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Journal Article / 学術雑誌論文
数学教育にできることは
蟹江, 幸博
Kanie, Yukihiro
数学教育研究会誌. 1998, 42, p. 2-59.
http://hdl.handle.net/10076/10439
数学教育 にで きるこ とは
蟹江 幸 博
二重大学教育学部
目次
1 は じめに
21997年 度のTOSM活
動
3 数 学を教える ことの難 しさ
4 イ ンターネ ッ ト教育論に向けて
5 TOSMポ ス ト
5.l TOSMポ ス トの質問集 (1回か ら5回まで)
6第 6回 TOSMポ
ス トの質問
1 円 周率 π
6。
6.2 4桁 の数 字 か ら10を 作 る … … … … … … … … e
6。
3 面 積 の"S"の 語源 … … ・… … ・… … … … ・・・
… … … … … ・… … … … ・…
4 0の o乗 は ?…
6。
10
12
12
15
15
16
26
27
6.5 古 典力学 の数学的方法 を理解す るに必要 な数学分野 の推
薦 図書 ・… … … ・… ・… … ・… … … … … 028
6 ラ テ ン語入 門は ど うした ら 0… … 0… ・・… ・… 029
6。
7 比 例 の記 号 の歴 史:「∝」 の読み方 と出典 … … ・・… 31
6。
6.8 負 の数 ×負 の数 =正 の数 … … … … … ・… ・― ・ 37
単調列 の個数
数学者 豆事 典 と参考 文献
40
1 は
じめ に
美杉セ ミナーのレジメが会誌 とは別に刊行 されていますので,重 複
しない よ うにテーマ を分けてあ りますL昨 年,1997年 8月 の美杉村で
の高校生向けの講演 とH月 4日 (火)の二重県総合教育センターでの高
校 の先生向けの講演 の数学的部分の内容については,2つ 分まとめて
レジメ [1司の方に掲載 しま した。
二重県内でのTOSMの 活動は,二 重県高数研の活動 と不即不離の状
況で続いて きていま九
昨今の教育改革で,教 養審 (教育職員養成審議会)や教課審 (教育課程
審議会)の答申によって,教 員免許法や指導要領の大幅な改訂が予定さ
れてい る内容か ら,高 等学校の数学教育も大きく変わらぎるをえない
状況 にあ りますし 中学や大学での変化によって高校 の教育も大きな変
化 を余儀なくされ ることになりま丸
そ うしたとき,制 度の変化にただ追随するだけでなく,数 学を教え
ることの意味 と形を考えていかねばならない と思いま丸
この会誌には;前 回の会誌 の記事 [1司以降の トスム (TosM)の 活動
について述べ させていただきますし直接,TOSM活 動に関つていただ
いた先生方も多いのですが,そ うでない方々にも実際を知 っていただ
き,事 柄に応 じて参力日していだだきたぃ と思っています。
なお,本 文中の人名についてい る 「
1」は、最後の節 に人物紹介があ
ることを意味 していま丸
2 1997年
度 の TOSM活
動
TOSM活 動 とい うのは実際の所,福 井大学の黒木,岐 阜大学の中馬
と僕の3人 の数学者が,大 学での直接の業務以外に行 う数学教育に関
する活動の総体 とい うことであ り,そ の中で僕が直接に関与 してい る
部分をお話 しする とい うことにな りま丸
1997年8月 10日 (日)に福井大学教育学部で,第 3回 TOSMシ ンポ
ジウム が,
第一部 :講 演会 10:30-12:00
「
今 こそ行き届いた教育を !」
講師 :黒木哲徳 (福井大学教授)
-3-
数学離れ ,数学嫌い克服への提言」 13:00-14:40
第二部 :「
数学嫌いを克服するための実践報告や,一 般の方 (PTAな ど)
からの提起 (各1卜20分 )
浅田小夜子 (福井県上文殊小学校)
曽我昇平 (岐 阜県坂祝中学校)
佐藤心一 (秋 田県角館中学校)
西岡孝昭 (二 重県亀山高校)
藤田和美 (福 井市東藤 島青少年育成会会長)
昴二部 :ハ ネル討論 15:00-16:30
「`数学離れ 'を どうす る !第 3弾 」
司会 :蟹 江幸博 (二重大学教授)
パネ リス ト
中馬悟朗 (岐阜大学教授)
曽我昇平 (岐阜県坂祝中学校)
水上俊成 (福井県勝山北部中学校)
吉田興治 (二重県高等学校数学研究会会長)
藤田和美 (福井市東藤島青少年育成会会長)
とい うプ ログラムで行われました。少 しずつ参加者の幅も広が り,内 容
も深まってい くことを期待 していますL第 4回 は今年の8月 に岐阜 で,
第 5回 は来年 の 8月 に津で出来れば と思 っていま丸
8月 19日 (火)-21日 (木) に行 われ た 美杉 セ ミナ ー では,
「
美杉村 の 自然」
万木 豊 (演習林 )
「
方眼紙 で遊ぶ°(Pickの定理)」
黒木哲徳 (福井 大学)
「
作図 で 遊 ぼ う(定規 とコ ンパ ス で得 ら
中馬悟朗 (岐阜 大学)
れ る数 )」
蟹江幸博 (二重大学) 「 連分数 と無理数 (πは無理数)」
松原達夫 (大谷女子大)「高校 生の質問から」
とい う題 目の講演 があ りました。TOSMメ ンバー揃い踏みになって し
まいま したが,休 憩時や夜 の時間の二重県高数研の先生方 との話 し合
い も有意義 だった と思いま九
-5日 に東京大学の
日本数学会 の秋季総合分科会の直後の10月 4日
ー
高校お よび大学初年級
駒場校舎にある数理の教室で,ワ クショップ 「
の数学教育」が行われま した。大学に勤務する数学者 と高校の数学教
師 と予備校教師 も含 めて,活 発な討論がなされました。数学者も数学
教育に強い関心を抱いて活動 してい ることを知っていただ くこと,現
場の現実的な状況 を教えていただき,総 合的に状況を理解 しあお うと
い うワー クショップでした。黒木氏 と2人で発言 した記録に若干の訂正
を加 えたものが 12qで 丸
これか らは学会のあるごとにこのよ うな会を持 とうとい うことにな
り,こ の春の学会が名城大学であったことから,名 古屋大学の多元数理
の教室を借 りて,第 2回のワークショップが3月 30日 (月)に開かれまし
た。新 旧の年度の引き継ぎなどご用も多かった時期でもありま したが,
愛知 0岐阜 ◆二重の高校教師の方々にも参力日していただきました。次回
の数学会以降も継続 して開いてい く中で,何 か しら具体的な作業をす
ることを明示するような会の名前が欲 しい とい う提案があり,「数学教
ー
育TF(task fOrce)」とい う名前が採択 されま した。 タスク 0フ ォ ス
を辞書でひけば,特 殊任務 を持つ機動部隊 とい う意味になりま丸 名
前にこだわらず 高校 の先生方 と数学者が,数 学の教育のために出来
ることをしよ うとい う意気込み を表 してい るわけで九
このワー クショップでは,TOSMは 教員養成系学部の教官 の立場か
ら参加 してい るつ もりです。時に観念的になりがちな数学者の議論を
現実に引き戻す とい う役割 を果た してい る(つもりです)。
また,今 年の4月 号から,数 学セ ミナーで,1年 間の連載を始めま し
立ち話」 とい う連載で九 TOSMの 3人 で,教
た。イ ンターネ ットで 「
ー
育問題 について語 るとい うのが,与 えられたテ マです。出来 るだけ
点を理解 して も
読みやす くして,こ の難 しい教育環境 の実質的な問題′
ー
らお うとい う趣 旨で始めました。テ マが深刻なので,そ れを読みや
す くするのにいつ も大変苦労 をしています。
これ らのことも含め,TOSMの 活動はイ ンターネットのTOSMホ T
ー
ム ペ
ジ
(URL=http://WwW・
COmomi←
u ・a c D j p / ∼ k a n i e / t O S m / ) の
中 で
報告 してい ます し,御 意見や御要望 はそ の掲示板 で受 け付 けてい ま九
ー
数学教育 に関す る質問箱 であ る TOSMポ ス トヘ の質問 も,多 くは ホ
ムペ ー ジのポス トの掲 示板 に書 込まれ るよ うにな りま した。TOSMポ
ス トについ て は節 を改 めて述 べ る こ とに した い と思 い ますL数 学教育
の 問題,数 学ゲー ムの 問題,ち ょつ とした数学の知識 の問題 な どさま ざ
まです が ,出 来 る限 り答 えて い きたい と思 い ますL現 在 の 所,TOSM
ポス トの 回答 を掲載す る場 は,掲 示板そ の もの とこの会誌 にな ってい
ますЭ高校数 学以外 の話題 も多 く,個 別 には発表 できる場 もない わけ
-5-
ではないのですが,す べてをとなればほ力ヽこ適当な場 もなく,嫌 われ
るまでお願いしよ うと思っています。
TOSMと しての活動には,ほ 力ヽこマンス リー研究会,つ まり月例会
がありま九 月に一度土曜 日に二重大学教育学部数学教室で行ってい
者の都
ます:具 体的な予定はホームページに掲載 してあります。参力日
合にあわせて, 同時を若干移動することがあるので。半分は駄弁 りの
会,残 りはテーマを決めて議論することにしていま丸 時には数学の
話をすることもあります。ぜひ気楽に参加 して ください。
3 数 学 を教 え る こ との難 しさ
前 の節 では,数 学教育に関して僕に出来 ることは何かを模索 しなが
ら,実 際に 1997年度に行 ったことを書きましたが,数 学教育 とは何を
することなのかを少 し考 えてみたい と思いま九
昨年の会誌 では,理 科離れを嘆いて,歴 史的な叙述によって克服す
るとい う講義の工夫 をしてい る,ノ ーベル賞物理学者のフイ ンバー グ
(pl)の 話を しま した。数学離れ よりも深亥Jで,よ り以前から起こって
い る理科離れの問題 も,世 界的で今 日的ではあ ります が,数 学が安泰
なわけではあ りません。
初等教育における重要性 が暗黙に了解 されてい ることと,大 学入試
における重要性のおかげで,理 科 よりも長く抵抗できていたに過ぎませ
ん。最近ではその大学入試による歯止めも効かなくなってきていま丸
大学入試にあ るか らとい うことを離れて,高 等学校 で数学 を教 える
意味 とい うものを考えてみる必要があるのではないで しょうか。
初等教育においての算数 0数学は,社 会生活に欠 くことのできない知
識であるとい うことが出来ても,高 校 で教 える数学が社会生活に必須
であるとはだれも主張できないで しょう。高等学校 を後期中等教育 と
捉 えるのか,前 期高等教育 と捉 えるのかで立場 は異なるのですが,大
学入試のことをひ とまず措いてとい うことなら,後 期中等教育 として
とい うことにな ります。
大上段に議論す るとなれば,文 明論を展開 しない といけないかもし
れません。われわれが享受 してい るこの文明を肯定的に見るか否定的
に見るかの立場 はあつて も,こ の文明を成立させている根拠に科学が
あ り,数 学があるとい う認識 は間違 ってはいません。そ して,文 明の
負 の 面 の 責任 を,科 学 に負 わせ よ うとす る議 論 が声高 に行 われてい る
ことも事 実ですし た とえば,放 射能汚染 の 問題 は原子力 を開放 した科
学 の所 為 だ とい うよ うな、本末転倒 の議論 が横行 してい ま九
今はこれらを議論する余裕はないので,参 考となる本をあげておき
ますLイ ギリスの心理学者であるダンバーが,人類学を専攻する学生に
向けた講義を基にして書いた 『
科学がきらわれる理由』plは、このあ
たりの事情を公平に的確に描いていますLガ リレオ ・ガリレイ率
が『
天
文対話』p]を書いて,人 類を特別な存在から追いやって以来の,科 学
派 と非科学派の対立が,物 理科学以外の題材も使って展開してあるの
で,一 読をすすめておきます。
数学は科学の言葉であり,数 学を愛する心は科学を愛する精神でな
ければなりません。もちろん,そ のさいの科学は必ず しも自然科学に
限るものではありませんが,僕 自身は,数 学とは数学的自然の科学で
あるとい う意味で, 自然科学だと思ってきました。数学に関わるもの
が反科学派であることはありえない筈なので丸 :
『
解析教程』p列 の訳業も最後の追い込みの頃,1907年の9月のこと
`し
、
で したが,鳥 羽商船高専の佐波氏に訳文と解答のチェジクをお願し
‐
5に傾倒 しているの
て,Iそのとき色々な話をしました。彼は司馬遼太貞
「
い
と
こと
い
を言 ました:数 学教育において必要なこ
た 司馬史観」
う
‐
とは,数 学における司馬史観の実現じゃないかとい うのです:司 馬遼
太郎の小説はほとんど読んでいますが,特 に 「
史観」としヽうもあを感
じたことがなく,司 馬史観が何た 良く分か りません。『
街道を行‐
く」
とか 『この国のかたち』などを読めば分かることか:もしれませんが。
最近,司 辱遼本郎の F十六の話』p31とい う本を読む機会があり,‐
佐
波氏が言つているのとは違う意味でしょうが, 日本で数学を教えると
い うここの難 しさについて,考 えさせ られる文章に出会いました。
それは 『
開高健人の弔辞』の中にありますЪ近代 日本の文学者は,西
洋の小説を読むことから学び始めたが,西 洋の小説家 と異なって不利
であつたことを述べていますLそ れは,日 本に 「
絶対」とい う思想,慣
習,あ るいは日常の気分がなかったことだと言つていま丸
0……0それは,私 が精神的軟体動物であるからだ。言葉をささえ
「
るものが論理でなく,イ メージをささえる1)のが思想でl―
■なく,何 れ
も感性的な,気 分的なものであるからだ。そこに私は絶望的な日本人
を感 じる。」
これは,開 高健 が 自分を見つめて言 う文章 (随筆集 『
言葉の落ち葉』
・
所収)ですが,数 学を教育す る上で,生 徒や 児童の中に見受けられる
精神的な障害の本質を述べ るために綴 られた もの と思 うことがで きる
ほどですし科学離れ 0数 学離れが 日本人の特質から起 こることなのか,
昭和 33年 の芥川賞授賞の感想 の中で も,東 西のあいだに横たわる機微
を感 じていたらしい と司馬遼太郎は述べていま九
和算が今の我々が考えるよりも広く深 く江戸時代の民衆 (もちろん知
的な)の 中に浸透 してことはあっても,現 在問われてい る数学教育の数
学は洋算であ り,そ れ が 自然科学の伝統の上にあることは, しば しば
忘 られがちにな りま九
司馬遼太郎は開高健を論 じるために,文 学を,日 本の文学を論 じま丸
「
近代以後の 日本の文学者が,西 洋の小説を読み,読 み終えてから小
説を書きは じめたことは,い うまで もありません。ただ 日本には 「
絶
対」 とい う思想 ,慣 習,あ るいは日常の気分がなかったとい うことが
決定的に不利であ りま した。 日本に存在 しつづ けてきたのは,す みず
みまで相対的世界でした。… ….山々や谷々の神々が神遊びをするよ う
に,神 遊び としての 日本独特の私小説が うまれ て も,絶 対 とい う大 う
そを,つ ま り,絶 対 とい う 「
神」一 これは聖書の 「
神」のことですが
一 とい う思想,又 は文学的思想 す 大文字の Godと 同 じ次元での大文
字のFiction一 を中心にすえるとい う習慣は, 日本においてはカケラ
もあ りませんで した。………むろん,絶 対な どは,こ の世にあ りは し
ません。宇宙にも,科 学の中にも,存 在 しないので九
しか しある, と西洋人は,千 数百年をかけて 自分に言い きかせてつ
づけました。絶対,大 宇宙の神は存在する, うそではない,と い うこ
とを,哲 学 として,論 理をきわめ,修 辞をきわめ,思 弁のかぎりをつ
……。
くして説きに説きつづけてきたので丸 。
近代に入 つて,西 洋において神が衰 えた ときに近代文学が興 ります
が,絶 対 とい う大 うそを包みこんで糸巻きに仕上げてゆくとい う方法
においては,文 学もまたそれを踏襲 しま した。神に代わって,大 文字
のFictionを中心にす えることによつて,さ らにはそのFictionを,“真
"と い うために
実 として,あ る,ア ル ・ナイとい う上にある
,論 理 と
修辞 と人間描写のか ぎ りをつ くして,文 学 とい う,新 しい神学をはじ
めたのですふ十九世紀 のことでありま丸 .……。
まことに,近 代文学は,十 九世紀のヨー ロッパが世界に贈 った大い
なる果実であ りま した。 ………
下 8-
文明の志」を,開 高健は,神 の存在が ヨー ロッパ においてさ
その 「
えあやふやになった二十世紀の後半において,み ずからの作品の 中心
にす えるべ く志 したのです)。…….
