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日本経済のダイナミックスにおける労使関係の位置と性
格
アンリ, ナデル
経済論叢別冊 調査と研究 (1992), 3: 3-16
1992-10
http://dx.doi.org/10.14989/44368
Right
Type
Textversion
Departmental Bulletin Paper
publisher
Kyoto University
経済論叢別冊
調査 と研 究 (
京都大学 )第 3号 , 1
9
9
2
年 10月
(ア ン リ ・ナ デ ル
シ ンポ ジ ウ ム)
日本 経 済 の ダイナ ミックス にお ける
労使 関係 の位置 と性格
ア ン リ ・ ナ デ ル
Ⅰ は じめ に
以下の本文 は1
991
年 6月 にパ リで行 なわれた,
日本経済の長期 的 ダイナ ミックスにかかわ る賃
労働関係 と労使関係 の分析 をテーマ とす るセ ミ
ナーで報告 された諸研究 の紹介 と総括です。
る現実的諸問題 を理解 した とは とて も言 えませ
んが, この 日本 の雇用 システムの機能 と賃労働
関係 についての本格的な分析 に取 り掛か るきっ
か けを得 ることにな りま した
。
野揮教授,清水, デ イ マ ルチ ノ両氏 との セ
ミナーにおいて,私 は膨大 な素材 を与 え られ,
この論文の執筆事情 とこれ を京都大学の本誌
正直 に言 って,解答 を得た とい うよ りも多 くの
に発表す るに至 った理由 を説明 してお く必要が
問題 を抱 ることにな りま した。それ は単 に 日本
あ ると思われ ます。
的 「モデル」だ けの問題で はな く, フランスさ
1月 に京都大学経済
わた しは幸運 に も1
990年 1
らには ヨー ロ ッパの労使関係 「モデル」 につい
学部 に招かれ ま した 1)。 これ は,同大学への一
ての問題で もあ ります。つ ま りフランスおよび
連のパ リの研 究者 の招待 に続 くもので した。 こ
ヨー ロ ッパの労使 関係 「モデル」 は, 日本 「モ
の実 り多い協力関係 によ ってわれわれは 日本経
デル」 との比較 によってよ り明確 に性格付 ける
済 を発見 したわ けですが ,その起源 は1
0年以上
ことがで きるであろ うし, またそ うしなければ
前 にわれわれがパ リ第 7大学 に当時京都大学 の
な らない, と。
さて, このよ うな事情 を勘案
教授であ った平 田清明氏 を迎 え入れた ときで し
して,今 日, ヨー ロ ッパ市場統一後の雇用問題
た
に関す る私 の報告で はな く, 日本 に関す る論文
。
1
99
0年 1
1月,京都大学 で私が行 な った報告 の
テーマは,「ヨー ロ ッパ にお ける雇用 問題 と続
を発表 しようとす るに至 った理 由を述べたい と
思います。
一市場の展望」で した。 この報告 には短い 日本
私 は帰国後,パ リの同僚研究者や EC委員会
語要約があ り, これは神 奈川大学 において も配
の雇用 ・労使関係局 の責任者 と連絡 を取 り, 日
付 されま した。
欧比較分析 の意義 を説 きま した。 こうして私 は,
さらに私 は,京都大学 ,名古屋大学,神奈川
日本の賃労働 関係 に関す るフランス, ヨーロ ッ
大学,東京大学 その他 の研究者 と交流す ること
パおよび 日本の研究者 による様 々なアプローチ
がで き, 日本の雇用 シス テムとその機能 に関す
の突 き合わせ を 目的 としたセ ミナールの開催 を
EC委員会 に提案 したわけです。
1) 私は特 にここで私 を迎え入れて くれた京都大学経済学
部の教官諸兄 に感謝の意 を表 したい と思います。野津教
授 は私の滞在期間中のすべ てにわた ってお世話 をいただ
くとともに, 日本 に関す る重要 な知識 を与えて ください
ました。八木教授 は この企 画に助力 くださいま した。最
後に,清水 (
非常勤 )講師 (
硯 岡山大学助教授 )には翻
訳の労 を取 っていただ きま した。
私 の考 えで は, このセ ミナールは平 田教授 の
来仏以来開始 された協 同研究 の第一段 階 を記す
ものです。実際, このセ ミナールの後,1
991年
1
0月 に, グル ノーブルでの 日仏 シ ンポ ジウムお
よびパ リでのセ ミナールが行 なわれ ま した。 こ
4
調査 と研究
第 3号 (
1
99
2.1
0)
の協 同研究 は,現在私が準備 してい る次の ヨー
うことです。 この財政経済政策の必要性 とい う
ロ ッパ ・シンポジウムに受 け継がれ るものです。
ことは明 らか に自由主義的諸前提 と矛盾 してい
この シンポジウムは, 日本の労働組織 と雇用制
ます。なぜな らこの場合, 自由主義的価値観 を
9
9
2
年 6月にパ リで開催 され
度をテーマ として 1
実現す るためにまさにその反対の こと,すなわ
る予定です。
ち国家および国家間の強力で一貫 した計画化政
京都での講演で は,極めて図式的にな ります
が,わた しは以下 の点 を強調 しま した。
策が条件 とされてい るか らです。
このような市場 自由主義の考 える潜在力 を実
EC当局の研究 に見 られ る意図的なオプテ ィ
現す るための公権力の支援 とい うものが彼 らの
ミズムとは逆 に,統一 ヨーロ ッパの形成 は雇用
考 えるほ ど効果 のあるものであるとすれば, こ
情勢 に関す るか ぎ り多 くの不確実な要素が存在
のような支援 はすで にこれまで にはっきりとし
します。
た成果 を上げてい るはずです。 ここに私のペ シ
この不確実性 は今 日で も続いています。わた
ミズムの原因があ ります。
しは以下で このよ うな私のペ シ ミズムの原因で
雇用 に関 して見れば,労働市場 の規制緩和 と
ある主要 な要 因を要約 しておこうと思います。
賃金の物価 インデクセーシ ョンの緩和が フラン
これ らの要 因は,私が京都での報告 において指
スの (イギ リスのように)政策になったのです
摘 した ものであ りますが,依然 として私 のペ シ
が,最低 限言 え る こ とは, この 2国 は雇用 を
ミズムの原因であ り続 けています。
2ヵ国内での地理,技術 および税
ヨーロ ッパ 1
制上の国境 の廃止 はA ・ス ミス流の大市場の創
