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上条当麻に転生したんだけど、ヒーローになるのは難しい ID
上条当麻に転生したん だけど、ヒーローにな るのは難しい knights ︻注意事項︼ このPDFファイルは﹁ハーメルン﹂で掲載中の作品を自動的にPDF化したもので す。 小説の作者、 ﹁ハーメルン﹂の運営者に無断でPDFファイル及び作品を引用の範囲を 超える形で転載・改変・再配布・販売することを禁じます。 ︻あらすじ︼ 前 世 の 記 憶 を 一 切 持 た な い け ど、原 作 一 か ら 七 巻 を う ろ 覚 え で 記 憶 し て い る カ ミ ジョーさん。 転生したのはいいけど、不幸が凄すぎて泣きそうになる。 無謀過ぎる﹂ 成績は普通、喧嘩のセンスも普通、鈍感では無いカミジョーさん。 ﹁異能の力を受け止めるだって 当麻のとある物語。 幻想殺しがあっても、カミジョーさんはヒーローにはなれなさそう│││そんな上条 ? 目 次 ヒーローにはなれなさそうな上条当麻 禁書目録と名乗る少女 │││││ 補習と御坂とインデックス │││ 16 37 1 │ ヒーローにはなれなさそうな上条当麻 今日の学園都市の夜空は雲一つ無く、満月の光が街中を照らしている。 美しいと賞賛出来る程の、満月が照らす学園都市の中には沢山の学生達が能力開発の 為に日々精進している。 いとも簡単にスプーンを曲げてしまう、若しくはそれ以上の能力を持つ人間がいる。 レ ベ ル 0 そんな人間をレベル1から5で表すとしよう。逆に、何の能力も持っていない、スプー ン曲げすら出来ない人間を無能力者と言う。 今日はこれだけ雰囲気作りにはベストな夜だから、今晩は様々な能力者や無能力者達 が二人一組のカップルで夜道を歩いているのだろう。 超ド本気の全力疾走で走り回ってる奴なんていない筈だ。いない筈なんだ⋮⋮⋮⋮ ﹂ ﹁これが不幸かぁぁぁぁぁぁああああああっっっっ ﹁待てゴラァ ﹂ ﹂ 人の不良達が殺意を交えた荒い声を上条に向かって吐きながら追いかけていた。 少年││上条当麻は変態じみた声で叫びながら全力疾走で走っている。背後には八 ﹁ぶっ殺してやるから止まれや !!! ! !!!!! 1 ヒーローにはなれなさそうな上条当麻 2 さぁ 私めにもさっぱり分かりません。 ⋮⋮⋮突然のカミングアウトなのですが私、上条当麻は本物の上条当麻じゃございま せん。何を言ってるんだって ? ていようが関係無い。俺には七冊の予言の書と最強の右拳がある。 この後に出て来るインデックスさんに背筋が凍る量の魔道書を頭の中にぶっ込まれ 中には叩き込まれている。 十万三千冊の魔道書とは言わないが、ほぼ覚えちゃいない原作たったの七巻が俺の頭の でもだ、でも⋮⋮⋮自分が上条当麻では無い証拠、それはこの先の未来が分かる事だ。 で、証拠もある。でも、記憶が無い。自分が上条当麻になってしまう前の記憶が無い。 ただ、どうだ。記憶がハッキリとしないのだ。自分が本物の上条当麻で無い事は確か えてみてもすぐには分かる事はない。 何故、自分の姿が鈍感主人公、カミジョー属性で有名な上条当麻になっているのか、考 当然の如く、二度見してしまった。 麻さんが目の前にいるじゃないですか。 かと辺りを彷徨いていたら店の窓ガラスに自分の顔が映り出してビックリ仰天、上条当 気付いたら、表紙からして明らかに地雷と分かる漫画を読んでいて、此処が何処なの のか、と思ってしまうかもしれないがそうとしか言いようがない。 理解不能な事なのだが、上条当麻は全くの別人である上条当麻なのだ。どういう事な ? ⋮⋮⋮話を戻そう。││あくまで俺の予想だが、何らかの理由があって上条当麻に憑 依転生した。 ﹂ ﹂ はい、終わり。⋮⋮取り敢えず、今は現状を何とかしなくてはいけない。 ﹁待てっつってんだろうが ﹂ ﹁この足を止めたらどうなるんでしょうかーーー ﹁んなもんてめぇをぶっ殺すだけだコラァ 甘い物を食べたいと思って店でイチゴとチョコのらぶらぶパフェを頼 ! ﹂ ! 女の子が居て、かっこよく助けようだなんて思ったからこんな悲劇を招いてしまったの 少し調子に乗っていたのかもしれない。偶然入ったファミレスに、偶然見た事のある 走りに走って、完全に不良達を振り切った上条はそう言って溜息を吐く。 相当な不幸体質過ぎるだろ上条さん んだってのに、結局食えないまま出る事になるし、店の人には食い逃げ扱いされるわで ﹁あぁ、クッソ きだなんて自分には出来る気がしない。 返った瞬間にその気は失せた。格ゲーじゃあるまいし、どう足掻いても不良道場八人抜 ある程度距離を取った時に、一度は立ち向かってみようかなんて思ってもみたが振り り飛ばして、ポリバケツの近くにいた黒猫は驚いて逃げ去ってしまう。 足を止める訳にはいかず、尚も走り続ける。走っている途中に薄汚いポリバケツを蹴 !!! !? ! 3 だろう。 思い出せば分かる事だった。これが 彼女 と知り合うきっかけになるのだから。 " これも、上条さんの体質││﹃不幸﹄なのだろうか。最早、自分が何かを考えるだけ 十数人の不良達が上条を見てニヤッと気色悪い笑みを浮かべた。 上条が隠れている路地裏から顔をひょこっと出して見ると、不良達が八人から増え、 ﹁はぁ⋮⋮⋮もういませんように、と│││げっ⋮⋮⋮﹂ " ﹂ で不幸へと導かれてしまうのかと上条は思う。 再び、地面を蹴る。 !!!! げと言うべきか。普段、面倒な事に巻き込まれるのが多く、走り回るのも多かったから いるけども、息切れする程の疲れでは無い。流石は上条当麻と言うべきか、不幸のおか 実際にこうやって逃げ回っているのだが、未だに疲れの限界が来ない。多少は疲れて も、主人公の身体能力や右手の能力は完全に把握しているつもりだった。 転生前がどうあれ、今の身体能力は上条当麻だからだ。原作知識がうろ覚えと言って ハッキリ言って、走りに関しては上条は負ける気がしなかった。 レー開始の合図かのように走り出す。 本日二度目の大声、 ﹃不幸﹄が街中に響き渡る。声を聞いた不良達は、それがまるでリ ﹁不幸だぁぁぁああああああ ヒーローにはなれなさそうな上条当麻 4 こそのスタミナだ。 ﹂ とっとと捕まえてみやがれってんだ 玉無しかオイ ﹂ ! 変な話だが、今回ばかりは不幸に対して感謝をしていた。 ﹁ははは⋮⋮どうだこの野郎 ﹁いつまでも逃げてんじゃねぇぞクソガキが !? 辺りを見渡して上条は確信する。 ている。そして、鉄橋を渡っている途中で上条は足を止めていた。 既に学園都市の都市部分を離れて大きな川に出ていて、川には大きな鉄橋が架けられ 道の途中に灯りと電柱が見えるだけだった。 振り返ってみるが、誰も上条を追い掛けようとする者はいない。ただ只管、暗い一本 う涙で走り続けた結果││勝利した。 思った通り更に二キロ程、普段流す筈では無い異常な量の汗と、辛くなってきたとい くなる。 不良達にも体力があり、いつかは疲れてしまう。そうなると当然、不良達は追ってこな 追い掛けっこは続いているが、終わるのも時間の問題だろう。どれだけ追い回そうが 上条は余裕の表情を浮かべながら不良達を煽った。 ! ! 5 ﹁迷子になった﹂ 顔を伝って零れ落ちていく汗を拭いながら上条は呟いた。 ﹂ 不気味な雰囲気を漂わせる暗闇の中、上条は深呼吸をしてから来た道を戻ろうと足を 動かす。│││若干早歩きになっているのは気のせいだろう。 上条が鉄橋を走り戻っていた時だった。 ﹁ったく、何やってんのよアンタ。不良を守って善人気取りか、熱血教師ですかぁ 常盤台のお嬢様、学園都市第三位、灰色のスカートに半袖のブラウス、実はスカート ? の中に短パンを穿いているというパンチラ童貞初見殺しの魅力を持ち合わせた美少女 中学生。 言わずとも、ファミレスで上条が助けようとした女の子である。 