しか しながら,… 。どうい う絶対 と対決すべ きかとなると,古 代以来
の汎神論的風土 一 日本のことです ― にあっては,そ れにふさわ しい
土壌がないのです。」
数学 自体の普遍性によっても,そ の突端の所では,作 られてい る地
域,時 代,民 族,個 人によって大 きな違いが出来ることは避けられま
せん。数学も人間の営為の産物であ り,文 化 なのですから。
それが初等 0中 等教育の対象になるほどに熟 してくれば,普 遍性は
増 してい き,世 界中の算数 の授業は基本的には同じことを教えてい る
と想像 されま丸
技術 としての洋算を消化 し発展させてきた明治以来の 日本数学は,和
算 との対立の極 としてあったために,和 算の持 っていたゆ とりや遊び
の精神が弱か つた よ うな気が しますし現在, 日本の数学界は世界の中
で トップクラスの扱い を受けるようにな り,数 学者の世界のメンタリ
テ ィは世界 と向かい合 って違和感を感 じることはな くなっていま九
しか し、数学教育の場ではどうで しょう力Ъ 第 2次 大戦後のアメリ
カか らの押 し付けの民主主義が今なお、この風土に根付いてい るとは
言 えない よ うに,一 般 の 日本人の論理処理能力は高まっているとは言
えないのか も しれません。結局はそのことが,理 科離れや数学離れに
向かつて しま うのか もしれません。
敗戦か らの立 ち直 りのため,情 緒は一先ず措いて,理 科系の教育を
強化 し,高 等教育には必須 であると,高 い水準の初等中等教育を施 し,
日本の子供 の数学の能力は世界一だと言われるようにな りました。
そ して、繁栄が来て,努 力 しな くても一定程度の豊かさが保証 され
るようになって,社 会的摩擦の減少の方に関心が向かい,指 導要領は
水準を どんどん下げていき,つ いには初等教育す ら戦前の水準 より低
くなるとい う改訂が実施 される見込みです (今や予定と言 つていい)。
生徒は、難 しくて嫌なものだが数学の勉強は しなければいけない も
の、 とい う偏見か ら開放されて しまっています。そのことに対処する
ことが数学は楽 しい ものであることを教 えることであるとい うのでは,
現実的な対処法 とは言 えません。
まずもつて、数学 を学ぶ ことによつて培 われるものは何かを、教師
のみなさん自身が考え,自 分の言葉で言 えるようになっておくことが
-9-
重要 だ と思 いま九
:
ュー クリッドの 『
幾何学原論』は,書 かれて以来 2o00年以上 ものFF5,
数学 を教 えること,学 ぶ ことの規範 となってきました。十分な能力さ
えあれば独 りで学ぶことができ,最 初は難 しいが頑張ってい るうちに
突然視界が開けたようにすべてが明 ら力│こなる時が来る。 そ こまで努
力続 けることができるかどうかが問題である。すべては学ぶ ものの資
質 と努力に掛かつていて,教 える側には敢えて工夫す る必要はない。
2000年以上の間,そ う思われていたと言って も過言ではあ りません。
ー
それが,19世 紀になって,神 がその存在 を失 うのと同 じように,ユ
クリッ ド の絶対 も崩れ て しまいま九 非ユァクリッド幾何 の誕生は,
ほかの 自然科学 と違って,ユ ー クリッ ド幾何その ものが間違 ってい る
原論』の
ことを意味 してい るわけではあ りませんが,教 育における 『
意義に対す る信仰 をも失わせ て しまいま九
コップとテーブルで幾何を語ることだつてできると言い切つたヒルベ
の公理主義は,す がて:の価値 の相対化 を宣言 して しまいま した。
ル ト率
初等教育にとって不幸な時代になったので丸 もはや,常 に通用する
教育原理が存在 しなくなったのです。.
そ うい う時代 に今はあ りますLだ から、む しろ 日本人だか ら数学 を
0数 学離
学び難いのだ とい うこ とはないのです:世 界中で,理 科離れ
れが起 こつてい るので九 いわば、中世の暗黒が訪れようとする前夜
なのかもしれません。
しか し,だ か らこそ,個 々の教育現場で,生 徒に語 る自分の数学観
│
を持たなけれ ばい けないではないで しょう力沌
4 イ ンター ネ ツ ト教育論 に向 けて
去年,つ ま り199学年度 は, 5人 の学生の卒業研究 を指導 しま した。
卒業研究にも小学校課程用 と,中 学校課程用があ り,後 者は多少 の現
こ
ー
代数学のセ ミナ をしますが,前 者は算数教育をテ マにしていまづL
近年は卒業研究の指導が当たつたときは算数教育用の ものを担当する
ように しています。以前は学生のレベル もそ こそ こあって,大 学での
講義 も数学的な内容がある程度 こなせていた し,学 生に も意欲があっ
ー
たから,理 学部数学科でのセ ミナ とそんなに変わらない ものをする
ことが出来たのですが,最 近は とても出来ません9中 途半端に数学を
-10-
やったよ うな錯覚を与えるよりは,持 てる数学を磨いて実際に教師に
なった場合に役立つ ようなテーマでやった方が,学 生も真貪1になるし,
ちゃんと学生を怒ることができるからと,そ う思うようになってきた
からで丸
今回は,イ ンタ‐ネットを算数 。
数学教育に利用することができるか
とい うことをテーマに しました6僕 自身,3つ のホームページを運営 し
ていて (TOSMの ページ(http://WWWoCOIn,mie―
ll.ac.jP/∼
kanie/tOS興
/)
―
から他の2つのが ジにはリンクが張ってあります),イ ンターネット
が十分教育に使 える, とい うより,現 状の欠陥を補 うことに利用でき
ると思 うよ うになっていたか らです。
内容はともかく,そ れぞれの学生は論文を書き始めるために,イ ン
ー
タ ネット教育論をぶちあげねばな らなくなりました。もちろん,イ
ンターネ ットの普及が十分でなぃことを承知 してはいるのでづL充 分
普及 してしまっていれば, 当然に,イ ンターネット教育論を振 り回す
マスFミ 文化人に事欠かなくなるでしょうから,今 こそそれを語るバ
きときなのだとい うことで しょう。
黎師の指導上の問題を語 り合 う場 (それぞれが行っている指導上の工
夫などのプTル を作ることも含めて),教 室の中では展開し得ない題材
の提示など一種の教科百科的なもの,ホ ームページのプレゼンテァショ
ンの多彩さ(教師個人が比較的容易に作成できる)を利用 した独習用教
材など,学 生個人の興味に合わせたものを作 らせました。教育学部数
学教官 としてのホTム ペTジ (htt'//mathl.9duOmie_u・
httie/)
aC,jl/∼
からリンクしてありますので,試 供品サンプル くらいの気持ちでごR―
下さい。
その利用方法もこれまでに想定されているもの以外にも,教 師の知
識的 ◆心理的バ ックア ップ 児童生徒の興味づけ ・視野f/「
D拡大,登 校
拒否者の リハ ビリといった使い方も可能で九
現実的にはそのよ うな利用方法の実際については多くの試行錯誤が
必要となるでしょうが,児 童 。
生徒 との関わりを単に教室の中だけにと
どまらない広 く深いものにしてい く為の道具になる可能性はありま九
実際にインターネ ットがあま り普及 していない現在においてはこれ
らは確かに可能性に過ぎないことではありますが,イ ンターネット環境
がすべての学校に提供される日はそれほど遠 くないと思われますL三
ヾ
′
重県の場合,総 合教育ャンタ‐にサー′
をおき,今 年度中に地域の中
ー
核 となる高等学校 と総合教育センタ とを専用線で結び,そ の回線も
- 1 1 -
商用のプ ロバイダー と変わ らない規模 の大きさで,来 年度までにはそ
の他 の小 0中 ・高校 とその高校 と電話回線 で結ぶことができる体制に
ならてい るとい うことで丸
数学の教師 は,単 にイ ンターネ ットを使 うことができるばか りでな
く,そ の 目的,応 用範囲,思 想性な どについて指導 して行 くべ き立場
ー
になるのではないかと思いますL単 なる技術 としてのイ ンタ ネ ット
の指導でなく,世 界観 の構築 として捉えることができるのは数学を学
んだものに しかできないのだと考 えていただきたい と思います。
5 TOSIⅥ ポス ト
TosMポ ス ト(算数 0数学教育の質問箱)も 6回 目を数え、TOSM三
COmemie―
TOSMポ 不 卜の掲示板」 (http//WWw・
重のホームページに 「
掲げるようになってか ら、
hnie/toSm/ketti03/k_main.htm)を
u。
∝。
jp/∼
TOSMポ ス ト
おいおい質問も増 えて参 りました。郵便物での質問も 「
の掲示板」に挙げていま九
ここでは掲示板に挙げた暫定回答か、それを補足 した形で述べ るこ
とにしま丸 いつかTOSMポ ス トがもっと広まって、きちんとした書
物の体裁を取ることができるときには、それ自身独立した読み物の形
に整 えて書き直すつもりでいま九
これからも奮って、算数 0数学教育上の疑問点を、二重大学教育学
部数学教室内TOSM二 重ポ不 卜まで送って下さるか、上記掲示板に書
き込んで下さい。
5.l TOSMポ
ス トの質問集 (1回から5回まで)
どんな質問を受け付けてい るかを示すために、ここまでに投函され
た質問の リス トを挙げておきま九
1.第 1回 TOSMポ ス トの質問
(a)辺の長さがすべて異なぅ直方体の展開図はどれだけあるか?
周上に鶴点を取り互いに線分で結ぶとき、円内にできる
(b).円
領域は最大幾つか ?れだけで簡単に表わされるか?
(c)正多角形を描きたい。円を使って描くように指導してある
教科書があるが3oO°
を辺の数で割って整数にならないもの、
例えば正 7角形や正 11角 形などを分度器とコンパスで描
くこ とが 出来 るか ?
(d)直 三角柱 があ る。すべ ての側面を横断す るよ うに平面で切 っ
た切 り回は三角形になるが、正三角形になることがある力、
あるとしたらその長さは底面の三角形だけで一意的に定まっ
てい るか。出来れば底面を与えたとき、その正三角形を簡
単l計苗くことが出来るか ?
(e)y24■2+8π +1が 有理数 となる有理数 ″にはどんなものが
あるか ?
2.
第 2回 TOSMポ ス トの質問
(a)正方形を縦横に並べて大きい正方形を作るとき、大小取 り
混ぜて多 くの正方形ができる。2倍 にしたときにできる正方
形の数 は分かるが、同 じことを正三角形でした ら幾つにな
るか、公式があるか ?
三角形の辺上の′
点を通 り、三角形の面積を 2等 分する直線
(b)、
を引 く問題は中学の教科書にあるが、最初に与える点が辺
の上にない場合にも出来るのか?
新 しいカリキュラムに向かって、数学の 目的は何なの力滝
(c)1。
どう設定するのがいい力、
2.ほとんどの生徒が文科系を志望 しているので、 1年 、 2
年 と学年が進むにつれ実カテス トなどで成績が下がる。数
学が好きになるような興味付けは出来ない力、
3.
第 3回 TOSMポ ス トの質問
(a)高校数学で、数学的帰納法をη≧o(2は整数)に対 して証明
する時、第 1段 を梶=0で 示 して第 2段 をπ≧ ん(た≧ 0)に
対 して示 して良いで しょうか。それ とも、高校では帰納法
は自然数であるηに対するものなので、第 1段 でη=o,1に
対 して示 し、第 2段 をπ≧た(た≧ 1)に対 して示 した方が良
いでしょう力滝
-13-
(b)
(9)
長方形 の縦 と横 はどうして決めるのですか。倒せ ば縦 と横
が変わ ります し、斜 めに置いた ら、縦 と横 とをどうして決
めた ら良いので しょう力■ (円錐の場合な どは、倒 して も高
さは変わ らないのですが、長方形 だと変わ るような気が し
ますL)
円を投影 した ら何になるか。楕円になると思 うが、元の円
が内接する正方形を考えて、その投影が台形になる場合に、
相対する接点を結ぶ線分の交点は一体何になるの力Ъ
4.第 4回 TOSMポ
ス トの質問
(a)ハ ノイの塔 の柱 が 4本 にな った らどうな るのか ?
(b)空集合の記号0は どう読むのです力沌 ギリシャ語のファイで
はないということですが。
(c)対偶 が真だ とい うことと背理法は違 うのだとい う話があ り
ますが、本当はどうい うことなので しよう力滝
5。第 5回 TOSMポ ス トの質問
(a)ア キ レス と亀の話はどうなってぃ るのか ?解 決 されたとも、
解決 されていない とも聞きますが、どちらが本当で しょう?
…=1の
( b ) 0199999。
(C)
問題
に
数学 とい う教科について、数 学なんて、なんの役に立つか
わからない とい う生徒 の質問に ど う答 えるか ?
e
<
丁般に角度 をどのよ うに定義するの力■ ‐
小町算 とい うのがあるそ うですが、 どんな本に載っていま
すか ?
(f)ピ ラミッ ドの高さを求めるタ レスの方法 とは ?
(g)す うじつてなんですか ?
(h)複 素数平面 と複素平面
(1)分数のわ り算ではどうして“ くりかえしてかけるのですか?
(j)ピタゴラスの定理はc±a+b?
丁 14-
の2等 辺三角形 ス3θがある。底辺の頂′
点から、そ
(k)頂 角が20°
れぞれ内側から60°
,50°の線を引き,他の辺 との交点を結ぶ
時、そのなす角を求めよ。
第 1-5回の分 についてはこれまでの会誌 レlフ
,11釧に解説を述
Юl,11刻
べてあるので、第 6回 の質問についての解答 を次節 でする。原則 とし
ては、ホームペー ジの掲示板で しておいた暫定解答 を補足するだけで
許 していただきたい。
6 第
6回 TOSR/1ポ ス トの質問
ホニムページの掲示板での質問は害Jとコンスタン トに入るようになっ
てきま したが,そ れ以外での質問がないのは妙に寂 しい ものでづ孔 し
か し,ホ ームページを開く前か らそ うい う質問の数は少なくなってい
たのだか ら,それも仕方のないことで しょうふ
回答は質問者に応 じた形で していますL趣 旨にそ ぐわない質問もあ
るけれ ど, ともかくすべての質問に答 えておきました。 あま りその種
のものが多 くなれば考 えなければならないが,当 分は多くて困ること
もないで しょう。
6.1 円 周率 π
「
円周率 πの数を教えてください(40桁位までで結構です)。3.141592
‐
までは覚えてるんですけど。」 ・
質 問者 :HonOo Nagaoh
i
掲 示板 上の 回答
「
円周率 πの数」 とい うのは何なのだろうか,│とい う揚げ足取 りを
す る気はないが,「数」 とい う概念がどうも しつか り確立 していないよ
うだ。
この種の質問は,自 分で少 し調べればわかる筈のことという意味で,
ポス トの趣旨に反 してい るようなものだが,学 生に頼んで:『
数学辞典』
べ
から転記 しおいて もらった。 自分で調 れば分かるような質問は避け
て欲 しい とも思ったが,も ちろん人に よつてはそ うい う資料にアクセ
:い
スす ることも難 しく,こ れがそ う うチャンスだ とい うことなら,答
える方が良いのだ ろう。 さて,こ こではどうしよ う。おそ らくは どの
-15-
数 学科 の 教 員 室 に も常備 され て い る (はず の )『数 学辞 典 』 を見れ ば載 っ
て い る の だ が ,見 る の が 面倒 な 人 の た め に ,や は り再 録 しお こ う。
π‐==3e
1415926535
8979323846
2643383279
5028841971
6939937510
5820974944
5923078164
0628620899
8628034825
3421170679
8214808651
3282306647
0938446095
5058223172
5359408128
4811174502
8410270193
8521105559
6446229489
5493038196
4428810975
6659334461
2847564823
3786783165
2712019091
4564856692
3460348610
4543266482
1339360726
0249141273
7245870066
0631558817
4881520920
9628292540
9171536436
7892590360
0113305305
4882046652
1384146951
94151 16094
3305727036
5759591953
0921861173
8193261179
31051 18548
_
0744623799
6274956735
1885752724
8912279381
8301194912
9833673362
4406566430
8602139494
6395224737
1907021798
6094370277
0539217176
2931767523
8467481846
7669405132
0005681271
4526356082
7785771342
7577896091
7363717872
1468440901
2249534301
4654958537
1050792279
6892589235
4201995611
2129021960
8640344181
5981362977
4771309960
51871 72113
4999999837
2978049951
0597317328
1609631859
5024459455
3469083026
4252230825
3344685035
26193 11881
7101000313
7838752886
5875332083
8142061717
7669147303
5982534904
2875546873
1159562863
8823537875
9375195778
1857780532
1712268066
1300192787
6611195909
2164201989
6.2 4桁 の数字か らloを 作る
「
数学教育に従事 してい る者ではないのです が,長 年疑間に思って
いたことがあ りま して,も し良ければお答えいただきたいと思いま丸
電車な どに乗 ります時に切符を買います と,そ の切符に連番の数が
振 られてい ることが,良 くありま丸
で,そ の桁数は 4桁 であることが多い と思 うのですが,電 車に乗 っ
てい る間暇なもので,昔 か らよくこの数字を使い足 した り引いた りか
けた り割 った りを,1原序 を並べ替 えるのも有 りで行い,10を 作 るとい
うことをや ることがあ ります。例 えば 5246と い う数字があ りま した
ら (6-5+4)× 2=10と いうた風にです。
で,何 回もこ ういった事を行 っています とある法貝Jみたいなのがあ
るような気が しま丸
とい うのは4つ の数字が,そ れぞれすべて異なる数字で,且 う 0が 含
まれていないのなら,か ならず loが作れ るのではないか?と い うこと
で九
少なくとも,私 は反例 を見つ けてお りません。
で,こ ういつた事は数学的に証明できるので しょうか ?お 答 えいた
だけると幸いです。」
質問者 :金岩 稔 (二重大学生物資源学研究科)
掲示板上の回答
もちろん,成 り立つのなら証明できますL今 とて も忙 しいので,少
し暇になった ら,考 えてみますLそ れ までに分かった人がいたら,こ
の下のボー ドに書きこんで ください。
少 しや つてみま した。幾つかパ タ‐ ンが見つか りま したがあま り多
くのケースに適用できません。ちょっと考えると,9× 8×7×6=3024
通 りもあ りそ うに思いますLそ れでとて も大変 な感 じが しますが,よ
く考えれば 126通 りしかないことが分か ります。
126通 りしかないのなら,す べてや っても大 したことはなく,成 り
立つ ことが確 かめ られますLそ の結果は手元にあ ります が,そ れ を
そのまま (ズラズラと)書いて も面白くないで しょうから,こ れをイ ン
タこネ ッ ト上のゲー ムにし立てるように,あ る学生さんに話 しておき
ま した。最低限の形がここにありますLし かし,信 用問題 もあるので
ズラズラとすべての場合の答 えを書いてお きま した。 これは,新 しい
のを見つ けるごとに更新 します ので,こ こにない ものを見つけた人は
ご一報 ください。
うまい形に仕上がれば,彼 の卒業研究の一部になるで しょう。部分
的には出来たので リンクします。
126通 りの うちどれ位がパ ター ン化出来るか,少 し暇なときに考 え
てみますが,統 一的な方法は期待できません。
改 めての 回答
まず oを 含 まない4桁 の数字で異なるものの全体は,9個 の中から
4個 を取る組み合わせの数 9Q=(90807・ 6)/(4)=126だ けある。
しか し,思 い込み とい うのは恐ろしい もので,最 初はまともに,1か
ら 9ま での数 の作 る長 さ 4の 増大列の数 を求めねばならない と思い,
そのままの形で個数を求めよ うとして しまった。面倒ではあるけれ ど,
や つてみればそれはそれ で面白く,節 を改めて書いてみたい。
ところで,取 りあえずの解答は以下に挙げるが,す べての組み合わせ
に対 して答があるので,質 問者の問いには肯定的に答 えたことになる。
証明は ?と 言われても,こ れが証明で丸 と言 うしかない。証明 と
いえば,な んだか抽象的で,面 倒臭そ うだと思ってい る人には,こ れ
はある種 のカルチャー ショックかも知れない。普通,数 学で何 か しら
証明を しよ うとす るときは,無 限に対するものがほとんで,そ れを有
限の手続きで証明 しようとすれば,数 学的帰納法な どの作法が必要 と
なるだけである。有限の対象には,有 限の手続きで。但 し,有 限では
あって も,幾 つになるか分からない とい う場合も多 く,そ うなればま
た,数 学特有の論理が必要になる。数学が面倒なのではな くて,普 通
には主張できない よ うなことをきちんと主張 しよ うとすれば,数 学の
手続 きが必要 とな るとい うことである。
まず:こ れまでに手にした答をこの小節の最後に挙げてお く。これで
すべてとい う保証 もない し,も ちろんそんな主張をす る気もない。以
下の表にない解答 を,暇 なときにでも考えてもらえば,良 い リフレッ
シュになるかも知れない。執筆時現在, 1通 りし力靖早法の見つかつて
いオ
■い lЬDθは , 1467, 1469, 1678,1689,2459,3478,3579,4589,5679,
5689だ けだが,3478以 外は難 しいわけではない。多い もの もあつて,
2348で は 15通 りもの解法が見つかつてい る。
まず,当 た り前 と思われるだろう,原 理から述べ よ う。最終的に 10
になる直前の式は α+b,α一ら
,α*ら,α
/bの どれかである。そ して,こ の
α,bを作 るのに 2つ ずつの数を使 うな 3つ と 1つ の組み合わせかがあ
る。 心理的には後者の方が難 しいことが多い。
さて,幾 つかの解法のパ ター ンについて述べておこ う。大抵の場合
は以下のよ うに考 えれば,角準
答 を見つ けられるだろ う。
<9が 与えられ てい るとす る。■,ν
1<α <b<c<ご
,Z,υは
dの どれ かを表わす とす る:
α,b,ら
-18-
1.α+b+c+α
2.