出を 目指す ものです。すなわち,市場統合 をす
「
維持す る」能力がない とい うことです。 とく
にフランスは長期的な失業増加 に苦 しみ, とく
に青年男女 と高齢者が この犠牲 になっています。
とくにフランスとヨーロ ッパでは事実上,完
れば
,「見 えざる手」 の力が最適規模 で作用す
全雇用 とい う目標 は放棄 され,完全雇用 とい う
ることがで きるとい うものです。そ してマス ト
言葉 さえ政治のデ イスクールか ら排除されてい
リヒ ト条約以前の時期 には, ヨーロ ッパ大市場
ます。
とい う夢 の実現 は統一通貨の制定 と共 に進むは
ずで した。
ヨーロ ッパの専 門家達 はこのよ うな自由主義
的オプテ ィミズムか ら,彼 らが 「
非 ヨーロ ッパ
自由主義戦略の採用 は労働 と雇用の危機 の拡
大 を阻止 しなか った し, また阻止で きない もの
です。
さらに,公権力が労働契約だけでな く,雇用
費用」(
市場分裂 の コス ト) と呼ぶ ものを計算
に関す るその他 の間接的な社会的諸制度 を発展
しま したが, この ような陰伏的費用は市場統合
させなければ, アメリカ合衆国が現 に経験 して
が実現 されない場合 に支払わねばならない と見
い るような労働者階級および社会の両極分解 に
倣 され る費用であ るとされています。 したが っ
行 き着 くであろ うことには疑問の余地があ りま
て ヨーロ ッパ統合市場 の利益はこの仮想費用 に
せん。
等 しいのです。
すで に労働 の社会関係 の質が根底か ら悪化 し
ここで このモデ ルの作成者達の仮説 について
ています。 フランスの労働組合 は押 し潰 され,
詳論す ることはで きませんが (
それ 自体極めて
ポス ト・フォー ド主義 と低成長の時代 における
オプテ ィミステ ィ ックな ものであることに間違
自らの場 と役割 を見失 っています。彼 らの代表
いあ りませ ん)
,報 告 において私が強調 した こ
能力 は弱い とい うどころではな く,脱組合化が
とは, ここで期待 され る効果は暗に, 自由主義
明 白になっています。
的オー トマテ ィズ ムが機能す るだけでな く,辛
労働 の社会的側面の現代化 と再構成は避 けて
後的に構成員諸国家が一貫 した協調的財政経済
通れない問題です。 しか し,紛争的契約的関係
政策を遂行す るとい うことを前提 してい るとい
に最低限の調和 を もた らす方策 とい うものは末
日本経済のダイナ ミックスにおける労使関係の位置と性格
だ見 えて こない とい うことを認 めね ばな りませ
ん。
ところで, ヨー ロ ッパ 同盟 に課 された諸制約
によって,雇用 に関す る公 的 なマ クロ経済政策
5
詳 し く述 べ てい ます )
。わ れわ れ の主題 で あ る
雇用 に限 って言 い ます と, この独 自性 はさ らに
顕著 に現われ ます。 もちろん ここで この間題 を
取 り上 げ ることはで きませ んが 。
は不可能であ り,唯一可 能 な ことは,賃労働 関
しか し,純粋 な文化主義 的説 明 を拒 否す る と
係 の質 を改善 し, その構 成要素 を変更す る義務
すれば (
文化 的側面 を否定す るわ けで はあ りま
といわれてい る ものだ けです。
せ ん)
, 問題 は, フ ランスや ヨー ロ ッパ の困難
この賃労働 関係 の質の構成要素 とい う言葉 に
に比べた ときの 日本 の成功 を説 明 しうる賃労働
よって,私 は非時 間的 な ノルムを考 えてい るわ
関係 の構成要素 は何 か, そ してその制度的諸形
けで はあ りませ ん。 もしその よ うな意味 に とる
態 は何 か, を知 ることです。
な らばそれ は新古典派パ ラダイムの抽象的概念
直感 的 には,以下 の論文 において解 答が与 え
の代替物 にな って しま うで しょうし, このパ ラ
られ てい る と考 えることもで きるで しょう。 す
ダイム自体 に疑問があ るか らです。問題 とな る
なわ も, 日本 の雇用 システムをつ くってい る制
のはむ しろ, フラ ンスの レギ ュラシオ ン ・アプ
度 的諸形態 は 「見 えざる手 」 の管理 にすべ てを
ローチにお ける意味での賃労働 関係 を構成す る
まかせ る もの とはま った く異 な った ものだ とい
要素全体が生産 システムの変動 に適合 しつつ構
うことです。
造化 され,形成 され る仕 方です。生産 システム
それ とはまった く逆 に, 日本経 済 の 目を見張
の ダイナ ミックスはそれ 自体 の展 開過程 におい
るばか りの発展 は,歴史 と固有 の文化 によって
て社会的生産諸関係 に依 存 してい ます。制度 的
統合 された国民全体 の生 き方 に基盤 を持つ組織
諸形態 は, この ダイナ ミ ックな調整過程が遂行
能力 お よび意識 的社 会形成 に もとづ くものであ
され る空間を構成 してい ます。
るよ うに思われ ます。 この よ うな国民 的個性 の
そ して実 際 の と ころ, フ ラ ンスお よび ヨー
すべ てが, フラ ンス,そ してい まの ところ計画
ロ ッパにおける雇用 の危 機 の基 本的原因 はまさ
に留 ま ってい る単一 ヨー ロ ッパか ら日本 を区別
に この賃労働 関係 の質の構成要素 の うちに兄 い
す る ものです。
だ され るのであ って,市 場 にお ける純粋 な競争
しか し発展 な る ものは勤労者社会 において可
メカニズムの欠如 とい うことで は絶対 にあ りま
能 な もっとも平等 な進歩 のための-条件 にす ぎ
せ ん。 これ については, 日本 の状 況 を観察す る
ず, それ 自体で十分であ る とい うもので はあ り
ことによって極 めて明確 な証拠 が得 られ ます。
ませ ん。 したが って,た とえ 「日本 モデル」が
フランス, ヨー ロ ッパ諸国お よび 日本 は発達
経済的パ フ ォーマ ンスと雇用 の点で優 れ てい る
した勤労者社会です。次 第に規模 を拡大 しつつ
と して も, このモデルが勤労者 のパ ラダイスを
あ る世界市場 を通 じて これ らの社会 はすべ て,
意味す る とい うわ けで はあ りませ ん。 この点 は,
生産 ・流通 お よび社会 に関す る同一 の挑戟 的課
