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第 2 世代遺伝子組換え型第 VIII 因子製剤と

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第 2 世代遺伝子組換え型第 VIII 因子製剤と
Letters to the Editors ‒ Full Translation
第 2 世代遺伝子組換え型第 VIII 因子製剤とインヒビター発生リスク:
RODIN 研究の知見の解釈と血友病 A 患者の関与
Second-generation recombinant factor VIII and inhibitor risk: interpretation of RODIN
study findings and implications for patients with haemophilia A
J. G. Van Der Bom, S. C. Gouw and F. R. Rosendaal
Department of Clinical Epidemiology, Leiden University Medical Center; Center for Clinical Transfusion Research, Sanquin
Research, Leiden; Department of Pediatrics Amsterdam Medical Center, Amsterdam; and Department of Thrombosis and
Hemostasis & Einthoven Laboratory, Leiden University Medical Center, Leiden, The Netherlands
重度の頭痛患者がいることを想像してもらいた
ンヒビター発生と関連付けられなかった。しかし
い。この頭痛は,現在流通している 4 種類の先発
ながら,補正後のインヒビター発生率は,第 2 世
薬の 1 剤で治療できる。先発薬の有効性はどれも
代 FVIII 製剤投与中の方が,第 3 世代完全長 FVIII
100% であるが,4 種類中 1 剤については,特定の
製剤投与中よりも 60% 高かった。第 2 世代には,
Kogenate® Bayer( Kogenate® FS, Bayer AG 社 ,
Bayer HealthCare LLC 社,米国,カリフォルニア
いる。副作用が生じるとしても,この頭痛に対して
( Helixate®
州,バークレー)または Helixate® NexGen
同様に有効な治療法は存在しない。副作用のリスク
FS, Bayer AG 社 , Bayer HealthCare LLC 社 ,
が高いかもしれない銘柄を,それでも処方しようと
CSL Behring 社 に よ り 販 売 )と し て も 知 ら れ る
考えるであろうか。己に課された最大の責務は,人
FVIII 製 剤 を 用 い, 第 3 世 代 に は,ADVATETM
体に害を及ぼさないこと( "primum non nocere"[ ラ
テン語 ]まずは害をなさないこと )と考える医師な ( Baxter Healthcare Corporation 社 , 米国 , カリフォ
らば,処方しないであろう。
ルニア州 , サウザンドオークスおよびスイス , ヌー
血友病 A 患者を対象に,各種第 VIII 因子( FVIII ) シ ャ テ ル )と し て 知 ら れ る FVIII 製 剤 を 用 い た。
Kogenate FS と Helixate FS は,オクトコグアルファ
濃縮製剤間の免疫原性の差異を検討した先頃の報
副作用のリスクが高いことを一部の試験が示して
告( 1 )後,我々はこれに似た疑問に遭遇しているよ
を含有する同一の医薬品で,ベビーハムスター腎細
うに思われる。同報告では,FVIII に対する中和
胞を使用した遺伝子組換え DNA 技術を用いて製造
抗体( インヒビター)
( FVIII 製剤投与による重度
されている。両剤は,2000 年 8 月 4 日に EU 全域
の副作用 )の発生率を製剤ごとに示した。連続 574
で認可された。ADVATE は,チャイニーズハムス
名の新規重症血友病 A 治療患児において,遺伝子
ター卵巣細胞株を用いた遺伝子組換え DNA 技術を
組換え型および血漿由来 FVIII 製剤は,同様のイ
用いて製造されている。
ンヒビター発生率を示し,製剤間の切り替えはイ
RODIN 研究の知見解釈および臨床的意味につい
ては,欧米の諸文献( 2,3 ),学会,規制当局におい
て活発に議論が行われている。議論の中心になっ
Correspondence: Dr Johanna G. van der Bom, Centre for Clinical
Transfusion Research, Sanquin Research, Plesmanlaan 1a, 2333 BZ
Leiden, The Netherlands.
Tel: +31 71 526 8871; fax: 071 5685191;
e-mail: [email protected]
ているのは,「 この 1 回の観察研究が臨床ケアに影
Haemophilia (2014), 20, e171–e174
© 2013 The Authors Haemophilia Published by John Wiley & Sons
Ltd.
