Comments
Description
Transcript
ホタルと環境についての取り組み. 青森市立栄山小学校
全 国 ホ タル 研 究会 誌 ,(42):1-4,(2009) ホタル と環境 につい て の取 り組み 学校 青森市 立栄山ガヽ 1.は じめに 青森市 立 栄 山小学校 は ,青 森 市 の西側 三内丸 山遺跡 に も程近 い細越地 区にある 全校児童 39名 (平 成 21年 度 )の 小規模校 である。 栄 山小学校 のホ タル の取 り組 み と して 506年 生 がホ タル の飼 育や観 察 ,調 査 を行 つてい る (写 真 1)。 ホ タル の飼育 は ,総 合的 な学習 の時 間や休 み時 間 を使 って ,水 槽 の水 の 管理や掃 除 ,餌 で ある カ ワニナや りな どを行 つてい る。 また 総合的 な学習 の 時間 にホタル につ いて調 べ た り観 察 した りす る学習 を して い る。 飼 育 は ,春 :幼 虫 の放流 → 夏 :成 虫の カ ップ リン グ・ カ ワニ ナ と り→ 秋 。冬 幼 虫 の飼 育 とい うサイ クル で行 われ る。 これ らの活動 は ,細 越 ホ タル の会 の 協力 , , , : 写真 (青 森県青森市) を得 なが ら行 つ てい る。 これ らホ タル に関す る活動 を通 して ホ タル や 自分達 を取 り巻 く環境 につい て 考 え,環 境 を守 ろ うとす る心情や地域 を 愛す る心 を育てた い と思 つて い る。 , 2.ホ タルの飼 育活動 ①飼 育装置 学校 の 1階 ロビー にホ タル 飼 育用 の水 槽 が 4つ ある。 水槽 は 2段 にな つて お り 下 の段 には水 を濾過 させ る砂や活性炭 が 入 つてい る。 上 の段 には ,幼 虫が入 つて お り,エ アーポ ンプ を備 えて い る。 そ し て ,上 下 の水槽 の水 をポ ンプで循環 させ て い る。 2008年 か らさらに 2つ の上 陸用 鉢 を備 えた水槽 も加 え,こ れ らの水槽 で 飼 育 してい る。 卵 を孵化 させ る時 は ,水 , 写真 2.孵 化装置 をのせたホタルの水槽 1.2008年 度 の 5・ 6年 生 -1- 槽 の上 に孵 化装置 をつ ける (写 真 2)。 さらに ,別 の場所 にカ ワニナ飼 育用 の 水槽 も用意 し,夏 に採 つて きたカ ワニナ に ニ ンジンを与 えて飼 育 してい る。 ② ホタル の幼 虫 の放流 春 に前年 夏 か ら飼 育 して きた幼 虫を細 越 地区にあ る 「ホ タル の里」 に放流 して お り, 4月 下旬 に全校児童 でホ タル の幼 虫を放流す る会 を行 つて い る (写 真 3)。 2008年 4月 に は前年 に孵 化 した 幼 虫約 100匹 を放 流 した。 さらに 6月 上旬 に約 140匹 , 7月 に約 20匹 を追加 で 放 流 し 合 計約 260匹 の幼 虫を放流 した。 なぜ放流 が 3回 に渡 つ たか とい うと 幼 虫を入れ る水槽 の 中に小 さな 玉 砂利 を 入れ ていたため ,小 さな幼 虫が確認 でき な かったか らであ る。 そ こで ,2008年 か らは孵化 した幼 虫が観 察 しや す い よ うに 素焼 の植 木鉢 のか け らを入れ てい る。 , , 写真 4.成 虫の採集 に集 ま った 子 どもたち ④産卵 と孵 化 カ ップ リン グか ら 1∼ 3曰 くらいで産 卵 した。 2008年 はカ ップ リン グ した 6ペ アの うち,4ペ アが産卵 した (写 真 5)。 産卵 した 卵 の 数 は ,688個 0697個 ・ 552 個・ 479個 の 計 2,416個 ,平 均 604個 だ っ た。 産卵 した 卵 は ,水 槽 の 上 にセ ッ トし た孵 化装置 にガ ーゼ ごと移 し,霧 吹 きで 水 を吹 きか け水分 を切 らさな い よ う注意 した。 卵 は 8月 上旬 頃 に孵 化 した。孵化 した幼 虫は ,孵 化装置 か ら水 槽 の 中へ と 落 ちて い き水 中生活 を始 める。 写真 3.ホ タルの幼 虫の放流 ③成 虫 のカ ップ リング 7月 上旬 の夜 にホ タル の里 で ,成 虫 の 採集 を行 い (写 真 4),カ ップ リン グを してい る。2008年 には 6ペ ア を採集 した。 標本 ビンの 中 に 白いガーゼ を入れ た容器 とよ く洗 つた紺色 の 手 ぬ ぐい を入れ た容 器 の 2種 類 を用意 した。 これ は ,卵 の色 が ク リー ム色 な ので ,ど ち らが卵 の観察 を しやす いのか比 べ るために準備 した も ので ある。 そ の結果 ,紺 色 の方 が卵 の観 察 が しやす い こ とが分か つた。 -2- 写真 5.産 み つ け られ たホ タルの卵 ⑤ カ ワニナ とり 夏休み中の 7月 下旬に,ホ タルの餌 と なるカ ワニナを学校近 くの水 田用水路で 100匹 以 上採 つ ている (写 真 6)。 採取 したカ ワニナには ヒルが付着 してい るこ とがあるので ,ホ タル とは別 の水槽 に入 れ てい る。 