日本の同僚研究者がわれわれ に指摘 し続 けてい
題 に直面 してい ます。 とはい え これ らの社 会 の
る問題です。
発展軌道 は収赦 しないで しょう し, それぞれの
この ことの意味 は, 日本が ヨー ロ ッパの建設
社 会の反応 も異 な ります 。 さ らに危機 の原 因 と
に対 して, そ して この ヨー ロ ッパ全体 の ダイナ
結果 に対す るこれ らの社 会 の適応能力 もま った
ミックスの中で の フランスに対 して適用す るだ
く多様であ ることがわか ってい ます。
けで足 りるよ うなモデルや処 方菱 を提 供 してい
フ ォー ド主義的成長 の世界的危機 に直面 した
るので はない, とい うことです。
日本の発展軌道 はま った く独 自の ものであ り,
もちろんモデルにはな りませ んが,方法 は別
他 の発展 した勤労者社 会 の発展軌道 と異 な って
です。す なわ ち,社 会および賃労働 関係 におけ
い ます (この点 は1
9
9
1
年1
0月の私 の論文 の中で
る諸慣行 の質, それ らの長期 的安定性 , そ して
6
調査 と研究
第 3号 (
1
9
9
2.1
0)
制度化 された妥協 の構築 とい った ものにこそ,
歴史的過程の全体か ら生 まれた ものである。 そ
発展への適応 を可能 にす る-勤労社会の能力が
して この 「モデル」の一定の要素が移植可能で
依存 してい るのです。
以上の個人的な覚書 に結論 を与 えることがで
あるとして も,それ 自体が このモデルの発展軌
道 と構造の性格 その ものにかかわ るものであ り,
きるのであれば,それは, 日本 に滞在 した こと
また移植可能性 は移植 しようとす る側 の社会の
で 日本 についての新 しい知見 を得 るとともに,
性格 に依存 している。
フランスおよび ヨー ロ ッパ についての解答 (
あ
るいは適切 な問題提起 )を得 ることがで きた と
い うことで しょう。
1.長期分析 か ら見た構造変化 :労使関係,
雇用制度および発展様式
もし研究者の役割が批判精神 の武装解除を し
ない とい うことであ るならば,われわれの現実
新たな制度が 日本 に強要 された第二次世界大
やわれわれの相互的経験 についてなお学ぶべ き
戟直後か らの歴史を観察すれば, 日本の雇用制
ことが多 く残 ってい るのだ と言 えます。
Ⅱ 日本経済の ダイナ ミックスにおける
労使関係の位置 と性格
度の構成要素 は変化 している。 いわゆ る終身雇
用,企業内組合および年功賃金 とい う三種 の神
器 に関 して も同様であ り, これ らは古 くか ら確
立 されていた ものではない。 したが って労働組
以下 に示す諸論点 は, 日本の労使関係や雇用
合の性格や役割 に見 られ る変化, この国が石油
システムを特徴づ けるさまざまな要素 を叙述す
危機の影響 を克服 した方法,そ して世界経済 に
ることにで はな く,現在 の 日本の構造 とダイナ
おけるこの国のパ フ ォーマ ンスを理解す るため
ミックスを規定 している根本的かつ長期的なロ
には,綿密で適切 な歴史的研究が必要 とされ る。
ジ ックに向けられている。
この歴史的過程は,賃金 と労働市場 の決定要
これ らの諸論点を提供 した諸研究 は,単純化
因 と経済の発展 および国際化 の形態 との結合様
された 日本解釈,す なわち異国趣味的な解釈や
式 を特徴づ ける異なった諸局面か らなっている
過度 の文化 主義 的解釈 を乗 り越 え るため に,
(
L Sc
hwa
b)
。
個々の立場か ら賃労働関係 と労使関係 の分野で
日本の ダイナ ミックスに関す る理論的 ビジ ョン
1
.1 終戟か ら1
95
5年 まで
を示 し,相互 に比較検討す るためになされた も
経済再建の時期であ り,労働権 に関す る新 し
のである。 さらに, これ らの研究 においては,
い規則 と制度が導入 され,激 しい労使紛争 と強
ミクロ経済学的アプローチ とマ クロ経済学的 ア
力な労働組合運動が展開 した。
プローチの結合 によって, 日本経済 における雇
用 システムと成長の総体的決定要因 との関係 を
1
.
2 6
0年代か ら7
0年代始めまで
明かにすべ く努め られてい る。
春闘が賃金上昇の決定要因 とな り,大企業 に
日本経済の発展軌道の特殊性 は明かである。
よる牽引効果が存在 した。労使紛争の形態 は変
しか しこの特殊性 は この国の文化的性格 に還元
化 し,若年就労人口が急速 に拡大 した。年功賃
で きるもので はない。実際, 日本 自身が,一つ
金が定着 したが,総賃金 コス トに対す る影響 は
の発展 モデルを利用 ・移植 ・採用 し,そ こか ら
小 さか った。重工業が発展 し,国内需要 に支え
生産管理,労働 関係 の組織化および賃金決定 に
られて高成長が実現 し,生産性上昇率 も高い。
ついての独 自な方法 を発展 させたのである。 さ
さらに生産および就業人口において農業部 門の
らにこの軌道 は多 くの迂 回 を経 てい る。 した
シェアが低下 した。
がって,仮 に 日本 「モデル」なるものが存在す
るとすれば,それは経済的制度的調整の複雑 な
7
日本経済のダイナミックスにおける労使関係の位置と性格
1
.
3 1
9
7
5-85
年
とい うマ クロ経済 の全体 的成果 を説 明で きない。
石油危機後 の イ ンフ レは素早 く鎮静化 された
こうして蓄積 モデル,その さまざまな構成要
が,賃金上昇 に関 しては企業 自身の経営業績 が
素 お よびその発展 の ダイナ ミックスに考察 の 目
大 きな規定要 因にな り, 春闘方式が徐 々に見直
が向 け られ なければ ならない。
され るよ うにな った。 この時期 は労使紛争 と労
働 運動 の衰退 の時期であ り,就業人 口成長率 の
低下,女性労働者 の雇用 の増加 ,新 しい形態 の
2.マクロ経溝学 的視点
:日本 はフォー ド主
義 と異 なった独 自の発展 軌道 をもつ
不安定雇用 の発達,外 向 的成長,重工業 の衰退
と自動車産業 の台頭, そ してサ ー ビス化 の進展
によって特徴づ け られ る 。
2.1 日本の発展軌道 とフ ォー ド主義 :
R.Boyerの視点
多 くの研 究 に よ って引 き出 され た結 論 は,
1
.