る。
20
響を及ぼす,すなわち,Kogenate や Helixate の処
方を中止するに足るものであるか 」という疑問であ
すべての議論において,RODIN 研究の解釈に関
第 2 世代遺伝子組換え型第 VIII 因子製剤とインヒビター発生リスク:RODIN 研究の知見の解釈と血友病 A 患者の関与
わる 3 つの主要な側面に注意が向けられてこなかっ
上述のとおり,治療歴のない重症血友病 A 患者
たように思われる。第 1 に,一部製剤の過剰なリ
を対象にした RODIN 研究では,第 2 世代遺伝子組
スクは事前確率であること,第 2 に,有効性に関
換え型第 VIII 因子( rFVIII )製剤に付随するインヒ
する試験と副作用に関する試験の誤った結果には,
ビター発生率が,第 3 世代 FVIII 製剤に比べ 60%
捉え方に温度差があること,第 3 に,「 まずは害を
高いことが認められた。この知見は,因果効果の結
( "adagium primum non nocere" [ ラ
なさないこと 」
果であると考えられ,その場合,結果の説明は製造
テン語])という古くからの箴言の存在である。
過程に求められるべきである。一方,理論的には,
もちろん,1 回の研究から決定的な証拠が得られ
この知見は事実ではなく,交絡の結果,測定バイア
ないことは,科学者であれば誰もが認めることであ
ス,選択バイアス,または偶然の知見である可能性
ろう。どのようなタイプの研究から得られた知見で
がある。まず,因果効果なしとする説明の可能性に
も,それは偶然の結果である可能性がある。残念な
ついて,次に因果効果の生物学的妥当性について考
がら,実際にはそれどころか,デビッド・ヒューム
えてみたい。
が既に 18 世紀に述べているとおり,証拠は経験的
RODIN 研究は観察研究であって,無作為化試験
行動からは決して導き出されることはない。それに
ではない。治療効果を比較する観察研究は,適応に
もかかわらず,我々は,幾つかの研究が他のものよ
よる交絡を受けやすいことが知られている。なぜな
り説得力があることに気付いている。研究結果がど
ら,一般に治療は各患者の臨床特性に応じて選ばれ
れほど説得力をもつと考えられるかは,どのような
るため,比較対象患者の特性に不均衡をもたらすか
予想をもっているかにより影響を受けるのである。
らである。この適応による交絡が,無作為化を適用
我々は,全くありそうにない結果( 例えば,ホメオ
し,処方と予後との関係を断つ唯一の理由である。
パシーの有効性を示した無作為化試験など )は信用
適応による交絡が存在しない場合,観察研究は,無
しない。FVIII 濃縮製剤の免疫原性の場合も,事前
作為化試験に等しい有効な結果をもたらす( 6 )。こ
に確固たる考えをもつことは妥当ではない。すなわ
うした理由から,喫煙と肺癌との関連を検討した非
ち,あらゆる濃縮製剤が同様のインヒビター発生リ
無作為化試験は信用できるわけである。RODIN 研
スクを常にもたらすであろうという予測は,差異を
究の場合,2 種類どちらの FVIII 製剤を用いるかを
生じ得るという予測より妥当性が低いように思わ
決定したことにより,この決定時点,すなわち治療
れる。やはり,以前血漿由来濃縮製剤の製造過程に
開始時点において,患者がインヒビター発生リスク
若干の変更を加えたところ,こうした差異が認めら
に「 気付き 」,そのことが仮に影響を及ぼしたとす
(4)
れたことがある
。
れば,交絡が生じたと考えられる。現在,製剤決
RODIN 研究の知見の臨床的意味に関する考察に
おいて,本質的でありながら,これまでほとんど
定時点で認識可能なインヒビター予測因子は,3 つ
のみが知られている。それは,特定の F8 遺伝子型,
注意が向けられてこなかったテーマは,試験のデザ
インヒビター発生の家族歴陽性,初回 FVIII 製剤輸
イン,解釈,臨床的帰結が,目的の治療効果に関す
注時の大量出血または外科手術である( 7 )。こうし
る試験と,副作用に関する試験では全く異なるとい
た予測因子の存在は,インヒビター発生リスクが高
うことである。対象とする治療効果に関する試験で
いことを示す。しかしながら,第 2 世代 rFVIII 製
は,ほぼ常に無作為化を要するが,多くの文献の指
剤治療患者間では,どちらかと言えば,3 因子すべ
摘では,副作用に関する試験で無作為化が行われる
てがそれほど顕著に認められず,より顕著というわ
(5)
例はほとんどない
。それどころか,副作用に関
けではなかった。したがって,
適応による交絡では,
する試験を含む病因に関する試験のほとんどは,例
研究で認められた関連性について説明できない。3
えば,喫煙の副作用( 肺癌 )に関する最も初期の試
つの危険因子すべてが,血漿由来製剤投与患者に最
験から,遺伝子変異体の効果に関する最新の試験ま
も顕著にみられたことは注目に値する。このことか
で,必然的に無作為化が行われていない。
ら,高リスク患者には,一部の臨床医が血漿由来製
21
Full Translation: J. G. Van Der Bom, et al.
