歌が
止まった。
1
それを残念に思う間もなく、彼女の宝石のような翡翠色の瞳が俺を
捉える。
﹁ーーーーーーーーーこんばんは﹂
それが俺 ウィリウス・スターガと女神 アフロディーテの出会
いだった。
■■■■■■■■■■■■■
朧げだった意識がゆっくりと覚醒していく。
薄目をあけると、カーテンの隙間から漏れでる日光に眉根を寄せ
た。
上半身を起こしながら、隣で寝ている女性を横目で確認する。
女神 アフロディーテ。
8年前、ボロボロだった俺を拾ってくれた恩人であり、俺の主神で
もある。
8年間毎日見ていたというのに、飽きることはないその美貌は、布
団の中で規則正しく寝息を立てていた。
﹁.................んぅ﹂
どこか色を含んだ吐息と共に、はらりと落ちる一房の美しさブロン
ドに後ろ髪を引かれながらベッドから出て、身だしなみを整える。
現在、アフロディーテファミリアには俺一人しか所属していない。
というのも、女神アフロディーテとしての性質というか、ファミリ
アの指針だった。
アフロディーテは、愛と性を司る美の女神であるが、どこかの女神
様と違ってその愛は一途だ。
幼い頃、ファミリアに人員を勧誘しないのか、と尋ねた俺に﹃あな
たがいるわ﹄と返した女神様の姿は今でも覚えている。
頬を染めながらの上目遣いに、子供ながら胸を高鳴らせたものだ。
とはいっても、やはり所属団員が一人ではファミリアの運営はまま
2
ならない。
愛する女神に負担をかけたくなかった俺は、金銭や住居に途方に暮
れていた。
そこを助けてくれたのが︻豊穣の女主人亭︼である。
ダンジョン探索や依頼の合間を縫って、
︻豊穣の女主人亭︼で働くと
いう約束のもと、衣食住の面倒を見てくれているのだ。
いまでこそ生活が落ち着いて頻繁に顔をだせるものの、駆け出し冒
険者であった俺を快く受け入れてくれた店主のミアさんには頭があ
がらない。
︻豊穣の女主人亭︼の制服に袖を通した俺は、音を立てないようにドア
を開けると、自室をあとにした。
■■■■■■■■■■■■
3
迷宮都市オラリオの酒場は、その客入りに時間帯はあまり関係がな
い。
荒くれものの冒険者にとって、ダンジョンに潜る前に一杯ひっかけ
よう、なんて話は珍しくもなんともないからだ。
故に、日の出から慌しくなる酒場もここオラリオでは少なくなかっ
た。
しかし、︻豊穣の女主人亭︼では他の酒場とは少し事情が違った。
客層の多くを男性が占める酒場ではあるが、
︻豊穣の女主人亭︼では
この時間帯に限って、店に入る客のほとんどが女性である。
だが、何も彼女たちは朝っぱらから酒を楽しみに来たのではない。
﹂
彼女たちの目的は、この時間帯だけ働いている男性店員にあった。
﹁ご注文はお決まりですか
整えられた眩い金髪に、整った顔立ち、それに高い身長まで合わさ
ウス・スターガ。
ふわり、自然な微笑みで女性客を一瞬で魅了する男の名は ウィリ
はすこし色めき立った。
話しかけらた女性は忽ち魅了されたようにぼーっと頬を染め、周り
?
れば、彼に見惚れない女のほうが少ないだろう。
事実、女性客だけでなく同僚である女性店員も、頬を染めながら彼
を見つめている。
そんな見慣れた光景を横目に、
︻豊穣の女主人亭︼店主であるミアは
ため息をついた。
ウィリウス・スターガ。
アフロディーテファミリア唯一の団員であり、オラリオでたった二
人しかいない最強のLv7。
その神のごとき美しい容貌に憧れる女性も多い。
そんな彼の大層な肩書きに、ミアはあのちびっこがいつの間にこん
な立派に成長したのかと考えていた。
ミアにとって、小さなウィリウスが﹃僕をここで働かせてください
﹄と頭を下げにきたことは記憶にまだ新しい。
この8年間本当の母になったつもりで彼を見守っていたのだが、い
つの間にかウィリウスはミアが見上げなかればならないほどの地位
に登りつめていた。
ミアにとって、そのことが嬉しくもあり寂しくもあった。
何にせよ、ウィリウスはミアにとって自慢であり、誇りであった。
と、不意にざわついていた雰囲気が水をうったように静寂につつま
れた。
ウィリウスのもとへ優雅に歩いていく一人の女性に、皆の目が釘付
けになる。
歩みに合わせて揺れるブロンド。
均整のとれたまさに理想のプロポーション。
中でも、エメラルドのように輝く大きな瞳は、吸い込まれてしまい
そうなほど美しい。
女神 アフロディーテ。
同性の女でさえも見惚れる、女神フレイヤと並び立つ最高の美神。
そんな彼女は、ゆっくりと歩を進め、微笑みを浮かべているウィリ
ウスの腕の中へと収まった。
﹁おはよう。アフロディーテ﹂
4
!
腕の中にいる最愛の女神が可愛くて仕方ないとばかりに笑みを浮
かべるウィリウスに、周囲の女性は余すことなくノックアウトされ
る。
﹁ええ。おはよう。私の可愛いウィル﹂
美男美女。
オラリオ一お似合い言われるその男女の、まるで映画のような一
幕。
ボサッとしてないで手を動かしな
﹂
もはや見慣れたその光景に、苦笑しつつ、いつものように声を上げ
た。
﹁あんたたち
!
ーーーーーーーこれは、オラリオ最強といわれた一人の男と、最高
の美神といわれた一人の女神の物語である。
5
!
Fly UP