≧ 10が 奇数 な らば,加 減 だけで は loは 作れ ない。
Ⅳ =α +b+c+ご >10が 偶数 の とき,N-10=2χ
あれ ば,ν +z+υ 一 ″ とすれ ば よい。
これ の 変形 と して ,Ⅳ -lo=2(■
Z+υ 一 π― ν とすれ ば よい。
3。
となる ■が
+ν )と な る ■,νがあれ ば,
2× 5に 帰着す る。
この 2,5の 作 り方の ヴァリエー ションは,2は ■―ν型,"/ν型
が,5は ■―ν型,χ +ν 型が多い。もちろん,2や 5が α,ら
,cメ
の中に含まれてい る場合には,他 の3数 を使 って相手の数を作る
工夫もする。
4。
α=1で あって,bフらごか ら10が作れる場合は,b,らどのそれぞ
れ, も しくはその結合 した数 に 1を 掛けることにより多 くの変
形が得 られる。
5。"一 ν=1で
6。ご=9で
あ つて,z× υ =10ま たは z+復 ,=loの 場合。
あって,α,b,cか ら1が 作れ る場合。特に α+b=cの
場
=
α)/b=b/(C一α)=(こ一b)/α
合は (α
+b)/C=C/(α tt b)=(C―
α/(C一b)=1と 変形が多い。
上の方法が うま くいかない場合に,つ ぎの方法を試す と上手くい
くことがある。
7.■×ν一Z× り,■ ×(ν一z)土υ
8。
9。
ノ
×(νtt Z))/復
。もちろん,こ の場合は ・×νtt z
,(・
(・×νtt Z)/り
10の 倍数である必要がある。
や χ×(νtt Z)が
'一ν)。 もちろんこの場合は ・は りの
"× (νtt Z/υ
),χ×(Z/復
倍数である。
2つ 目は 10のネ
南数 を体得 させ る良い演習問題になる。変形 とした も
のは z一 ″と リーνを補数 にす るように工夫することになる。
7つ 目は,最 終形が 五±3だ が,そ れぞれの ■,3が 乗除を含む形に
6*(7-4)-8=6*3-8=
なつてい る。6*7-4*8=42-32=10や
-19-
18-8=10の
よ うに非常に特別 な組み合わせ の場合 に しか起 こ らない
が,見 つ か る と嬉 しい もの だ。
最終形が■/Bの 8つ目も,(6*8+2)/5=(48+2)/5=50/5=10
とか (6*7-2)/4=(42-2)/4=40/4=10の ように少しだけ九九の
慣れが必要になる。
9つ 日は最終形が ス*Bで あるが,最 も技巧的なもので,理 論的に詰め
ない と見つか りにくい。ここに書いて しま うと,考 える楽 しみを奪って
しま うので,ポ イ ン トになる等式 10=2*5=415/2=6*5/2=8*5/4
だけを挙げてお く。詳細は以下の リス トの中から探され たい。
このゲームは,小 学校 で小さい数の計算の全体練習 として用い るこ
ともできるが,中 学や高校になって数学に馴染まない生徒 に,数 に周‖
れ させ るリハ ビリ用の教材 として用い ることも可能だろ う。
1.加減だ けで出来る場合,2.乗 法が 1つ だけ入 る場合,3.解 法の
多い組み合わせ,4.技 巧的な場合,な どと段階 を踏 んで問題 として提
示すれば,無 味乾燥に見える計算練習がゲーム感覚で取組む こともで
きて,生 徒児童の気を引くよ うに授業が構成することも可能であろう。
では, リス トである。 ミスプ リン トや ここに無い解法が見つかつた
ら御知 らせいただけると有 り難 い。 ホームペー ジには,つ ねに最新の
バー ジョンをア ップ してお く。
和の結合法則 と,和 と積の交換法則は無視 している(これ らの法則で
移 り変わる形は同 じもの と見な して 1度 しか挙げない とい うこと)。*1
と /1は 同 じとしてい る。
1234-→1+2+3+4=1*2*3+4=1*4+2*3=1*(2*3+4)=
2*4+3-1=1*(3*4-2)=1*3*4-2=3*4-1*2=(3-1/2)*4=
(1+3/2)*4=2+4*(3-1)
1235-― →2*3+5-1=((1+3)*5)/2=5*((1+3)/2)=1*(2+3+5)=
1*3+2+5=1*2+3+5=2+3+1*5=1*(2+5)+3=2+1*(3+5)圭
1*(2+3)+5=3*(5-1)-2=1+3*(5-2)
1 2 3 6 - →2 + 3 + 6 - 1 = 1 + 2 * 6 - 3 = 1 + 3 * ( 6 / 2 ) = 1 + ( 3 * 6 ) / 2 =
6*(1+2/3)=6*(2-1/3)=2*(3-1)+6=(3-1)*6-2
1237-2*7-1-3=(3*7-1)/2=(2-1)*(3+7)=(2-1)*3+7=
3+(2-1)*7
1238-→
1+3+8-2=1*2*(8-3)=2*(1*8-3)=2*(8-1*3)=
8+(1+3)/2
1239-→
2*(9-1-3)=1*(3+9-2)=3+9-1*2=1*3+9-2=
-20-
3+1*9-2=3+9-l*2=1*(3+9)-2=1*(3-2)+9=1*(3+9)-2=
1*(9-2)+3=9+3/(1+2)=9+(1+2)/3=9+2/(3-1)± 9+(3-1)/2
1245-→2+4+5-1=1*5*(4/2)=1*(5*4)/2=1*5*(4-2)=
5*(1*4-2)=5*(4-1*2)
1 2 4 6 - →( 6 - 1 ) * ( 4 - 2 ) = ( 6 - 1 ) * ( 4 / 2 ) = ( 2 - 1 ) * ( 6 + 4 ) =
6+(2-1)*4=(2-1)*6+4=2*(1+6)-4
1247-→ 1+4+7-2要
2*7-1*4=1*2*7-4=1*(2*7-4)=
1+7+4/2=(7/2-1)*4
1248→
(8-4+1)*2=1*8+4/2=1*(8+4/2)=8+1*4/2≡
1*(4+8-2)=1*(4+8-2)=1*4+8-2=4+1*8-2=4+8-1*2=
1*(4+8)-2=1泉
1249-→
4+1*(8-2)=2*(8-1)-4
(4-2)+8〒
4+9-1二
2=9-1+4/2=1*2*(9-4)=2*(1*9-4)=
2*(9-1*4)
1256-1+5+6-2=5*6/(1+2)
1257-→2*7+1-5=1*(5+7-2)=1*5+7-2=5+1*7-2=
5+7-1*2=1*(5+7)-2=l*(5-2)+7=5+1*(7-2)=7+(1+5)/2
1 2 5 8 - →5 + 8 - 1 - 2 = 2 * 8 - 1 - 5 = 1 + 5 + 8 / 2 = 8 + ( 5 - 1 ) / 2
1 2 5 9 - →5 + ( 9 + 1 ) / 2 = 2 * ( 1 + 9 - 5 )
1 2 6 7 - →6 + 7 - 1 - 2 豊 6 + ( 1 + 7 ) / 2 = 1 * ( 7 + 6 / 2 ) ±
1*7+6/2=
7 + 1 * 6 / 2 = 7 + 6 / ( 1 * 2 ) = 2 * ( 1 + 7 ) 二6
1 2 6 8 - →6 / 2 - 1 + 8 = 1 * 6 + 8 / 2 = 1 * ( 6 + 8 / 2 ) = 6 + 1 * 8 / 2 =
6+8/(1*2)=1*(2*8-6)=l*2*8-6=2*8-1*6=1*(2*8-6)=
8+6/(1+2)=(1+2)*6-8
1 2 6 9 - →( 9 - 1 ) / 2 + 6 = 2 * ( 9 - 1 ) - 6
1 2 7 8 - →2 * 8 + 1 - 7 = 8 / 2 + 7 - 1
1279→ 9*2-1-7=7+9/(1+2)
1289-一 →1*(2*9-8)=1*2*9-8=2*9-1*8=1*2*9-8=1*2*9-8
1345-→
(4*5)/(3-1)=5*(4/(3-1))=5*(1+4-3)=
(1+4)*(5二 3)=3*5-1-4=3*(1+4)-5
1 3 4 6 -)―( 6 / 3 ) * ( 1 + 4 ) = ( 6 * ( 1 + 4 ) ) / 3 = 4 * ( 1 + 3 ) - 6
1347-1+(7-4)*3=(3-1)*7-4
1 3 4 8 - →1 + 4 + 8 - 3 = 8 + 4 / ( 3 - 1 )
1349-→
1*(4二
(3-1)*(9-4)=1*(4+9-3)=1*(4+9)-3=
3)+9=4+1*(9-3)=1*4+9-3=4+1*9-3=
4+9-1*3=9+4/(1+3)=9+(1+3)/4=9+3/(4-1)=9+(4-1)/3
-21-
1356-→1+3*5-6=(5二 3)*(6-:1)=1*(5*6)/3=1*5*(6/3)喜
5 * ( 6 / ( 1 * 3 ) ) = 5 * ( ( 1 * 6 ) / 35 )* 〒
( 6 - 1 二3 ) = 3 * ( 6 - 1 ) - 5
1357-1+5+7-3=(5*(7-1))/3=5*((7_1)/3)
1358-→ 1*(5+8-3)=1*5+8-3=5+1半
8-3=5+8_1*3=
1*(5+18)-3=5+1*(8-3)=8+l*(5-3)=3*(1+5)二
8=
1+3*(8-5)=(5*8)/(1+3)=5*(8/(1+3))=8+(1+5)/3
1359-5+9-1-3=5*(9/3-1),
1 3 6 7 - →1 * ( 6 + 7 - 3 ) = 1 * 6 + 7 - 3 = 6 + 1 * 7 - 3 = 6 + 7 二 1 * 3 =
1*(6+7)-3■ 1*(6-3)+7=1*(6+7)-3平 7+6/(3-1)=
1
3 率6 - 二- 7 = 1 + 7 + 6 / 3
1 3 6 8 - →6 + 8 - 1 ‐
丁3 事1 * ( 3 * 6 - 8 ) = 3 * 6 丁1 * 8 〒1 * 3 * 6 T 8 喜
1 * ( 8 + 6 / 3 ) : = 1 * 8 + 6 / 3 = 8 + 1 * 6 / 3 = 8 + 6 / ( 1 * '63+)8〒
/(3-1)=
6*(8/3-1)=(3-1)*8-6
‐
1369-3*(9-6)+1=3*6+1-9=1+6+9/3=9-1+6/3
‐
1378-8+(7-1)/3平 7+(1+8)/3=3*(7_1)=8
1 3 7 9T‐
→1*(7+9/3)=117+9/3=7+1*9/3=7+9/(1*3)
1389-8-1+9/3〒 (3-1)*9-8
‐
1456-→ 4*(5-1)-6=1*5*(6-4),=5*(1*6-4)≡
5*(6Tl*4)
1417下 )1(1+4)*(7-5)〒
5t(7-4-1)=(5*(1+7))/4=5*((1+7)/4)
1458-→ 1+5+8-4〒 (1*5*8)/4=1*((5*8)/4)=1*(5す
(8/4))童
(o.*8)/(1*4)=5*((1*8)/4)=5*(8/(1*4))
.
4)=1*5+9-4=5+1*9二
4=
1459T→ 4*5_1-9=1*(5+9下
5+9-1*4=1*(5+9)-4=5+1*(9-4)=9+1*(5-4)=((9丁
1)*5)/4平
5*((9-1)/4)=9+(1+4)/5=9+5/(1+4)=9+(5-1)/41〒
9+4/(5-1)
1467-1+6+7-4
:
1 4 6 8 - →( 8 - 6 ) * ( 1 + 4 ) 〒 , ( ( 6 - 1 ) * 8 ) / 4 = ( 6 下
1)*(8/4)=
8+6/(4-1)=(4-1)*6-8=1*(6+8-4)■
1*6+8-4=
6+1*8丁4=6+8-1*i4=1*(6+8)-4=6+1*(8T4)=1*(6-4)+8
1469・一―→ 6-+9‐ -1‐ T4
′
│
1478_7+8-1,-4=1+7+8/4=8‐ +(11・
7)/4‐ :
1479→ (9-7)す
( 4 + 1 ) 〒7 + 9 / ( 4 丁1 )
1 4 8 9 - →8 / 4 + 9 - 1 = 8 + ( 9 - 1 ) / 4 = ( 9 / 4 ■ 1 ) * 8
1567-(1+7-6)*5=(6Tl)*(7-5) .
1 5 6 8 T →1 + 6 + 8 7 5 = 1 * 5 1 * ( 8 ■6 ) = i 5 * ( 8 - 1 * 6 ) = 5 * ( 1 *丁
昼
6)
-22-
1569-→ 5*(9-6-1)=1*(6+9-5)=1*6+9-5=6+1*9-5=
6+9-1*5=1*(6+9)-5=1*(6-5)+9=1*(6+9)二
9+(1+5)/6.=9+6/(1+5)平
5=
9+(6-1)/5=9+5/(6-1)
1578す → 5*(8-7+1)=1*(7+8-5)=1*7+8-5=7+1*8-5=
1*(7-5)+8=1*(7+8)-5
7+8-1*5=1*(7+8)-5平
1579-→ 1*5*(9-7)=5*(9■
1*7)=5*(1来 9-7)事 7+971 5
1 5 8 9 - →( 1 + 9 ‐8 ) * 5 = 8 + ( 1 + 9 ) / 5
1678-1+7+8-6
t
1679-→ 1*(7+9-6)=7+9-1*6≡
7+1*9-6=1*7+9-6=
1*(7+9)-6=7+1*(9-6)=1*(7-6)+9=(6-1)*(9-7)=
9+(1+6)/7=9+7/(1+6)=9+(7下
1)/6=9+6/(7-1)
1 6 8 9 - ― → 8 - + 9 ‐- 1 ‐- 6
.