剤を好んで投与したことが示唆される。3 つの危険
うのは,理由としてほとんど可能性がないだけでな
因子すべてが正確に測定され,そのため統計解析に
く,欠測値がバイアスを引き起こし得たとする経緯
(8)
。
おいて,危険因子の適切な補正が可能になった
結論として,交絡では研究で認められた関連性につ
についても,全くありそうもない筋書を求めている
にすぎない。
検査室間の差異が原因で,インヒビター発生状
いて説明できない。
一部には,後ろ向き試験から得られた知見は,
況の分類を誤った可能性もある。インヒビターのレ
信 用 す べ き で な い と い う 議 論 が 行 わ れ て い る。
ベルを測定したのは,参加したセンターの検査室
RODIN 研究の報告では,後ろ向き,前向きという
であって,中央検査室ではない。この場合も,第 2
用語を意図的に用いなかった。こうした用語を用い
世代 rFVIII 製剤投与患者のインヒビター数増加を,
ないよう,STROBE ガイドラインが強く推奨して
このことから説明する入念な筋書が必要になろう。
(9)
。これらの用語の表現は曖昧で
多くの因子は,シグナルに対するノイズ率 (noise-
どちらにも解釈されることから,STROBE ガイド
over-signal ratio) を上昇させる可能性があるが,こ
ラインでは,読み手が潜在的なバイアスの影響を判
のうち誤ったシグナルの同定に導く因子はないと
断できるようにするため,患者の選出方法,および
考えられる。さらに,使用したインヒビターアッセ
データ収集の手順を明確にして報告するよう求め
イやスクリーニング頻度に関わりなく,すべての
ている。暫くの間,実際,研究者が変数の選択を決
高力価インヒビターが検出され,したがってイン
定できる前向き試験では,関連する変数の有無と
ヒビターとして正しく分類されることになる。第 2
欠測値の範囲に基づいて最終的に研究の信頼性を
世代 rFVIII 製剤投与に付随するインヒビター発生
評価すべきである。RODIN 研究の報告では,Fig.
リスクが,第 3 世代 rFVIII 製剤に比べ高いことは,
1 にすべての適格患者,除外患者とその除外理由が
高力価インヒビターの発生とみなされる場合のみ
明確に記載されており,欠測値はほとんどみられ
確認されたため,研究で認められた関連性は,検査
いるからである
(1)
なかった
(1)
。我々が目を通した欠測値の補足資料
方法の違いでは説明できないことが裏付けられた。
の内容は,次のとおりである。「 患者の 12.4% で
このことから結論を導くと,研究で認められた関連
は,F8 遺伝子の変異型が欠測値であった。この値は,
性は,測定誤差により説明されるということは,ほ
本研究集団の F8 遺伝子変異の発現数で代用した。
とんど考えられない。
出血時投与療法について 11 日以上の曝露期間に欠
適格患者 648 名中 574 名の解析が行われた。患
測値があった場合,患者を解析対象から除外した。
者 74 名を除外したことにより,それ以外の 574 名
出血時投与療法について 10 日未満の曝露期間に欠
において,第 2 世代 rFVIII 製剤がインヒビター発
測値があった場合,これらの曝露期間の欠測日に
生に誤った影響を及ぼす可能性はあるだろうか。こ
は,無条件に欠測日前日と翌日との期間の中間の値
の場合も,除外患者は主に第 2 世代 FVIII 製剤を
で代用した。こうした出血時投与療法は,少量の出
用いたインヒビター発生リスクが低い患者か,第 3
血について行うものと仮定した。全体では,日付お
世代 FVIII 製剤を用いたインヒビター発生リスクが
よび製剤の 0.6% が代用された。欠測値のうち,変
高い患者のいずれかとした複雑な筋書が必要にな
数である民族( 患者 1 名に欠測値 )およびインヒビ
ろう。この筋書には無理があり,ほとんどの除外
については,
ター発生の家族歴
(患者 30 名に欠測値)
理由が,1 センターにおけるインフォームド・コン
多変量線形回帰を用いて代用した。こうした情報か