どう考えても、俺が助けようとしたのはお前だろ﹂ ? 第三位である少女が不良と対峙して負ける筈が無い。寧ろ、負けてはならない。何十 られたという事が。それも、不良相手にだ。 少女は不快に思ったのだ。学園都市第三位である自分が、無能力者である上条に助け 上条の言葉に、少女はピクッと眉を動かす。 ﹁不良を守る⋮⋮⋮俺がか ヒーローにはなれなさそうな上条当麻 6 人何千人と不良達が襲い掛かっても彼女を倒す事は不可能だ。そんな相手だと言うの に、気に食わない男に自分は助けられ、心配された。 ﹂ 少女にとって、その事実がどうしても頭に来る。 ﹂ ﹁アンタねぇ⋮⋮⋮私を馬鹿にしてんの が襲う。 ﹁な、ちょ、ちょっと痛いんですけど !? これより強い電気なんか欲しいわけあるか ﹂ ﹂ ﹁ふん、いい気味じゃない。なんならもっと痛い目に合わせてあげてもいいんだけど ﹁冗談じゃねぇよ ﹁欲しくねぇ ﹁あ、今のならいいんだ﹂ ! ! ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ﹂ ・ 今の所は原作通りに進んでいると上条は思っているのだが、違う。少女に対して放っ だった。 何故そこまでして、目の前の少女が自分に対して電撃を浴びさせたがるのか理解不能 ! ? ﹂ 微量ではあるが、上条の右手以外に電流が流れ、チクっと棘が刺さる感じに似た痛み 流れるように電撃は鉄橋を渡って行った。 ダンッと少女は地面を思い切り踏み付けると青白い電撃が地面から放出され、閃光が ﹁のわぁっ !? !? 7 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ た言葉を間違えた時点で変わってしまったのだ。 ﹂ ﹂ ﹂ ﹁俺はただ単にお前を助けようと思っただけなんだけど 意味が分かんねーよ﹂ ﹁⋮⋮⋮ほんっと、アンタ。私の事を馬鹿にしてんの ﹁はぁ はぁ、と少女は溜息を吐く。 !? ﹁あの程度の相手を私が対処出来ないとでも思ってるわけ ? れない原作の運命なのだ。 結局、電気出すのを止めてくださいと言っても止めてはもらえないのだろう。逃れら い。そう思うと何を言っても無駄な気がしてならない。 思ってみたら、目の前でパチパチと火花を散らしている少女とは戦わないといけな ﹁は、はぁ⋮⋮そうですか⋮⋮⋮﹂ ﹁それは良い心がけだこと。でも生憎、私にはそんな気遣い必要ないから﹂ ﹁思っちゃいないけど、不良に囲まれてる女の子助けるのは当然だろ﹂ ? ? 突然、少女に纏わりついていた火花が大きく音を立て始める。 ﹁⋮⋮⋮⋮⋮⋮⋮⋮⋮⋮⋮⋮⋮⋮⋮⋮⋮⋮⋮⋮⋮何を﹂ んだぞ﹂ ﹁まぁ、何て言うか⋮⋮悪かったよ。もう暗いし、俺は帰る。じゃあな。気を付けて帰る ヒーローにはなれなさそうな上条当麻 8 一か八か、安全策をとってみたものの、これは駄目みたいだ。││正直言って、戦い たくない。あんな、十万ボルトを容易く出せそうな女の子と戦って勝てる気がしない。 原作上条さんならばお茶の子さいさいなのだろうが、今は喧嘩すら微妙な転生ポンコツ ﹂ 上条さんだって言うのに無謀過ぎる。 で、ですよねー ﹁逃げようとしてんのよ ﹂ ? ﹂ アンタは私の電撃を食らっても死にはしないでしょ﹂ ﹁死ぬわ ? ﹁能 力 っ て 言 っ た っ て よ ⋮⋮⋮ こ れ っ て 半 端 じ ゃ な い 程、メ ン タ ル 削 が れ る か ら な ﹁どうでもいいわよ⋮⋮それより、何で能力を使わないのよ﹂ ! ﹁はぁ ﹁どういうつもりとは俺の台詞だ⋮⋮⋮殺す気かよ⋮⋮⋮﹂ ﹁アンタねぇ⋮⋮⋮どういうつもり と言える位に間抜けな避け方で全弾を回避した。 右手を使えば勝ちも同然だと言うのに、上条は一切使わずに見ている方が恥ずかしい 三発と襲い掛かり、更には複数同時に電槍が上条に襲い掛かる。 等の上条本人はテンパって、ヘッドスライディングで一発目を避けるが、続いて二発、 少女が手を上条に向かって振ると電撃の槍、﹃電槍﹄が上条へと向かっていった。 ! !!! 9 ⋮⋮⋮﹂ 主に、攻撃を受け止めるという勇気を出す為に。 少女はポケットの中に手を突っ込み、ゲームセンターでよく見かけるコインを一枚 ﹁⋮⋮⋮⋮なら無理矢理にでも能力を使わせてやるわよ﹂ 握って再び出てくる。 上条は嫌な予感がしてならない。まるで、嬉しいような嬉しくないような出来事が起 ﹂ きる予感がしてだ。何故だか、これから名場面を生で目に焼き付ける気がする。 レー ル ガ ン ﹁ねぇ、超電磁砲って言葉、知ってる が止まりそうになる。 程の電撃の数千倍は危険な攻撃を自分は受け止めなければいけない。そう思うと、心臓 超電磁砲と聞いて、相手が何をしようとするのか分かってしまったのだ。しかも、先 レー ル ガ ン あぁ、そう来ましたかと、上条はゴクリと唾を飲む。 ? き出される答えはただ一つ。 に、確実に受け止めるかをイメージしているからである。何回もイメージしてみるが導 少女は他にも何か言っていたが、上条に届く事は無かった。頭の中では、如何に安全 ﹁理屈はリニアモーターと一緒でね││││﹂ ヒーローにはなれなさそうな上条当麻 10 │││上条当麻死す│││ 重要キャラ死亡のお話にピッタリのタイトルが頭の中に浮かんで来てしまった。 ピンと少女の指から真上へと放り出されたコインは回転を続けながら降下していく。 やがて、少女の胸元辺りに降下した時、少女は親指でコインを弾いた。 空気摩擦の所為で50メートルも飛んだら溶けるんだけど﹂ ﹁コインでも、音速の三倍で飛ばせばそれなりに威力が出るみたいなのよね。もっとも、 出来事の終始を見て、上条は絶句していた。 だが、空気には依然としてオレンジ色の残光が焼き付いている。 範囲が約三0メートルにも及ぶ超電磁砲は一直線にアスファルトを抉って行ったの レー ル ガ ン 少し遅れて轟音が響き渡り、鼓膜が破れそうな振動に上条は一瞬よろめいた。 じゃないですかー⋮⋮ ⋮⋮⋮何ということでしょう。アスファルトが抉られたように一本道を描いている と││││ た。最初に撃ってきた電撃の槍とは桁違いの速さで通り過ぎて行った電撃の方を見る 突如、コインが加速したと思えば、音も無く上条の真横を電撃の槍が通り過ぎて行っ ﹁こういうのを言うらしいのよね﹂ 11 少女は笑顔を上条に向けるが、上条には悪魔の微笑みにしか見えない。 ﹁ははは⋮⋮凄いなお前⋮⋮⋮﹂ 上条は腹を括ることにした。此処までされて、尻尾巻いて逃げるのは男ではないと、 原作の上条当麻が叫んでる気がするのだ。 逃げるな。 逃げるな。 戦え。 戦え。 本物の上条当麻が言っている気がするのだ。 ﹂ ﹂ !? ? 少女は上条が自分の技である超電磁砲を使える事に驚きを隠せなかった。 レー ル ガ ン ﹁な⋮⋮⋮アンタも同じ系統の能力者⋮⋮ ﹁れ、超電磁砲って知ってるよなぁ⋮⋮⋮ レー ル ガ ン そして、小銭を握り締めている手をさっきの少女の真似をするように手前に出す。 ﹁偶然だな⋮⋮俺も同じ事言おうとしてたんだ﹂ 突っ込み、パフェの為に用意していた小銭を手に握り締める。 上条はそう言い、休日も着ることがやぶさかではない制服のズボンのポケットに手を ﹁なら、俺も本気で行かせてもらうからな﹂ ヒーローにはなれなさそうな上条当麻 12 バンク 上条が自分の電撃を全て吸収できるのは、学園都市の書庫にすら載っていない異端の 力だと思っていたが、上条が電撃使いだと言うなら多少は納得する。 少女が言った通り、上条が同じ系統の電撃使いだとするなら、少女の電撃を吸収する イマジンブレーカー のは不可能では無い。⋮⋮だが、高レベルな電撃使いでなければレベル5の電撃を吸収 するのはかなりキツイ。 覚えといて貰いたい。上条当麻は上条当麻では無く、転生特典で幻 想 殺 しとは異なる ﹂ 他の能力を持ち合わせているなんて│││ 一切、ありえません。 ﹁おぅらくらぇぇぇぇえええ ﹂ ? ﹁あ ー、い や ー ⋮⋮ そ の ー ⋮⋮ き っ と あ れ だ。ゲ ー セ ン の コ イ ン じ ゃ な い か ら 撃 て な ﹁⋮⋮⋮⋮⋮⋮⋮⋮﹂ ﹁⋮⋮⋮お前も超電磁砲を打ち消す力を持ってんのか レー ル ガ ン に直撃する瞬間、バチバチと少女に渦巻く火花が小銭を弾き飛ばした。 プロ野球のピッチャーを出来るだけ再現し、綺麗なフォームから放たれた小銭は少女 握り締めていた小銭を少女に向かって投げる。⋮⋮全く、なけなしの金が勿体無い。 !!! 13 かったんだ。そうに違いない。﹂ 上条は焦りの所為で冷や汗がダラダラと流れ出した。 ・ ・ ・ ・ ・ ・ 元々、小銭を少女に向かって投げる行為には意味があった。転生上条は意味の無い事 はあまりしない。 850円といった百円玉八枚と十円玉五枚を勢い良く投げ付ける事によって、威力は 全く無いが、擬似的なショットガンを放つ。そして、相手が怯えてる間に逃げ出す目眩 し作戦。 我ながら完璧な作戦だと思っていた。 しかし、どうだ。 相手は怯えるどころか、真顔で投げ付けた小銭の全てを弾いてしまったというイレ ギュラーな事態が発生。電撃で弾けるなんて聞いてなかったです、はい。 きゃっ、とか、やるわね⋮⋮とか言って欲しかった。 ⋮⋮﹂ ﹁⋮⋮⋮本当にごめんなさい﹂ !!! 雲一つ無い、晴れだと言うのに頭上が一瞬光り、轟音と共に雷が上条へと落ちた。 ﹁ごめんで済んだら││││警察は要らないのよ ﹂ ﹁へ ぇ ⋮⋮ 今 の が ア ン タ の 能 力 ね ぇ ⋮⋮ ま ぁ、少 し で も 信 じ ち ゃ っ た 私 も 悪 い け ど さ ヒーローにはなれなさそうな上条当麻 14 15 ⋮⋮反射神経に助けられたと心から思う。 反射的に右手を自分の前に翳していなければ、確実に人の丸焼き状態と成り果てた上 イマジンブレーカー 条がそこに居ただろう。 右手に宿る幻 想 殺 しで電撃を打ち消した事で、自分はやっぱり原作の上条当麻と同じ ようで違う人間だと実感した。 そして、上条は思う。 怖かった、と。 サウナ状態になっていた。 何よりも、油断していた。電化製品が八割が死滅するという事を。 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ いだばかりの人間が戦いたいと思いますか。生まれるのは勇気じゃなく、恐怖しか生ま 逃げるのはダサいとかカッコ悪いとか思ってしまうかもしれませんが、初見で雷を防 因みに、昨日の戦いは何とか逃げ切りました。 自分の家だけが死滅しなければいけないのか。⋮⋮理不尽極まりない。 自分以外の寮の生徒達は電化製品が無傷だと言うのに、一体どういう原理が働いて、 この仕打ちは酷過ぎるのではないかと思ってしまう。 昨夜の落雷⋮⋮原作上条さん曰く、ビリビリの仕業に違いない。⋮⋮それにしても、 の電化製品が壊れてしまった。 昨日の夜中に、稀に見る位の大きな雷が落ちたそうだ。落ちた雷の影響で上条家だけ ・ 夏休みだけあって、溶けると言った表現が似合う程蒸し暑い天気。部屋の中は天然の 忘れていた。今日から夏休み初日を迎えるという事を。 七月二十日⋮⋮⋮。 禁書目録と名乗る少女 禁書目録と名乗る少女 16 れませんよ。 最大の難関は逃げ切った後。 上条さんの家は一体何処にあるのか。ぶっちゃけ、もう詰んだかと思った。途中でキ なんて聞いたことのあるよう レかけましたから、うろ覚えの癖に、原作に載ってなかったしとか原作の所為にして涙 目で都市部方面へと彷徨うように歩いていた。 こんな所にずっと居たら未来が変わってしまう⋮⋮ べられた。 ﹁あるぇーカミやん、こんな所でなにしてるにゃー ﹂ ﹂ 転生上条である私めは初顔合わせというのにも関わらず が付く程馴れ馴れ " ﹁⋮⋮⋮⋮土御門じゃねぇか しくした。 クソ でない大佐と思われる人物のセリフを吐いてみたりしてた時│││救いの手が差し伸 ! ﹁な、カミやんどうし│││││⋮⋮⋮こっちだにゃー﹂ ﹁土御門⋮⋮⋮俺の家は何処にあるんですか⋮⋮⋮⋮﹂ 何故なら、土御門は上条と同じ寮に住む住人だからだ。 るのか分からない迷子の子羊状態の上条にとって、神様同然の人間になっている。 けれども、上条に声を掛けたグラサン金髪の土御門元春│││土御門は家が何処にあ " ! ? 17 土御門は言いかけていた言葉を途中で止め、上条を見ると手招きして寮へと連れて 行った。 上条は鼻水を垂らし、涙で目を潤ませながら土御門を見ていた為、土御門は、聞くの はよそうと気を利かせたのだ。 つまり、簡潔に言ってしまおう。 偶然歩いていた土御門に助けられました。 そんなこんなで今は生で拝めるとは思わなかった原作上条さんの家で非常食のカッ プ焼きそばにお湯を注ぎ、数分待ってお湯を捨てる過程まで来ている。 丁度良いハンデだよ。こっちは未来予知が出来るんだから。 うろ覚えと言えど、原作で冷蔵庫の中身が腐っているなんて事くらいは覚えている。 電化製品死滅 擬似ショットガン目眩し作戦 " 並みに良い考えだと自分で 割り箸で麺がカップから吐き出されない為に抑えつつ、残りのお湯を捨てる。昨夜の 安全策を取る為に、上条は台所を適当に漁って割り箸を手に取る。 言えない幸運だ。未来が分かっていれば、不幸を消す事は可能なのかもしれない。 上条はカップ焼きそばを流し台に全てブチまける。こんな事に気付けるなんて何とも カップ焼きそばを傾けてお湯が流し台に捨てられていき、刹那│││気付く。原作の そう思いながら、上条がカップ焼きそばに注いだお湯を流し台に捨てる時だった。 ? 少女と戦った時に閃いた、 " 禁書目録と名乗る少女 18 も思う。 ﹂ ! 耐えるんだ。耐えなくてはいけない。原作の上条当麻はこんなことじゃちっとも萎 ﹁シャワー浴びて寝よ⋮⋮⋮﹂ そばなのだろうか。 ワイシャツは麺とソース塗れ、頭にはふりかけがトッピング。これが真のカップ焼き 過ぎた所為で、開けたと同時に自分の手が勢い良くカップ焼きそばの角に命中。 やっとの思いで開けられと思ったが、中身のふりかけは空中に舞い上がり、力を入れ ﹁⋮⋮⋮⋮えー、こうなっちゃうんですかー﹂ 顔が赤くなる程に力を込め、ふりかけの袋を開けると│││ ﹁っく⋮⋮⋮⋮こ⋮⋮の⋮⋮⋮ りかけの袋を上手く開けられない。 ソースを入れたまでは良いが、自分の手が大きく、ふりかけの袋が小さいからか、ふ ﹁あれ⋮⋮⋮硬いなこれ⋮⋮上手く開けられねぇ﹂ ニングなんて有り得ないだろう。 残りのソースとふりかけをカップ焼きそばにかけて出来上がり、この過程からのハプ 完全にお湯を捨て切り、上条は勝利を確信していた。 ﹁悪いな∼上条さんの中に存在する不幸とやら、今回は俺の圧勝になるみたいだ﹂ 19 えやしない。全ては慣れ、そう慣れだ。寧ろ、トラックに轢かれるなんて不幸が起きな いだけ幸せではないか。 気分を改めて、ワイシャツを脱ぎ、中に着ているオレンジ色のTシャツを脱ぐ。 シャワーを浴びるとは言ったが、洗面所で頭を洗うだけにしておく。⋮⋮不幸が悪い んだ。水道会社の人達は悪くない。シャワーから出る液体が冷水なのは不幸が悪い。 風呂場からシャンプーを取り、洗面器に頭をセッティング。今日のツンツン頭は中々 にキレが良い。 ⋮⋮⋮⋮⋮⋮⋮⋮⋮⋮⋮冷たい。 シャワーから洗面器に変えても、ツンツン頭に注がれる液体はお湯ではなく冷水。し かし、まだ想定内。冷水だからこそ頭だけを洗う事にしたのだ。 後先考えずに、どーせ頭洗うならついでに全身洗っちゃおーぜ☆なんてやってみろ。 風邪でも引いたらシャレにならんぞ。こちとら不幸が付いているんだ。風邪だった物 がインフルエンザ、それからの謎の病原体が体を蝕み、余命一ヶ月という最悪の事態が 起こり得るかもしれないんだ。 それに比べたら、冷水で頭を洗う事位どうってことない。 夏だから丁度良いくらいだろう。 ﹁あひぃー⋮⋮サッパリしたー。