1789-→ 1:*(8+9「 7)平 8+9-1*7=8+1*9-7=1*8+9‐
7=
1*(8+9)=7=1*(8-7)+9=8+1*.(9-7)=(8-7)*(1+19)=
1 * ( 8 ■7 ) + 9 = 1 + ( 8 - 7 ) * ´9 = 9 + ( 1 , + 7 ) / 8 = 9 + 8 / ( 1 + 7 ) =
9+(8-1)/7=9+7/(8-1)
2345‐→3+4+5-2=(4T3)*2*5=3+5+4/2=2*4+5■
3=
2+4*(5T3)
((2+4)*5)/3=5*((2+4)/3)量
2346-→3+4+6/2=(2+3)*(6●4)=2+(4*6)/3=2+4*(6/3)=
3)=
(3二2)*(4+6)=(3-2)*4+6=4+(3-2)*6=14+2*(6-‐
2*4+6/3=4*(2+3/6)=3*6-2*4.=2*(3+6-4)=4*(6-3)二 2
2347-→2+4+7T3=(2+4*7)/3
1
1
=→2*3+8-4平 (4-2)*(8-3)=2*(3+8/4)±(4-3)*(2+8)=
2348■
4+8)/2=
( 3 * 8 - 4 ) / 2 ■( 3*、
(4-3)*2+8=2+(4-3)*8〒
(4*8T2)/3=(2+3)*(8/4)=((2+3)*8)/4=3*(2+4)-8=
1
( 2 - 3 / 4 ) * 8 = 3 * ( 8 - 4 ) 丁2 量8 + ( 2 + 4 ) / 3
→2+3+9■4=4+2*(9-3)=3+9■ 4/2=(4*9)/3-2=
2349,一
4*(9/3)-2
1
1:
2356-→12+5+6-3〒2*6+3-5=2*(5下3)+6平(5-3)*6_2=
2*(3+5)-6=6+(3+5)/2
2357-3*(7-2)下 5=5*(7T273)=2*(7+3_‐
5)=
( 7 - 5 ) * ( 2 + 3 ) 事( 5 - 3 ) * ( 7 - 2 1 ) 3平率5 + 2 ■ 7 = 5 + ( 3 + 7 ) / 2 =
5*((7-3)/2)=(5*(7-3))/2=:3*(7-2)-5
1
1 8+(5■
2358-→(5*(8-2))/3±
5 *((8二
2)/3
2)/3)=5*(8-2*3)平
2359-→9/3+5+2=2*3+9-5=2*9-3-5=9+(2+3)/5=
一 123-
=9+3/(5-2)
9+5/(2+3)=9+(5-2)/3
9+2/(5-3)=3*(9-5)-2
2367→ ((7-2)*6)/3=(7-2)*(6/3)=(7-6/3)*2
2368-→ 2*(8+3-6)=(2+3)*(8-6)≡
2*(3+6)-8
β
〓
D
2
8 /
旬
+ ︹
に 一
(2+3)*(9-7)=2*(3+9-7)=(3
3*7-2-9=7+9-2*3
/k *
2379-→
舞9
2369→ 6+9-2-3=2*((6+9)/3)=(2*(6+9))/3=9+(2*3)/6=
9+6/(2*3)=9+(6/2)/3=9+(6/3)/2
2378-→7+8-2-3=3*8-2*7=2*((7+8)/3)=
→8 / 2 - 3 + 9 = 2 * 8 + 3 - 9 = 2 * ( 8 - 9 / 3 )
2389二
→(4*2-6)*5=2*(4+6-5)=5+(4+6)/2=(5*(2+6))/4圭
2456-一
5*((2+6)/4)
2457-→ 2+5+7-4=4*2+7-5=2+4*(7-5)=5+7+4/2
→2*(5+4)-8=5*((8-4)/2)=(5*(8-4))/2=4*5-2-8=
2458-―
4 す( 8 - 5 ) - 2 = 4 + 2 * ( 8 - 5 ) = 2 * ( 5 - 4 ) + 8 = 8 + ( 2 + 6 ) / 4
2459-→ 2+4+9-5
2 4 6 7 - →( 7 - 2 ) * ( 6 - 4 ) = 7 + 6 / ( 4 - 2 ) = 2 * ( 4 + 7 - 6 ) =
4*6-2*7=(6*7-2)/4=(6-7/2)*4
2468-→2*4+8-6=2+6+8/4豊
(6*8)/4-2=6*(8/4)-2=
4*(8/2)-6=(4-2)*8-6=(4*8)/2-6=(4/2)*8-6=2*6二8/4=
8/(4-2)+6=2+4*(8-6)
→9+(6-4)/2=9+(6-2)/4=9+(2+4)/6=9+2/(6-4)=
2469-―
9+4/(6-2)=9+6/(2+4)≡ 4+2*(9-6)圭4+9-6/2=4*(9下 6)-2
2478-→2*(8-7+4)=2*7+4-8=(4*7-8)/2
2479-→9-4+7-2=4*7-2*9=2*4+9-7=2+4*(9-7)=
(4+7+9)/2=(7-9/2)*4=2*(9-7)+4
2489-→9+(2*4)/8=9+8/(2*4)=9+(8/2)/4=9+(8/4)/2=
2*(4+9-8)=(4*9)/2-8=(4/2)*9-8=(4-2)*9-8
2567-→
2+6+7-5=2*5*(7-6)=5+2*6-7=2*(7-5)+6=
(7-5)*6-2
→(5-2)*6二
2568-―
8=(5*8)/(6-2)±5*(8/(6-2))=(2+6*8)/5=
5+8-6/2=8+6/(5-2)=8+2*(6-5)=(8+2)*(6-5)=2+8*(6-5)
2 5 6 9 - →2 + 5 + 9 - 6 = ( 5 + 6 + 9 ) / 2
2 5 7 8 - →2 * 5 * ( 8 - 7 ) = ( 5 + 7 + 8 ) / 2
-24ニ
2579-→2*7+519=9+(2+5)/7=9+(712)/5=9+(7-5)/2=
9+7/(2+5)=9+5/(7-2)=9+2/(7-5)
2 5 8 9 - →2 * 5 * ( 9 - 8 ) = 8 + ( 9 - 5 ) / 2 = 8 + 9 - 2 _ 5 = 5 + 9 - 8 / 2
2678-→ (7-2)*(8-6)=2*(6+7-8)=(2+8)*(7-6)=
2+8*(7-6)=2*(7二
6)+8
2 6 7 9 - →2 + 6 + 9 - 7 = 7 + 2 * 9 / 6 = 2 * 6 + 7 - 9 = 2 * ( 9 - 7 ) + 6 =
(9-7)*6-2
2689-→(o+8-9)*2=(8*9)/6T2=9+(2+6)/8=9+(8-6)/2〒
9+(8-2)/6=9+8/(2+6)=9+2/(8-6)=9+6/(8-2)
2789-→2+7+9-8=(8*9-2)/7
3456-→3+5+6二4=(3*4*5)/6=5*((3*4)/6)=5*(4/(6/3))=
(4*5)/(6/3)=(4-6/3)*5
、 1
3157-→3*4+5-7=4*5-3-7=(3+7)*(5二 4)=3+7*(5-4)=
3*(5-4)+7=4+3撃 (7-5)=(5-3)*7-4=(4+5)/3+7
3 4 5 8 - →3 + 4 + 8 - 5 = 3 + 5 + 8 / 4
い
一 0 υ *
く
>
* 3
3 /
n
“
w
︲
・
・
3459-3*5+4-9=(5-3)*(9-4)=5*(9-3-4)
一
7
3 4 6 7 - →4 * 7 - 3 * 6 = 4 * ( 7 - 3 ) - 6 = ( 6 * 7 ) / 3 - 4 =
6*(4-7/3)
3468-→(6-4)*(8-3)=4+8-6/3 =(4+8)/3+6=3*4+6-8=
8+(3*4)/6=3*(8-6)+4
3469-→3+4+9-6=(4*9-6)/3= (9-4)*(6/3)=((9-4)*6)/3
3478-→(3-7/4)*8
3479-→3*4+7-9=9+(3+4)/7=9+(7-3)/4=9+(7-4)/3=
9+7/(3+4)=9+4/(7-3)=9+3/(7-4)=7+(3+9)/4
3 4 8 9 - →8 + 9 - 3 - 4 = 3 + 9 - 8 / 4
3567-→3*7-5-6=5+7-6/3=(5+7)/3+6=(3+7)*(6-5)=
3+7*(6-5)=7+3*(6-5)=7+6/(5-3)
3568-→3+5+8-6=6+8/(5-3)=(5-3)*8-6=5*(3+6-7)
3 5 6 9 - →( 6 + 9 ) / 3 + 5 = ( 3 * 5 * 6 ) / 9 = 5 * ( ( 3 * 6 ) / 9 )
3 5 7 8 - →( 8 - 3 ) 兼
( 7 - 5 ) = 5 + ( 7 + 8 ) / 3 ≡8 + ( 3 + 7 ) / 5
3579-→ 3+5+9-7
3589-→ (3+8-9)*5=3*8-5-9=9+(3+5)/8=9+(8-5)/3=
9+(8-3)/5=9+8/(3+5)=9+3/(8-5)=9+5/(8-3)=5+8-9/3=
(5-3)*9-8=5*((3+9)/6)
3678-3+6+8-7=(6*(7+8))/3=
(6/3)*(7+8)=6*((7+8)/3)
-25-
3 6 7 9 → 6 + 7 - ( 9 / 3 ) = ( 7 * 9 - 3 ) / 6 = 3 * ( 9 二7 ) + 6
3689-→3+6+9-8=8+(3*6)/9=8+(3+9)/6=(6*9)/3-8豊
(6/3)*9-8=6*(9/3)-8
3789-一 →(9-8)*(3+7)=(9-8)*3+7=3+(9-8)*7=(9-7)*(8-3)
4 5 6 7 - →4 + 5 + 7 - 6 = ( 5 * 6 ) / ( 7 - 4 ) = 5 * ( 6 / ( 7 - 4 ) )
4568-(4+6)/5+8=(4*5)/(8-6)=(4/(8-6))*5平
(5*(8+4))/6=5*((4+8)/6)=5*(4/(8-6))=(5*4)/(8-6)
4569-4*6-5-9=(6*9-4)/5=4*(9二 5)-6
4 o 7 8 - →8 - 7 + 4 + 5 = 8 + 4 / ( 7 - 5 ) = 5 + 7 - 8 / 4 1
4 5 7 9 - →4 * 5 / ( 9 - 7 ) = ( 9 二4 ) * ( 7 - 5 ) = 5 * ( 4 + 7 - 9 )
4589-― → 4-+5-+9=-8
一→ (8-7)*(4+6)=(7*8+4)/6=6*7-4*8±8+6/(7二
467昼
4)=
(8-6)*7-4=6*(7-4)-8=(4*(7+8))/6
4 6 7 9 - →( 7 + 9 ) / 4 + 6
4689→ (4+6)*(9-8)=(9*8)/6-4=(8-6)*(9-4)=(6-4)*9-8
4789二→4+7+8二 9=8+4/(9-7)
5678-→5+6+7二 8=(6*7+8)/5=(7*8-6)/5=6+8/(7-5)=
( 7 - 5 ) * 8 下6 = 5 * ( ( 6 + 8 ) / 7 ) = 8 + ( 5 + 7 ) / 6
5 6 7 9 - →( 9 + 6 ) / 5 + 7
5689・――→ 5-+6-+8¨ -9
5 7 8 9 - →9 / ( 8 - 5 ) + 7 = ( 7 - 5 ) * 9 - 8 = 5 * ( ( 7 + 9 ) / 8 ) =
(5*(7+9))/8=8+(5+9)/7
6 7 8 9 - →8 / ( 9 - 7 ) + 6 = ( 6 * ( 7 + 8 ) ) / 9 豊
(9-7)*8-6
6.3 面 積 の"S"の 語源
"S"の
「
面積 の
語源 を教 えて 下 さい。」
:Josaitoh
質 問者
掲示板 上 の 回答 を少 し修 正
S」 と言われ て も,よ く分か りません。多分,面 積 の 「
面積 の 「
S」で
はないの だ と思いまづLt)し かす る と,曲 面 (StrfaCe)を
表わす の に使
うこ とか ら来た の か も しれ ませ んが ,恐 らくは違 うで しょ う。
「
積分」という言葉と記号∫は,ライプニッツ率
とベルヌニイ率
によっ
て作られたのです(『
い
て
だ
解析教程 上』paを 見 ぐ さ )。 ‐
その とき,積 分の記号は 町日(Sumま たは summatiOn)」 の 「
S」 を
の
の
もじつた も にした で丸
面積は積分で計算 されることが多 く,積 分は 「
S」と書 くことが多い。
とい うことか ら,面 積 を表すのに 「
S」 と書 くことが多くなったので
はないで しょうか。
ちなみに,面 積は 「
S」 と書 くのだとい う規則はあ りません。
6.4 0の
0乗 は ?
「
0のO乗はやは り,1な のでしょう力Ъ
もしそ うでなければ理由は何でしょうか。
私は,ν 平"・の ″一→ oの 極限において ν=1と い う結論に達 した
のですが。専門外なので詳 しいことは分かりません。是非,ご 教示下
さい。」
質問者 :草薙 (京都大学工学部)
掲示板上の回答
あらゆる四則演算の規則や指数法則を保つようには定義できません。
形式的には 0-η=1/Oπ となりますが,1を 0で割ることは許されてい
ません。強引に,0°=01 1=01/01=0/0と しても,不 定だとい うこ
とになりま九
後は,何 かの意味を持ってこの不定なるものの一つを特定できるか
とい うことが考えられるのですが,そ の意味では答えは 1と するのが
自然だとい うことは言えます)
.
の
それ自体 定義が分からなくなれば,極 限 として意味を持つかどう
かを考えまづ孔 極限 としての意味の持たせ方に色々あるような場合は
問題が複雑になりますが,質 問のよ うな場合は 1と して矛盾を起こさ
ない と思います)
ν=ノ の "一→ 0の 極限をどう計算するかも色々あるとは思います
="log″ として,"→ oの 極限をとれば 0
が,対 数 をとって,10g ν
にな り,そ の指数 関数 の値 とい う辺 りが一 番落 ち着 い た気分 ではない
か と思 い ま九
‐実 は,‐
対数 を取 る ところで暗黙 の うちに,″ >0で 実数 とい う,こと
が仮 定 され て いて ,そ の意 味 で の極 限 を取 って い るのでづLそ
い と,:この極 限は存在 しな くな りま九
-27-
うでな
また,そ うい うことな ら,z>oに 対 して,■0=1で あるので,そ
の極限 としたのだとい っても良いで しよう。ただ,0・=oだ から,そ
の極限なら oで はないかとい う議論 も出来ます。
結局,知 ってい る規則 のすべてを満たす よ うにはできないのだから,
矛盾を導 くことも容易で,「一般には 00を定義す ることはできないが,
極限 として,00=1を 正 当化する話 しもある」 とい うあた りになるの
で しょうか。
6.5 古 典 力学 の数学的方法 を理解するに必要な数学分野
の推薦図書
「
初めまして,機 械 メーカに勤める40代 の者ですし専攻は機械 工学
ですし再び数学の勉強 した くな りま した。当面の 目標 は 2年 間でアー
ノル ド 「
古典力学の数学的方法」を理解できる学力に達することで九
現在,や っかいな大学入試問題はのぞき高校数学の基礎はほぼ理解で
きます。ただ し大学時代はあま り勉強 しませんで したので大学課程の
数学 を勉強 し直す る必要があ りま九 日標 に達するのに必要な数学分
野の推薦図書を紹介 ください。微積分用 としては 噛卒
析教程 0上下」は
購入 しま した。」 J
質問者 :新居啓二
掲示板上の回答
アー ノル ドの本はあま り予備知識を必要 としない よ うに書いてあり
ます が,そ れでも以前教養 で教 えていた程度の数学は分かってい るほ
いで しょっ。
9カれヽ
『
解析教程』 を買つていただいたよ うで,微 積分はほとんどそれで
十分ですが,多 変数 の変数 が大 きくなった ときの扱いが少 し足らない
か も しれ ません。それ とも関連するのです が,線 形代数の初歩的な部
分も知ってい るとよいで しょう。線形代数の本も色々あ りますが,ど れ
でも良い としか言い難いですね。目安 としては,http://wwweCOm.mie―
u●
aCDjp/∼
hnie/agOra/mathtext.htmに
私が講義で使 うたことのある教
科書を挙げてありますので,そ の中から選ばれたら如何でしょう力■ ま
た,「ほんの本の リス ト」(httl)://math10edu.mieu.ac.jp/∼
hnie/b00k.