4 1
9
85
年以後
1
9
5
0年代 の始 めか ら1
9
7
0年代初頭 まで の先進資
賃金決定 に関 しては企 業の論理 と経営業績が
本主義諸 国の例外 的 な高成長 は フ ォー ド主義 と
ます ます強い要 因 とな り,労使紛争 は減少 し,
い うまった く独 自の新 しい蓄積 体制への移行 に
労働組合が衰退 して周辺 化 してい る。 労働市場
よる, とい うものである。 フ ォー ド主義 とい う
で は,人 口 と労働力 の高 齢化が進み,女性雇用
概念 は確 か に末だ議論 を ともな う概念で はあ る
が拡大 してい る。 これ に第三次 産業化 が加わ る。
とはい え,大量生産 と大量消費 の調和 した発展
こうして成長 は再 び国内需要 を中心 に展 開す る
を意味 し, しか もこの調和 した発展 が制度的諸
とともに,海外へ の生産 移転が加速 されてい る。
形態全体 によって,すなわ ち 「生 産性上昇率 に
比例 した賃 金上 昇 を コー ド化 して い る団体 協
日本 は,長期 にわた る暗黙 の妥協 と相互承認
R.Boyer)
,寡 占 タイプの競 争 の安 定化 ,
約」 (
を生みだ し, これ を管理 す る とい う経済主体 の
所得 を保証す る社会保障制度 によ って実現 され
能力 に訴 え ることによって,外部 シ ョックな ら
た, と考 える ものである。
びに国内要 因にお ける諸 問題 (
特 に人 口 と労働
特殊 な発展様式 としての フ ォー ド主義 の仮説
力 の質)を克服す ることがで きた。 したが って,
は,すべ ての先進資本主義 国が 同一 の制度 的諸
雇用制度の諸特徴 が確 立 されたのはつ い最近 の
形態 を もつ とい うことを意味 しない し, また同
ことであ り, これ らの効 果 は 日本経 済の構造 的
一 の発展軌道 を進 む とい うこ とを意味 しない。
ダイナ ミックス と成長体 制の特殊性 を考慮 して
これ らが 同一であ る とい うよ うな議論 は支持 し
検討 され る必要があ る。
えない。逆 に, フ ォー ド主義 の国民 的軌道 は異
したが って,上記 の よ うな時期 区分 によって
な ってい るので あ って, このモデ ルの導入 ・同
は,生産性 と利潤率 を低 下 させ ることもな く,
化様式,各国の社 会文化的構 造 な らびに過去か
また雇用 を維持 しつつ, い ったい どの よ うに し
らの 「遺産」 に依存 してい るので あ る。
て景気後退局面が管理 されたのか とい うことを
説 明で きない。
それゆ えに 日本的 なフ ォー ド主義 について問
いか けるのが適切で あろ う。
この 「パ ラ ドックス」 を解明 しよ うとす る場
R.Boyerに従 って フ ォー ド主 義 的 蓄積体 制
令 ,一般 には労働 市場 の二重構造 による説明が
を三つ の本質的要 因,すなわ ち労働過程,賃金
なされ る。 損害 はいわ ば下請 け企業部 門に引受
決定様式,経済 の運動 メカニズム と制度的枠組
させ, こうして大企業部 門は雇用 と利潤 を維持
み によって定義すれば,以下 の よ うな 日本 モデ
しうる, とい うもので あ る。 しか しこの よ うな
ルはアメ リカ ・モデルの フ ォー ド主義で はない。
損 害 の外部化 の議論 は不 十分であ る。 なぜ な ら,
(
1)
蓄積体制 とレギ ュラシオ ンの関連 とい う次元
これで は雇用維持 ,生産性上昇率 お よび利潤率
で見 れ ば,「トヨテ イズム」は テ ー ラー主義 や
8
調査 と研究
第 3号 (
1
9
9
2.1
0)
フォー ド主義 とは異 なる生産性上昇 メカニズム
ム」は フ ォー ド主義が分離 した ものを再結合 し
日本 モデ ルは労働 と作業 を細分化す る
てい るのであろ うか。た とえば, カ ンパ ン方式
ので はな く,む しろ職能養成 (
現場 お よび専 門
や QCサー クルが労働者 に再 び権力 を与 えるの
教育 における)に訴 え,学習効果 を活用 し,多
であろ うか。
をもつ
。
能工化 と内部 フレクシビリテ ィーを促進 してい
。
る (
付表 1)
この よ うに問 うとき,「トヨテ イズ ム」 はポ
ス ト・フ ォー ド主義 の一形態であ る と言い うる
(
2)
雇用調整 の硬直性 (
大企業 における)は労働
ような労働者 の協力 ・参画形態 を明か にす るた
時間の伸縮性 を伴 っているが, これ は特殊 な労
めの分析枠組みが必要 になるので はないだろ う
使関係 に結 び付 いてい る (この点 は後 に取 り上
A.Li
pi
e
t
z)
。
か (
げる)
。 この労使 関係 が独 自の ミクロ ・コーポ
実際, フ ォー ド主義の危機 の時代 にお けるフ
ラテ ィズムを定義 してい る。
レクシビリテ ィー と労働者 の参画 との結合形態
(
3)
賃金 お よび各種 の手当ての決定 は物価 あ るい
。
は国 ご とに異 な ってい る (
詳 しくは付表 2)
は失業水準 にではな く利潤 の変動 に敏感 に反応
す なわ ち,
フランス
す る。 この点が アメリカや ヨーロ ッパ (
(
1)
妥協が明か に産業部門全体 の団体協約 として
とイギリス)のモデ ルとの大 きな相違点であ る。
したが って, 日本 は確か に大量生産 と大量消
行われ るケース (ドイツ ),
(
2)
日本 の企業 におけるよ うに妥協 が非商品経済
費を実現 したが,高利潤 な らびに高資本形成 を
的に,黙契的に慣行 として結 ばれ, しか も労働
相対的 に競争 的な賃金決定様式 とともに維持 し
者 の一部 にのみ 関与 して,「労働貴族」以外 の
うる独 自の様式 に よって これ を実現 したのであ
者 (
女性,少数民族等 )をカバー しないケース,
る
(
3)
妥協 が社 会 全体 の水準 で調 整 され るケー ス
。
特 に近年 において,実質賃金 の成長 を刺激 し
(スウェーデ ン)
。
た ものは労働力不足 (これ は周辺部 門において
日本の左翼的研究者 は,労働強化 と社会立法
も観察 され る)であ って,伝統 的な フ ォー ド主
の フレクシビリテ ィーに依拠 した妥協 の反動的
義的妥協 におけるよ うな団体協約 によって規定
性格 を告発 してい る。 しか し,保護 セ クター と
された事前 における賃金協定で はない。最後 に,
周辺的セ クター とい う二重構造 に もかかわ らず,
協力的な企業 間組織形態,そ して金融資本 と産
そ してまた福祉 国家 とい う点では貧弱であ るに
業資 本 との特 殊 な 関係 が 日本経 済 の全体 的 パ
もかかわ らず,家計所得 の分配 はスウェーデ ン
フォーマ ンスの特殊性 を説明す る もの となって
と同 じように平等 な ものであ る。 さらに, 「企
oe
ne
wege
n)
。
いる 廿 Gr
業忠誠心」は下請 け企業 にまで拡大 しつつある
企業金融 をめ ぐる競争 のゆえに, アメ リカ合
衆国で は短期 的な企業 目標 と利潤が優先 されて
Y.Le
c
l
er)
。
よ うに見える (
日本や ドイツの労働者が分業 な きパ ラダイス
いるが, 日本 と ドイツで はその逆であ って, さ
に住 んでい るので はない し, またその ような状
まざまな形態 による金融産業間協力 によって長
態か ら遠い として も,彼 らの境遇 は工場 内にお
期的観点が優勢であ り,蓄積 の長期的な ダイナ
いて も, また社会生活 において も, テー ラー主
ミックスが維持 され てい る。
義的労働者 のそれ に比べれば よ り良い ものであ
ることは確かであ る。
2.
2 日本はポス ト・フ ォー ド主義か :
A.Li
pi
e
t
zの視点
とはいえ,付加価値が仝労働者 に分配 されて
いた 「古典的」 フ ォー ド主義 とは異 な って,交
日本的産業 モデルにおいて機能 してい るフレ
渉 に もとづ く参画,パ ターナ リズムおよび二重
クシビリテ ィーの諸形態 を どの ように性格づ け
構造 を結合 してい るこの システムにおいて獲得
る こ とが で きるの で あ ろ うか。 「トヨテ ィズ
され る生産性上昇率 の分配は大企業の労働貴族
9
日本経済の ダイナ ミックスにおける労使関係 の位置 と性格
に有利 になされてい る。
る限 り,良好 な ものであろ う。
この議論 は, 日本 はフォー ド主義 の虜で はな
2.