洗ってる時は辛いけど、洗い終わったら気持ち良いな﹂ 禁書目録と名乗る少女 20 しかし夏とは言え、上半身裸でいるのもどうかと思い、夏服に着替えてベッドに座る。 ⋮⋮⋮本番は此処からだ。 ロ リ ラブコール 記憶が正しければ、持っている携帯電話が鳴り始める頃だ。 てるんだけどな﹂ 携帯電話の画面を見ると、 小萌先生 と表示されていた。 " に出会い、語尾に にゃー と付けるグラサン金髪にも出会えて正直嬉し過ぎる。 " ﹁どうかしました ﹂ ﹃あ、上条ちゃん﹄ ﹁はい、もしもし﹂ 上条は期待を胸に、電話に出た。 " 昨日に至ってもそうだ。ネット上でSSと呼ばれる二次創作に多く使われるヒロイン 目で見る事しか出来なかった、本の中の人物と会話でき、叱られる事が出来るからで、 だが、今の上条は嬉しさ半分、楽しみ半分がある。 の教科書を見ると、ある程度解ける脳は持っていた。 れるに違いない。しかし、原作の上条は言うまでもなくバカであるが、今の上条は高校 間違いなく補修の話で、電話に出たら﹃上条ちゃんはバカだから補習でーす﹄と言わ " ﹁お、きたきた。先生からの連 絡が⋮⋮⋮つっても、俺自体はそこまで頭悪くないと思っ 21 ? ﹃もう、夏休み入る前に言ったじゃないですかー。赤点の人は補習なのですよー ﹁ちゃんと覚えてますよ⋮⋮⋮﹂ いね﹂ ﹄ ﹃上条ちゃんはバカだから補習ですよー。先生は学校で待ってますので、早く来て下さ ? あの言葉が聞けると思ってたのに、少しだけ文章が違うじゃないか ! 流石に常識はある上条は頭の中で、通帳があれば大丈夫と何十回も呪文みたく唱えて は動じない。 ベッドから立ち上がって、一歩踏み出した途端にキャッシュカードを踏み砕いたが上条 もう、トイレで篭ってようかな。なんて事を思いつつ、上条はベランダへと向かう。 死亡という見事なコンボが決まるかもしれないんだ。 こちとら不幸が付いているんだ。リンチからの骨折、からの入院、トドメに闇討ちで 自分をリンチしに来る。そんな事態だけは避けたい。 あの人を泣かせると青ピなる人物を始め、学校中の男子生徒達が猛烈な殺意を持って 帯の電池が切れただけであった。│││小萌先生が涙目になっていない事を願う。 小萌先生は用件だけ言うと、電話を一方的に切ってしまった。と思ったが、上条の携 ! なんてこったい ﹁わかりまし│││切られてる⋮⋮⋮﹂ 禁書目録と名乗る少女 22 いた。 青ざめた顔をした上条はベランダに入る為の網戸からベランダを覗く。すると││ ││ ゆっくりと女の子の目が開く。 麗な銀髪の間から顔がヒョコッと出てきた。 目 次 布 団 ぶら下がっている女の子の手を左手で掴み、揺する。すると、女の子の首が動き、綺 ガラガラと網戸を開け、ベランダに乗り込む。 ﹁魔術結社に追われたって言っても⋮⋮⋮追ってたのはステイルと神裂なんだよな﹂ マジックキャバル 完全記憶能力を持ち、魔術サイドの人間に悪用される女の子。 魔道書が記憶されている。 白い修道服を着た女の子、シスター。名前はインデックスで頭の中には十万三千冊の 間である。 勿論、見た目が白いからそう見えるだけであり、実際はオフトゥンなんかではなく、人 ☆O・HU・TO・N☆ ベランダの手すりには白い物体が干されている。干されている物、それはまさに。 界なんだな⋮⋮⋮﹂ ﹁いる⋮⋮⋮うわぁ⋮⋮⋮マジもんじゃないかぁ⋮⋮⋮此処ってやっぱり、とあるの世 23 ﹂ ﹁お⋮⋮⋮⋮⋮⋮⋮⋮﹂ ﹁お腹減ったのか しばら さそうな雰囲気。⋮⋮⋮昔話でこんな話なかったっけ あんぱん○ん んだままゆっくりと後ろに下がる。 そう言って、上条はインデックスの両腕を掴む。急に引っ張ると痛いだろうから、掴 ﹁ん、分かった﹂ ? 出した。 ぶら下がっている女の子、インデックスはふるふると首を横に振った。 ﹁ぶら下がってないで、家に入って待ってろ⋮⋮⋮⋮って、こっち来れるか え ? ﹁じゃあ、俺が腕を引っ張るから出来るだけ前に体重を乗せてくれ﹂ ? ﹂ 暫く獣のように唸って考え込んでいると、台所の戸棚にお菓子が入っているのを思い ? 物語のヒロインを見つけたまでは良いが、食べ物を与えないと仲間になってはくれな ﹁うー⋮⋮⋮⋮⋮﹂ ﹁悪いんだけど、冷蔵庫の中は全滅で非常食は流し台に流されたから食物は無いんだ﹂ ﹁⋮⋮⋮⋮⋮⋮⋮うん﹂ ? ﹁お腹が減って力が出ない﹂ 禁書目録と名乗る少女 24 このまま下がるとインデックスは顔面からベランダの床に叩き付けられる事になる ので、最終的には抱っこする状態で受け止めなくてはいけない。 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 背中に手を回し、抱っこというよりは抱き締めると言った表現の方が正しい状態で受 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ け止めた上条はインデックスの体重が軽いと思いながら、両手を使ってインデックスを ベランダに降ろした。 サ イ ド オ ブ ザ ド ロッ プ 側面の布が落ちて行く⋮⋮⋮ ﹂ まうんだよ⋮⋮ ﹂ もしかして一目惚れ⋮⋮⋮ ! ︶﹂ !? ﹂ ただ言える事は、前者を選んだら歯型を聖痕として刻まれてしまう。仮にもシスター のか、今の上条には分からない。 修道服が崩れ落ちていることを言った方が良いのか、黙って抱き締め続けた方が良い 逸らして抱き締めた状態を維持した。 インデックスは恥ずかしさで頬を赤らめ、上条を上目遣いで見る。対し、上条は顔を ? 絶対に無理なんだけど ﹁無理無理無理 ? ﹁それってどういう事 ? ! ﹁ちょっと、早く離して欲しいかも。知らない人でも抱き締められるとドキドキしてし ! を触ったんだけど、この手を離したら一体⋮⋮⋮⋮⋮ ﹁︵待ってくれ⋮⋮これは相当ヤバイ気がする。ついうっかり、右手でインデックスの服 25 だから聖痕とは言っているが、暴力の賜物│││うん、ただの歯型。 それにシスターである私は 悩んだ挙句、抱き締めながら家の中へ連れて行く方法が頭に浮かんで来た。 神様が夫だって決まってるから⋮⋮⋮⋮﹂ ﹁本当になんなのかな⋮⋮⋮これはセクハラに入るんだよ 頬を膨らませて見つめて来る。 今すぐにでも噛み付きそうな目つき。 更に怒涛の三連撃が上条を襲った。 側面の布がベランダに置いてある⋮⋮⋮⋮。 するかだ。そして思った。 ベランダから家の中に入ると、先ずは第一フェーズが完了。第二フェーズは布をどう てくれませんか﹂ ﹁違うんだ、勘違いしないでくれ。俺は今、お前の為に頑張ってるんだから静かにしてい ? ﹂ ﹂ 下を向いたらいつバレるか分からないよ 恥ずかしさで俯向く。 俯いたらあかん ﹁ ! 突然、異様な程に咳き込んだ上条を見て、インデックスは驚くを通り越してビビって !? !!! ! ﹁んぐあぁうはぁあうえっはぁっはッッッ 禁書目録と名乗る少女 26 いた。 これにより、緊急事態は回避出来たのだが⋮⋮布をどうやって回収するか困ったもの だ。⋮⋮此処は冷静に、ベランダへ戻って回収した方が賢明だと上条は推測した。 ﹂ !? ﹁ちょっと、悪いんだけど⋮⋮こっちに戻ってくれ﹂ ⋮⋮⋮まさか、私をベランダから突き落とすつもりなの ? 食べ物やるって言ったのにベランダから突き落とすとか鬼畜過ぎん ﹁また同じ所に戻るの ﹂ ﹁なわけねーだろ だろうが ! 言った方が正しいのかもしれない。 脱がした犯人は紛れも無い上条なのだが。 それともこうやって押し倒した事 ? ﹁あぅ⋮⋮えっと⋮⋮悪い⋮⋮⋮﹂ ﹁抱き締めた事を謝ってるの 心は広いん 確かに、ふ、普通の人 ベッド。目の前にはインデックス、服は何故か着ていない。というよりも脱がされたと 倒 れ た と 思 っ た ら 柔 ら か い 感 触 │ │ │ ベ ッ ド だ。何 時 も 寝 て い る 原 作 上 条 愛 用 の 不意に体が大きく傾いた。 