htm)に ある本 も参考にして ください。
あと知っていれば,知 らない よりも良い とい う知識には,「
多様体論」
「
常微分方程式論」がありますが,ア ーノル ドの本の中で学ばれればよ
いかと思いますЪアーノル ドかポントリャーギンの 『
常微分方程劇 は
い
の
い
に見ながらと
横目
う もよ でしょう。
なお,ア ー ノル ドの 『古典力学の数学的方法』の本文は不滅の輝き
で,内 容が古びることもなく:予 備知識 もほとんど要 りませんが,附 録
部分は当時の最先端の結果ですので,現 在 となつてはい ささか古くなっ
た部分もあ ります し,少 なからぬ予備知識が必要な部分もありま丸
取 り敢 えず 本文を読まれたらよぃ と思いますLそ して必要なだけ,
微積分 と線形代数 の教科書を見られたら如何で しょう。準備 のための
勉強をす るよ り,学 びなが ら必要な知識 。技術を補充するとい う方が
勉強に対す る気持ちが持続 しやすい と思いま丸 日暮れて途遠 く,脚
支度 よりまず歩きは じめることだ, と思いま丸
楽 しみながら,頑 張 って ください。
6 . 6 ラ テ ン 語 入 門 は ど う した ら
「
はじめま して。解析教程読ませていただいていま九 素晴 らしい本
をあ りがとうございま丸 さて,本 文に紹介されていたオイ ラー率「
入
門」のラテ ン語を読もうとしていま九
」
読むのに必要なラテン語の辞書などご存知で したら,ご 紹介 して く
ださい。お手数 か けま九 「入門」の英語,仏 語は第 1巻 は品切れで
した。」
質問者 :網 信基
掲示板上の回答
これは直接 e_メールで送 られて きた ものですが,内 容的に秘密にす
るよ うなものでない し,関 心のある人もあると思って,こ こで返事を
書かせて もらいま九
さて,歴 史的興味でオイラーのラテ ン語原本が読みたいのならお止
めしませんが:オ イラーの数学に興味があるので したら,英 訳で十分
だ と思いま九 springerから出ていますので,数 学書取 り次ぎの本屋
さん力、 シュプ リンガー 0フ ェアラー ク東京に聞けば手に入ると思い
ます。僕 も機会があれば訳 して もよい とは思 うのですが,さ て,需 要
が見込めるか どうかですね。
ところで,ど うして もラテン語で読みたい と思 うのでしたら,と 言っ
ても,ラ テ ン語の 日本語の辞書は1冊 しかありません。研究社から出て
-29-
戸
います。しか し,決 して読みやすい とは言えませれ ラテン語の文法の
基礎をある程度以上勉強 してか らでない と単語 を引くことも出来ませ
ん し,正 解 の単語に出会 っていて も,そ こにある訳語は適切なもの と
は言いがたいので九 それで,ど うしてもOxford Latin Dictionaryな
どの辞書を引 くことにな りますが,こ れがまた大変で丸 ラテ ン語は
使用 されてい る時期 も長 く地域 も分野も多岐にわたってい るので,言
葉が非常に多義的で,変 化形が多 く,品 詞す ら変わっていきますLし
たがって, どの時代 の どの地域での, とい うより誰のラテ ン語かが分
かっては じめて意味が確定するとい うことす らあるようですしつま り,
ョー ロッパではラテ ン語の学習の歴史が長 く,辞 書は大変に詳 しく,何
処を見たらよいか分からない状態でづL
多分,僕 がこの翻訳のためにラテン語の勉強を してから翻訳 したと,
志賀 さんがある書評 でばらして しまったので,僕 に出来るのなら,何
とかなるか と思われ たのか も しれませんが,実 はそんな簡単なもので
はあ りません。勉強 しは じめたころに, さまよえるオ ランダ人のダイ
クハ ウゼンとい う数学者にシンポジ ウムで会 う機会があり,彼 にかな
りの部分を,逐 語的に英訳 して もらいました。勿論それでは意味の通
る文章にな りませんので,文 章上,数 学上の意味から,あ あでもない
こ うで もない と,議 論 していったのでサLそ れ で もかな りな部分は未
解決で,彼 もあとで調べて くれ た り,僕 も考えた りで,そ んな機会が
2度 ほどあ りま した。
ライプニ ッツの ラテ ン語は特にひどく,意 味が取 りにくくて困 りま
したが,後 になって,対 応する部分のフランス語訳が出てい ることを
知 り,そ れも参考にしま した。そのころには文法的なこともある程度
分かるよ うになっていたので,同 じ学部の哲学の人に文法的な解析 を
して もらい,そ れを数学的に補 うとい う形で訳 した もので九
この さいラテ ン語の勉強が したし、 とい う希望なら別ですが,BlantOn
の英訳を,そ して も しそんなことがあればですが,い つか出るか もし
れない 日本語訳をお読みなることをお薦めしまづL数 学部分だけで,十
分オイラー は面白いです。
これで,お 返事になっているで しょうか。
-30-
6.7 比 例 の記号 の歴史 :「∝」 の読み方 と出典
「「
家庭電器 」に関す る通信 教育 を長 年事業 として進 めてお りま丸
下記 の記号 の こ とでお 教 えい ただ けば幸 いで あ りま丸
1。 「
∝」 の正 式 の用語名称 をお教 え くだ さい。
2。 この 記号 の 出典 は,何 で しょ うか ?」
質 問者 :大 野 泰 雄 (電子文化研究所 )
回答
これ は電話 に よる質問 である。 まず, ■ が での回答 を書 い て しま っ
た。 掲 示板 に載せ るの には少 し苦労す るか も しれ ない。
用語 の正 式 名称 とい うもの が あるか ど うかは分 か りませ んが,「比例
記号」 とい うこ とでいい と思 います。
率
英語 で考 えてみ て も,数 学史 で有名 な F.カ ジ ョリ が,A HistoFy Of
い う本 [llの中で,こ の記号につい て書 いて
Mathematical Notationsと
い ます が ,そ の節 の 見出 しは Signs of Proportionと
な ってい ま丸
は 3に 比例
ちなみに ス ∝ 3と い う式 は A is proportional to B(■
す る)と い う文章 を表 現 した もの です。
比例」す るこ とを表現す る記号が確 立 してい くの にも長 い歴史
さて,「
があった よ うで丸 カジ ョ リの本 を参考 に して少 し述 べ てみ ま しよ う。
記号に よる式 の表 示が確 立す る以前 に も,比 例 を文章で表現す る こ
とか らの脱皮 を試 み た長 い歴 史 があ ります が,印 刷以前 の歴 史は煩雑
で今 は手にお えませ ん。
率
印刷 され た もの の最 初 の もの はル ドル フ の教科書 の よ うで ,シ ュ
ン (1553)による再版 には,
テ ィー フエノ
1001 :Z1 100Z I Facit:ZZ
とい うように,垂 直の線で区切つて,現 在の記号での 100::Z=100z:
ー
:z2を 表わ しているのが見つかりますLし かし,例 えば,タ ル タ リ
ァ率
は数を扱った本1中で
1 4//che Valerannoノ
ι28
Seノ
C3//val ρ
と書いてい るように,文 章の多い表現も混在 しま九
lN.Tartagha,lα Eα
c ( ヴ エネ ツ ィ
θごづⅣ包π面 ′θι
c t t J 猾滅αι
θ
P t t γ P a r t e d c lc π
フ ォ リオ 1 2 9 B 。
ア, 1 5 5 6 ) の
-31-
「
そ の後,ク ラ ヴィ ウス率
が 『実用算術』2の中で
9。126.5。 ?∫づ
包2ι70。
と,9:126=5:70の
ことを書 い て い ま丸
1699年 に コラチ ャ ンが算術 の教科書 の 中で,比 例式 を
ス .3。
θ oD。
5 . 7 。 15 。 21 e
と, 5 : 7 = 1 5 : 2 1 の ことを2 段 に書いていますЪ そのほか, シ ュヴェ
ンター ( 1 6 2 3 ) は
68-51-85と
ま り, 比
書いて, ( 5 1 ×8 5 ) / 6 8 , つ
例式の第 4項 を求めよとい う問題を提示 していた り,ガ リレオ事
(1635)
も同様の問題を同 じよ うに表示 し,具 体的に積み上げ式に計算 してみ
せていま`
九 ガ リレオはまた別の本で,数 を区分けするのに横線 ― で
なく,点 .や 空白を用いた りしています。
これ とは少 し別の流れ として,例 えば,オ ランダのヨハ ン ◆シュタ
ンピオーエ ンは記号を使 って,
α,, b gel : ら,, c
と書 い て い ま す 3 。今 の 記 号 で は 五: b = b : c の
ラ ンス ベ ル ギ ウス 率が
こ とで 丸
1601年 に
ut 5 ad 10;ita 10 ad 20
と書 い た の も, 5:10=10:20の
こ とを意 味 していまづLこ れ らは等
一
比 数 列 の 部 とい う意識 か ,比 例 中項 を求 め る とい う意識 かだ ろ うと
思われますが,前 後 の記述 がないので分か りません。 また,イ タリヤ
が,幾 何の演習書 の中で
人の ミケランジェロ 。リッチ率
esto」
ACr ad cI」
B, ut 9 ad 6
と書 い て もい ます。第 4項 が欠 けて い た り,第 2項 と第 3項 が 同 じであっ
たりはしますが,式 としてのちゃんとした表示まで後一歩です。
2ch..chvius,助 づ
づ
c a c P t t cづ
οm C αγ
づι
んθι
Cι
a c ( ロー マ , 1 5 8 3 ) の 1 3 7 ペ ァ ジ。
ι
んγ
3Johan Stamploen,■
C u υθ s ι
JJθ
ら
鶴 θ
θ
J 現りc J ( ハー ス 1 6 3 9 )
ル πづ
4Mithel五
ο θc a m c 加弓c α, 1 6 6 8 。
賀 づ
ι
αι
づ
五g e l o R i c c i , 助
-32-
17世紀前半に活躍 したイギリスのオー トレッドネ
は,数 式の表示や記
号について大きな貢献をした人ですが,『
数学の剣 5で,5。10::6。
12(現
在の記号では5:10平 6:12)と い う書き方を導入 し,こ れ以降の著書
でもこの記法を採用 していて,以 降イギリスではこの記法が広 く使わ
れるよ うにな りま丸
しか し,点 「
.」は色々な意味を持つ ことがあり,こ れはこれで不便
なこともあ りますL例 えば,小 数点に 「
.Jを 使 うことができません。
そのためイギ リスで もこれを少 し修正 した記法が提案 されますしす
でに1651年に ヴィンセン ト・ウィングが 『
天界の調和』6とぃ ぅ天文
書で ス.B::σ.Dと い う記法 とともに ス :3::θ :Dと い う記法 も
使 つていますЪ この本ではもしかすると,タ イプす るときの間違いで
あつた可能性があるとい うのですが,こ れ以降の著書でははっきりと
'ス:B::σ :Dと い
う記法に統一 していま九
これ以降,オ ー トレッドの記法 とウィングの記法が優劣を競 うこと
にな り,少 しずつ ウィングの記法が優位 に立つ よ うにな りますL中 に
はスイス人のジョン 0ア レキサンダーの 『
代数』7のよ うにオー トレッ
ド式の αob::c.Xを使 った り,απb:cttχを使った りしてい る例もあ り
ま
5聰
れ111年
■,: 車
顧酵重
行の
墓,
後の論文ではウィングの記法を用いた りしていま九
一方 ヨー ロッパ大 では
陸
,縦 線を使 った ものやタル ター リア風 の書
き方に似たものが使われていま したが,一 般的になりませんで した。
ルネ 0デ カル ト率
は,1619-21年には αlbllCIご
とい う書き方をしてお
り,1638年 の手紙では αl倒
CIごと書いていますし縦線で等比級数 の各
項を区分 してい く例は,ス ルジ ウス率
のホイヘ ンスヘの手緑 (1668-69)
ー率
0ド
0ビ
とた ジャック
リ の幾何の本 (1643)に見受 けられま丸 18
世紀の初めの頃のデカル ト主義者たちは αl‖
dの 形を採用 してお り,
1司
率
ロ
の
ディ ド
百科全書 (1754)でも採 られていま九 1701年にラ ◆イール
率
が 。αll"π
bと 書いてい るのは,α?:χ2=.2:α らの意味で,等 比数
l lα
列の3項 を区切 っている例 と見ることも出来ま丸
変わった書き方もいろいろあって,ピ エール ・エ リゴTン 率
んθπ
は 「
予
(tじ
瑞:
テ ι 拙器穿
讐『
-33-
″
「
θα212んbπ bご は ,〃 θ が Gス に対 す るの は ″Bが BDに 対す
8。今 の記 号では
るの と同 じで あ る こ とを意 味す るJと 書 い て い ます
んθ:θα=ん b:bご とな り,相 似 比 が等 しい ことを表 してい るよ うで丸
比」 を表 して い るの も面 白い ですね。
212が 「
等 しい 」 こ とを,π が 「
ー
メ ンゴー リ率は,α :r=α 2:αr
また,1659年 のボ ロ ニ ャの ピエ トロ 。
の こ とを 「
r」 とい う書 き方 を してい ます。
α;γ:α2;α
ル ー ア ンの A.ド 0メ ル カテル の 『算術』 9では,2,,3;;8,,12とあ り,
スペ イ ンのザ ラ ゴザ の 『算術』10では 4。
3:12.9と あ り,ハ ンガ リー の
.竺 ゃ AE..EF::AD..DGと
r tt r…
ク レサ の 『球面 三角法』11では ".…
"
い う記号も見受けらます。
比例式を表
オランダの ド0グ ラー フの本12では,2-4=6-12と
13で
ー
し,ヨ クは 『
は 125-429-10-?と 書いてい るが,後 の
算術』
本では 336007::15360032と 書いていて,オ ー トレッドとウィング
の記号の争点である 「
D」と 「
:」を使わず;空 白に代 えてい る。
また,比 と商 とを区別する目的で,ジ ークは 『
算術』14の中で,3-2
と書 く代わ りに
表 していま丸
3と
オー トレッドの .::。 とい う記法は大陸で もゆつ くりと広まってい
き,17世 紀後半以降多 くの人に用い られるよ うになりま九
1762年に ド・ラ 0カイユが,『
基礎数学講義』のラテン語版15で,3.12●
い う4っの記法が
311211218と
2。
8と 3:12::2:8と 3:12=2:8と
一般 に使われてい るが,3:12::2:8を 用い ると述べています。以降,
イギリス とアメリカでは :=:が 20世紀の始め頃まで下般に用い られ,
今で も使われ ることがあるようです。 なお,19世 紀末までは,ス ペイ
ン,ポ ル トガル,南 米な どでは,こ の記法 が一般的で した。
ライプニ シツです らオー トレッドの記法を用いていたのですが,彼 は
じっくりと記号について考 えることになりま丸 その前駆 として,シ ュ
sPierreHerigone,Cursasmathematici(r:1, rc4+)
eJeanBaptiste Adrien de Mercastel,Arithm4tiqued4montr4e(tv-7 Y, L733)
loJosephZaragoza,Arithrneticauniuqsal (f z vy;27,
1669)
rrJacobKresa, Arwlysisspec'iosa
trigonometriaesphericae(/7 t1 t72O)
r2Abrahamde Graaf, De Geheelemathesisof wiskonst(7 A77tvtA,
1694),
16-i-r.
r3ThomasYork, Practical Tbatt'iseof At'ithmetik(v> l'"y, 1687)
laSamuelJeak, AOIITTIKHAO|IA, or Arithmetick(u z I''7, 1696)
rEN.L.de lraCaille, Lectioneselementures
1762)
mathematicae... (r)t=7,
-34-
タンピオーエ ンの 『
代数学』16では,■ ,,3=θ 7,Dと い う記号も用い
られていま した。問題は =を 等号として用い るとい うこと,比 として
等 しい とい うことに =を 使 うとい うことですが,普 及は しませんで し
た。イギ リスでも,1668年 にジェームズ ◆グレゴ リー率
がパ ドゥァで出
17で
した幾何の本
は比が等 しいことに =を 使 っていますが,そ れに続
く人はあ りませんで した。
1693年にライプニ ッツは比や比例に特別な記号を使 うのはおか しい
と述べていま丸 比には商の記号で十分だ し,比 例に対 して も比の等
=」 を
しさを表わすのなら,(漸 く認 められるよ うになってきた)等号 「
用いない理由はない。比 と商は同 じ意味を持 っているのだか ら同 じ記
号を用い,それが等しいという意味で,α:b tt C:ご
とか :=ぅ と書
ν
くべ きだ,と い うの が ライプ ニ ッツの主 張で 九 1708年 の 『学術論叢』
18は
い うライ プ ニ ッツの記号が用 い られた最初 の 印刷
,α :b=c:dと
物 です が ,そ の 号に,そ れ 以降 の 『学術論叢』 の編集方針 として ,代
数的 な記号 はライ プ ニ ッツの もの を使 うと明言 してあ りま丸
ドイ ツの ク リスチ ャン 0ウル フは これ を採用 し,1710年 の教科書 19で
はまだオ ー トレ ッ ドの 記号 と併用 してい ます が ,1713年 以降 は一 貫 し
てライプ ニ ッツの 記号 を用 い ていますЪ フ ラ ンスではク レロこ の 『代
数 学』20,サ ブ リア ンの 『
数物辞書』21,ま た 1765年 のパ リ 。アカデ
ミー の 出版物 に も見受 け られ ます。 1727年 の早 さでオイラー がペ トロ
グラー ド 0ア カデ ミー の雑誌 で も用 い て い ま丸
1743年 には ス イ ス で ,1763年 と1775年 にォ ラ ンダで この記号 を含
む教科書 が 出版 され て い ます。 もちろん,折 衷 の記号 もあ って,1768
年 のオ ラ ンダ の代数 の教科書 には .=。 とい う記号 の 出て くる例 もあ
ります が,消 えて しまいまづL
16Johan StampiOen d'」
onghe,■
θ
J_Rり θ
J(ゝ GrⅣ en_Haye,
むθb鶴 0/tC MCttυ θ∫ι
1639)
17JameS Gregory,θ“綱にι
くドゥア,1668),p.101
ttα
c Pα
tt Iれ
jυ
″sα
tts(ノ
18Acta Eruditorum Lipsiensium「
ライプツィッヒ学術論叢」ない し 「
ライプツィッ
ヒ学報」と訳すべ きもの。1409年 に設 立されたライプツィッヒ大学
(ラテン名 ウエ ヴェ
ルシター ス ・リプシエ ンシ ウム)の オ ッ トー ・メ ンケが ,1681年 の春 ライプニ ッツに
学術研究雑誌の創刊 を相談 し,翌 1682年 に創刊 された t)の。第 1号 にライプニ ッツ
の論文が掲載 されている。
19Christian Wor,■
頌 肌 gSgrttπ
dc aι
・
ιθγ mα
ιん θγnaι づscん θπ I竹
∫scttCん
arteπ
(マ
ル
デ
ブル 4 1 7 1 0 )
20A.CoClairaut,]θπθ
s d′
α
Jθ
πι
θ
bγ
じ(パ リ, 1746)
21 AoSⅣ
erien,Dcιづ
θππα
j“s tπ
づ
υ
θ
ttθ