3 新 しい労働 と産業 の管理 :
B.Cor
i
a
tと K.Shi
mi
z
uの観点
い とい う考 えを支 えることになる。 それ は生産
性上昇 の実現方法が異 なってい る とい うだ けで
戦後 の諸制約 の もとで 再 出発 した 日本 は,餐
はな く, この管理様式が伝統 的な フ ォー ド主義
本主義や フ ォー ド主義 の-モデルで はない に し
的賃金決定原理 とは異 なった生産性 ,労働 の質
て も,生産管理 の-モデ ルを創 出す るに至 った。
お よび賃金決定 の独 自な関係 を含 んで い る とい
この意味で, テー ラー主義が- モデルを表 した
う意味 においてで あ る。 さ らに 日本 において は,
大野主義 」(
B.Cor
i
a
tの大野耐- 『ト
ように 「
労働 者 の参画 は イ ンセ ンテ イヴに もとづ いてい
ヨタ生 産方式 』に よる命 名 )
, あ るい は 「トヨ
る。 す なわ ち,労働者が企業 内で努力 ,職能形
,
タ生産 システ ム」 (
K.Shi
mi
z
u) は一 つ の重要
成 お よび権 限を強め ることによって,長期 的 に
なイノベー シ ョンであ る と考 え られ てい る。
獲得 しうる対価 がそれであ る
。
日本 は労働合理化 の独 自な方法 を開発 したが,
これ は歴史的事情 か ら説 明され る。
3.モデル とその主体
テー ラー主義 は労働 と労働者 を細 分化 したが,
「大 野 主 義」 は現 場 労働 者 を多 能工 に, した
3.1 企業 :J
.
Gr
oe
ne
we
ge
n と Y.Le
c
l
erの
観点
が って 「多機能労働者」 に養成 してい る。
この過程 は, テー ラー主義 と同様 に,労働者
日本 の労使 関係 モデルはマ クロ経 済学 的分析
の権 力 とノ ウハ ウに対 抗 しよ う とす る もので
お よび 「大野主義」の分析 とうま く結合 してい
あ ったが,それ は また戟 後直後 において都市化
る。
され た有能 な労働 者階級 を形成す るのに役 だ っ
M.Ha
na
da)
。
た (
この労働者 の多機能性 によって生産性 は上昇
し,次第 に生産過程が強化 された。
大 野主義 の フ レクシ ブルな時 間基 準 は テ ー
ラー主義 の硬直的 な時間基準 か ら区別 され るが,
ここに第二 の重要 な差異 が見 られ る。
日本企業 の戦略 は長期的 な もので あ って,需
要変動 に左右 され ない強力 な 自律 的能力 を持 っ
てい る。国内市場 と良質 な人的資源 に関す る管
H.No
har
a)が戦略 の本質的要 素 をな し,
理 (
これが大部分 まで製品多様化戦略 を支 えてい る。
内部組織 を見れば, このモデ ルは大企業 と下請
け企業 との間のパー トナー シ ップ とい う特殊 な
日本の経営者 は生産過 程 の機 能 と工程 を分離
性格 を持 ってい る。 親企業 とさまざまな下請 け
す る代わ りに,工場 内で の生産諸機能 を再結合
企業 を結 び付 けてい る従属 関係 は, 日本 におい
す る。
ては特殊 な性格 を持 ち, これが通常 は, 日本的
これ らの ものすべ てが反 テー ラー主義 的技術
を意味す るイノベ ー シ ョン (カ ンパ ン, ジ ャス
ト ・イン ・タイム等 )をなす。 しか しこの よ う
産業組織 モデルの成功 の秘密 であ る と見倣 され
てい る。
生産物 の流通 と,広い意味で の情報 の流通が,
な イノベー シ ョンは以下 の よ うな新 しい内容 を
日本的産業 モデルを組織 してい る。 大企業,企
持つ ミクロ ・コーポ ラテ ィズム的妥協 と結合 し
業 「集 団」の責任者 および下請 け企業 間の関係
なければ,不可能であ った と思われ る。 す なわ
は著 しく強固であ り, この点 は フ ランス, ヨー
ち,長期雇用 と 「内部労働市場」 タイプの管理,
ロ ッパ お よび ア メ リカの もの とは ま った く異
0,J
.T と Of
f-J
.T.に よる職 能形 成 の システ
な ってい る。 この よ うな関係 を 「総体 的パー ト
マ イ ックな活用,長期的参画 を ともな う年功賃
c
l
e
r) と呼ぶ こ と もで きよ
ナー シ ップ」 (
Y.Le
金制度で あ る。 この ような組織 イノベー シ ョン
う。 つ ま り, さまざまな当事者 は,企業集 団-
は,生産性 上昇率が人的資源- の投資 を拡 大す
の長期 的帰属 を,雇用,労働 ,労働組織様式,
1
0
調査 と研究
第 3号 (
1
9
9
2
.1
0)
下請 け企業の賃金決定及 び戟略情報 に関す る情
管理および銀行 と企業間の関係 におけるい くつ
報交換 の義務 を伴 うもの と考 えているのである。
かの変化 を もた らした。近年の研究の示す とこ
このよ うな関係 の長期 的性格 は
ろによれば,経営危機 に直面 している銀行 は収
或いは 「家族」の仝構成員 にとっての効率の保
益性の低い企業 との取引を止め,長期取引 とい
証であると見倣 されているのであるが, こうし
う慣行 を破棄す る傾向が認め られ るようである。
た関係 はきわめて強い相互信頼関係 に支 えられ
大企業の資産は この種の困難や企業買収 をまぬ
ている。 また この ような信頼関係 のゆえに生産
かれている し,外国資本の資本参加 は希である。
,「企業集 団」
量,雇用量,品質調整及び職能権限の調整が可
能になる。
競争激化 とい う今 日の状況 においては, この
ような企業間関係への投資 と下請 け企業間競争
「
企業 グループ」は技術情報,販売および管
の不在 とが,ある観点か らすれば 日本モデルの
理情報の交換 を行 う部品供給業者の 「クラブ」
弱点をなす と考 えられ るのであるが, この点は
或いは 「
協力会」を結成 している。 工程管理,
どうであろ うか。
技術指導,出向が同時 に情報交換 と労務管理 を
他方,政府行政および通産省 の果たす特 に重
最適化 す る役 割 を果 た してい る。 この よ うな
要 な役割はすでに知 られてお り, 日本的産業組
パー トナー シ ップが広範 な内部 フ レクシ ビ リ
織 モデルの特殊 な要素 をな してい ることは明か
テ ィーを支 えてい るのであ る。 応援体制 によっ
である。 相互調整,勧告,戦略的助言および濃
て生産の拡張期 には,上流か ら下流 までの生産
密 な情報 システムが通産省 の組織化戦略 を特徴
が確保 され,景気後退期 には雇用調整が可能 と
づ けている。最後 に,通産省が研究開発 (
民間
なる。
部門のそれを含む)に対す る刺激や資金供給 に
この 「
総体的パー トナーシ ップ」の基礎 は,
日本的 「
伝統」や 「
文化」のみに還元 しうる も
おいて決定的な役割 を果た してい るとい う点 も
明記 されねばな らない。
のではな く,その起源は 日本資本主義の歴史的
このような国家の介入 は情報の質や経済の長
事情 に兄いだされ る。 事実, 日本の大企業 は第
期的調整の点で市場 メカニズムに信頼性がない
一次大戟時および朝鮮戟争時の急激 な需要増加
とい うことを示 している。 た とえ通産省 の介入
に対応す るために無数の小企業 を利用せざるを
がそれほ ど直接 的な ものではないに して も,そ
えなか った。それに先立つ蓄積が不十分であ っ
の重要性 には変わ りがない と思われ る。
たために,中小企業 と安価 な未熟練労働力 を活
用せざるをえなか ったのである。 この ことは同
3.