言い争いをしながら、覚束ない足取りでベランダへと徐々に向かっていた上条だが、 ﹁でも、今まさに君はその行為をしようとしてるん││││﹂ ! なら許せないかもしれないかもだけど⋮⋮私は⋮⋮その、シスターだから ! ? 27 だよ ﹂ ﹂ ! ﹂ ﹁⋮⋮⋮⋮⋮⋮⋮⋮⋮⋮⋮⋮⋮⋮⋮﹂ ? を使ってしまった。 忘れていた訳ではない。不可抗力だったのだ。優しさ故に、女の子に手を貸し、右手 摩りながら手鏡で噛み付かれた部分を確認する上条。 ベッドの上には負のオーラを漂わせながら布団に包まったインデックス、隣には頭を 自分が素っ裸であると気付いたインデックスは迷う事無く、上条の頭に噛み付いた。 ﹁∼∼∼∼∼∼っ いるとしか捉えられない光景だった。 第三者から見ると、明らさまに襲われている女の子と、外人美少女を襲っている男が 同時に、残りの布がスルリと体の上を滑りながら落ちて行く。 ムスッとした顔で、インデックスは上条を押しのけながら体を起こす。起き上がると ﹁それより早く退いて欲しいかも﹂ ﹁︵何一つ当てはまっちゃいない︶﹂ ? ﹁まだ直してるのか 禁書目録と名乗る少女 28 修 復 インデックスは今、何をしているのかと思うが、安全ピンで修道服を元に戻す作業を している。原作で言う、アイアンメイデンへとする為に修道服を強化しているのだ。直 す事に集中し過ぎて、頭の上に乗っている白いフードが落っこちてしまっている。 イマジンブレーカー とは言え、インデックスを守っていた修道服の魔術│││防御結界は既に無い。上条 の幻 想 殺 しのお陰で複雑な魔術は木っ端微塵になっている。 ﹁できた﹂ 包まっていた布団から飛び出して来ると、思った通り、修道服の至る所が十数本の安 ﹁お、早いな﹂ 全ピンで留められていた。 インデックスはふふん、と鼻を鳴らし、どうだ自分の裁縫技術はと見栄を張っている が、言葉一発で心を砕くなんて上条にとっては容易い。 ﹁着ていくのか、そのアイアンメイデン﹂ ﹁はうっ⋮⋮⋮⋮﹂ 言っちゃったー キメ顔で原作の台詞言ったよ俺 ﹁日本では針のむしろとも言う﹂ 言ったー ! ﹁うぅ⋮⋮⋮⋮⋮﹂ ! ジト目でアイアンメイデンを着こなすインデックスを見ていた上条だが、内心は感動 ! 29 で一杯である。 涙目になりながら怒っていたインデックスは、テレビのコードを見つけるとガジガジ シスターだし ﹁食べた事無いのか﹂ ﹂ ﹂ ﹁んぐ⋮⋮⋮⋮このポテトチップスって美味しいね﹂ と、上条にとって高級品と言えるケルビーのポテトチップスをゴソゴソと取り出した。 そう言って、上条はインデックスが裁縫している間に予め用意していたビスケット あらかじ ですかね。 と噛み付いていた。これも不幸の内に入っている。 ﹁着る ﹁そうですか⋮⋮⋮⋮﹂ お腹が減ったから食物出せ ﹁御詫びの代わりに私はお腹が減った 直訳すると、 " ! ﹁此方にビスケットとポテトチップスがあります﹂ " ! ! ﹂ ? かないのか。 流石に転生したから知ってるなんて言ったら面倒な事になりそうだから、合わせるし どうしよう、知ってる。 名前はインデックスって言うんだよ ﹁うん、ビスケットならイギリスで食べた事はあるけど⋮⋮あ、言い忘れてたけど、私の 禁書目録と名乗る少女 30 禁 ﹁目次って名前も珍しいな﹂ 書 目 録 そっちじゃなくてインデックスの方なんだけど⋮⋮⋮⋮﹂ ﹂ ? ﹂ ? ﹂ ? ﹁追われてたって、魔術師にか ﹂ ﹁むっ、嘘が分かりやすいかも。⋮⋮⋮でも、私が追われてたのは間違ってないよ﹂ 笑みをする。 俺ってこんなに嘘が下手クソだっけ、と思った上条は自分に対して、引き攣らせた微 れてとかくらいかななーんて、ははは⋮⋮⋮⋮﹂ ﹁えっと、な⋮⋮⋮うーん⋮⋮神聖なるシスターが上から落ちて来るなんて、敵から追わ ﹁なんで私が追われてるって分かったのかな ンダの手すりにぶら下がっていた理由を聞く前に、少し早とちりしてしまった。 しまった、と上条は気付く。先が分かっているからこそ、インデックスの口からベラ 未来 上条の質問に、インデックスは疑問符を頭の上に浮かべていた。 ﹁え ﹁⋮⋮⋮⋮⋮⋮それで、誰に追われてたんだ ﹁そうかもしれないね、そんな名前を持つのは私くらいかも﹂ そうだし﹂ ﹁何方にしたって珍しいよ。インデックスなんて名前の人は世界中どこ探してもいなさ ﹁うん ? 31 ? ﹂ ﹁⋮⋮⋮⋮魔術師の話なんてしたかな ﹁したと思いますけど何か ﹂ ? 魔術師 。それで、逃げてる最中に屋根から屋 " ﹂ ﹁⋮⋮君、なんだか楽しんでる ﹁ズバリ、狙いは ﹂ 根に飛び移ろうとしたら背中を撃たれて落ちちゃった﹂ ﹁私を追っていたのは君が言った通り、 " 不審な点があると言っている時点で意味は無い。 付きでインデックスを睨んでいた。 またミスを犯した上条は、インデックスに不審がられないように、獲物を狩る狼の目 ⋮⋮⋮⋮﹂ ﹁不審な点があると思うけど、そんなに殺意を帯びた目で見られると何も言えないかも ? 聞いて、気持ちを切り替えた。 馬鹿にされていると思っていたインデックスは頬を膨らませていたが、上条の言葉を ﹁滅相も無い。そんだけされるんだ、何か狙いがあるって事は俺にでも分かる﹂ ? ! メ ゲ ト ン 過ぎるから亜流、偽書が多くてアテにならないかも﹂ ネクロノミコン ソロモンの小さな鍵、ネームレス、食人祭祀書、死者の書なんだけど、死霊術書は有名 レ ﹁⋮⋮⋮⋮ 狙 い は 私 の 持 っ て る 十 万 三 千 冊 の 魔 道 書。代 表 的 な の は、エ イ ボ ン の 書、 禁書目録と名乗る少女 32 ﹁ふーん﹂ ﹁信じてないね ﹂ ﹂ ? 魔道書は普通の人間が見るだけで魔道書の持つ毒に ? そんな本を君が進んで読もうとする意味が分からないんだけど﹂ ? ﹂ なるほど⋮⋮⋮﹂ ! ﹂ ! ﹂ だけど他の人には言わない方が良いって助言をだな⋮⋮⋮﹂ ﹁魔術はあるもんっ ? 幼稚園児が駄々をこねるように、同じ事を言うインデックスは、ベッドの上で立ち上 ! ﹁俺は信じてるよ ﹁人を痛い人みたいに言って⋮⋮⋮魔術はあるもん じゃないから、俺以外に魔道書の話はしない方が良いかもな﹂ ﹁ま ぁ、こ の 科 学 の 街 │ │ 学 園 都 市 じ ゃ 魔 術 自 体 を 信 じ る 奴 は い な い と 言 っ て も 過 言 再び、インデックスは頬を膨らませて怒り出した。 ﹁やっぱり馬鹿にしてる ! ﹁ハッ 犯されるんだよ ﹁そこはかとなく馬鹿にしてるね 魔道書的なモノ、と言ってもうろ覚えの原作七冊である。 ﹁魔道書的な物なら俺も持ってるよ﹂ ﹁信じてないよね ﹁いや、信じてる信じてる﹂ ? 33 がり、胸に手を当てた。 ﹁この修道服はね、魔術が││││⋮⋮⋮⋮︵泣︶﹂ 意地を張って話していたインデックスだったが、途中で言葉を区切ったかと思うと、 目に涙を浮かべて黙ってしまった。 暫くして、インデックスは口を開いた。 ﹁魔術のおかげで⋮⋮⋮絶対に傷付かないんだもん⋮⋮⋮﹂ 悔しそうに下唇を噛んでいるインデックスを見て、上条は心の中で深々と謝罪をして いた。││傷付けるどころか、魔術自体を粉砕したのだから。 ﹂ ﹁な ん て い う か ⋮⋮⋮ 悪 か っ た よ。俺 の 右 手 の 所 為 で そ ん な 風 に し ち ま っ た ん だ し ⋮⋮⋮﹂ ﹁⋮⋮⋮⋮⋮⋮⋮右手 ﹁よし、出て行け﹂ ﹁な、なんでそうなるの ﹂ うが、斬撃だろうが、異能の力なら全部消せる﹂ ﹁俺の右手はあらゆる異能の力を打ち消す事が出来るんだ。核爆発だろうが、電撃だろ ? ﹁物凄くイラッとした﹂ !? ﹁ふーん﹂ 禁書目録と名乗る少女 34 自分が言った言葉をそのまま返されるとこんなにも苛立つものなのかと、込み上げて くる微妙な怒りを抑えながら思った。 