ιdc Eγ
αι
んθ
Eαι
づ
ιPん
∫
γ
づ
9じεθ
ν
9包θ(パ リ,1753)
-35-
「
スイス論剣 22の最初の巻にライプニ ッツの
1751年創刊の数物雑誌 『
記号が使われていますЪ アイル ラン ドでは1770年,イ ギ リスではや っ
と1812年にジョン ・コールの 『
立体測角術』23に採用されていますが,
一般に普及するにはさらに 1世 の時が掛か りま
紀
丸
ヨー ロッパ大陸では19世紀には一般に採用されていますが,ア メリ
カの19世紀 は ::::が 主流で,ラ イプニ ッツの記号が一般 に普及す る
のは 20世 紀 に入 つてか らのこ とです。
日本の場合,明 治時代,主 に ドイツか ら学問を輸入 したので,最 初
からライプニ ッツの記号を用いていたよ うで九
比例式の記法にこんなにも長い歴史があったのですが,イ ギリスやア
メリカで,変 量の比例について使われることもあった記号が ∝だったの
ですし最初に用い られたのは18世紀末のことで,W。 エマー ソン 『
流率
24に
一
「
の
よる
の
も ですL彼 は 既 にある共通 代数記号に,私 は 般的
論』
Bθ
な比例 を表 わす この ∝ とい う記号 を付 け力日えたい。 つ ま り,ス ∝
D
_ ハ バ Bθ 、_.′
′͡口
:L… 、 、 ___・ ヽ一 ヽ 一
ヽ ヽ
は スが
と定数 の 比 を持 つ こ とを意 味す る」 と書 い てい ま九 比
モデ
例式 の第 4項 が変 量 にな って い る とい う感 じで しょ うか。変量 の間 の
比 例 関係 を表 わす ときに,固 定 した数 量 間 の等式 とい うイ メー ジ を避
けるために作ったのでしょうか。 この後イギリスで少 しずつ普及 して
いき,20世 紀以降広 く認知されるようになったようで丸
ところで,∝ の左右を反対に した形の記号 D025がデヵル ト 『
幾何
26の
学』
中に見ることができますLデ カル トの
z ⊃0 ら, z 2 ⊃O α″+ b b , z 3 : Ю αz 2 + らゎ
z_c3
な どは方程 式 を表 わ してお り,従 って等式 を表わ しています。大陸 で
は広 く用 い られ た よ うで,ヤ コブ 0ベ ルヌー イ率も 『推測術』27で 等式
に この 記 号 を使 って い るこ とは,ハ イ ラー*一ワナ ー率
p別 の第 I章 第 1
22Acta He市etia,バ‐
―レ
ビノ
L
23Jon COle,Sたにοοπづ
θ οmctη (ロン ドン,1812)
2 4 w . E I n e r s o n ,cDtο
tθt π
c げ F 施西οπ∫( ロン ドン, 1 7 6 8 )
25Ⅱ
で無理に
か
も簡便に
(し
)作ったので形は良くないが,感 じは分かると思
鼈不
う。 これを∝ の左右を反対にした形 と想像 して下さい。
26Ren`Descartes,二 α θωれθι
ttθ
ο包宵 de Jαmcιんοdc,パ リ,
,『 方 法 序 説 』 (Dづsι
1637)の 付 録 。 D.E。 ス ミ ス と M.L。ラ タ ィ に よ る英 訳 が 1925年 に The Open Court
出版 社 か ら発 行 され ,1954年 に Dover出 版 社 か ら リプ リン トが 出 て い る。 日本 語 訳
に は ,デ カル ト著 作 集 1『 幾何 学 ,方 法 序 説 の試 論 』 (原 亨 吉訳 ,自 水 社 )が あ る。
27JakOb Bernolli,■
宵 cο
απdづ(死後出版,バ ーゼル,1713)。
ttCCι
-36-
節最後の図版でも確認 できま九
元々は,等 式は等 しい とい う意味の言葉
α
αJCS, α cgttα πιttγ, csθ αιC, ∫ αCづ包πt, θ んcιづ cた
99鶴
, θ ιCづCん
ノ
やその略語を用いてお り,多 くの場合 α"ま たは αcと い う略号が使
われていま した。2重 母音 αθは aと 書かれることも多く,こ れを図案
化 した ものではないかと思われま丸
エマー ソンの頃,既 に等式にはリコー ド の記号 「
=」 28が使われる
ことが確定 してお り(イギリスでもあったか らか),デ カル トの記号 Ю
は使われてお らず,廃 物利用 したい と思ったが,そ のまま使 うのでは
さす がに問題なので,左 右をひっ くり返 したのだったのか もしれませ
ん。最後の部分は個人的な思い付きなので,あ まり人には言わないで
下さい。
この等号について も,ま た,最 初質問を受けたときに僕が勘違い し
た相似 の記号 ∼ について も面白い歴史がありますが,今 回はこれ くら
いに してお きま丸
6.8 負 の数 ×負の数=正 の数
「
負の数 ×負 の数=正 の数を証明できるものです力沌
中学生に分かるよ うな程度で証明 して くれると助かるのですが」
質問者 :屋敷 真毅 (南牟婁郡紀和町立入鹿中学校 )
掲示板上の回答
小屋敷君は出来の良い方の学生だったので,こ の質問をあるパーテ
ー
ィ で聞いた とき,冗 談なのだと思っていた。今年の卒業研究のセ ミ
ナーの学生の練習のため,ホ ームページのある場所に 「
算数 ・豆事典」
とい うの を作 ってあって,あ る学生が数学的に証明できると書いてあ
るの を見たらしい。 セ ミナーの学生のぺ∵ジの入 り口には内容につい
ては信用せず,読 者 も教師になって彼 らを鍛 えるために質問な り投書
なりをして くれるように書いてあるのですLそ れで,小 屋敷君は彼を
鍛 えるために言 つて くれてい るのだ とばか り思っていま した。
さて,数 学的証明 とい うことですね。数学をちゃんとやれば分かる
と思 うけど,「負 の数」の定義がない と証明できません。中学生にとっ
28Robert Recorde『
才知 の砥石』(μttι
Sι
θ
πθo/Иttι
ι
C,ロン ドン,1557)において
に
されている
最初 印刷
。
て の 障害 は ,何 よ り 「
負 の数」 の存在 であ り,実 存性,ま た 実用性 な
の ですL今 の 場合 ;定 義 して しまえばほ とん ど明 らかにな って しまい
ます。
今 ,大 学入 試 の二 次試験 の採 点 を少 し休憩 して研究室に帰 って きた
ところな の で,こ れ 以 上 は暇があ りませ ん。採 点 の主任 の恐 ろ しい顔
が浮 かんで きます。
来週 まで待 っ て くだ さい。 それ までに,出 来れ ば,中 学 生で も, ど
んな 中学 生 ,ま た どの よ うな知識 を持 った 中学 生に, と い うデ ー タが
あれ ば入 れ てお い て くだ さい。 それ によつて少 し答 え方が変わ ります
の で。
再度 の質 問
「
負 の数 ×負 の数 =正 の数 を説 明 して くだ さい (先 日は数学的 に証明
と書 きま したが)。
中学校 1年 生 の教科書 に出て くるの です が,具 体例 を伴 うや つ (2分
前 には東 に何 メー トル の ところにい たか ら ¨0)は 難 しい と思 い ま丸
か とい って ,
(-2)×
2 = -4
2 増 える
(-2)× 1 = -2
2 増 える
(-2)xO = 0
2 増 える
(-2)× (-1)= 2
とい うの も証 明 と も言 え な い し ¨・
とい うことで,中 学 1年 生の正の数負 の数 の掛け算を教 えれるよ うな
形で示 していただけると完璧でサLよ ろしくお願 い します」
掲示板上の回答
困 りま したね。実はこれは証明その ものなのです よ。ただ,表 現方
法 として少 し荒 っぱい けれ ど。 だから, どのよ うに言い換 えても,本
質的にはこ うやる しかないので丸
0以上の整数の全体 Nは ,加 法半群 を作 り,1以 上の整数の全体 N+
法に関 して群になるような最小の拡張が整
は乗法半群を作 りま丸 カロ
数全体 Zで したね。 ここにも乗法を拡張 したいわけで丸
このとき,Nで 成 り立っていた乗法に関わる法貝Jを保 ったまま拡張
したい とぃ うわけです:す でに,
α×0=0
であ る こ とは分 か って い ます ね 。 (証明 した けれ ば ,下 にや るの と類似
にす れ ば よい 。 )
しか し,乗 法 に つ い て群 に しよ うとい うの で は ない の だ か ら,結 局
本質 的 に問題 にな るの は ,分 配 法貝J
α× ( b + C ) = α
× b + α ×C
です。そこで,cと して 一b を 取るのですしすると,
0 = α ×0 = α × ( b + C ) = α
× b + α ×C = α
× b + α × ( 一b )
とな るの で ,
α× ( 一b ) = ― ( α× b )
となりますL同 様にや ってもいい し,交 換法貝Jが成 り立つよ うにする
からといってもいいのですが,
(一α)× b=― (α×b)
も成 り立 ち ま すLさ て ,上 の 分 配 法 貝Jで α に 一α を代 入 して み ま し ょ
う (嫌 な ら,α =― ご と して も よい )。す る と,
(一α)× (b+C)= (一
=一
α)× b十 (―α)× C=―
(α×b)+(― (α×C))
( α×b ) 一 ( α×C )
となります。 ここでまた, c と して 一b を 取るのです。すると,
0 = (二
α)× 0=(一
α)× (b tt C)
= (一 α)× b十 (一α)× C=―
(α× b)+(一 α)× (一b)
とな るの で ,
(一α)× (一b)=α ×b
となるのですし分かりますね。
そ して,こ の証明が,君 が上で書いてい る教科書の証明 と本質的に
はまった く同 じであることが,分 か りますね。
本質的には,正 と負 だけしかない世界で掛け算を定義す るのなら,正
×負 を 正にしたっていいのですが,正 と負をつなぐもの として oが
あることから,こ れは負に しないわけに行かなくなるのです。同 じ事
情で, 負 ×負 を 正に しな くてはいけない ことになるのです。
一体, 負 ×負 を 正にしない とすれば,ど うすればいいので しょう。
負にす るのです か ?正 と負 とそ して 0し かない世界の中で,足 し算 と
引き算 と掛け算を,知 ってい る計算規貝Jを守るように したければ,正
に しない と具合が悪いのだとい うことです。
それでも, ど うして も嫌 だとい うなら,負 ×負 の 結果を正で も負
で も(0で も)ない別の数 の世界に持 ってい くとい うことならできない
ことではあ りません。 しか し,そ うなると,負 が幾つ掛かったかをい
つ も覚えてお くよ うな数 の世界が出来て しまいますЪ これ じゃあ, と
ても大変なのです。
つま り,計 算 に便利なように した ら, うま く小 さくまとまった きれ
いな (?)世 界がで きるので,そ れで計算 しよ うじゃないた 現実に適
用 してみて うま くいかないこと,不 都合な ことが起きたなら,ま ,そ
の とき考 えよ う。そ うい う,御 都合主義の姿勢なのだ といったら,生
徒 は却って混舌Lするで しょうか ?
そ こは,小 屋敷君の腕 で,何 とかす ることがで きるで しょう。ね。
まあ,上 では一般 に a,b,cでや りま したが,こ れに数字を入れ る,
1,-1,2,-2くらいで例示すれば,十 分生徒 には分かるだろ うと思いま
す よ。
それでも駄 目な ら,も う一度,書 き込んでみてください。
7 単 調列 の個数
各桁 の数 が 異 な る4桁 の数 を, しか も,loを 作 るのだ か ら順序 を変
えて取 つて も よい となれ ば ,単 調増大 な列 を標 準形 と して とれ る。 つ
ま り,集 合
l,α
2 ,α
3 ,α
4 )11≦αl<α2<α3<α4≦9}
{(α
の元の個数を数えればよいことになる。
帰納法で求めるために,3つ の整数 1≦ た,鶴≦れに対 して,一 般に
集合
・
X たい , 2 ) = { ( α
l,α
2) ・
た
,α
) 1 鶴≦αl < α2 < ・…< αた≦η}
を考え,そ の個数 魂 (鶴,2)=+れ い ,2)を求めることにしよう。
た=1の ときは容易で,
Xl(鶴,2)={(αl)レ≦αl≦ η}
であるから,銚 (鶴,2)=2 T η
L+1と なる。
さて,帰 納法のステ ップをどうとるかである。最初の項か,最 後の
項をはずす ことにするのが 自然だと思えるので,こ こでは最初の項を
はずす ことにする。た ≧2と して,
Φた: X た( 鶴, 2 )
→ Ⅱ 卑 1ぱ
+1,→
=鶴
′
( αl , α2 , … D , αた)
い ( α2 , 0 …, α
た) ∈ ス亀_ 1 ( α
l+1,2)
とい う写像を考える。ここで,日 は離散和で,共 通の元を含まない もの
と考えて形式的な和を取つた もの。た とえば,Φ 4(1,5,6,8)=(5,6,8)
で,Φ4(2,5,6,8)=(5,6,8)と
なって同 じ元の よ うに見えるが,入 つて
い る集合が,X3(2,9)と X3(3,9)とい うよ うに異なっていて,違 うも
のだ と考 えるとい うことである。
′の範囲の端に 絶一 た+1が 来ることを注意 してお く。4(ηl,2)
の元はた個 の数 の列なのだか ら,αlが 最 も大きくなれるのは,し _
た+1,2_た +2,… .,2)であるとい うことである。だから,た とえば,
魂 (2-た +1,2)=1ま た ⅣI鶴 ,鶴+た -1)=1と なる。
後で必要だか ら,つ いでに考えておくと,た,η
lを 固定 して,2の 関
-1の
数 と見た とき,2≧ れ +た
とき ハ
亀(鶴,2)>0で ,2に 関 し
て単調増大である。 しか し,2は 本来,鶴 ≦ πの変域を持 ってお り,
鶴 ≦2≦ 鶴 +た -2の とき oに なっている。
さて,離 散和の意味を考えれば,Φたは全単射になるので,元 の個数
が等 しくな り,
η一た+1
地い,2)=Σ 蜆_1(`+1,2)
′=鶴
とい う漸化式が得 られる。
-41-
後 は,段 々 と計算 して,札 (1,9)を求 めれ ば よい こ とにな った。
π -l
-1
π
一′-1+1)=】
)
地い,→=Σ 銚(`+1,2)=
(π
E(2-ι
Σ〕
′=m
′=m
`=m
L tt 一
η l)(2-1-鶴
:(η
一 m)(2-鶴
一 π+ 1 ) ( 2
+1) 一
=2(2-1-鶴
一
( π 鶴) ( 2 2 - 鶴
+1)
+1)
しかしこれをもう2度計算 して,札 (鶴,2)を求めるのはちょっと勘
弁 して欲 しいような気がする。得 られた答を見ていると;鶴 ,電は差の
形でしか入うていないことに気づ く。少 し考えれば当たり前だったの
だ。増大列自身は,切 り取つていけば,値 があちこちの値になるけれ
ど,個 数だけなら,も ともとη一mに しか依 らないことに気がつ く。
シフ ト写像
Й亀い , 2 ) →
雛
( αl , α2 , 。っ
αた) い
χん( 0 , 2 - ηl )
( αl ―
L , … 。, αた 一 竹し)
鷺 , α2 η
が全 単射 で あ る こ とか ら,
Ⅳた
(η,2)=F亀 (0,2-η )
とな り, 魂 (o,P)の形のものだけ求めればよい?面 倒だから,4(P)
ⅣL ( 0 , P )と置 くことにす る。す ると,
1
4(P)=既
(0,P)=P-0+1=P+1
とな り,漸 化 式 も,
ル亀( P ) = 凡
(0,P)=Σ
凡 -1(`+1,勁 =Σ
ι= 0
p一 た+1
= Σ
′
凡 -1(0,PT`-1)
=0
ル亀- 1 ( P 一′- 1 )
′= 0
とな る。今度 は,
P-1
P-1
ι-1)=Σ(P一
ル
の=ΣE:=
名lpl=Σ yl(P一
ι= O
Z:=0
-42-
とな り,
鴫6 地 ば刊=西
となる。少 しは見易 い が,ま だ結構 大変であ る。 しか しこれ が Pに 関
して 3次 式 にな るこ とはわか る。
最初の注意により,Pの 関数 として見るとき,P≧ 2で正の値を持ち,
P≡ 1,0,-1で は零点になっていると思ってよい。ン1(P)はP=-1,
点として持っていたことに注意する。従って,
比 (P)はP=0,-1を 零′
ル亀(P)=α (P+1)p(P-1)
であっ て,
1 = ル 名( 2 ) = α 0 3 0 2 0 1 = 3 1
とな り,
場 lP)〒立生旦些生旦
であ る こ とがわか る。 この理屈が正しければ,も
う丁般に,
4 ( P ) = α ( P + 1 ) P ( P - 1 ) … 0 ( P ―た+ 2 )
であ り,
二
2 0 1 圭 α。た!
1 = ル 亀( た- 1 ) = α O た
( た- 1 ) ( た 2 ) …・
とな って,
pll)
\
た│
〓
1)… 0(P一 た+2)
′ ︲ ヽ
(P+1)P(P二
/
4(P)=
が得 られ る。 これ が欲 しか った ことで,
,?=黎
二仏鋤=丸お
り=(1)
が得 られ る。
点の議論はあれでよいのだろうか,P=│-2
しかし,多 項式 と―
見ての零′
が入れられるのなら,そ こでの値は 0であるべきなのだろうか ?次 数
-43-
F
が たなのだから,た個以上の零点を考えても仕様がない と言つて も,多
項式 としては (一∞,∞)が 定義域になるのであって,た次式なら,零 ′
点
つ
た
はあ て も 個 しかないのである。
議論に不安が残 る。
しか し,答 が2項 係数になるのなら,証 明も最初か らそれを目指せ
ばよい。2項 係数に則 した漸化式を作ればよいのだ。そ こで,
た
響 響 で,
Xk_r(- * L,,n)
IIn
た
¨ ¨ の +
ぃ 蝉 峠
考
を
L﹄ 橘 懃
f
t雅 昨
く
嗣 鍋晦
2
α ば
,
.
加
α
<
U/r,
: Xn(*,n) -)
(* + r,n)
もし αl = 鶴 なら
も しαl > 鶴 なら
L,n) + l/,,(nz* 1,u)
が得 られ ,
ル亀(P)=魂
(1,P)=ル 名_1(P-1)+ル
(0,P)=A%_1(1,P)+魂
とい う漸化 式が得 られ る。
ここで大切 な こ とは,初 期条件 ル亀(P)=P+1と
べ て の 4(P)が 決定 され るとい うこ とである。
亀(P-1)
この漸化式か らす
ま った く同 じ初期条件 と漸化式 を持 つので,一
(pll)も
致 しない とい けな い こ とになる。
こ うして ,
2項 係数
鶴 亀
し一m)=(n_1+1)
竹い'a=凡0'電 )=ル
であることがわかった。
答 えを知ったあとでは,こ の節の議論の面倒 さは耐えられないか も
知れないが,た とえ知 ったあとでも,こ の よ うな事柄にこれ程の構造
が隠れてい ることに,興 味を覚 えるかどうかである。高校 生に話 して
みた として,興 味を感 じる生徒 が一人もいないかどうかかは,高 校の
数学教育のある種 の試薬になるかも知れない。
月例会でこの話を したときも,最 初の うちは,何 でこんな面倒なこ
とをするのかとい う反応 であった:答 えよりも,答 えに到るプロセス
-44-
に興味を持つ生徒 を一人で も多く作って欲 しい。それこそが数学を 「
教
一
の
つ
の
なのだから。そのためには,教 師自身 も興
育」す る最大 理由
味を持てるかど うかが,最 初のそ して もしかすると最大の障害なのか
も知れない。
8 数 学者豆事典 と参考文献
本文中に出てきた数学者の略歴を挙げてお く。
アー ノル ド、ヴラディー ミル ロイニ ゴレヴィッチ
Vladimir lgorevich Arnold,1937.12.6-.
