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『国際関係論の系譜』 (東京大学出版会、 2007年 12月 )は 「シリーズ

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『国際関係論の系譜』 (東京大学出版会、 2007年 12月 )は 「シリーズ
日本 公 共政 策 学会
北 九州 市
猪 口孝
2008年
作 品賞
受 賞演説
6月 14日
中央 大 学
『国際関係論 の系譜』 (東京 大学出版会、 2007年
12月 )は
「シ リー ズ国際関係論J
(猪口孝 主編 、全 5巻 )の 一 巻である。 このシ リーズ を編集 した こ とと私 自身 の著書 に対
して このほ ど作品 賞 をいただ くことにな りま した。 とて も光栄 です 。私 は著書 をす でに 8
0冊 刊行 しています。 うち 30冊 は英文 です。80冊
の ほ とん どは学術書です。 したが つ
てほ とん ど注 目され る度合 い も低 く、 この よ うに学会 か ら賞 をいただ くな ど考 えて もい ま
せ んで した。
シ リーズ で扱 う国際関係論 とい う学問分野は対象 の変転 が とて も速 いです。 それ に伴 い 、
大体 15年 か 20年 位 で概念化 の仕方 がかな り大 き く変わ ります。 それ だけに研究 執筆 は
慌 ただ しくな ります。 そ の ことは私 の次 の二大原則 とで もい えるこ とで一 層激 しくな りま
した。第 一 に 、理 論研 究 も実証研 究 もどち らも重要 と考 えています 。 両輪 な く して車 は よ
く動 きませ ん。第 二 に、国際関係論はそ の学問分野 の性格上英 文で発表す ることがほか の
分野 とくらべ て もとて も重要 です。 日本語だけで威 張 る夜郎 自大みた い な の は性 に合 い ま
せ ん。
国際 関係 論 とい う学 問分 野 をや ろ うと秘 か に決 意 した のは 1 9 6 0 年
代 は じめです か ら、
私 はか な りの老 練 の 類 に参入 してい る と思 い ます 。 鮮 や か な記憶 に残 つてい るなか に は進
展 してい る国際 関係 の 現実 と分析 や執筆 が 交差 した ときです 。1 9 7 7 年
春 日本 国際政 治
学会 で 日ソ漁 業 交渉 の 妥結 高 の 説 明予沢│ モデ ル を二つ 作 つて発 表 しま した 。 サ ケ マ スの 生
物 学 的 な循 環 、漁獲 に つ い て の提 案数 と妥結数 とを時差 を勘案 しな が ら、 モ デ ル 予測値 を
発表 しま した。 また 、時系列デ ー タを状態空間モ デ ル で も分析 しま した。 ち ょ うど外交交
渉 が進 展 してい る最 中に学会 があって発表 した こともあ つて、討論 にな る とソ連 は政治的
に強 引にや つ てい るの だか ら、そ うい う淡 々 としたモ デ ル は駄 目だ と言 う方 が騒 ぐので驚
きま した。数 日も経 たな い うちに、そ の年度 の合意高 が新聞報道 され ま した。私 の予沢1 値
はほ とん どど真 ん 中を射 ぬいてい ま した。1 9 7 9 年
を しま した。 そ の二週間前 の 1 9 7 9 年
2 月 央、 中国はベ トナ ム に軍事介入
2 月 1 日 にベ トナ ム歴 史家 ヴァ ン ・タ ンは 1 7 8
9 年 の 中国 のベ トナ ム介入 の一 九 〇周年記念論 文を掲載 、そ の なかに 日本 の猪 口孝 が 書 い
た論 文 を引用 していま した。 これ は予測 で も何 で もな いです が 、歴 史 に学 ぶ 姿勢 が私 をよ
い気分 に しま した。1 9 9 1 年
某 日ワシ ン トン ・デ ィー 。シーのホテル で 「ソ連 の 内政 と
外 交」 につい ての会議 に出 ていま した。 当時 まで粽 々 たる ソ連通 と して名 高 い コ ロン ビア
大学 のセ ベ ー リン ・ビア ラー とM . I . T . の
ウィ リア ム ・グ リフ ィスニ 人 が組織 した も
の です 。 会議 が 始 ま つてか らい くば くかの 時 間 が 経 った ら、誰 かが 部屋 に入 って きて何 か
を囁 くの で す。 この二 人が顔 色 を変 え ま した。 ソ連 が 崩壊 した とい うの です 。 そ の 展 望 を