睨み付けると、インデックスは子猫みたく怯えていたので、上条は、はぁ、と大きな ラブコール ﹄ からの二回目の連 絡。嫌な予感しかしない。 " 溜息を吐いた。ほぼ同時に、充電しておいた携帯電話が鳴り出した。 ﹂ 携帯画面を見ると、 小萌先生 ﹁はい、小萌先生⋮⋮⋮ " ﹁⋮⋮⋮⋮⋮⋮﹂ ﹁出て行く﹂ ﹁これから補習があるから俺は行くよ。お前はどうするんだ ﹂ とは一体なんだろうか。何処と無く、幼児向けの遊び道具に思えてしまう。 国語でもない、数学でもない、物理でなけりゃ現代社会でもない。すけすけみるみる 小萌先生はそれだけ言うと、今度は間違いなく、相手側から一方的に通話を切られた。 ﹃上条ちゃん⋮⋮⋮早く来ないとすけすけみるみるですよ ? ? ﹂ ? んだ。爆破がお前の言う、魔術の力なら間違いなく消せる﹂ ﹁心配は要らねーよ。言っただろ、俺の右手は異能の力な消せる⋮⋮⋮受け継いだ力な いよね ﹁いつまでも此処にいると、連中追ってきそうだし、君だって部屋ごと爆破されたくはな ? 35 ﹁お互い、完全に信じた訳じゃないけど⋮⋮本当なら凄いね﹂ インデックスが見せた笑顔は、何故か上条からは憂いを含んでいる気がした。 気付いているのかもしれない。上条が遠回しに言いたい事を言っているのを。 居たければ此処に居ればいい。俺は心配ない、と。 上条は知っているのだ。この先に起こる悲劇を。 インデックスは背中を斬られ、血塗れで上条の家の前で倒れる。そんな未来を知って いて、見過ごせる訳がない。それだけは絶対に避けなくてはいけない。 上条がどうとかではない。⋮⋮そうするべきだと、自分が心から思うから。 余計な真似をして、この先の未来が大きく変わるかもしれない。でも、自分は本物の 上条当麻ではない。この世界は今、新しい上条である自分が主人公で、自分の手で未来 を創って行くのだ。 原作はアテにならなくなるかもしれない。所詮、うろ覚えの記憶だ。中途半端に知っ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ているよりも、全く知らない未来の方が楽しいと思う。 地獄の底から引き上げてやるなんてカッコいい台詞は上条には言えない。 もしかしたら、怖くて逃げるかもしれないけど│││ ﹁俺が魔術師から守ってやるって言ってんだよ。インデックス﹂ 禁書目録と名乗る少女 36 補習と御坂とインデックス ﹁はーい。それじゃ先生プリント作って来たので先ずは配るですー﹂ ﹁︵小萌先生は小さいって聞くけど、実物は本当にちっこいなー⋮⋮︶﹂ ﹁ジェットコースターの身長制限に引っ掛かって、断られた事もあるらしいんやで﹂ 声に出さず、心の中で呟いた筈なのに、隣の席に座っている青髪ピアスの男が上条に 向かって話し掛ける。 何で心を読めるのか、と若干の気持ち悪さを覚えた上条は顔を引き攣らせた。 此処は原作上条当麻の通う学校で、転生上条である今の上条は補習を受ける程頭が悪 く無いのだが、原作の上条は頭が弱いが為に小萌先生から電話を受け、呼び出しをされ た。 ﹁お喋りを止める気はありませんけど、先生の話を聞いてくれないと困るのですよー ﹁先生⋮⋮すけすけみるみるって何ですか ﹂ 透け透け見る見るという実技に、疑問を抱いている上条は挙手をして小萌に尋ねる。 ? ですー﹂ 今回、先生は気合を入れて小テストを作って来たので、点数が悪いと透け透け見る見る ? 37 そうなの ﹂ ﹁カミやん⋮⋮このクラスで一番やってるのは多分、カミやんだと思うんやけど﹂ ﹁え ? ﹂ ﹁今からでも、後からでも、変わり無いのですよー !? 上条は言葉を途中で区切ってしまう。 ﹂ ﹁上条ちゃんは記録術の単位が足りてないですし馬鹿なので、小テストをやってもやら か い は つ 自分は決してロリコンでは無いと、上条は心の中で頭を抱えて叫ぶ。 眩んでしまったからだ。 何故なら、小萌も太陽のような輝きを放つ笑顔が上条を照らし、眩しさの所為で目が ? ﹁今からやるんですか ﹁ど忘れするような上条ちゃんの為に用意してみましたー﹂ 席に近付いて、机の上に置く。 取り出したのはトランプカードと大きめの黒い布で、それらを手にした小萌は上条の いる。 小萌はと言うと、視線的にはピッタリ平行である教卓の中をガサゴソと何やら漁って 対して呆れ顔をしていた。 周りをキョロキョロと見渡すと、青髪ピアスのみならず、他の補習組の連中も上条に ? ﹁それってどうゆー⋮⋮⋮﹂ 補習と御坂とインデックス 38 なくても透け透け見る見るですよー はぁ、と上条は軽く息を吐く。 ﹂ 案外、サクサクとこなしてしまうのではないかと思い始めていた。 転生上条である自分は原作上条とは違う。 原作の上条当麻はすけすけみるみるという意味不明な罰ゲームを苦手としていたが、 しかし、良く考えてみようではないか。 ? ﹁準備が出来ましたー﹂ ﹁⋮⋮⋮どうすればいいんですか ﹂ ? 事ですか。 何を始めているんでしょうか、私には全く分からないのですが⋮⋮何かをしろと言う ﹁もう始まってますよー ? ﹂ 当然、周りが見えなくなってしまった。 い布で目を隠す。 隣でボソボソと独り言を言っている変態を無視して、小萌に言われた通り、上条は黒 ﹁小萌ちゃんの特別個人レッスン⋮⋮カミやん羨ましいで⋮⋮⋮﹂ ﹁あ、はい﹂ ﹁はい、ではこの布で目を隠して下さい﹂ 39 ﹁ふんッッ ﹂ ﹂ ﹁な、なんだ いで ﹂ ﹂ 透け透け見る見るは目隠ししながらポーカーをやるのですよ ﹁なんだはこっちのセリフや ﹁上条ちゃんー ﹂ 腰の入った右ストレートをかましてくるなんて正気やな 上条の右拳が何かにぶつかり、青髪ピアスの汚い声が教室に響き渡る。 ﹁あばぁッ !? ! みると確かにトランプと思われる薄っぺらく、四角い紙が五枚置いてある。 目隠し状態のトランプ、ゲームルールはポーカーのようで、手探りで机の上を探って ? ! !? ⋮⋮⋮何て無理難題なんだ。 ? !? ? る。 ﹁ではいいですかー ﹂ やがて音は聞こえなくなり、数秒して上条は再び手探りでトランプカードを手に取 ドを取ったのか、シャッシャとシャッフルする音が聞こえて来る。 上条は持っていたトランプカードを全て机の上に戻す。すると、小萌がトランプカー ら⋮⋮全入れ替えで勝つ事も不可能じゃない︶﹂ ﹁︵ポーカーってあれだよな⋮⋮ツーペアとか、役を作って強い方が勝ちって言う奴だか 補習と御坂とインデックス 40 ﹁構いませんよ﹂ 上条は机の上に表向きでトランプカードを置き、目隠しを取る。 ﹁ノーペア⋮⋮⋮﹂ せめてワンペアくらいは欲しかったが、まさかの役無しで勝負を迎えてしまった。 だが、目隠しポーカーだなんて運が物を言うのではないのか、元々運の勝負ではある が、本来のポーカーに目隠しが加わって来ると完全に運ゲーである。 ﹂ そう言って、可愛いロリロリな笑顔のディーラー兼、上条の対戦相手である小萌はト ﹁ん、先生の勝ちですねー﹂ ランプカードを上条に見せる。 先生、それ反則してません ﹁ロイヤルストレートフラッシュなのです﹂ ? ﹂ ! ﹁はぁ⋮⋮ロリっ子に一日中付いて貰うのも悪くないかー⋮⋮﹂ して貰うんやから ﹁カミやん⋮⋮諦める事ないで。寧ろ嬉しい事や、ロリっ子センセに付きっ切りで補習 が上条の頬を伝って落ちて行った。 もう、やってらんない。と上条は拳を机に叩き付ける。同時に、綺麗で透き通った雫 ﹁因みに、このポーカーは十回連続で勝たないと家に帰れませんよー ? 41 上条と青髪ピアスがロリロリと一々言う事が癪に障ったのか、小萌はムッとした。 ﹁はい、二人共。それ以上喋りやがったらコロンブスの卵です﹂ コロンブスの卵という謎の生命体に疑問を抱いた上条は再び挙手するが、青髪ピアス ﹁⋮⋮⋮先生、コロンブスの卵ってなんで││││││﹂ の手によって無理矢理降ろされてしまう。 なんでもあらへんよ小萌ちゃん それよりもボク達は小テスト受けたいん しかも、虎を狩るような眼差しで上条を睨み付けている。 ﹁なんでも ! ﹁うん、それ聞いたで小萌ちゃん﹂ ﹂ ﹁小萌ちゃんでは無く、小萌先生って呼んで下さいねー ﹂ するまで透け透け見る見るなのですよー ﹁小萌先生ッ ? ﹂ ! レデレになってしまった。 ﹂ 良く出来ました、と小萌が微笑むと青髪ピアスは鼻の下を伸ばす程、小萌に対してデ ? ちゃんと呼ばないと五十連勝 る時間が無くなってしまいますからねー。今回、先生は気合を入れて来たのですよ ﹁むっ、そうですね。上条ちゃんの透け透け見る見るに付き合っていると小テストをや で、トランプも片付けたらどうやろーなんて⋮⋮﹂ ! ! ﹁やっぱり、小萌ちゃんは天使やなー⋮⋮カミやんもそう思うやろ ? 補習と御坂とインデックス 42 ﹁はいはい⋮⋮ところでコロンブスの卵ってなんなんだよ﹂ ﹂ ? 能 力 者 能 力 者 か い は つ ﹂ ? ﹁はい♪﹂ のも授業なんですか⋮⋮⋮﹂ ﹁目隠しポーカー以外に薬を投与したり、電極パッドを体に貼り付けまくったりしてる ﹁レベル0の生徒達をレベル1、更にその上の段階に上げる為の記録術なのですよー 低 ﹁つーか、レベル0にそんな事をしろっていうのが無理難題だと思うんですが⋮⋮⋮﹂ 無 何それ、とてもとても楽しそう。︵錯乱︶ 実際に血管が千切れた人間もいるとかいないとか﹂ ﹁念 動 力 専 攻 の 人 間 も 脳 の 血 管 が 引 き 千 切 れ る く ら い に 踏 ん 張 っ て 行 う 奴 ら し い で。 サイコキネシス 聞いた。 そんな事をして、何の意味があるのだろうか。と上条は流すように青髪ピアスの話を や﹂ ﹁コロンブスの卵っちゅーのはな、逆さにした生卵を何の支えも無く机の上に立てるん ﹁はぁ ころやったわ﹂ 小萌ちゃんは身を挺してしっかりと教えてくれるから危うくボクも巻き添えになると ﹁あのなぁカミやん、何でもかんでも小萌ちゃんに聞いたら危ないで、さっきのは特に。 43 ﹁拷問かよ ﹂ 気では無い。 いのですし、寧ろそれだけで能力を開発できるので良い事だと思いますよ ? 強大過ぎると言いますか⋮⋮⋮﹂ ﹂ ﹁いや、あの、物理的ダメージは若干あると思いますし、それ以上に、精神的ダメージが ? ﹁うーん、拷問とは全く違う事だと思いますよ 肉体的に苦痛を与えているわけではな 注射を刺すだけでどれだけの苦痛を要する事か、針を人間の体に突き立てるなんて正 うしても許す事が出来ない。 しかし、能力開発の過程で電極パッドを貼り付けるのは許すが、薬を投与するのはど でいた。 正直言って、初めて参加する学園都市での補習や、理不尽なポーカーを上条は楽しん ! ⋮⋮⋮⋮言ってないよね ? 皆のヒーロー、幻想ブチ殺すぞ上条さんがそんな事を言う筈がない。って信じたい。 ﹁それは絶対に言ってないと断言出来るぞ﹂ ﹁え、マジかいな⋮⋮カミやん、注射は大好物だって言ってたやないか﹂ ﹁違う、注射が怖いんだよ﹂ ﹁カミやん⋮⋮⋮電極パッドの衝撃波受けるようなあの感覚が嫌なんやね﹂ 補習と御坂とインデックス 44 ﹁はいはい、そろそろ小テストを始めるのですよー﹂ 小萌は教卓に置いてあるプリントを手に取り、プリントを片手でパンパンと叩く。 騒がしかった教室は次第に静かになり、上条以外の補習組クラスメイトはシャープペ ンシルを片手に、小萌からプリントが配られるのを待っていた。 筆箱を忘れた上条は青髪ピアスにコンタクトを送り、シャープペンシルを借りる。 やがて、配られているプリントは上条の元まで辿り着く。 校内の食堂、食券販売機や飲み物の自動販売機があり、食堂自体はそれなりに大きい。 ﹁︵ふっ⋮⋮⋮わけわかめだぜ︶﹂ そもそも、原作に載ってたとしても覚えてはいない。 どれも原作で見た事のない内容。 制限時間四十五分、小テストの問題は学園都市の歴史について。問題数は二十問で、 ンを走らせた。 小萌が両手を叩き合わせると、それが開始の合図で、クラスメイト達はカリカリとペ ﹁では始めますね、テスト時間は四十五分です﹂ 45 奇跡的にポケットの中には百三十二円が入っており、上条は百二十円を自動販売機に 入れてボタンを押す。 ﹂ ガコンと出てきた缶タイプの炭酸飲料を手に取り、開けてゴクリと飲む。 ﹁んく⋮⋮くはぁ⋮⋮⋮炭酸は何処の世界でも最高だぁー る上条に笑顔で言った。 隣でポツリと立っている白い修道服の女の子、インデックスは炭酸で幸せを感じてい ﹁⋮⋮⋮その感じだと補習も楽しそうだね﹂ ! に ﹂ ﹁完全下校時間まで居残りさせられた上に、夏休みの半分が補習に変わったって言うの ? 当然、テスト終了後に数分で小萌からの呼び出しを受けてしまったのは言うまでもな していた。 四十五分、全ての時間を使って上条は、自分の名前をどれだけ綺麗に書けるかで奮闘 園都市についての問題が出るなんて思ってもみなかった。 五教科の問題をそれなりに解ける頭脳を持っていると思っていたが、歴史の教科で学 上条にとっては違う。 小萌が作った小テストはこの世界の住民にとっては簡単過ぎる問題なのだろうけど、 ﹁何が起きたのかな⋮⋮⋮﹂ 補習と御坂とインデックス 46 い。 ﹂ スの頬に触れさせる。 ﹁ひゃぅっ ﹁あはは、冷たかったか ﹁違うから。ほら、やるよ﹂ ﹂ こんな幼気な女の子にそんな酷い事をするなんて許せない かも。何処の世界でも虐めは決して許されないんだよ ﹁⋮⋮これは虐めなのかな ? ! ﹁何迷ってんだ 飲みたいんだろ ﹂ ? ﹁だってこれって⋮⋮⋮とうまの口付いてたのだし⋮⋮⋮﹂ ? ﹁え、でもこれ⋮⋮⋮﹂ そう言って、上条は飲みかけの缶ジュースをインデックスに差し出す。 ? ? ﹂ 上条は水滴の付いている未だに冷たい缶ジュースを不満そうに見ているインデック 人に出来ないと思い、補習先である学校へと一緒に連れて行き、食堂で待機させていた。 この先の未来を知っている上条は、血塗れになる未来を抱えているインデックスを一 何故、インデックスが此処に居るのかと言うと、それは上条が連れて来たからである。 インデックスはぷくーっと頬を膨らませ、上条のワイシャツを引っ張る。 ﹁むぅ⋮⋮とうまだけ飲み物を飲んでるなんてズルいかも﹂ 47 ﹁あ、悪い⋮⋮流石にそれは嫌だよなー﹂ ﹁えっと⋮⋮⋮その⋮⋮⋮とうまのだから嫌ってわけじゃなくて、その⋮⋮⋮か、間接 ⋮⋮きき、キ⋮⋮スになるかも﹂ あー、と理解した上条は間接キスという言葉に動揺する事は無かった。 ﹂ ﹁別に気にしなくて良いよ、直接ってわけじゃないから俺は気にしないし﹂ 残りも全部俺が飲むよ﹂ ﹁と、とうまが良くても私が気にするんだよ ﹁ならやめとくか ! けようとしては離す事を繰り返している。 口を付けようとすると、インデックスは顔を真っ赤に紅潮させ、何度も何度も口を付 インデックスは上条の持っている缶ジュースを手に取り、口元に近付けた。 ﹁⋮⋮⋮飲むもん﹂ だ。 上条が手を引こうとすると、インデックスも両手が上条の片手ごと缶ジュースを掴ん ? ﹂ ! インデックス 虎を狩るような目をした女の子│││ 猛 獣は今にも自分の頭を噛み砕いて来そうで ﹁ちょっとうるさいかもっ ﹁そんな反応をされると思いの外傷付くんだけど⋮⋮⋮﹂ ﹁っ⋮⋮⋮⋮⋮﹂ 補習と御坂とインデックス 48 怖い。 気の済むようにさせてあげるかと思った上条は、補習の疲れによって襲い来る眠気の 所為で口を大きく開いて欠伸をする。 ﹂ とっくに完全下校時間を過ぎている食堂内は夕陽の光が差し込み、茜色に染まってき ていた。 な、なにかな ﹁インデックス﹂ ﹁ふぇっ !? こう出来る筈がないからね⋮⋮⋮インデックスは連れて行かせてもらうよ﹂ ﹁全く⋮⋮⋮馬鹿な人間もいるものだ。⋮⋮⋮まぁ、いいさ。あの少年が僕相手にどう 食堂から見える窓の外、木の陰からは黒いローブのような服が風に揺れている。 は、缶ジュースに口を付けながら上条の背中を慌てて追いかけて行った。 