旧ソ連、オデ ッサの生まれ。コルモ ゴロフの弟子。20才 前のモ
スクワ大学の学生が ヒルベル トの第 13問題を (否定的に)解決 し
たとい うニュースが世界を駆け巡 り、彗星のよ うに若き天才が登
28才でモスクフ大学教授に (1965)。
モスクワ数学
場する (1957)。
会副会長 (1985)
三体問題 の安定′
性、特異点問題など多彩。訳者がモスクフにい
た頃、すでに頭髪が薄 くな り掛けていたが、同僚からディママ と
愛称 で呼ばれて親 しまれていた。黒板 の前で話の合間にふ と見
せ るはにかんだような微笑みに、彼の瑞々 しい感性を感 じたもの
だ。
主な著書は翻訳 されていて,『古典力学の数学的方法』 (安藤 0
蟹江 0丹羽訳)岩 波書店、『
常微分方程瑚 (足立 ・
今西訳)現 代数
ロ
学社、『カタス ト フ理論』(蟹江訳)現 代数学社、A.ア ヴェとの
共著 『古典力学のエル ゴー ドFn5題
』(吉田耕作訳)吉岡書店など。
エ リゴー ン, ピエール Pierre H6rigone,1580-16430
フランスに生まれ,パ リに死すし元バスクの人で,パ リで教師
をしていたこと以外 ほとん ど分かっていない。
業績 としてはフランス語 とラテ ン語で書いた6巻 本の初等数学
の概説書 『
θ
れattcT)が あり,数 学謳号
数学教程』(仇鵬zSれatん
一
や論理記号を 通 り考案 したのだが,現 在は どれも使われていな
い。 しか し,記 号表現を貫徹 したことで種々の定理を簡潔に表現
できることを示 した功績は大きい。タル ター リアとは独立に,組
補
み合わせ の数 (2項係数)を正確に与えた。1642年の上記書の 『
足』では,フ ェルマァの最大最小値を求める方法の普及に貢献 し
た。
当時重要な問題 であった経度決定の方法について,懸 賞に応募
モ ラン (1583.2.23-1656.11.6)の
したJo B。
月の運動から経度 を決定
する方法が実用的か どうかを判定す る委員会に,エ チエ ンヌ ・パ
スカル (1588。
2-lo51。
とともに
5。
9。
24),ミ ドルジュ(1585-1647.7)ら
参力日し,モ ランとの論争に巻き込まれる。
18,
15-1783。
9。
オイラニ, レオ ンハル ト Leonhard Euler,1707.4。
ー
0ペ
スイス,バ ゼル に生まれ,ロ シア,サ ンク ト
テルブルグ
ー
0ベ
ペ
ルヌ イの弟子。 テルブル グ (27-41),ベ
に死丸 ヨハ ン
アカデ ミーに。66年 に全
ル リン (41-66),ペテルブルグ (66-83)の
盲 となるも,死 ぬまで活発な研究を続ける。朴訥 な人柄で,子 供
は 13人。赤ん坊 を抱え,子 供を足元で遊ばせなが ら数学 をした
と言われてい る。また,お 茶をすす りながら孫 と話を していると
き,突 然に死んだとい う。
一
数学史上最大の多作家。 ケーニ ヒスベルクの橋 を 筆書きす
点の数の関係式 (オイラー標数)で,
る問題や多面体 の面 ・辺 0頂 ′
グラフ理論 と トポ ロジーの祖 となる。 フランスの物理学者ア ラ
ゴー (1786.2。
10.2)は,オ イラーを 「
26-1853。
解析学の化身」 と称
え,「
人が息をするよ うに,鷲 が空を舞 うよ うに,オ イラーは計算
をした」 と言 うてい る。
3.5-1660.6。
30。
オー トレッ Rウ ィリアム william Oughtred,1574。
ー
ー
トンに生まれ,サ レイ,
イギ リス,バ ッキンガムシャ ,イ
ー
アルバニ に死九
イー トン校 からケ ンブ リッジのキングズ ・カ レッジに (1592),3
年後 フェローにな り,3年 後 B.A.を,4年 後 (1600)MoA.を取得す
る。 1603年以降監督教会の牧師 とな り,1610年 以降アルバニー
の教区牧師 となる。当時イー トンやケンブ リッジで も数学を教え
ることが少なく,独 学で勉強する。
有名 (現在の形の計算尺は 1850年,
計算尺の発明 (1630,1632)で
ー
フランスの陸軍士官アメデ 0マ ンハイムの設計による)。現在
の力目
減乗の記号,小 数,比 例の記号,不 等号などの工夫,特 に掛
け算の × は現在で もそのまま用い られてい る。円周率ではなく
円周その ものにだが,π を使用する。弟子に,ジ ョン │ウォリス,
-46-
クリス トファ∵ ・レン, リチャー ド0デ ラメイ ンなど。
カジョリ,フ ロ リアン Florian CajOri,1859。
2.28-1930。
8。
14.
スイス,サ ン ・エグナムに生まれ,ア メリカ,カ リフォーニア,
バァク レイに死九
1875年 にアメ リカ合衆国に移民,チ ュレー ン大学応用数学教
授 となる。各地の大学を経て,1918年 バー ク レイの数学史教授
になる。
主な著書に 『
数学史』(第2版 ;1919),『数学記号の歴史』(192829),『
オー トレット 17世紀の偉大な数学教師』(1916),
ウイリアム・
ニュー トンのプリンキピア』(1934)が
死後出版の 『
ある。
ガリレイ,ガ リレオ Galileo Galilei,1564.2,18(15)-1642。
1.8.
イタリア, ピサに生まれ,イ タリア,ア ルチェ トリ (フィ レン
ツェの近 く)に 死九
この名前は,聖 書に出てくる 「
ガラ リア人」の子孫であること
の
を示すガ リィオ家 長男 とい う意味のものである。当時 トスカナ
地方では長男は家の名を洗礼名 として重ね る習慣があった。
天文学 。物理学 0数学 0哲学者。迫害を受け各地を転々 とする。
ピサ大学教授 ('89),パドヴア大学教授 ('92),1609年以降フィ レ
ンツェで トスカナ大公の後援を受ける。2度の宗教裁判。1637年
失明。
ピサの斜塔での物体の落下の実験など,望 遠鏡での観測など実
験による検証の意義を確立 した。宗教裁判に屈服 した時にもらし
た,「それでも地球は回つてい る」とい う呟きは余 りにも有名だ
が,そ の小 さな声を誰が聞いたのだろ う?
ius,1538.3。
クラヴィウス Chiristopher CIⅣ
25-1612.2。
2。
ー
ドイツ,バ ンベルグに生まれ,ロ マに死丸 ローマのイエズ
ス会に入会 (1555)。
天文学 ◆
数学者。コレッジョ。ロマーノ (=ロー
マ学院)数学教授。 ヨー ロッパ全体に大きな影響力を持っていた。
小数′
点を最初に使 う。
グレゴリウス XIH世 の改暦に指導的役害1。ユ リウス暦の1582年
lo月 4日 の翌 日をグ レゴリオ暦の 1582年lo月 15日 と提案。 ヨ∵
ロッパ各地で失われた 11日 を返せ とい う暴動が起 こり,普 及す
るのに時間がかかった国もある (例えばイギ リスは 1752年)。
-47-
10.
11-1675。
グ レゴ リー,ジ ェームズ James Gregory,1638。
ー
ス コシトラン ド アバディ ンに生まれ,エ デ ィンバ ラに死九
パ ドゥア大学に行き,収 束無限級数を用いて円や双曲線の面積
を求める。エデ ィンバ ラの聖アン ドリューズ大学教授 (1668)。
反
グレゴリーの級数L級 数の 「
収東」とい
射望遠鏡の発明(1663)。
う用語 の使い始 め。
ー
7-1765.5,17。
ク レロ Alexis Claude Clairaut,1713.5。
フランス,パ リに生まれ,パ リに死九
数学者を父 (ジャン ・バチス ト0ク レロー)とする早熟の天才。
lo才 で ロピタルの微積分の本を読み,13才 で4次 の代数 曲線に
関す る論文を科学アカデ ミーで読み上げ;特 別に年齢制限を免除
されて18才 でパ リ科学アカデ ミーの会員 となる`ニ ュー トンの
自然哲学を支援するモーペルテュイのグループに属す る。
1736,37年に,地 球の子午線を測る科学アカデ ミーのラップラ
ン ド遠征隊に参力目
する。 1743年には流体静力学に基づいて,地
球の形状 (極の方が平 らになった球)で あることを示 してお り,そ
の中でポテ ンシャル論を用いてい る。
シャ トレ侯爵夫人のプ リンキ ピアのフランス語訳 の手助けを
し,月 の運動について数学的な解明をす る(1752)。1759年のハ
レー彗星の接近の ときには近 日点を計算 した。
三体問題を始め,数 学の広い分野の業績がある。空間の解析幾
何学の確立 (1731),ク レローの微分方程式L多 変数関数の全微分
の概念を作 り,微 分方程式の一般解 と特異解の考え方を導入,線
形微分方程式の可積分条件を定め,任 意の偶関数のフー リエ展開
を与えた。オイラーに先駆 した もの も多い。IBRιまた,数 学教
育の改善運動 の一環 として書かれた,代 数学 (1746)や初等幾何
学 (1741)のす ぐれた教科書 は版 を重ねた。
シュタンピオーエ ン Jan Jansz de Jonge StampiOen,1610-1690。
オラン残 ロッテルダムに生まれ,ハ ー グに死九
ロッテルダムで数学 を教 えていたが,1638年 にハー ダに移 り,
ウィリアム王子の家庭教師 となる。2年 後王子は父の王位 を継承
しオランダを議会制国家にす る。ハー グにい る間印刷屋を開業
し, 自分の数学的著述を印刷す る。
ヴァン 0ス ホーテ ンのサイ ンの表に自身の球面三角法を付加 し
-48-
た。1633年 デカル トを公開の試合で退け,さ らに3次式の解につ
いて2度 の試合をする。1644年 ,ホ イヘ ンス とその弟の家庭教師
となる。
シュティー フエル Michael Stibl(=Stynl,stie詭
1),1487-1567。
4。
19.
ドイツ,エ ス リングンに生まれ, ドイツ,イ ェーナに死丸 イ
ェーナ大学教授 (1559)。ア ウグステイヌス派の司祭を罷め,ル ター
の宗教改革運動に参加。 ヨー ロッパで最初に負の数を使い始めた
一人。ベ キの分数指数,ゼ ロ指数,ま た 「
指数 expOnent」とい う
用語の導入 『算術全書』(1544)で,分 数の割 り算を分数 の掛け
算の逆演算 として定式化。イ タリア式の p(プラス),m(マ イナ
ス)の記号でな く,+,一 の記号の普及に尽力。
『
算術全書』(1544)で,分 数 の割 り算を分数の掛け算の逆演算
として定式化,ま た,2次 方程式の多様 な数値例 を見掛け上 1つ
の形式に統一する。パスカルの三角形もこの本に載ってい る。 こ
の時期 ドイツで代数学の教科書が何冊か書かれるが,ア ピアヌス
の教科書 (Rechnung,1527)に もパスカルの三角形は印刷 されて
い る。
スルジウス (=ル ネ ・フランソア ロド・ス リューズ)Slusius=Renё
Francois Walter de Sluze,1622.7.2-1685。
3.19。
ー
ー
ー
ベ
エ
ジ ュ公 国,ヴ ィゼ (現 ル ギ 領 )に 生まれ , リ エ ー
リ
ジュ公 国, リ エ ー ジ ュに死 丸
ル ー ヴァ ン大 学 (1638-1642)に学 んだ後,ロ ー マ 大 学 サ ピエ ン
ツ ァ校 で法律 の 学位 を得 る (1634)。ロー マ では,数 学,天 文学 ,
多数 の言語 な どを学 び ,数 学ではカ ヴァリエー リや トリチ ェ リの
影響 を受 ける。
1650年 に聖職 につ き, リエ ー ジ ュに帰 る。法律 の知識 の お 陰
で急 速 に出世 し,1616年 にはアメの僧院長 になる。僧職 のた め数
学者達 と交 流す るの は文通 に限 られ る。 パ ス カル ,ホ イヘ ンス,
ウォ リス, リ ッチ (1619-1682)などと頻繁 に文通す る。
数学的 には,デ カル トや フェル マの方法 を拡張 し,代 数 曲線 に
接線 を引 く方法 を発 見 した こ とが重要 で ,微 積分学 の 先駆者 の
一 人 と考 え られ て い る。 ロー マ 時代 にサイ ク ロイ ドを研 究 した
ことか ら始 めて,平 面 曲線 について の研究 があ り,パ ス カル が ス
リュー ズの真珠曲線 と呼んだ曲線族
鶴
ν =麓
η 一
(α ")b
は 1657-58年の間にしたホイヘ ンスやパスカル との文通の中で公
表され てい る。 ただ,ν =22(α_.)の 形の曲線 も真珠の形にな
ると思い込んでいたのは,負 の座標の概念が確立されていなかっ
たためで,後 にホイヘ ンスは極大 ・極小典や変曲点を見つけて正
しく図を描いている。1674年にはロン ドン王立協会会員 になって
い る。
数学以外にも,天 文学,物 理学,自 然哲学,歴 史,神 学などの
Sθ
ι
αbzm)と い
方法について』(νθ
本を書いてい るが,1659年 の 『
う一般向けの本では方程式の根を幾何的に作図す ること,中 で も
一般の 4次 方程式も円錐曲線 と円 との交点で作図できることを示
してい る。
Fontana,
Tartaglia=Nicolё
リア, ニ ッコロ Nicolδ
タルター‐
1499(1500)-1557.12.15。
ヴエニス共和国,ロ ンバルディア,ブ
レーシャに生まれ,ヴ ェニスに死丸
の とき最も遠 くまで飛
数学 0機械学 0軍事技術者。砲弾が45°
ぶことを主張 (後,ガ リレイが証明 した)。パスカルの三角形もそ
の著書 に載 ってい る。 エ ウク レイデスのイタリア語訳は 『
原論』
ー
アルキメデスのイタリア語訳
の初 めての コ ロッパ語訳 (1543)。
も。業績は多彩。ルネサ ンス人の典型 とも言 える。
3次方程式の一般解を発見 した人。ダル ・フェロによる3次方
一
程式の代数解の発見を伝 え聞き,独 力で3次方程式の 般解を発
見 した。 ダル 0フ ェロの弟子 フィオルは師から伝 えられた場合以
1節の2次方程式の場合でもわ
外の 3次 方程式は解 けなかった。I。
かるように中間次の係数の符号が変わると,図 形で解 く場合の解
答の質 まで変わることがある。
フランス軍のブレーシャ略奪の とき剣で切られ 口に傷を負い言
ー
語障害になる (12歳の とき)。どもりとい う意味のタル タ リアが
通称になった。本名はニ ソコロ ◆フオンタ九 また生涯,ロ ンバ
ルディア訛 りがとれなかつたといい,カ ル ダノらとの論争の際に
は不利になったよ うだ。
-50-
デ ィ ドロ Denis Didrot,1713。10。
5-1784。
7。
31。
ー
フ ラ ンス,シ ャンパ ニ ュ州,ラ ングルに生まれ ,パ リに死丸
職人 の子 として生まれb神 学 (イエ ズス会)で 身を立て よ うとして
パ リに行 くも,科 学思想 に触れ ,哲 学 0物 理 学 0数 学 を学び,啓
蒙思想家 とな る。 ダラ ンベ ール とともに百科全 書 を創 始す る。
デカル ト,ル ネ Ren6 Descartes,1596。
3:31-1650。
11。
2。
ー
フ ラ ンス, ト ゥレ ヌ 州,ラ ・エ ー (現在 ではデ カル トと呼ば
れ てい る)に 生 まれ ,ス ウェーデ ン,ス トックホル ム に死りL哲
学 ◆数 学 ・物理学者。 ブル ター ニ ュ公 国 の首都 レンヌの議会 の顧
間であ ったジ ョアシ ャ ン 0デ カル トの 3男 として生 まれ る。若 い
ときか ら体 が弱 く,朝 は 11時 までベ ッ ドに居 る習慣 があったが,
ス ウェーデ ン女 王の命令 で朝 の 5時 か ら寒 い宮廷 に出仕 し,風 邪
をひき,こ じらせ て死 ぬ。デ カル ト的 二元論は強い影響力 を持 ち,
後 の ライプ ニ ッツの単子論 と対 立。 ヨー ロ ッパ 思想 界 を三分。 オ
ラ ンダに長 く住 んだため,デ カル ト主義者 のオ ラ ンダ人 が多 い。
8才 の ときか ら8年 間,ア ンジュー のイエ ズス会 の王立学院 で,
古典,論 理 学,ア リス トテ レス を学 んだが分 か った こ とは 自分が
い 力ヽこ何 も知 らない かであ り,た だ クラ ヴィウスの書 で学 んだ数
学 だ けには納 得 していた とい う。 この学院 の寄宿生活 の 中で 11時
までベ ッ ドにい るこ とを許 され てい たのが習慣 にな った ら しい。
ポアチ エ大 学 で法律 の学位 を得 てのち (1616),ヨ ー ロ ツパ を遍
ベ ー クマ ン と出会
歴 し,い くつ か の軍に も属 し,オ ラ ンダでは I。
い ,本 格 的に数 学 と力学 を学ぶ。 1623年 一 旦パ リに戻 リメル セ
ンヌ との 交流が始ま る。イタ リアか ら帰 って (1625)か らも落 ち着
き先 を探 していたが,1628年 か らはオ ラ ンダに定住 し,ホ イヘ
ンス, ミ ドル ジュ,メ ルセ ンヌ ,フ ァ ン 。ス ホー テ ン らと交流。
1649年 ,ス ウェー デ ン女 王の招 きに応 じて ス トックホル ム に行
く。死 を招 くほ どの生活環境 の変化 を受 け入れ た理 由は よ く分か
らない。公 然 と表明 していないがガ リレオの 見角早と同 じであ るこ
とが知 られ て,プ ロテ ス タ ン トの神学者か らの迫害があ り,そ れ
cを 避 け るた め とも言われ る。 死後 16年 を経 て ,フ ラ ンス政府 の
要請 によ り,遺 骨 はパ リに運ばれサ ン ◆ジュヌ ヴィエー ヴ教会 (現
-51-
「
在はパ ンテオ ン)に埋葬され た。1
ニュー トンフアイザ ック Isttc Newton,1642。
20(ユリウ
25-1727D3。
1 2。
ス暦).