そ して ,ホ タル の水槽 のカ ワ ニ ナが少 な くな つ た ら,カ ワニナ の 水槽 か ら補充 してい る。 な幼 虫が入 つ て い るこ ともあ るので ,捨 てな い よ うに してい る。 そ して , 3月 に は 6年 生か ら 5年 生 にホ タル の 引き継 ぎ を行 い ,大 き くな っ た幼 虫をまた春 に放 流す る。 3.環 境 につ いての学習 と保 護活動 写真 6.用 水路 での カワ ニナ と り ① ホ タル の 里清掃 ホ タル を取 り巻 く環境保 全 の た め,児 童 と父母・ 地域 の方 でホ タル の里周辺 の ゴ ミ拾 い を した (写 真 8)。 きれ いに見 えるホ タル の里 の周 りに も意外 に ゴ ミが あ るこ とに気 づ い た。 また ,清 掃活動 を す る こ とで ,ホ タル の里周辺 には ,汚 染 され ていない水 が 流れ てい る こ と,カ ワ ニ ナが生息 してい る こと,カ ワニ ナ の え さ 0枯 れ葉 。腐 葉 土・ 微 生物 がい る こと 草 の伸 び具合 が ち ょ うどよい こ と,水 中 に 日なたや 日かげが あるこ と,さ なぎに な る時 に潜 り込 める軟 らかな土が あるこ とな どが分 かつた。 そ して ,自 分達 で地 域 の環境 を守 ろ うとす る機 会 に もな った。 , ⑥幼 虫 の飼 育活動 ,観 察 幼 虫 の観 察 (写 真 7)に よ つて ,初 め は足だ と思 つていた体 の横 につい てい る 突起 が ,足 ではな く,本 当の足 は 6本 だ と気 づい た り,脱 皮 したばか りの 白い幼 虫に驚 いた りした。 2008年 では,幼 虫 の 数 は 5月 下旬 が 一 番 多 く,約 180匹 を確 認 した。 10月 上旬 に25匹 ,下 旬 に37匹 を 確認 し,大 き めの幼 虫を H月 5日 に20匹 放流 した。 以前 ,水 槽 をきれ い に し過 ぎ て ,小 さな幼 虫を ゴ ミと区別 できず に捨 て ることが あ つた。 そ こで ,ゴ ミを捨 て る時 は慎 重 に レンズ で確認 してい る。 ま た ,空 にな つ たカ ワニ ナ の 貝 も中に小 さ 写真 8.ホ タルの里清掃活動 ②水質調査 夏休 み に入 つ てす ぐ,ホ タル の 里周辺 を中心 に水 質 の調査 を行 った (写 真 9)。 ホ タル の里 の小川や 沼 ,メ ダカ の池 ,細 越 を流れ る川 な ど 5カ 所 の水 を採 取 して 水温や アル カ リ度 な ど 5項 目を調 べ た結 果 ,ホ タル の 里 も細越付近 の川 もきれ い な状態 である こ とが分か つ た。 写真 7.幼 虫の観察をする子 どもたち -3- の源 流 であ る 「勘 七 堤」 までの片道 4∼ 5 kmの 山道 を ,慣 れ な い ク ロス カ ン トリ ー ス キ ー をは いてのツアー であ る。途 中 に見 られ る樹木 につ い ての説 明 を聞 きな が ら,冬 の里 山 の様子 とホ タル の 里 を取 り巻 く自然 の 豊 か さを知 る こ とができた。 写 真 9.ホ タル の里 や川 の水 質調 査 ③ ホ タル の 里 の 生物 (チ ョ ウ)調 査 ホ タル の 里 に い るチ ョ ウを調 べ た (写 真 10)。 チ ョウを通 して環境 の変化 を調 べ る 目的 もある。 チ ョウに詳 しい先生 を お招 き し,採 集 したチ ョウの名 前や 習性 な どを学 習 した。学習 した後 はチ ョウを 再び ホタル の 里 に放 した。 写真 11.ス キ ー ツアー で里 山にある 樹木 を観察 4.ホ タル を守 る活動 に参加 して 四季 を通 してホ タル を育て守 り増や し い て く活動 に参加 した り,ホ タル につ い て調 べ た りす る ことで ,卵 の数 に比 べ て 孵化 で きる幼 虫 の数 の少 な さ,さ らに羽 化 して成 虫 とな る ことの難 しさ,自 然 の 厳 しさ,逆 にホ タル の幼 虫 の ど う猛 さ 生 きる ことへ の執着 な どを知 り,自 分達 が放流 したホ タル が飛 び輝 くの を見た時 の うれ しさ (喜 び )な どを感 じた。 そ し て ,昔 は 田んぼ の上で も飛び回 つていた ホタル が ,農 薬や環境 の 変化 で減少 した た めに貴重 であ るこ とを知 る とともに 自分達 が住む地域 の よ さや里 山 の あ る自 然 の 豊 か さを理 解す るこ とがで きた。 こ れ か らもホ タルや 自然 を守 りなが ら地域 や地域 の人達 に触れ ,他 の動植 物 と共生 で きる 自然豊 かな環境 につい て 考 えて い きた い。 , 写真 10.ど ん なチ ョウが いるのか な , ④ ホ タル の里 源流巡 り 2007年 まで , 2月 にホ タル の里 を流れ る川 の源 流 まで ,ク ロス カ ン トリー ス キ ー でツアー を していた (写 真 H)。 栄 山 小学校 の校庭 か らホ タル の 里 を流れ る川 -4-