中身が中途半端に残され、ぬるくなった缶ジュースを両手で持っているインデックス 徒歩で移動して、遠くもない玄関へと上条は足を向ける。 ﹁うん⋮⋮⋮⋮分かった﹂ ﹁そろそろ帰るぞ、眠いし﹂ ? 49 ﹁はぁ⋮⋮⋮やってらんねぇ⋮⋮⋮土御門さん、待っていてくれたっていいじゃないで すか⋮⋮⋮﹂ バス停の時刻表を指でなぞりながら上条はボソッと呟く。 家から学校まではバスで来たのだが、それは土御門が居たから学校に行けたのであっ て、土御門が居なかったらどうする事も出来ない。 補修中はサングラスで閉じた目を隠して睡眠を取っていた彼だが、小テストの時は普 通に起きて普通にテストを受けていた。 ほぼ0点を取っていた上条は居残りが長引き、土御門に置いて行かれてしまった。 帰る途中にバス停が十数はある道のり、歩いて帰るのはとてもじゃないけど怠すぎ ﹁帰り道は一応分かるけど、これは遠過ぎるだろ⋮⋮⋮﹂ る。 後は研究所行きのバスだけ ﹂ ? ? て行く。 ﹁ねぇ、とうま。帰らないのかな ﹂ バス停の前でガックリと項垂れている上条の背後をドラム缶のような物が通り過ぎ ? ﹁バスに乗って帰るとしても、何処行きのバスに乗ればいいかわかんねぇし⋮⋮あ、あれ 補習と御坂とインデックス 50 ﹁帰りたかった⋮⋮⋮⋮﹂ ﹂ ﹂ ﹁ねぇねぇ、とうま。とうまの家で見たロボットと同じに見えるけど、アレはなんなの を上部に搭載し、動き回っていた。 ドラム缶に車輪を付けたようなロボットは何台もあり、赤く光るセンサーのような物 としている。 見慣れてしまえば可愛く見えるドラム缶のロボットは灼熱の地獄を行ったり来たり やら此処は学園都市のようだ。決して砂漠ではない。 延々と続く灼熱の商店街、夕焼けにギラギラと光る風力発電の三枚のプロペラ。どう ギラギラと輝くアスファルト、錯覚なのか、一瞬だけ砂漠に見えてしまった。 ﹁なんで今にも死にそうな顔をしているの !? 51 ﹂ ? 実際は清掃ロボットではなく、防犯カメラが付いた防犯ロボットである。 ほぇーっとインデックスは唇に人差し指を当てて、ジッとドラム缶を見つめていた。 学園都市さまさまの機械だな﹂ ﹁掃除するロボットだよ。自分から進んでゴミを拾ってくれる環境に優しいロボット。 ﹁清掃ロボット ﹁確か⋮⋮清掃ロボットだったと思う﹂ ? ﹂ ﹁あっ、いたいた。この野郎 りなさいってば ちょっと待ちなさ⋮⋮ちょっと ! アンタよアンタ ! 止ま ! ・ ・ ・ と思いながら振り返る。 ? アンタ会った時から私の事ビリビリ⋮⋮⋮⋮⋮え いる。半袖のブラウスに││││あ、ビリビリしてる。 ﹁御坂か⋮⋮⋮﹂ ﹁ビリビリ言うな ? 然としていた。 !? 下の名前で呼ぶのは流石に駄目だろうし、馴れ馴れしく思われるだろ ﹂ ﹂ ? ﹂ 上条は美琴の前で手を振ると、美琴はハッとして頭をブンブンと振り出した。 ﹁おーい、御坂ぁ ﹂ 阿呆面としか言いようのない、口をぽけーっと開いている女の子│││御坂美琴は唖 ﹁どうしたんだよ、御坂﹂ ﹂ 肩まである茶色の髪は夕焼けに照らされて赤く見え、女の子の顔も真っ赤に染まって どうしてインデックスは汗をかかないんだ にとって聞いた事のある声が上条に向けられた。 目の前がブレるほどの暑さの中、上条とインデックスは帰り道を歩いていると、上条 ! ! ? ﹁な、なななんでアンタが私の事を御坂って呼ぶのよ ﹁はぁ ? ﹁今までずっと、私の事はビリビリって言ってたじゃない ! 補習と御坂とインデックス 52 ﹁ビリビリって呼ばれたいのか ⋮⋮⋮び、ビリビリ∼﹂ ﹂ ! ? 私には御坂美琴ってちゃんとした名前があるのよ ﹂ ﹁ふざっけんじゃないわよ !? 張った。 ﹂ ﹁ねぇ、とうま。この短髪は誰なのかな ﹁え、私 ? 美琴はワイシャツから手を離し、ドサッと上条は地面に崩れた。 ﹁あ、ごめん﹂ ﹁み、み⋮⋮さか⋮⋮さん⋮⋮⋮俺の足浮いて⋮⋮⋮るから⋮⋮マジ⋮⋮で死ぬ⋮⋮⋮﹂ 呼吸などは一分後には忘れている。 ような感覚を覚えた。 元を美琴に掴まれ、美琴の細い指の関節が喉を押し込み、擬似的な絞め技を受けている ほんの僅か││数秒の間に上条は美琴の暴力に屈していた。上条はワイシャツの首 琴の目が合う。 上条のワイシャツの裾を掴んでいるインデックスと上条の首元を掴み挙げている美 ? ﹂ 火花を散らしているが、インデックスは上条のワイシャツの裾を掴んで、くいっと引っ 上条と美琴が火花を散らす勢いで言い争いをしていると││片方に関しては本当に ﹁どうすりゃいいんだよ ! 53 ﹁︵なんて怪力なんだ⋮⋮⋮一種の火事場のクソ力ってやつか⋮⋮ ﹂ あ、私の名前はインデックスって言うんだよ ﹁私は御坂美琴⋮⋮って、貴方、珍しい格好してるわね﹂ ﹂ ﹁うん、私はシスターなんだよ ﹁インデックス ﹂ ? ? ﹁そうよ 勝負よ勝負 ﹂ ! ﹂ ? ﹂ 私はレベル5なのよ、ワケの分からない能力を持った 私と勝負しなさい ふざっけんじゃないわよ ﹁しません、帰りなさい﹂ ! アンタなんかに負けっぱなしなのは嫌なのよ ﹁な ﹁みことー⋮⋮ ? ! !? ﹂ お前よりは知っているからさ、と言った感じに上条はフフッと鼻を鳴らす。 ﹁なんでアンタが得意気に言うのよ⋮⋮⋮﹂ ドヤ顔で上条は、美琴を見下ろすながら言った。 分からないのも当然だ﹂ ﹁御坂、そいつはシスターさんだから俺達の知らない事を沢山知っている。だから話が ﹁あーえっとー⋮⋮⋮宜しくね、インデックスちゃん﹂ ﹁そう、あと魔法名はDedicetus545だね﹂ ? ? ! ! ﹁それより、お前は俺に何か用があったんじゃねーのか 補習と御坂とインデックス 54 ﹁知らねーよ⋮⋮前回は初戦だって言うのにマジで死を覚悟したんだぞ ﹂ あれくらいは余裕 !? あんな高電圧が体に触れてみろ、性別 アンタは何回もこの私を負かして来たじゃない ﹂ ﹁お前は遠回しに俺に死ねって言ってんのかよ 不明の遺体になるわ ! ﹁とうまー⋮⋮⋮﹂ ﹂ ﹁何言ってんのよ なんでしょ ! ﹁うぅ⋮⋮⋮⋮⋮﹂ !? ﹂ ! ﹁ばいばい、みこと﹂ に着いた。 指を指してきた美琴に対し、上条はへいへいと言った感じに軽くあしらい、再び帰路 上げていた。それを見た美琴はやる気を失ったようだ。 インデックスは頭の上に乗っている上条の手を両手で掴み、上条の事を上目遣いで見 ﹁っ⋮⋮⋮しょうがないわね⋮⋮⋮次は勝負よ ﹁⋮⋮⋮今日は疲れたんだ。早く帰らせてくれ﹂ 手のひらが乗った。 二人の喧嘩の波に揉まれて、おどおどとしていたインデックスの頭にポフッと大きい ﹁二人とも喧嘩しないでほしいかも⋮⋮⋮⋮﹂ ! ? 55 ﹁あ、うん。ばいばい⋮⋮⋮﹂ インデックスはそう言って美琴に手を振り、上条を追い掛けた。 ﹁はぁぁ⋮⋮⋮⋮﹂ ﹁疲れているみたいだね﹂ 体が疲れ切っているからか、大して重くもない鞄が重く感じてしまう。 ﹁あぁ、疲れ切ってるよ全く⋮⋮⋮⋮﹂ ﹂ 灼熱地獄のアスファルト、コンクリートロードはまだまだ先があり、学生寮が見える 事は当然無い。 ﹁⋮⋮⋮とうまはみことが嫌いなの ? ﹂ ﹁嫌いじゃないよ、好きっていうのは変だけど⋮⋮⋮まぁ、好感は持ってる﹂ ﹁あんなに喧嘩してたのに ? ﹂ なんだか分からないけど、とうまって凄いんだね﹂ ? ﹁はは、そうかなー ? ﹁うん 世界の人なら殆どの人に好感は持ってるよ⋮⋮⋮⋮ステイルにも神裂にも﹂ ﹁俺は皆とは違うからなぁ⋮⋮⋮うん、好感、ね⋮⋮⋮⋮持ってるよ⋮⋮誰にでも。この ﹁うっ⋮⋮⋮まだ会ったばかりなのに、とうまって変な人だね⋮⋮⋮﹂ ﹁色々あるんだよ、色々、な。言ってしまえば俺はお前にも好感持ってるしな﹂ 補習と御坂とインデックス 56 57 する為に、暗闇の中、彼は待っている。 家に帰ったら彼奴がいる。炎を身に纏い、炎の化身のような化け物を従える│││ス 回収 " テイルが待っている。 インデックスを "