セントの未入手または保留( n = 22 ),および入手
ら,解析において欠測値は限定的であり,適切に処
可能データが不十分( n = 32 )であることをみると,
理されていたことがわかる。したがって,RODIN
なおさら信じ難い。
研究が部分的に「 後ろ向き 」の性質であるから,第
もう 1 つ,選択バイアスの原因には,一部の研
2・第 3 世代の遺伝子組換え型 FVIII 製剤とインヒ
究集団の追跡が不十分であったことが考えられる。
ビターとの間に,誤った関連を引き起こし得たとい
しかしながら,患者らは最終追跡時点で解析を打
22
第 2 世代遺伝子組換え型第 VIII 因子製剤とインヒビター発生リスク:RODIN 研究の知見の解釈と血友病 A 患者の関与
ち切られた。報告された解析の追跡は,2011 年 5
害作用の可能性を否定することはできない。我々の
月に終了している(補足資料参照)。追跡の終了が,
手元に一枚の長い薬剤の一覧表があるが、その一覧
暦時間以外の何かによって影響を受けたと考える
表によれば短時間作用型カルシウム拮抗薬からキ
理由はない。このことから,選択バイアスでは,研
シメラガトラン,第 3 世代避妊薬まで,多くの薬
究で認められた関連性を説明できないことになる。
剤が認可後予期しない副作用を示し,あらゆる場合
また一部では,特定の遺伝子組換え型製剤間の比
に副作用特定時点でその発生機序は解明されてい
較は,RODIN 研究の試験実施計画書に別の目的と
なかった。これは改めて言う必要もないほど当然な
して明確に記載されなかったため事後解析とみな
ことであって,認可前に既に副作用の発生機序が知
され,それに応じて異なる解釈による P 値を伴う
られていたら,その薬剤は認可されなかったはず
(2)
。RODIN 研究
だからである。薬効があっても,作用機序が分かっ
の試験実施計画書は,PedNet ウェブサイト( www.
ていないことは多く,それは意図した効果の場合で
pednet.nl )で一般に公開されており,その実施計画
書には次のようにある。
「 RODIN 研究の目的は,
軽症/中等症/重症血友病 A および B 患者を対象
も当てはまる。一例を挙げれば,アスピリンの作用
べきであることが示唆されている
機序は,臨床効果認識後 60 年を過ぎて漸く明らか
にされた( 7 )。今なお繰り返しにより習得すべき知
に,インヒビター発生に関して,危険因子の果たす
識がある。1990 年代,特定の FVIII 濃縮製剤のウ
役割を検証することにある。インヒビター発生の潜
イルス不活化法を有機溶媒/界面活性剤処理から
在的危険因子は,初回 FVIII 製剤輸注年齢のような
低温殺菌処理に変更したところ,インヒビター発生
治療特性,治療に用いる血液凝固因子濃縮製剤の種
率の急上昇を招いたことが明らかにされている( 3 )。
類と純度,血液凝固因子の投与量および投与頻度
20 年を経過してもなおその機序が分かっていない。
である。さらに,出血の回数,種類,重症度( 関節,
ここまでで研究で認められた関連性の解釈につ
筋肉,または頭蓋内 ),外科手術,感染,抗菌薬そ
いて考察したので,次に臨床的帰結の考察に戻るこ
の他の薬剤の使用,アレルギー疾患,ワクチン接種
とにしたい。こちらははるかに単純で,「 まずは害
およびワクチン接種に対する反応性,FVIII / FIX
をなさないこと 」
( "primum non nocere" )の原則か
遺伝子変異,インヒビター発生の家族歴,授乳期間
ら導けるものである。この原則から,有効性の証明
が挙げられる」
。解析は事前に決められていたため,
は必要であるが,人体に有害であってはならないと
P 値は頻度による方法で解釈可能であり,このこと
いう結論へ至るに違いない。安全性に関する妥当性
は,解析による差異を認める尤度が,現実には差が
のある疑いは,代替製剤がない場合または有効性の
なくても,2% 未満であることを意味する。
低い代替製剤しかない場合を除き,薬剤の使用を控
因果関係を示す説明に代わって提唱されている