2 労働組合 :M.Hana
daの観点
時に, これ らの中小企業 に対す る援助 を必要 と
日本の労働組合運動 は西欧 の労働 運動 とは
し,中小企業の方で はこのような援助 に利益 を
まった く異なった基盤の上 に組織 されてい る。
兄いだ した。
産業別組織 は存在 しているが,その基礎 は企業
日本の中小企業の親企業 に対す る従属 は, 自
立性 を追及す る西欧の下請 け企業の原理 とは異
別組合である。
表面的には,春闘が賃金上昇 を決定 している
なっている。 西欧で はこのような自立 こそが中
が,実際 にはこの時期 に企業内交渉が行われ る
小企業の存続 を保証す るもの と考 えられてい る。
か らにはかならない。協定 は常 に企業内で結ば
したが って ここに 日本の産業組織の きわだ った
れ るのである。
特徴がある。
同様 に組織 に関す る外部関係 を,そ して特 に
近年変化がみ られる金融関係 を考察す る必要が
。
ある (
J
.Gr
oe
ne
we
ge
n)
日本における金融市場の自由化 は資本資産の
企業内の労働者 は,事務労働者であろ うと現
場労働者であろ うとすべて労働組合員である。
大部分の大企業労働者 は組織的に労働組合 に加
(
,
入 し 「ユニ オ ンシ ョップ」・タイプの協定 )
組合費が賃金か ら天引 きされ る。
ll
日本経済のダイナミックスにおける労使関係の位置と性格
この制度は年功制 と内部昇進制 に結 び付 いて
3
.
3 経営,資本および労働組合 :
H.
Nohar
aの観点
い る。 このような特殊性 は,歴史的に見て第二
次世界大戟後の労働者階級の都市および産業へ
ヨーロ ッパ的な意味での労働組合の経営参加
の統合による ものである 。 このパ ターナ リズム
とい うものを考 えるならば, 日本の労使関係 を
的管理は企業内で ヒエ ラルキー構造 を維持 しつ
理解 しえないであろ う。 これは ミクロ ・コーポ
つ職能養成 を進める必要性 によって も正当化 さ
ラテ ィズムとい う枠組みで分析 されねばな らな
れ る。
い ものである。企業内においては,労働者参加
ある研究者達 はこのよ うな労働組合の特質を,
が さまざまなメカニズムと協定 によって保証 さ
第二次世界大戦後の労働 運動の敗北 によって説
れている。 この点 に,企業内組合 はかな りの程
明 している。 この時期,労働者の要求は解雇の
度 まで関与 している。
禁止 と労働集団内での平等の保証 に向けられて
いた。
青木の研究 〔
1
9
91〕は
「J企業」内の諸関係
を理論化 しようとした ものであるが, ここでは
したが って労使関係 の進化 は新技術 の導入 と
経営,資本および労働組合の間の特殊 な関係 に
組織 イノベーシ ョンが進 められた産業化 と構造
関す るか ぎ りでの ミクロ ・コーポラテ ィズムの
1
9
5
5-1
97
4)に とりわけ急速で
再編成の時期 (
特殊 な諸側面を強調 しておかなければな らない。
あ った。 こうして労働運動 は三つの新 しい規定
先進資本主義の特徴である資本 と経営の分離
,
作業長」
要因を持つ ことになった。すなわち 「
は, 日本ではその歴史的事情か ら生 まれた特殊
制度の導入,団体交渉 を犠牲 に した協議制の発
な形態 をとっている。家族的資本主義 は第二次
逮 ,「QCサー クル」の よ うな小集団活動 の出
世界大戦後 に崩壊 し,合衆国によって持 ち株会
現である。
社が禁止 された。過去の金融 グループの再編成
工業における 「トヨタ ・システム」の発展 と
は金融同盟の誕生の きっかけ となったが, この
普及および雇用情勢の新 しい傾向 (
高齢化,労
金融同盟は銀行 を含む とともに,経営 に敵対的
働力不足,新 しい雇用形態,女性労働者 の拡大
な株主の介入 を阻止す るものであ った。 こうし
等 )は労働組合の機能に変化 を生みだ した。特
てサ ラリーマ ンで構成 される経営陣は外部株主
に,労働条件 の管理 とい う組合の役割は次第に
の無力化 によって決定的なテクノクラー ト権力
疑問視 され るようになって きた。
を保持す る。
最後に, このシステムは大企業労働者 のみの
大株主は銀行であ り,銀行 は債権者 として行
もの (
労働者の25%であ るとされているが,確
動す る。 したが って, 日本 に特徴 的な この銀行
かで はない)であることを忘れないように しよ
による株式所有 とい う制度的特性 によって,経
1
9
6
0年 以後 )
,労働運動 その
う。 さ らに近年 (
営の独立性が強化 されることになった。 この独
ものが多 くの構造変化や分裂 を繰 り返 して きて
立性 は,株主が経営陣や取締役 を指名 しないだ
い る。 したが って,労働組合の現時点での性格
けに一層強い ものになってい る。 企業の経営陣
づ けは,一般 に考 えられているほ ど明確 な もの
や取締役 は企業管理者層か ら選ばれ,外部株主
ではない し,決定的な もので もない。
の代表者 は排除されている。 銀行 自身に して も,
日本の労働組合が ヨー ロ ッパの労働組合 とは
短期収益率の最大化 を経営者 に要求 しうる力 は
異 なった量 と質の企業内情報 を持 ってい ること
きわめて限定 されている。 銀行が経営 に対 して
は確かであるが,企業内 における労働組合の決
な しうる制裁は銀行信用 とい う迂回路 を通 じて
定への, したが って権力への参加 とい う問題 に
9
8
0年以来
であるが, このような影響力 さえ も1
関 しては劣 っている。
の企業 の自立的金融能力の拡大 によって縮小 し
ている
。
ところで, この経営の自立性 は特殊 な正当性
1
2
調査 と研究
第 3号 (
1
992.1
0)
に基礎づ けられている。 つ ま り経営陣の80%が
であ って,競争様式の変化,企業 グループの国
内部昇進者 なので ある。 大卒の場合で も,まず
際化,そ してすで に述べた社会的諸問題の発生
もって新参者 として入社 しなければならず, ヒ
によって変更され うるものであ る。
エラルキーの最底辺か らキ ャリアを開始 しなけ
ればならないのである。 こうして管理者 の権 限
4.労働者参加
は企業内部で形成 され るのであ り,管理職層 に
関す る外部市場 は実際上存在 しない。 この点が
日本的 ミクロ ・コーポ ラテ ィズムの特色であ っ
て,西欧的慣行 と根底か ら異なるところである。
4.