得 るた めの 会議 が 初 日で これ で オ ジ ャ ン にな りま した。 今 で も この 時 の 論 文 は改訂 刊行 す
る元気 が 出 な くてそ の ま ま棄 て ま した。
『国際関係論 の系譜』 は二 〇世紀 の国際関係論 に焦点 を当て、ふた つの質問、第 一、 二 〇
世紀 の安全保障は どの よ うな弁証法 を経験 してきたか 、第 二、 グ ローバル 化 は国家主権 を
どの よ うに変質 させ たかを軸 に構成 しま した。 米国流 の概念化 か らの刺激 は受 けて這 い ま
す が基本的 に 自分 自身 の頭 を信 じて論 じている ところが味噌である。第 一 の質 問に答 える
時に 「
持 てる者」 と 「
持た ざる者 」 の 間 の対抗 ・協調 の なかで、安 全保障 の変遷 を勢力均
衡 、集 団安全保障、そ して単独行動主義 を主導国家 の戦略、人民戦争、 ピー プル ・パ ワー
、地球的 テ ロ リズム を持た ざる者 の戦略、そ してその二 つの弁証法的展 開、植 民地主義者
の 無関心、人道支援 、人道介入である と し、 20世 紀 (1870-2020)ま
での安全
保障論 を展開 した もの です 。
第 二の質問 へ の解答 は国家 主権が グ ローバル 化 の深化 とともに 、それ が 国家 主権温 存、人
民主権 強調 へ の移行、そ して主権喪失 へ の転落 へ と多様化 してい くことを示 した。 三個 の
主権 認識 を主張す る論者 を主 と して米国 と 日本 につい て俎 に上 げた。 三個 とは又 の名 を ウ
ェス トフ ァ リア ン、 フ ィラデ ル フ ィア ン、 アンチ ・ユー トピア ンです。米 国大統領選挙 の
ア ドバ イザー の リス トをこの観点 か らみ る と、 とて もお も しろい こ とがわか りま した。
『国際関係論 の系譜』 は国際関係 の現実 と学問 の 両方 を扱 って い るので 、 日本 の 国際関係
論 の 系譜 も扱 い ま した。加 えて 、中国、台湾、韓国 の 国際 関係論 の 系譜 につい て も扱 い ま
した。 国際関係論 は米 国 だけの もので も何 で もな いのです。系譜み た い な研 究 をや ってみ
て興味 を もつ たのは どの国 の学会 も定番 メニ ュー みた い な もの をもつてお り、 まあ当た り
前 です が 、 いつ もカ ラオケの よ うな研 究が続 いてい ます。 日本 だつた ら、 日米 同盟 とか 、
日本外交 とかです 。 も う一つ気 がつい た の は国際関係論 の学者人 口が 3千 人位 だ と思 い ま
す が 、人数 の割 りには英文 での登 場 が異様 に少 な い ことです。 これ は政治学 とか公共政策
につ い て も似 た よ うな ものだ と思 い ます。 なん とか してほ しいです。
「
シ リー ズ国際関係論」は刊行 を短期 間 で終 わ るよ うに しま した。 それ でイ ンパ ク トが強
ま ったか どうかはまだわか りませ んが 、著者 としては私が遅れ てばか りいて 、何回 が改訂
版 を出す よ うな ことに な りま した。 ほかに もシ リー ズ とい うか ライブラ リー の 主編 を経験
しま したが 、 い まで も心残 りの ひ とつ は 1988年
か ら刊行開始 した東京大学 出版 会 「
現
代政治学叢書」既刊 18巻 、未刊 2巻 とな つて る ことです。 一 念発起 して 蒲島郁夫 氏 と私
が 2008年
中に残 り二 冊につい て脱 稿す る約束 を出版社 としま した。約束 は履行 さるベ
し。 国際 関係 論 は 1 5 年 か ら 2 0 年 ご とに概念 化 がい つ の まにか変 わ る とさきほ ど触れ ま
したが 、政 治 学 に つ い て も同 じこ とが い え る と思 い ます 。 「
現代 政 治 学叢 書J が 完結す る
「
ー
暁 には シ リ ズ後現代政 治学」 を構想 したい と思 つ て い ます 。
日本公共 学会は新興学会 の なかで も目ざま しい躍進 を示 してい る学会です 。 そ の学会 か ら
作品賞 を頂 きま した。 心か ら名誉 の ことと受 け止 めます。 あ りが と うございま した。
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