える十分な理論的根拠となるものである。安全であ
説明は,いずれも研究で認められた関連性の十分
ると考えていた薬剤に起因する重篤な副作用に驚
な説明とはなっておらず,研究で認められた関連
いたからといって,その薬剤の使用について不信感
性に因果関係があるという可能性は残っている。
を抱いたり,無責任に継続したりすべきではない。
RODIN 研究の観察結果を下支えする生物学的機序
さらに,主な治療効果についてのクラスエフェクト
は,必須という訳ではないが,それがあればさらに
( 同じカテゴリーであればすべての種類の薬剤が同
信頼性を高めることになろう。この RODIN 研究の
じ効果を持つこと )には例外より基準が多いのに対
文献は,確かに観察結果について説明可能な根拠を
し,副作用の場合こうしたクラスエフェクトはそれ
示しているわけである。第 2 世代 rFVIII 製剤には,
ほどみられない。このようなことになるのは,薬剤
FVIII 蛋白質が凝集体としてより多く含まれている
の開発目的が副作用ではなく,主作用にあるからで
( 10 )
という説明が妥当である
。
ある。
この説明は良くても部分的にしか認められない
FVIII 製剤に対するインヒビター( 抗体 )発生は
が,その場合でも,現在の知識には限界があり,有
薬物有害反応である。薬物有害反応のリスクは,癌
23
Full Translation: J. G. Van Der Bom, et al.
に対する化学療法など,その薬剤に望ましい効果の
ターするには,ある FVIII 製剤のあらゆる輸注情報
可能性が実質的にあれば,許容可能であると考えら
を収集し,製剤間のインヒビター発生状況を比較
れる。しかしながら,有効性( および費用 )は等し
するのが最善の方法である。患者の所有権の下に
いが,実質的に副作用が少ないと考えられる薬剤が
あるそうした情報の中央管理データベースが,あ
入手可能であれば,そちらを望ましい薬剤とすべ
る FVIII 製剤のインヒビター発生リスクが高いか低
きである。有効性が等しい rFVIII 製剤は多数あり,
いかを知るには,最も効率的かつ迅速で信頼性が高
これらの銘柄が入手可能であることを考慮すると,
い方法となる。こうしたデータベースの使用環境が
rFVIII 製剤の 1 つに高いインヒビター発生リスク
整っていたら,Kogenate や Helixate が,それ以外
が認められるという意味について,高度に理論的
の製剤より確かに多くのインヒビター発生をもた
検討が活発に行われるのは驚きを通り越している。
らすことは,より早く分かっていたと考えられる。
誤った方向に導かれ誤解を招くことにもなる。
最終的に,臨床医は患者を指導する立場にあり,
らゆる取り組みにもかかわらず,新たな製剤の承認
開 示
Johanna G. van der Bom は , Bayer 社 , Baxter
社,CSL Behring 社,Wyeth 社 か ら 無 制 限 の 研 究
資金の提供を受けたことがある。さらに,Johanna
G. van der Bom は Baxter 社および Wyeth 社のコン
サルタントと,Bayer 社の教育活動の教師を務めて
き た。Samantha Gouw は,CSL Behring 社,Novo
Nordisk 社,Wyeth 社,Baxter 社,Bayer 社から無
前にその免疫原性を正確に把握することは不可能
制限の研究支援および講演料を受けたことがある。
であると考えられる。FVIII 製剤の免疫原性をモニ
Frits R. Rosendaal には利益相反は一切ない。
その職務は何よりもまず入手可能な知識を患者に
伝えることにある。決定は,十分な情報を得た患者
に委ねたい。
インヒビターの発生は,複数の因果関係の過程か
らなり,FVIII 製剤の曝露がインヒビター発生の必
要原因であることは疑う余地がない。規制当局のあ
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