1 参加形態の多様性 :
M.Fr
e
ys
s
e
ne
tの観点
経営 一労働組合 同盟だ けで は 日本 モデルの成
こうして経営 の自立性 は管理職層の企業への従
功 を説明で きない。 この成功の秘密 を解 くカギ
属の強さ と共存 してい る。 か くして企業内にお
の一つ は企業の 目標 および方法 に対す る労働者
ける経営者 と従業員 との間の利害共同体が生 じ
参加の うちに兄いだされ うるはずであ る。
るのであ る。
労働者 の参加 は常 に資本主義 の中心 問題 で
パ ターナ リズム的性格 と雇用保証 と結 びつい
あ った。生産管理法 としてのテー ラー主義,そ
たこの経営の 自立性 は長期的な諸 目標 を実現す
して労働者の大量消費への参加 と購買力の維持
る能力 によって正 当化 されている。 しか もこの
が中心的役割 を演 じるマ クロ経済モデルとして
能力 は労働者が重要 な資本部分 を構成す るがゆ
の フォー ド主義 は,それな りにこのよ うな労働
えに,一層重要である。 た とえば,退職年金積
者参加 の要請 に応 えようとす るものであ った。
立金 はい くつかの大企業の 自己資産の 4分の 1
そ して部分的にであるが, フォー ド主義の危機
を占め,公共の社会関連資本の半分 を占めるま
とその効率性の喪失 は,労働者参加の衰退が生
でになってい る。 これがさらに,経営者 と労働
産性上昇 を もた らす源泉の枯渇 を引 き起 こした
組合 による協調的管理の利点 になっているであ
ことで説明で きる。
ろうことは,想像がつ く。
ところで, 日本の雇用制度の主要 な特徴 の一
この ミクロ ・コーポ ラテ ィズムは, 日本の大
つ は有効な労働者参加 にあ るように見 える。 そ
企業の内部労働市場 を定義す るものであ り,配
れ も単 に生産計画の遂行 に留 まるので はな く,
当の形態 による利潤分配を固定費 と考 える傾向
能率改善,組織 イノベー シ ョンの実行,多能工
がある。 その結果,株主は付加価値 の分配 をめ
の養成,生産環境 の変化 に対す る適応性 と内部
ぐる交渉 においては部外者 と見倣 され る。
フレクシビリテ ィーに関す るものである。
このようなシステムは現在 と未来 との間での
さまざまなQCサークルや 「自己管理 グルー
利害 の調停 に関す る安定 した管理 を意味 し,
M.Fr
e
ys
s
e
ne
t
,H.
プ」 に対 して行 った調査 (
「
終身雇用」 とい う神話の背後 には労働条件 な
Hi
r
a
t
a〔
1
982〕
)の結果が示す ところに よれ ば,
らびに賃金決定様式 に関す る経営陣 と組合 との
このような創意 に富む労働者参加 は実際の とこ
間の絶 えざる交渉が兄いだされ る。 したが って
ろさまざまな形態 を取 りうる し, またさまざま
労働組合 は株主によってコン トロールされてい
な方法で実現 され うる。
ない経営 に対す る抑制者の役割 を果たす。その
強制的参加 :この タイプの 「
参加」 (
電機産
結果 として経営陣は長期的な一貫 した経営 を,
業 と女性労働者 )は強制的なや り方で従業員の
すなわち長期的な経 済的投資 と人的資源への投
イニシアテ ィブを引 き出そ うとす るものであ り,
資を遂行せざるをえないのである。
従業員 はよかれあ しかれ この要請 に応 えている
。
このような ミクロ ・コーポラテ ィズムは明か
「
事実上の交渉 に もとづ く」参加 :これは鉄
に日本的文化 モデル と結 び付いてい るのであ る
鋼業 において実行 されてい るもので,男性 の正
0年代の闘争の後 に形成 された もの
が,それは5
規労働者のみに妥当 し,彼 らはこれ によって生
日本経済のダイナミックスにおける労使関係の位置と性格
産性向上 と労働条件改善 の間に一定のバ ランス
1
3
メリットクラシーは労働者 の規律化 を生み,
労働者の努力 を引 き出す効果 を もっている。
を とっている。
受容 された積極的な参加 :これは,従業員の
最後 に,個人のメ リットの評価 は, これが労
削減 と職能資格の低下 を引 き起 こす ような高能
働者間の競争 を引 き起 こす として も内部市場 に
率の自動生産装置 を操作 する労働者 に,妥当す
限定 されているか ぎ り, ミクロ ・コーポ ラテ ィ
るものである。
ズム的妥協 に統合 されている。
とはいえ調査 の示す ところでは,文化的基礎
は必ず しも積極的参加の発展 に寄与 していない。
実際,戦前の権威主義的で極端 にヒエラルキー
5. 日本モデルの文化,制度 そ して移植可能
性 :Ph.D'
I
r
i
bameの観点
化 された諸形態で はこの ような成功 を説明 しえ
ない。それにはアメリカ人による新 しい管理の
固有の歴史的文脈の中で成立 した 日本の労使
強制的確立 と戦後の諸制度が必要であ った。 こ
関係 モデルはその独 自性 によって知 られている。
の点で も歴史的研究 によってわれわれの知識 を
知 るべ きことは, どのような点が移植可能であ
拡充 しなければな らない。
るのか,そ して どのような理由で移植可能だ と
いえるのか, とい うことである。
4.