イギ リス,リ ンカー ンシャー,ウ ールスソープに生まれ,ロ ン
ドンに死すしガ リレイの死んだ年 に生まれる。生まれる前に父が
死に,母 は再婚 し,祖 母に育てられる。グランサムのグラマース
クールでの評価は 「
怠け者で,注 意力散漫」とい うものだった。
義父が死に農夫に しよ うと呼び戻 したアイザ ックに才能を見つ け
た叔父が,そ の母校のケンブ リッジ 0ト リニテ ィカ レッジに入学
させ る (1661。
6)。2年 まではア リス トテ レス哲学に拘束 されたが,
3年 次からは 自由ができ,デ カル ト,ガ ッセンデ ィ,ボ イル,ヴ ィ
エー ト,ウ ォリスを読み,つ いにバローに出会 うことによって才
能が開花する。1665年の夏ペス トで大学が閉鎖,2年 弱故郷で研
究にいそ しむ (驚異の年)。
ケ ンブ リッジ大学 2代 ロルーカス教授 (1669-1701),国会議員
(1689-1705),造幣局監督官 (1696)長官 (1699), 王立協会会員
(1672)会長 (1703-死
)。数学以外にも 『光学』(1704),反射望遠
巨人たちの肩に乗 つてい るだけ」 とい う謙虚 さとラ
鏡 (1668)。「
イプニ ッツとの論争で見せ る傲慢 さと ! 人 とい うものは.¨
ース トリア,チ ロル,Naudersに 生ま
ハイラー Ernst Hairer,1949-.オ
れる。イ ンスブル ック大学に学び,G。 ワナーのもとで学位 (1972):
現在,ス イス,ジ ュネーブ大学教授。
ビリー, ジャック ロド Jacques de Billy,1602.3.18-1679。
1。
14。
ー
エ
ニ
ュに生まれ,デ ィジォンに死す。
フランス, コンピ
エ
イエズス会に入 り,イ ズス会学院で神学を学ぶ。生涯,フ ラ
ンス各地のイエズス会学院で数学 と神学を教える。デ ィジォンで
の弟子にオザナムがい る。 フェルマー と文通 し整数論 を研究,彼
の名を持つ結果もある。天文表も出版する。
1日本語では自水社 の 『デカル ト著作集』,中 央公論社 の 『
デカル ト』(世界の名著
22)があ り,科 学論文を含 め,ほ とんどの著述が翻訳 されている。 また 『方法序説』
『
精神指導 の規貝J』『哲学 の原理』など種々の文庫本が出版 されていて,簡 単に手に
入る。
ミル ト DEnrid Hilbert,1862.1。
23-1943.2。
ヒルノ
14。
ー
プロシャ、ケ ニ ヒスベルク (現在 ロシア領、カリーニングラー
ド)に生まれ、ド イツ、ゲ ッテ ィンゲンに死すし ケーニ ヒスベル
ク大学教授('9o)、
ゲツテイングン大学教授('95)。
A。フルヴィッ
ツ、H.ミ ンコフスキー と親交。1900年パ リの国際数学者会議で
の23の 問題は、20世 紀も終わ りに近づいて、ほとんど解決 され、
更なる発展を遂げてい る。ちょうど1世 紀ほどで解 けて しま うと
い うのは程がよい。彼 が解 くことを選ばなかったフェルマー予想
も解 けて しまい、数学者以外に説明できる問題が少なくなった。
また、基底定理は当時の不変式論の大家 ゴル ドンに 「
これは数学
一
へ
ではない。神学だ。」と言わせてい る。現代数学 の つの里程
標である2。
ベルヌーイ′ヤ コブ I JakOb Bernoulli I,1654。
12。
27二
1705。
16。
8。
スイス,バ ーゼル に生まれ,バ ーゼルに死すL父 の意志に反 し
て神学から数学に。 フランス,オ ランパ イギリスを歴訪,ボ イ
ルや フックに会 う。バーゼル大学教授 (1687)。パ リ,ベ ル リン学
士院会員。微積分以外では,確 率論の大数 の法則。ベルヌニイ分
布,ベ ルヌーイの微分方程式,ベ ルヌーイ数。
ポ ン トリャーギ ン Lev Semyonovich Pontryalgin,1908。
1988.5。
9。
3…
3.
モス クワに生まれ る。 14才で失明す るも母の助けを借 りて勉
学を続ける。モスクワ大学を卒業 (1929),1935年モスクワ大学教
授。1931年 以降 ソ連科学アカデ ミーの研究所にも所属。
学生の とき,師 のP.S.アレキサ ン ドルフの双対定理の一般化の
証明 (1932),位相群論の研究。位相幾何学,特 にホモ トピー論で
活躍。 ポン トリャー ギン類 0指標 0空 間など。
彼の仕事 を読んでいた とき,彼 の数学の特異な感性を、 「日明き
に見えない障壁の向こ う側 が,彼 には見えるようだ」と友達 と話
し合 ったことを思い出現
2日本語に訳 されているものも多く、S.コーン_フォッセンと共著 『
直観幾何判 (芹
沢正三訳)みすず書房、『数学 の問題 一ヒルベル トの問題』(一松信訳 ・解説)現代数
学 の系譜 4共 立出版、『幾何学の基礎』(寺阪英孝十大西正男訳 0解説)現代数学の系
P,ベルナイス と共著 『
譜 7共 立出版 (1970)、
数学の基礎』(吉田夏彦 十渕野昌訳)シ ユ
プ リンガー フェアラー ク東京、ア ッケルマ ンと共著 『
記号論理学の基礎』(伊藤誠訳)
R.ク ー ラン トと共著 『
大阪教育図書 (1954)、
数理物理学の方法 全 4巻 』(齋藤利弥
監訳、丸山滋弥訳)東京図書 (1959_62)などがある。
-53-
A.A.ア ン ドロ,ノ フ と,振 動論や市1御理論に関る常微分方程
式の研究をす る。最適制御過程 の理論を確 立。 あるとき, ヨー
ロッノく
の学会に出てきて,ミ サイルが目標 に到達できるかどうか
とい うテーマの講演を したことがある。その とき聴衆だったA.
グロタンディエ クが,彼 の軍事協力の姿勢 を強 く非難 したが,「
あ
あ,で も役には立たんのです よ」と答 えて,論 争にならなかうた
とい うエ ピソー ドがある3。
メンゴー リ′ピ エ ト回 Pietro Mengoli,1626-1686。
イタ リア,ボ ローニャに生まれ,´
ボローニャに死九
ボローニャ大学でカ ヴァリエー リに数学を学び,1650年 には哲
学の学位 を,1653年 には法律 の学位 を得 る。 カ ヴァリエァ リの
死後,ボ ローニャ大学教授,算 術 (1648-1649),力
学 (1649-1668),
数学 (1668-1686)の
教授。更に,1660年 以降,ボ ローニャの教区
司祭。調和級数 が収東せず,符 号を交互 に変えれば log 2に収東
し,三 角数の逆数 の和が収東することなどを示すが,こ れ らはそ
れぞれ後の人の業績 として知られてい る。また,無 限級数に関す
る本 (1650),無限に関する本 (1659),π
/2の 無限積展開を含む円
つい
の
て 本 (1672)を出版。また,天 文学,大 気の屈折,音 楽理
に
論 (1670)について も本を出版。
ユTク リッ ド=エ ウク レイデス、ア レキサ ン ドリアの
E ucleides=.Euclid of Alexandria=EyK"AEI△
Oy
エ
レ
ジプ ト、ア キサ ン ドリアの
紀元前 330?-275?(365?-300?)。
生まれ。
プラ トンのアカデ ミアに学ぶ。幾何学以外にも著作は多い。ア
レキサ ン ドリアでプ トレマイオス I世に 「
幾何学に王道はない」
と言 った言葉は数学者に とっては誇 りであるが:
`
ラ ロイニル,フイリップ ロド Philippe de La Hire,1640。
。
4.21。
3.18-171念
ンス
フラ
,パ リに生まれ,パ リに死す。
画家 としての教育 を受け,ロ ニマでの修行で,画 業 と遠近画法の
為に幾何学を学ぶ:王 車科学アカデ ミー会_員(1678),コレ∵ジ三・
ロワイヤル数学教授 (1683),更に建築学教授 (1687)。
立体解析幾
3日本語訳には 『連続鮮論』 波
常微分方程式』(共立出版 )の ほか,中 等
(岩 書店),『
教育用 の教科書 のシ リー ズ (森北出版 )も_ある。 : :
-54-
何学,総 合幾何学の先駆視 円錐曲線についての研究 (1673,1679)
レトの手法が用い られる。体系的に座標の方法を用い,
ではデカク
「
座標原点」の用語は現在も使われてい る。広 く受け入れ られた
『円錐曲線論』(SectiOnes conicae,1685)で
は,G。デザルグの射影
幾何の方法が用い られてい る。デザルグの 『
草稿』は彼の筆写 し
たものが 1847年 にパ リの図書館で発見されるまで失われていた。
またカージオイ ドの長さを計算する (1708)。
天文学,物 理学,測 地学にも重要な寄与。パ リ天文台に最初の
経緯儀を設置。太陽,月 ,惑 星の運動の表を作 り,フ ランスの地
図,特 に海岸線 の確定に尽力。彼の世界地図は北極ではなく,北
極 と地球の中心 との中点を中心 として射影 した ものである。
また,魔 法陣についての著作もある。
d Wilhelm Leibni2,1646。
ライ プニ ッツ Gott■iё
7.1-171o.11:14。
ー
ドイツ,ラ イプツィヒに生まれ,ハ ノ バーに死すL哲 学 0数
学 0法 学 ・経済学者 。政治家 0外 交官。父はライプツィヒ大学道
徳哲学教授。早熟の天才。ライプツィヒ大学で法律を学ぶも若
すぎると学位を拒まれ (1666);ニュルンベルグのアル トドルフ大
立を得る(1667)。教授 になるよ う望まれるが辞退
学で法律 の学イ
パ
ロ
し, ヨァ ッ を遍歴,マ イ ンツ選帝候の外交官 となる(1666)。
ルイXIv世 に会見のためパ リを訪問するが会えないまま3年 を過
ごす:そ の際ホイヘ ンスに数学 と物理学を学ぶ。マイ ンツ選帝候
の死後 (1673),マ ン ドンに滞在 し,ニ ュー トンとバ ヮーの研究に
接す る。1676年以降ハ ノーバアのブラウンシュヴァイク家の図
書館長。1700年 ベル リン選帝候 の招きで,ベ ル リンを訪れた際,
ベル リン科学アカデ ミー を創設 し,初 代総裁 となる。
モナ ド論」 「
普遍言語」
。
微積分学の発見。数学記号の整備。 「
ランスベルギウス Lansbergius=Philip ttn Lansberge,1561。
8.25ー
1632112,8。ベルギ ,ゲ ン トに生まれ,オ ラン鍼 ミ ドルブル
グに死丸
プロテスタン トの牧師。天文学 。
数学者。πを28桁 計算 (1616)。
コペル ニクスを支持 したが,ケ プ ラーの楕円理論は拒絶す る。
リコー ドRobert RecOrde(=Ric6rde),1510-1558。
.
ウェァル パ, テ ンビィに生まれ: イ ギリス, ロ ン ドンに死九
-55-
数学 の イギ リス学派 を確 立 し,イ ギ リスに代数 を最初 に導入 し
た人 といって よ く, ドイツでシ ュテ ィー フェル が行 った役割 をイ
ギリスで果た した人 と言 うことがで きる。『才知の砥石 』(1557)
=」 を発明 したことは不朽である。
に初出の等号 「
ー
オ ックスフォ ドとケンブ リッジで数学を学びかつ教 え,1545
年にケ ンブ リッジで医学の学位 を得,エ ドワー ドVI世 とメア リ
女王の侍 医 となる。 1551年以来アイル ラン ドの鉱山と通貨 の監
督官 を勤める。サウス ウォァクのキングズベ ンチ牢で獄死 した理
由は,そ こでの不正なのか,宗 教的理由なのか,女 王の死の直前
でもあることか ら政治的理由なのか明らかではない。
多くのテキス トを書いたが,『
諸術の基礎』(1540)は算術 と商業ヘ
の応用を扱 ってお り,ア ラビア数字 と筆算,算 盤での計算な どを
紹介 した もので24版 以上を重ねてい る。後のガ リレイのよ うに,
平易な言葉での対話形式の ものが多く,イ ギリスでは大変普及 し
たが,大 陸での影響力は大きくなれなかったのか も知れない。
知識 の城』はコペルニクスの体系を認 めている天文学書であり,
『
知識への小道』(1551)はユー クリッドの 『
『
原論』の抄訳である。
等号を公表 した 『才知のF_M』 の砥石のラテ ン語が cosで あっ
て,未 知量 cossとの地 日の しゃれである。 この本から引用する。
わた し自身がすでに用いてい るように,実 際の計算
では一組 の平行線,つ ま り同じ長さの2本 の線 ==を
使 うことを提案す る。2つ の ものが等 しい ことを表わ
す のにこれ以上の表現方法はないからである。
三」はす ぐには普及せず,後 に トーマス 0ハ リオ ッ
しか し,等 号 「
トが不等号を発明 したときにこの等号を再評価 したことから認知
されるようになってい く。
リッ元 ミ ケランジェロ Michelangelo Ricci,1619。
1,30-1682.5.12。
ー
ー
イタリア, ロ マ に生まれ, ロ マに死九
トリチェ リの親友で,共 にベネデ ット0カステル リ(Benedett。
Castelli,1578-1643.4。
19)の弟孔 ローマで神学 と法律を学ぶ。こ
の時期, ド ・ス リューズ とも友人 となり,こ の3者 は数学を学ぶ
上で影響を及 ば しあつた。
1650年以降教会から給付を受け,1681年 教皇イ ノセ ン ト11世
-56-
により枢機卿 に任ぜ られる。
『
幾何の演習書』,『
最大値 と最小側 (1666)が主な業績。後者
0メ
ルカ トールの 『
はニコラウス
付録 として
対数術』(1668,9)の
ー
ジのその付録のお陰で有名になる。そ こでは,
再録 され,19ペ
m(α
の極大値 とνm=た zπへの接線 を与えている。方法は,
χ 一″)電
帰納法の初期の例 となってい る。螺線 (1644);丁般サイ クロイ ド
(1674)を研究 した り,接 線を求めることと面積 を求めることが逆
演算であることを述べ る(1668)。
彼の名声は出版物 よりも,ク ラヴィウス,ヴ ィヴィアーニ, ド0
ス リューズなど多 くの数学者 との文通によるものである。
ル ドルフ:ク リス トッフ Christof R,udoЩ1500頃-1545.
シ レジア,ヤ ウエル (現在ポニ ラン ド領ヤボール)に生まれ,オ
ース トリア, ウィー ンに死九
ウィー ン大学で代数学 を学び (15171521),ウ ィー ンで数学の
個人教授 として生活。1525年ス トラスブールで出版 した (ドイツ
初の)代数学の教科書 Cossが 重要で,算 術,等 比級数,代 数計
算,無 理量,さ らに1次および 2次 方程式に及んでい る。1530年
にはこの本のための問題集 も出版 されてい る。現代の数学記号の
原型 がここにある。Cossと は未知量のこ とで,長 い問,代 数学
は未知量の技法 (CossiC Art)と
呼ばれていた。また,平 方根に対
0=1と
して √ を用いたの も, ■
するアイデア も彼の もので
ある。
1552年か ら1615年まで,M。 シュティーフェルの再版による教
科書の出版 が続け られ,大 きな影響を及 ぼしてい る。中でも,L.
オイラーがこの本で数学を学んだことが伝 えられてい る。
ワナー Gerhard Wanner,1942-.イ ンスブル ック大学に学ぶ。 グ レプ
ナー とロクスの弟子。現在,ス イス,ジ ュネーブ大学教授。
参考文献
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(1993). Originally published by Open Court Publ., La Salle, Illinois, in L928 and L929.
丁 57-
ー 『
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図 ロビン ダンバ
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圏 ガ リンオ ガ リレイ 『
対話)』(青木靖三訳)岩波文庫,Galileo Galilei(1632)
'92年
数 について (美杉セ ミナー'91)』
度数学研 究会誌
四 蟹江幸博 『
36号 ,二 重県高等数学教育研究会 (1992),3-41.
TOSMポ ス ト』'93年度数学研究会誌37号 ,二 重県高
同 蟹江幸博 『
等数学教育研究会 (1993),2-44。
数学を語るのか,数 学で語るのか―行列から見た複素
回 蟹江幸博 『
'94年
数 (美杉セ ミナー'93)』
度数学研究会誌38号 ,二 重県高等数
学教育研究会 (1994),2-39.
数学的知識 の欠如に関する自己認識の調査』二重大学
□ 蟹江幸博 『
教育学部紀要,第 45巻 ,教 育科学 (1993),1-13.
数学教育における教師の授業観
固 蟹江幸博,黒 木哲徳,中 馬悟朗 『
と意識に関する調査研究』岐阜大学教育学部研究報告 (自然科学),
第 1群2巻 (1993),75-97.
算数綴 り方教室の試み』二重大学教育学部紀要,第 46
団 蟹江幸博 『
巻,教 育科学 (1994),41-49。
[lq 蟹江幸博 『三角定規の組み合わせ図形の考察』二重大学教育学部
紀要,第 46巻 ,教 育科学 (1994),41-49。
1■
蟹江幸博,黒 木哲徳,中 馬悟朗 『小学校教師の数学的常識 (仮
題)』 (未完)
数学の危機なのか,数 学教育の危機 なのか (美杉セ ミ
[ 1 到蟹江幸博 『
'94)』
'95年
ー
ナ
度数学研究会誌39号 ,二 重県高等数学教育研究会
(1995),10-61。
'94と'95の
ー
ま とめ 一』
[ 1 則蟹江 幸博 『美杉 セ ミナ につい て 一 特 に
「
数 学 を楽 しむ 高校 生 のた めのセ ミナ ァ」 (94年度 ,95年 度 )の ま
とめ,二 重県高等 学校数学教育研 究会 (1996),8-33.
'96年
複素数を巡らて (美杉セ ミナー'95)』
111 蟹江幸博 『
度数学研究
会誌 40号,二 重県高等数学教育研究会 (1996),2-55。
数学的概念に対する教師 と学生
μl 蟹江幸博,黒 木哲徳,中 馬悟朗 『
の 自己認識について』日本教育工学会 ・第 12回全国大会,金 沢大
学,1996/Nov.3-4,p.165-166。
数学的基礎概念の自己認識に関
μq 蟹江幸博,黒 木哲徳,中 馬悟朗 『
する調査研究』岐阜大学教育学部研究報告 (自然科学),1997.
教師における数学的基礎概念の自己認識の
111 蟹江幸博,丸 林哲也 『
在 り方について一二重県の場合二』二重大学教育実践センター紀要
17(1997,Mar。
).
'96-』 6回
ー
1 1 則蟹江幸博 『ニュ トン以前 一美杉セ ミナー
第
('96年度)
「
数学を楽 しむ高校生のためのセ ミナー」二重県高等学校数学教育
研究会 (1997),16-49.
初等 0中等教育に数学を取 り戻す』'97年度数学研究会
卜q 蟹江幸博 『
誌 41号 ,二 重県高等数学教育研究会 (1997),2-37.
pq
蟹江幸博,黒 木哲徳 『大学教育を見通 した高校数学教育の問題′
点
一数学離れ と高校数学カリキュラムー』二重大学教育実践センター
紀要 18(1998,Mar。
),1_11.
pll 蟹江幸博 『有理数 と無理数のはざま,連 分数について一美杉セ ミ
ナー'97-』 第 7回 ('97年度)「数学を楽 しむ高校生のためのセ ミ
ナー」二重県高等学校数学教育研究会 (1998).
ー
ー 解析教程 上 下』 江幸博訳 ュプ ン
リ
p劉 E,ハイラ ,G.ワ ナ 『
(蟹
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ガー0フェアラーク東京 (二
997年 ),Analysis by lts History,Springer
hrla.g(1996),by E,Hairer&G.Wanner.
3
2
司馬遼太郎 『
十六の話』中央公論社 (1993年 10月 ).
4
2
スティーブン 0ワインバーグ 『
電子 と原子核の発見』(本間二郎訳)
日経サイエ ンス社 (1986年),The Discovery of Subatomic Parti_
cb<19831,by Steven Weinberge
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