2 企業 におけるメ リットクラシー
Y.Hi
r
a
noの観点
この点,文化主義的分析 と厳密な制度的分析
を戯画的に対立 させ るのは不十分であ る。
日本企業 における賃金決定 を子細 に見 るな ら
日本モデルのパ フォーマ ンスをそれ固有 の文
ば,語 るべ きものは平等 主義ではな くメ リット
化 に帰着 させた り,あるいは同質的で伝統的な
クラシーであろう。
国民的 アイデ ンテ ィティーに根 ざ した社会形態
構想 と実行が完全 に分離されてい るテー ラー
に帰着 させので は不十分であ る し,同様 に,モ
主義 とは反対 に,積極的参加 による労働組織 は
デルの独 自性 を一定数の制度の採用 に還元す る
自己の活動の結果 を予測 しうる作業者 を必要 と
の も不十分であろう。
す る。 すなわち,異常 を迅速 に発見 し,機械の
日本のパ フォーマ ンスか らえられ る教訓 につ
調整 を遂行 し,技能 を向上させ る労働者が必要
いてみれば, 日本モデルは文化主義的解釈 によ
とされる。
ればなんの役 に も立たない ものである し,非文
このような要請 を実現す るためには,単純 な
年功賃金- いわば賃金上昇の保証- では不十分
化的解釈 によれば完全に移植可能な ものだ とい
うことになる。
(
「能力給」 と呼ばれ る)
か くして真実 は別のところにあることに気づ
を加 える必要があ る。 この場合,個人の ノウ ・
くであろ う。 経営方法の移植が試み られている
であ り,個 人的要 素
ハ ウと職能形成 によって獲得 され る個人技能 に
日本の海外工場 の分析が有効 な分析分野である。
加 えて, イニシアテ ィブ,学習意欲,責任感,
この場合,産業モデルと組織様式の比較が示唆
協調性 とい った要素が考慮 され る。
を与 えて くれ る。
か くして 「メ リットクラシー」原理が成立す
アメ リカの 「
古典的」な組織様式 は機能 と職
る。 これは年功賃金原理 と結合 して労働者参加
務の契約時 における限定 と規制 を強調 してい る
を促進す る。 個人の生産性 はか くしてルーテ ィ
(テー ラー的方法 によって)
。構想者 にせ よ実
ン化 の恐れな しに向上す ることになる。
査定は監督者 によって行われ,評価 は 5段 階
で記録 され る。 人事部が この査定 を検討 し,昇
給額 を決定す る (
時 には昇給決定 に労働組合が
関与す ることもあ る- 日産のケース)
。
行者 にせ よ各人の責任は短期的契約 に示 され る
義務であ る。 この原理は企業内において も企業
と下請 けとの関係 において も妥当す る。
企業内では管理部 門と労働組合の間に対立が
存在 し,協定 は脆 く,容易に変更され うる もの
1
4
調査 と研究
第 3号 (
1
992.1
0)
であ る。
これ とは反対 に, 日本的組織の特徴 は長期的
す るとい うことが知 られてい る。
ここで重要なことは能動的な文化 的要因であ
協力関係,比較的暖味な職務 ・機能 ・責任 の定
る。 日本企業のアメリカ工場 においては以下の
義である。 この暖昧さ と長期的性格 は集団的努
協力
よ うなテーマ に, す なわ ち 「チ ー ム」,「
力 と協 力 にお ける適応性 と内部 フ レクシ ビ リ
的」個人の採用, 日本人 コンサル タン トによる
テ ィーを伴 ってい るのである。
監督等 の移植可能な要素の追及 に,集中的な努
このような概念 はアメリカ的習慣 とは無縁 の
ものである。 なぜ なら, アメリカでは各人が明
力が傾 けられていた。
したが って, 日本的管理様式か ら教訓 を引 き
確 に定め られた個 人 ごとの評価基準 に したが っ
出す ことがまった く正当であ り適切であるとし
て評価 され るとい うことが本質的重要性 を持 っ
て も,下卑たサルまねは排除され るべ きであ る。
てい るか らで あ る。 さ もな くば,「
公正 」 と仲
日本的協力関係の導入は同一の文化的文脈で行
裁 とい う世界 とは無縁 な世界 に入 ると思われて
い うるものではない
。
それは,社会生活および
いるか らであ る。 労働 における従属 と市民問の
人間の管理についての明示的および暗黙の観念
平等 を和解 させ る この原理 は 「
上位 -クライア
における支配的な関係 に もとづいて, なされざ
ン ト」と 「
従者 一部 品供給者」 との契約 関係 に
るをえないのである。
も兄いだされ る。
日本的組織様式 はこのような哲学 とはほ とん
これ もまた今後展開され るべ き研究 プログラ
ムである
。
ど両立 しない。
日本モデルにお ける水平的及び垂直的責任 に
つ きまとう暖昧さは,個人を異常 な従属関係 に
Cont
ibut
r
i
onsaus
6mi
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ir
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991,r
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この暗黙の関係 は上位者の下位者 に対す る責任
d'
e
mpl
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si
ndus
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L
Dna
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s
e
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peci
aldesCahi
er
sduCERT
を伴い, これが 「ボス」の権力 を制限 している
TDIEM,Oct
obr
e1
9
91
お くアメ リカ的実践 とは無縁である。 日本では,
のである。
ここでは,純粋 なアメリカ的 「
個人主義」 に
,Duf
or
di
s
meaut
oyot
i
s
me.
.
.oul
or
s
Boye
rR.
quel
'
6
1
と
vedbpas
s
el
ema
i
t
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対立す ると見倣 される日本の 「
集団精神」 とい
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会化 の形態 と個人 の統合過程である。
特 に, 日本 の伝統 において公正 さを基礎づ け
ているものは,厳密 な規則,報酬および賞罰の
適用時 における疑 問の余地ない事実 に もとづ く
客観的判断である とい うよ りも,各人が評価 さ
れ,鼓舞 され,配置転換 され,賞罰 を与 えられ
るときの方法であ るとい うことは,正 しいであ
ろう。 日本で は, この評価 自体が長期的で集団
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のである。 た とえば,監督者 を労働組合が査定
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日本経済 の ダイナ ミックスにお け る労使 関係 の位置 と性格
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付表 1〕 フォーデ ィズム, 卜ヨテ イズムお よび 日本経済 の国民的軌道
(
R.Boyer論文か らの引用)
大量生産 と大量消費 :アメリカと日本では蓄積体制が異 なっている
A 典型 的 な フ ォー ド主義 モデ ル :アメ リカ合衆 国
フ ォー ド主義 的
賃 金妥協
>
> 実 質賃金上昇
の制度化
消費の
>
ダイナ ミズム
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好循環
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投 資刺激
生産性上昇
トヨテ イズム :異なった蓄積体制
ミクロ ・コーポラテ ィズム
と二重構造
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高利潤 -
▲
労働者消費 卜
高蓄積率
▼
賃金上昇
需要の
ダイナ ミズム
1
6
調査 と研究
1
9
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2.1
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第 3号 (
日本の独 自性
ヘ ンリー ・フ ォー ドの構想
合衆国の現実 の フ ォーデ ィズム
トヨテ イズム :フ ォー ドの構想 の実現
1.
統合戦略 として の
パ ターナ リズム
2
.
企業内労働者 の協力
体制 の追求
3
.
企業 に固有 な協 定が理想
1
.
組合,企業,国家間の相互作
用 の結果
2
.
労働者 と経営者 の強度 の紛争
的関係
3.
分権化 された交渉 を誘導す る
代表的団体協約
4.
賃金 は概 して紛争 とス トライ
キの後 の労使 間交渉 の結果
5
.
一定 の例外 (フ ォー ド, GM)
を除いて,大企業 間の労働移
動が激 しい
6.
価格 と期待生産性上昇への イ
ンデ クセー シ ョン
7
.
労働者 -消費者 の 自由選択 と
アメ リカ的生活様式- の参加
8.
全体 的観点か らの地方行政,
労組,国家 による多様 な介入
9.一連 の試行錯誤が明確 な コー
デ ィネー シ ョンを必要 にす る
1.
社会的統合 に関す る大企業の役割
4.
賃金 は企業 に対 す る忠誠
に対 して支払わ れ る
5.
労働者 の定着化 と退職率
の低下 を 目指す
6.シェア経済 :
-固定給 +利潤 配分
7.
労働者 の生活様 式の権威
主義 的規格化
8.
局地的 イノベー シ ョンの
結合 による変化
9
.
方法 は内生的 に普及
2.
労働者 の企業 目的への参加が顕著
3.
大企業 における ミクロ・コーポ ラテ ィ
ズムが理想
4.
春 闘 と大企業競争力の結合
5.
大企業内での労働者 のキ ャリアが労
働者 の定着化 を促進
6.
給与 の重要 な構成部分であ るボーナ
スは実現利潤 に依存
7.
労働外 の生活 における企業 の役割 と
社会生活の定型化
8.
大企業の戦略の決定的影響力 (
下請
け企業 を通 じて拡大 )
9.
労働力不足状態 においては競争的労
働市場が高賃金 を波及 させ る
〔
付表 2〕ア フター ・フォーデ ィズムの労使関係
(
A.Li
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z論文か らの引用 )
ア フター ・フォー ド主義 の労使 関係
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